その企業への自分の専門の適否を調べたいという人に向けた記事です。
これまで製品名や技術ワードを切り口に開発職を見つける方法を紹介してきました。
・好きな製品名から企業を探す方法
・製品名+独自キーワードから企業を探す方法
・異分野まで射程範囲を拡大して企業を探す方法
これらの方法ではどのような企業がどのような製品や技術に関わっているのか知ることができます。
そのうち特定の企業について集中的に情報を集めたくなるでしょう。
そして、その企業の様々な開発分野の中に自分の専門に合致する情報があるのか気になるはずです(下図イメージ)。

また、その企業の開発推移などを把握しておきたいということもあるでしょう。
今回は、1社に絞って企業研究をおこなうための情報収集について紹介します。
理系学部生の知識レベルを想定して話を進めていきます。
1.開発職サーチの概要
特許情報は企業の開発情報だと言えます。
その特許情報をいかに検索して取得するか、そして、その特許情報を自分の目的に役立てようというのが、本サイトのコンセプトです。
開発サーチに係る特許情報検索の基本的な方法は「特許情報検索の基本ガイド」にも記載しています。
1.1 使用プラットフォーム
本記事では、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を使って特許検索します。
<J-PlatPatトップ画面>

1.2 全体の流れ
下図は特定企業の特許情報を抽出するまでの全体の流れを示したものです。
(1)目的とする企業に絞って特許情報を検索します(下図(1))。
(2)当該企業の一覧情報を取得します(下図(2))。
(3)個々の特許情報を確認していきます(下図(3))。
(4)自分なりの結論を出します(下図(4))。
これが大きな流れです。

本記事では、主に上記(1)、(2)について紹介します。
2 目的とする企業の識別番号の確認
これまでの記事では、企業名で特許情報を検索する方法を紹介してきました。
この方法でも目的とする企業の特許情報を取得することはできるのですが、同名企業が存在する場合、企業名が変更した場合に、検索結果が不完全なものとなります。
企業名の代わりに、特許庁に手続きをする者に対して特許庁長官から付与される識別番号という9桁の番号を特許情報の検索に利用します。
識別番号は、一人/一社の出願人に一つだけ付与されるマイナンバーみたいなものです。
識別番号で特許情報を検索することで同名企業の情報を拾ってしまうこともなく、社名変更の問題も気にする必要がなくなります。
本サイトの業界サーチに関する記事も全て識別番号を使って検索しています。
確認作業自体は慣れたら数十秒でできます。
2.1 「特許・実用新案検索」を開く

「特許・実用新案検索」の画面が開きます(下図)。

まず、上図の①の赤枠の部分についてです。
2.2 企業名の入力と検索

これにより、右欄の空欄に入力したキーワードの検索対象範囲が、特許文献の中の「出願人/権利者/著者所属」になりました。
これで出願人である企業の名称や権利者である企業の名称の検索が可能になりました。
次に、検索項目「出願人/権利者/著者所属」の右隣にある空欄(下図赤枠部分)にキーワードを入力します。


これで、特許出願書類中の「出願人/権利者/著者所属」に入力した企業名が含まれる特許文献が検索されます。
ただし、J-PlatPatには検索結果の表示限界があります。検索結果が3000件を超えると「検索結果が3000件を超えたため表示できません(×××××件)。」といった表示がでてきます。
この場合の対処方法の一つとして日付指定による絞り込みをおこないます(以下)。
2.3 日付指定による絞り込み(検索結果が3000件を超えた場合)
「検索オプション」は「検索」の上にあります(下図)。

これにより、特許出願書類が特許庁に提出された日(出願日)による絞り込みができます。

これにより2020年1月1日から現時点に至るまでが検索対象範囲になりました。
なお、期間を指定したい場合は、右側の空欄にも西暦(8桁の数字)を入れることになります。

このようにして検索結果を3000件以内にします。
大企業の場合、日付指定によって期間を区切らないと表示限界を超えることが多いです。
2.4 特許情報の取得、識別番号の確認
検索結果が3000件以下の場合、検索結果一覧が表示されます(下図は一例)。

最初に書誌事項が表示されます。
その中に識別番号が表示されています(下図赤枠内下線部分)。

これで識別番号がわかりました。
![]()
こうして開いた文献に記載されている住所(下図赤枠内)から、その出願人が対象とする出願人かどうか目途をつけることができます。

