ヘルスケアという言葉からは医療機器や創薬といった医療分野に加え、健康管理、予防医療、ウェアラブルデバイス、データ活用など幅広い領域が思い浮かびます。しかし、ヘルスケア分野として明確に区切られた領域が存在するわけではなく、その範囲は非常に広く捉えられています。
特に医療分野とは重複する部分も多く、診断・治療といった直接的な医療行為に関わる領域と健康維持や予防、生活習慣の改善といった周辺領域との境界は必ずしも明確ではありません。そのため、どこまでをヘルスケアと捉えるかによって関係する企業や技術領域は大きく変わります。
また、ヘルスケア分野は、医療機器や医薬品にとどまらず、IT、データサイエンス、材料、食品、フィットネスなど、さまざまな分野と密接に関係しています。このように技術領域が多岐にわたるため全体像を直感的に把握することは容易ではありません。
本記事では、「ヘルスケア」という検索キーワードをもとに特許情報を用いて関連企業を抽出し、それぞれの企業がどのような技術領域に関わっているのかを整理します。
あわせて、機械、電気、材料、化学、生物、情報といった各専攻が、どのような役割でヘルスケア分野に関わっているのかについても広く俯瞰できる形でまとめています。
本記事は、ヘルスケア分野の全体像をつかむための入口記事として位置づけており、個別の技術や企業については、別記事でより詳しく解説しています。
・全体像を把握し、関心のある領域を深く理解するためのガイドとして
・自分の専攻がどのようにヘルスケア分野に関わるのかを把握する出発点として
ご活用ください。
結論(関連技術:結果の一部)
研究開発が活発な技術分野と関連する専門分野、開発例は次の通りです(上から特許出願件数が多い順で表示)。結果全体については4.3の<表2>をご参照ください。
| ヘルスケア における関連技術 |
専門専攻:開発具体例 |
| 医薬組成物:サプリメント製剤、 栄養成分、薬物送達 |
薬学系:成分の吸収率を高めるナノカプセル製剤の開発 |
| 無線通信:ウェアラブル端末の通信、 在宅見守りネットワーク |
電気系:病院内の電波干渉を抑えた医療機器専用無線通信 |
| 診断・手術:生体情報モニタリング、 非侵襲診断、診察装置 |
電気系:衣服型心電計や血中酸素濃度計の低ノイズ計測設計 |
| 微生物・遺伝子工学:腸内フローラ 解析、有用菌の活用、細胞治療 |
生物系:個人の体質に合わせたプロバイオティクスの研究 |
| ヘルスケアIT:電子カルテ、 個人の健康管理、診断支援AI |
IT系:個人の健康ログを解析し病気リスクを予測するAI |
| 材料分析:血液・検体検査、 尿成分分析、バイオセンサー計測 |
物理系:光センサーを用いた針を刺さない血糖値測定技術 |
| 治療装置:家庭用吸入器、輸液ポンプ、 カテーテル技術 |
機械系:24時間装着可能な超小型インスリンポンプの機構 |
1.ヘルスケアという分野の特徴
ヘルスケアという分野は医療機器や医薬品といった明確な対象が想起される一方、どこまでをヘルスケアと捉えるかが曖昧であり、明確に区切られた産業として整理することが難しい特徴があります。
例えば、診断・治療に直接関わる医療機器や創薬に加え、健康管理や予防、ウェアラブルデバイス、さらには生活習慣の改善を支えるサービスや食品なども広い意味ではヘルスケアに含まれます。このように、関係する技術領域が多岐にわたるため単一の分野として整理することが困難です。
また、これらの技術はヘルスケア分野に閉じたものではなく、IT、データサイエンス、材料、化学、バイオなど、さまざまな分野と密接に関係しています。そのため、ヘルスケアに関わる企業と言っても、その範囲は非常に広く、何でもヘルスケア分野に含まれてしまうような状況になりやすいと言えます。
さらに、医療分野との重複も多く、診断・治療といった直接的な医療領域と予防や健康維持といった周辺領域との境界は必ずしも明確ではありません。企業の採用情報や事業紹介だけでは、どの技術がヘルスケアに該当するのかを正確に把握することは難しく、研究開発の実態を捉えることは容易ではありません。
本記事では、このように範囲が広く捉えづらいヘルスケア分野について、「ヘルスケア」という検索キーワードで特許情報を検索し、実際にどのような企業がどのような技術で関わっているのかを整理することで、その全体像を可視化しています。
2.特許分析方法
・2020年から2023年までに特許出願された情報を対象範囲にしました。
・対象とする技術内容をキーワードに特許検索しました。
文献種別:国内文献
検索キーワード:
検索項目(ⅰ) 明細書「ヘルスケア」
検索条件:検索条件(ⅰ)
・上記特許出願された情報から特許分類(FI:筆頭FI)(※)を抽出しました。
※FIとは技術内容を分類するコードであり、その中で筆頭FIとは、リストの一番最初に記載れているものです。発明の最も本質的な技術特徴が筆頭FIです。
FIコード照会(特許情報プラットフォーム):j-platpat
・上記筆頭FIに基づき、対象技術の研究開発職に求められる専門分野を導きだしました。
3.注意点
特定の技術分野に絞らない調査をおこなっており、以下のような問題が少なからずありますので、ご注意ください。
・ヘルスケアに直接的に関わらない技術(明細書中で間接的、結果的にヘルスケアに資する技術として挙げられているだけの技術)も本検索範囲に含まれます。
