本サイトは、特許情報から自分だけにカスタマイズされた有益な情報を取得する方法について解説しています。
しかし、個々の特許文献は表現が独特で難解なものが多いです。
私も業務で他社先願を読んでいて嫌になることがあります。
ただ、今はテキスト生成AIという便利なツールがあります。
あっという間に特許を小学生でも理解できる文章にすることできます!

これで難解な文章の読解から解放され、ストレスなく特許文献を活用できます。
早速紹介します。
1.特許情報の取得
まずは特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を使って特許検索します。
特許情報検索の基本的な方法は「特許情報検索の基本ガイド」に記載しています。
2.テキスト生成AI
使用するテキスト生成AIは何でもよいです。
なお、AIの性能が高いほど、より有用であることは言うまでもありません。
無償利用可能なテキスト生成AIとして、本記事作成時点では、
・ChatGPT 4o
あたりが個人的には気に入っています。
今回の実践では前者を使いました。
3.本方法の最重要ポイント
本方法の最重要ポイントは、テキスト生成AIを使うときの一番のポイントと言っても過言ではないプロンプト(テキスト生成AIに送信する命令)の作成です。
どのような命令を作成するかで、回答が全く異なってきます。
普段から使っている方はご理解されていると思いますが、有用な回答になるかどうかはプロンプト次第です。
これから世の中はプロンプトを使って仕事や勉強を効率化できるかできないかで相当な差が出てくるかもしれません(?)。
4.実践
それではやってみまししょう。
(1)AIのプロンプト入力画面を開き、所定の文章を事前入力しておく


「次の請求項1に記載された発明について、小学生が理解できるように、200字程度で技術内容をまとめてください:」
です。上文(太字部分)をコピペしてください。
これで事前準備できました。
(2)J-PlatPatから対象とする特許文献を開く
ここでは、私が代理人になって出願書類を作成した特許を例に挙げます。
これは水処理に関する特許です。

プロンプト作成に使用するのは上図の①「請求の範囲」および②「詳細な説明」の部分(赤枠部分)です。
次のように画面が展開されました。

請求の範囲とは、権利範囲を決める部分です。
【請求項1】、【請求項2】、・・・といった感じで請求項と言われる文ごとに特許権が存在します。
ここでは請求項1をAIに解読させます。
(3)特許文献の文章をプロンプト入力欄に入力する


(4)J-PlatPatの詳細な文章について同様の操作をおこなう
展開された画面の全文をコピーします(下図赤枠部分:図では表示が途中で切れていますが、最後尾まで選択し、コピーします)。