識別番号がわかったら、その識別番号でその出願人の特許情報を検索することができます。

このまま検索画面下の「検索」ボタンをクリックすると一覧が表示されます(図省略)。
対象企業の特許情報がトータルで数十件レベルの場合は、全部の情報に目を通しましょう。
対象企業が大企業の場合や特許出願に熱心な企業の場合、自分の専攻、専門から外れる内容の出願も多く含まれることが予想されます。
以下は、対象範囲を絞り込み、自分が求める情報を検索する方法です。
3 目的とする企業の特許情報の検索
上記2で取得した対象企業の識別番号を使って当該企業の特許情報を取得します。
以下、検索のやり方について紹介します。
3.1 対象企業の全ての特許情報に目を通したい場合
当該企業の識別番号だけで検索することで当該企業の情報を取得することができます(先の説明の繰り返しになりますが、操作方法は以下の通り)。

表示画面の下にある検索ボタン(図省略)をクリックすると特許情報一覧が表示されます。
検索結果が3000件を超えて一覧表示されない場合は、出願日の日付を絞り込んで(日付指定して)再度検索してみてください。
日付指定によるしぼりのやり方(上記記事)
2.3 日付指定による絞り込み(検索結果が3000件を超えた場合)
あまり特許出願していない企業(例えば、特許出願件数が100件程度)であれば、全ての特許情報に目を通す勢いで調べた方がよいです。
3.2 所定の技術に関わる特許情報を絞り込む
当該企業の識別番号に加え、所定の技術をあらわすワードを検索ワードにしたAND検索により情報を所得することができます。
次に、その下の段を使って、「検索項目」のプルダウンメニューから「請求の範囲」(※)を選択し、その右横のキーワード入力欄に自分が調べたい技術ワードを入力します(下図②赤枠内)。
※ この部分は「請求の範囲」以外に「全文」、「発明・考案の名称/タイトル」、「要約/抄録」、「明細書」があります。

検索結果が3000件を超えて一覧表示されない場合は、出願日の日付を絞り込んで(日付指定して)再度検索してみてください。
日付指定によるしぼりのやり方(上記記事)
2.3 日付指定による絞り込み(検索結果が3000件を超えた場合)
3.3 特許分類を利用して特許情報を絞り込む
当該企業の識別番号に加え、特許分類を検索ワードにしたAND検索により情報を所得することができます。
特許分類とは、技術分野ごとの分類のことで「IPC(国際特許分類)」、「FI(File Index)」、「Fターム(File Forming Term)」があります。
以下のページに詳しい説明があります。
特許情報プラットフォーム>特許・実用新案分類照会(PMGS)
記号A~Hのうち自分が求める技術分野の記号を求めるレベルまで深掘りしていきます(下図イメージ)。

ここではFI記号「C02F」が自分が望む技術範囲だとしましょう。
次に、その下の段を使って、「検索項目」のプルダウンメニューから「FI」を選択し、その右横のキーワード入力欄に「C02F」と入力します(下図②赤枠内)。

検索結果が3000件を超えて一覧表示されない場合は、出願日の日付を絞り込んで(日付指定して)再度検索してみてください。
日付指定によるしぼりのやり方(上記記事)
2.3 日付指定による絞り込み(検索結果が3000件を超えた場合)
3.4 さらに絞り込む
上記(その1)と(その2)を組み合わせることで、さらに絞り込むことができます(下図赤枠①、②、③内)。

4 個別の特許情報の確認
上記3のいずれかの検索方法によって特許情報を取得したら、後はその情報に目を通すだけです。
検索結果は一覧で表示されます。
この検索結果一覧の見方については、以下の記事で紹介していますので、詳細はそちらを参考にしてください。
参考記事:特許情報検索の基本ガイド 3.4 検索結果一覧の見方
以下、基本的な情報の見方はわかっているという前提で説明します。
以下の説明は、個別の特許情報に記載された情報について、検索者にとっての意味合いとともに説明します。
4.1 出願日からわかること
出願日は、特許庁に出願書類が提出された日のことです。
従って、出願日が新しいほど、最近出願されたということになります。
出願日が新しいということは、出願企業における最近の開発事情が反映されている可能性が高いと考えられます。
逆に、出願日が古く、その古い出願の技術分野についての最近の出願が見当たらない場合は、当該技術分野の開発がおこなわれていない可能性があります。
通常、出願日から1年6カ月後に出願公開されます。これが最新の情報です。
ただし、早期審査などで審査が完了した場合、1~2カ月でその内容が公開されることもあります。
これらを念頭に【出願日】の欄を確認してください。
4.2 出願人/特許権者からわかること
出願人は出願手続きをおこなった者で、特許権者は特許権を保有する者のことです。
対象企業一社だけで特許出願した場合、【出願人】の欄にはその企業の名称のみが記載されます。
一方、対象企業が他の企業と共同で出願した場合、【出願人】の欄には各企業名が記載されます。
出願人が対象企業一社だけの場合、出願書類中の発明は、基本的にその企業によって開発された発明である可能性が高いです。
これに対し、出願人が複数いる場合、出願書類中の発明がどの企業によって開発された発明であるのか判断するのは難しくなります。
共同出願は、通常、共同開発によって得られた発明についてなされることが多いのですが、どの技術にどの企業が寄与したのか、外部から判断するのは難しいです(内部の人たちでも判断が難しい場合もあるくらいです)。
従って、得られた特許情報に出願人や特許権者が複数記載されている場合は、自分が調べたい技術の開発者が誰なのか、よく吟味する必要があります。
これらを念頭に【出願人】または【特許権者】の欄を確認してください。
4.3 請求項からわかること
請求項(請求の範囲)は特許権を取得したい企業にとって最も重要な項目です。
請求項に記載された内容が特許権になるからです。
例えば、請求項の記載が「技術Aと、技術Bと、技術Cとを備える装置」だったとしましょう。
この請求項によって保護される技術範囲は、下図のA、B、Cが重なり合った部分になります。

