前記事につづき、好きな製品の開発に関わりたいという人に向けた記事です。
自分が好きな製品名を検索ワードに開発職を見つける方法については先に紹介しました(好きな製品名から企業を探す方法)。
例えば、「ドローン」という製品の開発に関わる企業情報を簡単に取得することができます。
下表はそれをまとめたものです(本記事作成時点の情報)。
<特許出願件数ランキング>
| 株式会社ナイルワークス | 84件 |
| トヨタ自動車株式会社 | 15件 |
| 東洋製罐株式会社 | 15件 |
| IHI運搬機械株式会社 | 14件 |
| 株式会社JVCケンウッド | 14件 |
| エスゼットディージェイアイテクノロジー | 11件 |
| 株式会社プロドローン | 10件 |
| 合同会社酒井総合研究所 | 10件 |
| 楽天グループ株式会社 | 9件 |
| 楽天株式会社 | 9件 |
(特許情報プラットフォームから独自作成)
この方法は製品名を検索ワードにするもので、シンプルで手っ取り早い方法です。
ただし、これだけでは、
・ドローンの制御技術に関する開発なのか?
・機体の素材に関する開発なのか?
といった疑問に答えるものではありません。
そこで、製品名に加えて自分の興味にもとづくワードで絞り込み、より自分にマッチした企業を見つける方法について紹介します。
下図はそのイメージです。
飲酒運転の防止を目的とした開発に取組む企業を見つけるイメージです。

以下、理系学部生の知識レベルを想定して話を進めていきます。
既に前記事を読んだ方は「3 製品名と所望の検索ワードで特許検索」からお読みください。
1.開発職サーチの概要
特許情報は企業の開発情報だと言えます。
その特許情報をいかに検索して取得するか、そして、その特許情報を自分の目的に役立てようというのが、本サイトのコンセプトです。
開発サーチに係る特許情報検索の基本的な方法は「特許情報検索の基本ガイド」にも記載しています。
1.1 使用プラットフォーム
本記事では、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を使って特許検索します。
特許情報検索の基本的な方法は「特許情報検索の基本ガイド」に記載しています。
1.2 全体の流れ
下図は特許情報の検索から候補企業を抽出するまでの全体の流れを示したものです。
(1)特許情報を検索します(下図(1))。
(2)一覧情報を取得します(下図(2))。
(3)個々の特許情報を確認していきます(下図(3))。
(4)自分なりの結論を出します(下図(4))。
これが大きな流れです。

本記事では、主に上記(1)、(2)について紹介します。
2 製品名から特許検索
まずは製品名から特許検索してみましょう。
2.1 「特許・実用新案検索」を開く

「特許・実用新案検索」の画面が開きます(下図)。

まず、上図の①の赤枠の部分についてです。
2.2 キーワード入力と検索

これにより、右欄の空欄に入力したキーワードの検索対象範囲が、特許文献の中の「発明の名称」になりました。
ここに製品名(例えば、「携帯電話」とか「航空機」などの一般名称)を入力します。
下の例では「自動車」と入力しました。


これで、特許出願書類中の「発明の名称」に「自動車」という語が含まれる特許文献が検索されます。
検索結果は次の通りでした。
「検索結果が3000件を超えたため表示できません(133864件)。」と表示されました(下図赤枠部分)。
このようにJ-PlatPatには検索結果の表示限界があります(本記事作成時点)。

2.3 絞り込み(日付指定による絞り込み)
「検索オプション」は「検索」の上にあります(下図)。

これにより、特許出願書類が特許庁に提出された日(出願日)による絞り込みができます。

2001年以降に出願された分を検索してみます。
これにより2001年1月1日から現時点に至るまでが検索対象範囲になりました。
なお、期間を指定したい場合は、右側の空欄にも西暦(8桁の数字)を入れることになります。

今度は検索結果が2,855件(下図赤枠部分)で一覧表示可能になりました。

3 製品名と所望の検索ワードで特許検索
上記の日付指定による絞り込みだと、指定外の日付が検索されません。
出願の傾向など長期間の変化を知りたい場合、日付指定による絞り込み検索はあまり良い方法ではありません。
この場合、製品名によるキーワード検索に所望の検索ワードをかけあわせる検索(いわゆるAND検索)がおすすめです。
3.1 自分が解決したい問題を検索ワードにする方法
上の例では、検索項目「発明・考案の名称/タイトル」(※)において、製品名である「自動車」を検索ワードにして検索すると133,864件もの特許情報がヒットしました。
※ 製品名によっては検索ヒット数が少ないことがあります。その場合、製品名を入力する検索項目として他に「要約/抄録」、「請求の範囲」とすることでヒット数が増えます。
この「自動車」について、自分が解決したい問題や自分のスキルで解決できる問題を検索ワードにします。
例えば、解決したい問題が「飲酒運転」だとしてみましょう。