・特許検索結果には情報ノイズが含まれることが多いです。
4.結果
4.1 ヘルスケアから出てくる研究開発企業(特許出願企業)
上記検索条件に基づく特許出願件数が多い企業(研究開発を活発におこなっている企業)は以下の通りです。

出願件数が多い企業であるほど研究開発の規模が大きいと考えられます。
4.2 研究開発をおこなう企業と技術分野
開発件数(特許出願件数)上位企業と上位技術分野(FI)は下表の通りです。
<表1> 開発件数上位の企業および技術分野(表中の数字は出願件数)
| A61K | H04W | A61B | C12N | G16H | G01N | A61M | G06F | C07K | G06Q | C12Q | H04L | H01L | C07D | H04N | |
| 医薬組成物: サプリメント製剤、栄養機能成分、 薬物送達 |
無線通信: ウェアラブル端末の通信、 院内・在宅見守りネットワーク |
診断・手術: 生体情報モニタリング、 スマート診察装置、 非侵襲診断 |
微生物・遺伝子工学: 腸内フローラ解析、細胞治療、 有用菌の活用 |
ヘルスケアIT: 電子カルテ、個人の健康管理、 診断支援AI |
材料分析: 血液・検体検査、尿成分分析、 バイオセンサー計測 |
治療装置: 家庭用吸入器、輸液ポンプ、 透析維持、カテーテル技術 |
データ処理: 健康データ解析、ウェアラブルOS、 計算機システム |
ペプチド: 抗体医薬、美容成分、 タンパク質製剤の安定化 |
業務システム: 健康保険管理、健診予約、 フィットネス管理ソフト |
測定・試験方法: 遺伝子検査、病害リスク判定、 酵素的分析 |
通信技術: 医療データのセキュアな伝送、 ネットワークプロトコル |
半導体: 生体センサー用チップ、 ウェアラブル用超小型固体素子 |
複素環化合物: 新規健康成分の合成、 サプリメント有効成分 |
画像伝送: 遠隔診療カメラ映像、 動画によるリハビリ指導システム |
|
| 開発企業(総出願数が多い順) | 726 | 693 | 633 | 628 | 551 | 391 | 335 | 281 | 279 | 244 | 179 | 154 | 149 | 117 | 109 |
| ソニーセミコンダクタソリューションズ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 95 | 0 | 69 |
| パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ | 0 | 128 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 3 | 0 | 15 | 0 | 0 | 3 |
| サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド | 0 | 105 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 24 | 0 | 1 | 0 | 6 | 0 | 0 | 1 |
| クゥアルコム | 0 | 100 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 20 | 0 | 0 | 0 |
| コーニンクレッカフィリップス | 2 | 16 | 37 | 1 | 9 | 1 | 2 | 6 | 0 | 0 | 8 | 10 | 0 | 0 | 0 |
| クゥアルコム | 0 | 84 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 7 | 0 | 0 | 0 |
| パナソニックIPマネジメント | 0 | 16 | 9 | 0 | 3 | 3 | 0 | 2 | 0 | 11 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 |
| レスメド・プロプライエタリー・リミテッド | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 85 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 中外製薬 | 11 | 0 | 0 | 33 | 0 | 2 | 0 | 0 | 33 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 日本電気 | 0 | 0 | 44 | 0 | 7 | 0 | 0 | 7 | 0 | 7 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル) | 0 | 63 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 |
| MUJIN | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| JVCケンウッド | 0 | 0 | 8 | 0 | 10 | 1 | 4 | 6 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