この重複部分の技術を、事業的に製造したり、販売したりする第三者の行為に対して特許権侵害を主張することができます。
このように、請求項に記載されている技術は、特許権の権利範囲を決定する重要な構成要素だと言えます。
自己の専門に関わる技術が請求項を構成する技術である場合、そのような構成技術と密接な関りがある技術である場合、または、請求項に記載された技術が開発対象として希望する技術である場合、その技術は、その企業の開発にとっても重要な位置づけにある可能性があります。
4.4 詳細な説明(明細書)からわかること
詳細な説明には、発明の技術分野、背景技術、発明が解決しようとする課題、発明の効果、実施形態、産業上の利用分野など様々な情報が記載されています。
これらについては、以下の記事に詳述しています。
参考記事:特許情報検索の基本ガイド
自己の専門技術に直接関連する技術が請求項に記載されていなかったからといって、それだけで、その企業の開発における要否判断をするのは早計です。
開発技術を完成させるための技術要素は詳細な説明を踏まえて判断すべきです。
例えば、請求項に記載された技術Aを導くために、物理的、化学的、数学的な分析や評価を要したとしても、そのような開発行為は請求項に反映されません。
請求項に記載されていないからといって、そうした分析や評価に関わる技術の重要度が低いということにはなりません。
こうした技術要素は詳細な説明に記載された情報を踏まえてわかることです。
4.5 発明者からわかること
(1)勤務地
発明者情報には住所情報が記載されています。
多くの場合、開発がおこなわれた事業所の住所が記載されています。
すなわち、発明者住所から開発地(勤務地)がどこにあるのかがわかります。
どこで働くかということは、人によってはかなり大事なことだと思います。
以下のように、個別の文献の表示から調べることができます。

公報から調べると、より詳細な住所がわかります。
(2)開発体制
発明の完成に貢献した人は発明者として名前が挙げられます。
発明者として記載されているのが一人なのか、それとも複数人なのか、からどのくらいの開発人員でその開発がおこなわれたかわかります。
ただし、(法的な問題は置いておくとして)発明にあまり関わっていない人が発明者として挙がっていることがあるなど、必ずしも実態を正確にあらわしていない場合も考えられますので、鵜呑みにはしない方がよいです。
5 まとめ
今回は、1社に絞って企業研究のため、特許情報を収集する方法を紹介しました。
ざっくりまとめると、
(1)対象企業の識別番号を確認する(上記2)
(2)確認した識別番号を使って対象企業の特許情報を検索する(上記3)
(3)個別の特許情報を確認し、自分にマッチするか否かを読み解く(上記4)
という流れになります。
本サイトで紹介する方法が少しでも役に立てば幸いです。
6 次に何をすべきか迷っている方へ
研究開発職の企業の探し方がわからない方へ
👉 特許情報を使って企業を見つける方法を解説しています
自分の専攻を活かせる企業を知りたい方へ
👉 研究開発職に強い企業を専攻別に簡易的に整理した入口編です
化学系、情報系、電気系、機械系、材料系、物理系、数学系、生物系、土木・建築系、薬学系
研究開発職の全体像を知りたい方へ
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<出典>
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)に係る図:独立行政法人工業所有権情報館・研修館(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)
<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許情報を独自に分析したものです。
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