明細書には、発明が何を解決しようとするものか、など発明の詳細が記載されています。
従って、解決したい問題を検索ワードにする場合、検索対象範囲は「明細書」とするのがよいです。

63件の特許情報がヒットしました(下図)。

上記一覧の特許文献は飲酒に関わる技術である可能性が高いと言えます。
ただし、その内容については文献番号をクリックして、個別に情報を確認する必要があります。
このように、解決したい問題を切り口にすることで、自動車の課題を解決しようとする特許技術を抽出することが可能になります(下図は私が適当に考えた自動車の課題イメージ)。

飲酒運転の問題を解決しようとする技術としては、呼気のアルコールを検知する技術とか、運転手の動きのパターンからAIで予測する技術だとか、いろいろ考えられます。
アルコールを検知するセンサーを特許検索の切り口にすると、競合するセンサー技術はヒットしますが、全く別の技術はヒットしません。
解決したい問題を特許検索の切り口にすることで、特定技術を検索対象とする特許検索の場合よりも、さまざまな競合技術を洗い出すことができます。
中には、自分が思いつきもしなかった技術アプローチがあるかもしれません。
そうした開発の気づきが得られることもあります。
3.2 技術名を検索ワードにする方法
上記3.1の繰り返しになりますが、検索項目「発明・考案の名称/タイトル」において、製品名である「自動車」を検索ワードにして検索すると133,864件もの特許情報がヒットしました。
この「自動車」について、自分の専門や興味のある技術を検索ワードにします。
近年、自動車の分野でEV化が進んできましたので、電池に関する技術を検索ワードにしていましょう。

「請求の範囲」とは特許権の権利範囲になる部分であり、特許出願書類の中で最も重要な部分だと言っても過言ではありません。
権利を構成する技術要素は「請求の範囲」に記載されます。
すなわち、「請求の範囲」を検索範囲とする検索においてヒットする特許文献は、その検索ワードとして技術を重要な位置づけに置いていると言えます。
今回は、その検索ワードを「電池」としてみましょう。
これで製品名「自動車」と「電池」のAND検索ができます。
自動車という製品において、電池が重要な技術要素として位置づけられている特許文献が検索によりヒットする可能性が高いです。

3,007件の特許情報がヒットしました(下図)。

検索結果が表示限界を超えたので、特許情報を閲覧するためには、検索オプションの日付指定などで検索範囲を絞り込む必要があります。
検索結果に基づく特許出願件数トップ10は以下のとおりでした。
| トヨタ自動車 | 334件 |
| 日産自動車 | 143件 |
| 本田技研工業 | 136件 |
| エルジーエナジー | 104件 |
| ビーワイディー | 88件 |
| 東芝 | 80件 |
| 日立製作所 | 61件 |
| パナソニック | 55件 |
| 富士電機 | 47件 |
| 新神戸電機 | 44件 |
(特許情報プラットフォームから独自作成)
検索ワード「電池」では対象とする技術範囲が広いと感じる場合は、さらに検索ワードを追加して絞り込みます。

230件の特許情報がヒットしました(下図)。

検索結果に基づく特許出願件数トップ10は以下のとおりでした。
| 東芝 | 38件 |
| ソニー | 21件 |
| トヨタ自動車 | 20件 |
| 日産自動車 | 14件 |
| 日立製作所 | 11件 |
| 半導体エネルギー研究所 | 11件 |
| 日立化成 | 10件 |
| ビーワイディー | 8件 |
| 新神戸電機 | 7件 |
| パナソニック | 5件 |
(特許情報プラットフォームから独自作成)
自動車に関連するリチウムイオン電池がらみの特許情報を欲していた人にとっては、より有用な情報になりました。

この場合の検索結果は、50,247件でした。検索結果が多すぎて表示限界を超えました。

このように、製品名を検索条件に含めないと情報が膨大になることがあります。
検索の目的によっては、特許出願における先行技術調査や現行製品の特許権の侵害の有無を調査と違って、常に対象技術をくまなく調べる必要はありません。
また、製品名を検索条件にして所望の検索ワードと組み合わせることで、その製品に含まれる技術を効率的に抽出することができます。
例えば、自動車には様々な技術が含まれています(下イメージ図)。