これでプロンプト完成です。
(5)AIにプロンプトを送信する

(6)AIからの回答を確認する
今回、以下のような回答がありました(下図)。

回答全文は以下のとおりです。
浄水処理システムを小学生にもわかりやすく解説!
難しい言葉をもっとやさしい言葉にすると…
この発明は、水をきれいにする特別な装置です。この装置は、水の中にいる「フルボ酸」というちょっと大きなゴミを、細かく砕いて、水をもっときれいにしてくれるんだ。
どうやって水をきれいにするの?
1.お薬を混ぜる: まず、水に「過酸化水素」というお薬を混ぜます。このお薬は、フルボ酸を分解するのを助けてくれるんだ。
2.光を当てる: 次に、特別な光を当てます。この光は、フルボ酸をもっと細かく砕くのを手伝ってくれるんだ。
3.オゾンで仕上げ: 最後に、「オゾン」というもので、残っている小さなゴミを全部なくします。オゾンは、とても強い掃除屋さんみたいなものなんだ。
どうしてこの装置がすごいのか?
普通の方法では、フルボ酸を全部きれいにするのは難しかったんだ。でも、この装置を使うと、フルボ酸を細かく砕いて、水をもっときれいにできるようになったんだ。
まとめ
この装置は、水の中にいる大きなゴミを、細かく砕いて、水をもっときれいにする特別な装置なんだ。これを使えば、もっときれいな水が飲めるようになるかもね!
回答の技術的な説明は大体あっています。
当該分野の人であれば、この文章を理解できない人はまずいないでしょう。
ただ、解説レベルが低くて、技術的なポイントが逆にわかりにくという人もいるかもしれません。
その場合、プロンプトを「小学生が理解できるように」でなく「大学生が理解できるように」にするとよいです。
次のプロンプトを作成しました。
これに対するAIの回答は次のとおりです。
請求項1の技術内容を大学生向けに解説
フルボ酸を標的とした新しい浄水システム
この発明は、従来の浄水処理では難しかったフルボ酸という物質に特化した、新しい浄水システムに関するものです。
主な特徴
- フルボ酸の選択的分解: 過酸化水素と特定波長の光を組み合わせることで、フルボ酸だけを効率的に分解します。
- オゾン処理との連携: 光と過酸化水素による前処理でフルボ酸を分解した後、残った物質をオゾンで完全に分解します。
この発明のメリット
- 水質の改善: フルボ酸による水質悪化を抑制し、よりきれいな水を作ることができます。
- 処理効率の向上: 従来の方法よりも効率的に水を浄化できます。
- 環境負荷の低減: 薬品の使用量を減らすなど、環境への負担を軽減できます。
技術的な背景
- フルボ酸: 土壌や水中に存在する有機物の一種で、水質汚染の原因となることがあります。
- 過酸化水素: 強力な酸化剤で、有機物を分解する際に利用されます。
- 320nmの光: 特定の有機物を分解するのに効果的な波長の光です。
- オゾン: 強力な酸化剤で、残った有機物を完全に分解します。
今後の展望
この技術は、まだ研究段階ですが、将来的には様々な分野での応用が期待されています。例えば、工業排水や地下水の浄化など、環境問題の解決に貢献できる可能性を秘めています。
ポイント
- フルボ酸という特定の物質に焦点を当てている点が特徴
- 光と過酸化水素、オゾンの組み合わせが新しい
- 水質改善や環境負荷低減に貢献できる可能性がある
補足
この解説は、請求項1の内容を簡潔にまとめたものです。特許明細書全体を読むことで、より詳細な情報を得ることができます。
内容的に誤りは見当たりません。
本分野に関わる人にとって、より技術内容の理解が深まる回答になったのではないでしょうか?
以上が、AI活用によって特許を読み解く方法です。
本方法を他のさまざまな特許文献にも適用してみたところ、Gemini 1.5Flash やChatGPT 4o あたりだと、まあまあの結果が得られることがわかりました。
これで特許の読解にかかる時間が大幅に短縮可能です。
プロンプト作成のポイントを挙げると、
・誰の立場での回答を求めるのか(上例では「小学生(大学生)」の立場)
・回答の文字数(上例では「200字程度」でコンパクトな回答を期待)
・AIが回答を生成するのに参考となる情報の提供(上例では「請求項1」および「詳細な説明」の全文)
を明確にすることです。
上記以外にもプロンプトに工夫の余地はあると思いますので、ご自身でも試してみてください。
(7)プロンプトに必要な情報量
上の例ではプロンプトに、請求項1と詳細な説明の全文を盛り込みました。
特許文献によっては100ページを超えるものもあるため、場合によっては長大なプロンプトになってしまい、回答に支障がでる場合もありそうです。
プロンプト作成のための特許情報をできるだけ絞りた場合、以下の項目で試してください。
①【請求項】(必須)
ここの情報は上の例と変わりません。
②【技術分野】(できれば)
詳細な説明のトップにくる内容です。どのような分野の発明なのかをAIに提供します。
③【背景技術】(できれば)
その分野の先行技術をAIに提供します。
④【発明が解決しようとする課題】(できれば)
どのような技術課題が存在しているのかAIに提供します。
⑤【発明の効果】(できれば)
その発明によってどのような効果が得られるのかAIに提供します。
プロンプトに用いる情報を上記①~⑤にすることでかなり文字数を絞ることができますし、それなりの回答が得られます。
もし、期待した回答が得られない場合は、AIに提供する情報を増やしていきます。
5.注意点
AIの回答は必ずしも正確ではないことが注意点です。
例えば上記4の実践では、200字程度でまとめてほしいというプロンプトを送信しましたが、回答をよく見ると、200字をはるかに超えているのがわかります。
同様に、回答の質的な面でも、技術解釈が怪しい場合や意訳しすぎている場合があります。
そのためAIの回答が常に正しいわけではないことに十分注意してください。
対策としては、
・自らも特許文献に目を通す
・他のAIも使ってそれぞれの回答を比較してみる
といったことが挙げられます。
6.まとめ
本方法の利点や注意点は以下のとおりです。
・AIが特許の理解の助けになり、大幅時間短縮が可能
・プロンプト作成が一番のポイント
・AIの回答は必ずしも正しいとは限らない
本方法が少しでも役に立てば幸いです。
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<出典>
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)に係る図:独立行政法人工業所有権情報館・研修館(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)
<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許情報を独自に分析したものです。
・本サイトでは、特許情報を正確かつ最新の状態でお伝えするよう努めていますが、情報の完全性を保証するものではありません。
・特許情報のご活用や解釈は読者ご自身の責任でお願いいたします。
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