| IBM | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 29 | 0 | 1 | 0 | 9 | 1 | 0 | 1 |
| エヌビディア | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
| ウィルス インスティテュート オブ スタンダーズ アンド テクノロジー インコーポレイティド | 0 | 41 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 |
| デックスコム・インコーポレーテッド | 0 | 1 | 20 | 0 | 17 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 半導体エネルギー研究所 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 8 | 0 | 3 |
| ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー | 0 | 0 | 7 | 0 | 5 | 6 | 16 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| ソニーグループ | 0 | 1 | 6 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 11 | 0 | 9 |
| 東洋インキSCホールディングス | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 |
| P&G | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 日立製作所 | 0 | 1 | 2 | 0 | 7 | 1 | 0 | 6 | 0 | 8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| ラブラドール ダイアグノスティクス エルエルシー | 0 | 0 | 1 | 1 | 3 | 18 | 0 | 0 | 0 | 0 | 7 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 東レ | 4 | 0 | 1 | 0 | 0 | 6 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| ジェネンテック, インコーポレイテッド | 9 | 0 | 2 | 4 | 4 | 0 | 4 | 4 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| オムロンヘルスケア | 0 | 0 | 21 | 0 | 7 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 富士通 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 6 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| ノキア テクノロジーズ オサケユイチア | 0 | 28 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 花王 | 2 | 0 | 2 | 13 | 1 | 2 | 0 | 0 | 4 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 第一三共 | 8 | 0 | 0 | 11 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 富士フイルム | 7 | 0 | 3 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| ソフトバンクグループ | 0 | 0 | 0 | 0 | 14 | 0 | 0 | 1 | 0 | 12 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 日本電信電話 | 0 | 0 | 8 | 0 | 5 | 1 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 |
| 東芝 | 0 | 0 | 2 | 0 | 2 | 3 | 0 | 10 | 0 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 |