こうした技術を検索ワードにすることで、自分の専門に近い特許情報を抽出することが可能になります。
3.3 自分が解決したい問題と技術名をそれぞれ検索ワードにした絞り込み検索
上記3.1と上記3.2の両方からのアプローチで絞り込みます。
例えば、自動車の「安全性」を「IT」により解決する特許文献を検索してみましょう(下イメージ図)。

ここで、検索ワードを「安全性」や「IT」としても、このような漠然とした言葉では有益な情報は得られません。
ここでは、「安全性」を代替する検索ワードを「衝突」とします。
また、「IT」を代替する検索ワードを「システム プログラム」(システムまたはプログラム)とします。
検索の前提として、「発明・考案の名称/タイトル」を「自動車」とします。

<上図①(検索ワード「衝突」)の部分>
「要約」には発明の概要が記載されています。つまり、「要約」に「衝突」というワードが含まれている場合、「衝突」という問題を重視した発明である可能性が高いです。
<上図②(検索ワード「システム プログラム」の部分>
「請求の範囲」は特許権の権利範囲となる重要な部分です。
つまり、「請求の範囲」に記載されている技術は、発明の構成上、重要な技術要素である可能性が高いです。
右欄に「システム プログラム」と入力します。
ワード間にスペースを設けることで「システム」と「プログラム」のいわゆるOR検索になります。
下図は検索結果です。

150件の特許情報がヒットしました。
以下は、その特許出願件数のトップ10です。
| ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング | 8件 |
| ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト | 7件 |
| ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー | 5件 |
| トヨタ自動車 | 5件 |
| 現代自動車 | 5件 |
| デンソー | 4件 |
| 日産自動車 | 4件 |
| 富士重工業 | 4件 |
| タカタ・ペトリ アーゲー | 3件 |
| マツダ | 3件 |
| 富士電機 | 3件 |
| 本田技研工業 | 3件 |
(特許情報プラットフォームから独自作成)
特許検索において検索ワードの選び方は非常に重要です。
「事故」や「リスク」のように上位概念的な意味合いのワードだと、情報ノイズが大きくなります。
対策としては、「事故」や「リスク」として意図するワードに下位概念化することが挙げられます。
例えば、上の例の検索ワード「衝突」、「追突」などが挙げられます(下表)。
| 概念 | ワード例 | 問題 |
| 大きい | 「(自動車の)事故」 | 情報ノイズ多 |
| ↓ | ↓ | |
| 適度 | 「衝突」、「追突」など | |
| ↑ | ↑ | |
| 絞りすぎ | 「正面衝突事故」、「出会い頭衝突」 | ヒット数少 |
この検索ワード選びは、検索結果数を見ながらある程度、試行錯誤してみてください。
4 検索結果の見方
過去記事「好きな製品名を検索ワードに特許検索して開発職を見つける方法」の「3 特許情報の取得、分析」をご覧ください。
5 質の高い検索結果のためのチェック事項
過去記事「好きな製品名を検索ワードに特許検索して開発職を見つける方法」の「4 質の高い検索結果のためのチェック事項」をご覧ください。
6 まとめ
製品名に加えて、独自のワードを検索ワードにして特許検索することで、より効率的に企業を見つけることができるようになります。
検索ワードには、広すぎず、また、狭すぎず、適度なワードを選んでください。
本サイトで紹介する方法が少しでも役に立てば幸いです。
7 次に何をすべきか迷っている方へ
研究開発職の企業の探し方がわからない方へ
👉 特許情報を使って企業を見つける方法を解説しています
自分の専攻を活かせる企業を知りたい方へ
👉 研究開発職に強い企業を専攻別に簡易的に整理した入口編です
化学系、情報系、電気系、機械系、材料系、物理系、数学系、生物系、土木・建築系、薬学系
研究開発職の全体像を知りたい方へ
👉 まずは全体を把握したい方
👉 総合メーカー志望の方はこちら
・総合メーカーの就職・転職先一覧|研究開発に強い企業の技術分野
<出典>
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)に係る図:独立行政法人工業所有権情報館・研修館(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)
<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許情報を独自に分析したものです。
・本サイトでは、特許情報を正確かつ最新の状態でお伝えするよう努めていますが、情報の完全性を保証するものではありません。
・特許情報のご活用や解釈は読者ご自身の責任でお願いいたします。
・詳細な確認や重要な判断が必要な場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。