| 国立研究開発法人国立がん研究センター | 0 | 0 | 0 | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 19 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー | 7 | 0 | 1 | 1 | 6 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト | 6 | 0 | 1 | 14 | 0 | 1 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 東ソー | 0 | 0 | 0 | 14 | 0 | 2 | 0 | 0 | 4 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 信越化学工業 | 0 | 0 | 14 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
| 村田製作所 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| ソマロジック オペレーティング カンパニー インコーポレイテッド | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 19 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 国立大学法人 東京大学 | 1 | 0 | 1 | 4 | 1 | 7 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 |
| エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー | 1 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 |
| エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー | 1 | 0 | 0 | 1 | 4 | 5 | 1 | 1 | 5 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 |
| アップル | 0 | 12 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 |
| キヤノン | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 13 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 |
数字が大きいほど、その分野における研究開発の規模は大きいと推測されます。
4.3 研究開発に係る技術分野と主に関連し得る専攻
上表(表1)の出願件数上位の技術分野の開発において関連する可能性のある専攻をまとめました。
下表の専攻はあくまでイメージです。実態については個別の特許情報で確認する必要があります。
<表2> 出願件数上位の技術分野と開発における専門分野等
| 技術分類 | ヘルスケアにおける関連技術 | 専門専攻:開発具体例 |
| A61K | 医薬組成物:サプリメント製剤、 栄養成分、薬物送達 |
薬学系:成分の吸収率を高めるナノカプセル製剤の開発 |
| H04W | 無線通信:ウェアラブル端末の通信、 在宅見守りネットワーク |
電気系:病院内の電波干渉を抑えた医療機器専用無線通信 |
| A61B | 診断・手術:生体情報モニタリング、 非侵襲診断、診察装置 |
電気系:衣服型心電計や血中酸素濃度計の低ノイズ計測設計 |
| C12N | 微生物・遺伝子工学:腸内フローラ解析、 有用菌の活用、細胞治療 |
生物系:個人の体質に合わせたプロバイオティクスの研究 |
| G16H | ヘルスケアIT:電子カルテ、 個人の健康管理、診断支援AI |
IT系:個人の健康ログを解析し病気リスクを予測するAI |
| G01N | 材料分析:血液・検体検査、尿成分分析、 バイオセンサー計測 |
物理系:光センサーを用いた針を刺さない血糖値測定技術 |
| A61M | 治療装置:家庭用吸入器、輸液ポンプ、 カテーテル技術 |
機械系:24時間装着可能な超小型インスリンポンプの機構 |
| G06F | データ処理:健康データ解析、 ウェアラブルOS、計算機システム |
数学系:複雑な生体リズムから異常を検知する数理モデル |
| C07K | ペプチド:抗体医薬、美容成分、 タンパク質製剤の安定化 |
化学系:常温保存を可能にするタンパク質安定化の化学合成 |
| G06Q | 業務システム:健康保険管理、 健診予約、フィットネス管理ソフト |
IT系:医療機関と患者をつなぐセキュアな予約管理システム |
| C12Q | 測定・試験方法:遺伝子検査、 病気リスク判定、酵素的分析 |
生物系:唾液によるがんリスクの早期スクリーニング検査 |
| H04L | 通信技術:医療データのセキュア伝送、 暗号化プロトコル |
数学系:高度な秘匿性を担保する医療情報暗号化アルゴリズム |
| H01L | 半導体:生体センサー用チップ、 超小型固体素子 |
物理系:超低消費電力で駆動する埋込型センサーチップの研究 |
| C07D | 複素環化合物:新規健康成分の合成、 サプリメント有効成分 |
化学系:抗酸化作用を持つ新規エイジングケア成分の合成 |
| H04N | 画像伝送:遠隔診療映像、 動画による運動療法指導システム |
電気系:リアルタイム遠隔診断のための高精細画像伝送技術 |
特許出願件数が多いものから上表にしました。ただし、上表に示される技術分野は一部に過ぎません。
4.4 医療分野との相違点
先の記事の医療分野との技術的な相違と以下が挙げられます。
医療では手術用ロボットや内視鏡(A61B) やカテーテル・人工呼吸器(A61M)、人工関節(A61F )に関わる技術分野の上位にきていました。これらは、体に直接介入する物理的なデバイスです。
ヘルスケアでは無線通信(H04W)やヘルスケアIT(G16H)に関わる技術分野が上位であり、病院内での処置よりも日常生活の中での生体データのモニタリングやスマホ・ウェアラブル連携といった、通信とITによる見守り・予防に技術の軸足があります。
医薬組成物に関しては、
医療ではペプチド、抗体(C07K)とのセットによる癌や難病に対する医薬品開発が主目的です。
ヘルスケアではサプリメントや機能性食品、乳酸菌や腸内フローラ(C12N)といった病気になる前の体質改善や日常的な栄養補給に関する技術の割合が大きいです。
IT活用に関しては、
医療では電子カルテや病院経営、複雑な創薬シミュレーションなど専門家(医師・研究者)の業務を支えるためのツールとしての側面が強いです。
ヘルスケでは個人のパーソナル・ヘルス・レコードやフィットネス、保険サービスとの連動など一般消費者が自分自身で健康をコントロールするためのプラットフォーム・サービスとしての管理システムが重視されます。
以下、比較表です。
<表3> 医療とヘルスケアの相違比較
| 比較項目 | 医療(Medicine) | ヘルスケア(Healthcare) |
| 主役となるFI | A61B / A61M / A61F | G16H / H04W / A61K |
| 技術の目的 | 疾患の治療・患部の修復 | 健康維持・予防・生活の質向上 |
| 介入方法 | 外科手術、高度な投薬 | モニタリング、食事、運動 |
| データの流れ | 病院内(クローズド) | ウェアラブル〜クラウド(オープン) |
| 開発キーワード | 低侵襲、創薬バイオ、人工臓器 | IoT、未病、腸内環境、行動変容AI |
まとめると、医療は特定の部位を治すための物理的・生物的アプローチであるのに対し、ヘルスケアは全身の状態を継続的に把握し、最適化するための情報・通信・栄養学的アプローチという技術的な棲み分けがなされていると言えます。
5.独自分析のやり方
本記事では「ヘルスケア」というワードを出願書類中に含むものを抽出したものです。
そのため、ヘルスケアそのものを主目的としない技術(結果としてヘルスケアに役立つという程度で挙げられているに過ぎない技術)が多く含まれていると思われます。
ヘルスケアそのものを主目的とするものか、ご自身が求めているものか、の確認は個別の特許情報を調べる必要があります。
表1に記載の特定企業について開発内容(特許情報)を調べる方法は、以下の通りです。
(1)特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を開く
特許実用新案検索:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0100
(2)以下、①~③の操作
①「外国文献」からチェック(✓)を外す
②検索項目のプルダウンメニュー「明細書」でキーワード「ヘルスケア」と入力
③検索項目のプルダウンメニュー「出願人/権利者/著者所属」で企業名を入力

(3)検索結果を調べる。
3000件を超える場合は表示されないので、検索オプションの「日付指定」で出願日を絞ってヒット件数を調節してください。
検索の詳細は以下の記事等を参照してください。
6.最後に
本記事を通してヘルスケア分野全般の研究開発についての理解の一助となれば幸いです。
7.次に何をすべきか迷っている方へ
自分の専攻を活かせる企業を知りたい方へ
👉 研究開発職に強い企業を専攻別に簡易的に整理した入口編です
化学系、情報系、電気系、機械系、材料系、物理系、数学系、生物系、土木・建築系、薬学系
👉 研究開発職に強い企業を分野別に簡易的に整理した入口編です
航空宇宙分野、エネルギー分野、再生可能エネルギー分野、農業分野、医療分野、ヘルスケア分野、物流分野、リサイクル分野、理美容分野、防災分野、「食」関連分野、スポーツテック分野、半導体関連分野
研究開発職の全体像を知りたい方へ
👉 まずは全体を把握したい方
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・総合メーカーの就職・転職先一覧|研究開発に強い企業の技術分野
化学系で就職・転職できる業界を網羅的に知りたい方へ
<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年、2026年版 東洋経済新報社
<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許情報を独自に分析したものです。
・本サイトでは、特許情報を正確かつ最新の状態でお伝えするよう努めていますが、情報の完全性を保証するものではありません。
・特許情報のご活用や解釈は読者ご自身の責任でお願いいたします。
・詳細な確認や重要な判断が必要な場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。