ビールなどの酒類は消費者である私たちにとって関りの深い商品であり、昔からのどごしなど嗜好を意識した商品が多いのですが、ビールメーカーはこうした商品の開発をメインにやっているのでしょうか?
大学に酒に関わる専攻はほぼ見ない印象ですが、実際にどのような研究開発がおこなわれ、どのような専門性が求められるのか、その全体像を把握するのことは容易ではありません。
この問題に対し、特許情報を活用します。
特許情報は企業の開発の軌跡であり、客観的なエビデンスになり得る情報です。
本記事では、採用サイトとは別の視点で、アサヒ、キリン、サントリー、サッポロの研究・開発職ニーズと関連する専門性を特許情報から解読します。
結論(概要)は以下の通りです。
・微生物系分野(微生物学、生物学、生物化学など)
・食品系分野(食品科学など)
・化学、農学、薬学系分野(分析化学、化学工学、有機化学、農学、薬学など)
・その他分野(情報工学、機械工学など)
1 業界サーチの概要
特許情報は企業の開発情報だと言えます。
業界サーチは、業界における主要企業の特許情報から、その業界の企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。
特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。
すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。
2 酒類業界
2.1 酒類業界とは
ここでは、ビールなどのアルコール飲料や関連技術商品を製造し、販売する業界を意図します。
2.2 サーチ対象
以下の国内4大酒類メーカーを対象にしました。
(2)キリンホールディングス(キリン)
(3)サントリーホールディングス(サントリー)
(4)サッポロホールディングス(サッポロ)
以下、括弧内の略称で記載します。
アサヒはアサヒホールディングス株式会社とアサヒビール株式会社、
キリンはキリンホールディングス株式会社と麒麟麦酒株式会社とキリン株式会社
サッポロはサッポロホールディングス株式会社とサッポロビール株式会社
の出願情報を用いています。
2.3 使用プラットフォーム
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
3 サーチ結果
3.1 結果概要
開発イメージは下表のとおりです。
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モノの開発 |
サービスの開発 |
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個人向け |
・柑橘風味飲料 |
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法人向け |
・ビールらしさを向上させる添加剤 |
・ユーザーが飲み物をカスタマイズできるサービス |
モノの開発としては、例えば、柑橘系風味飲料が挙げられます。
サービスの開発としては、例えば、ユーザーが飲み物をカスタマイズできるサービス(開発されたのは装置)などが挙げられます。
3.2 出願件数の推移
下図は酒類メーカー4社の特許出願件数の推移です。

上図期間について平均化すると、毎年50~100件程度出願されています。
すなわち、そのような出願につながる開発がおこなわれていることが推測されます。
3.3 開発の活発度
特許出願件数≒開発の活発度、だと考えるなら、
サントリー>アサヒ>キリン>サッポロ
だと言えます。
ただし、先の図からもわかるように出願件数は年によって変動しているため一概には言えません。
3.4 主な開発分野
各社ごとに特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。
各社の出願上位3つの技術分野を抽出して並べています(特許出願されていても、その企業の出願件数上位に入っていない技術分野は除外されています)。
各記号は発明の技術分類をあらわします。

分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)
食品の栄養改善などがこれに該当します。
全社この分野から多く出願しています。
ビールなどの容器などがこれに該当します。
キリンがこの分野から多く出願しています。
ビールの製造や製造装置などがこれに該当します。
全社この分野から多く出願しています。
ぶどう酒やその他のアルコール飲料の製造などがこれに該当します。
アサヒ、サントリー、サッポロがこの分野から多く出願しています。
3.5 酒類メーカー4社の近年の開発トレンドと求められる専門の例
特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。
ここ10年のトレンドは以下のとおりです。
発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。
出願件数が少ない技術分野は除外しています。
発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。
関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。
特許は難解ですが、GeminiやChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。
(1)アサヒ|開発トレンドと専門性

上図期間中、C12Gが最も多いです。次いでA23L、C12C、B67Dが多いです。
具体例としてアルコール飲料が挙げられます。
従来のアルコール飲料、特にレモン風味飲料では酸味が強く、とげとげしい刺激がありました。
これに対し、5-ヒドロキシメチルフルフラールとイソアミルアルコールを特定の範囲で含有させることで、酸味の刺激を抑制し、まろやかな風味を実現したアルコール飲料が開発されています(以下URL)。
5-ヒドロキシメチルフルフラールとイソアミルアルコールを含有するアルコール飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7520954/15/ja
関連する専門分野の例:微生物学(発酵条件の最適化による5-ヒドロキシメチルフルフラールとイソアミルアルコールの生成制御、これらの成分の生成に関与する微生物の特定)、食品科学(5-ヒドロキシメチルフルフラールとイソアミルアルコールの定量分析法の確立、これらの成分と他の香味成分との相互作用の解明、官能評価と機器分析による香味の相関解析)
従来のビールテイスト飲料、特に麦芽比率が低いものや非発酵のものはビール特有の香味が不足する傾向がありました。
これに対して、メチル3-メチル-2-ブテン-1-イルジスルフィド(MMBD)を特定の範囲で添加することでビールらしい香味を増強できる添加剤が開発されています(以下URL)。
発酵感やビールらしさを向上させるための添加剤→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7643954/15/ja
関連する専門分野の例:微生物学(MMBDの前駆体となる物質の特定、発酵条件の最適化によるMMBD生成の制御)、食品科学(ビール中のMMBDの定量分析法の確立、MMBDの添加による香味変化の官能評価と機器分析による相関解析)
具体例として柑橘風味飲料が挙げられます。
従来の柑橘風味飲料は果汁や香料で風味を再現していましたが、十分な爽快感や風味の広がりが得られないという問題がありました。
これに対して、リナロールとα-ピネンを特定の割合で併用することで全体的な風味の印象を向上させた柑橘風味飲料が開発されています(以下URL)。
柑橘風味飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7457785/15/ja
関連する専門分野の例:食品科学(柑橘果実におけるリナロールとα-ピネンの含有量と風味の関係性の解明、リナロールとα-ピネンの配合比率が飲料の風味に与える影響の評価)、微生物学(酵母や細菌によるリナロールとα-ピネンの生成機構の解明、発酵条件の最適化によるリナロールとα-ピネンの生成制御)
既存の低糖質・低カロリービール様飲料は水っぽくコクや飲み応えが不足し、香味も単調になりやすいという問題がありました。
これに対して、フェニル酢酸が0.003ppm以上0.50ppm以下、フェニルアセトアルデヒドが0.035ppm以上1.00ppm以下の範囲で配合された嗜好性の高いビール様発泡性飲料が開発されています(以下URL)。
ビール様発泡性飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7619982/15/ja
関連する専門分野の例:微生物学(酵母の菌株選択や発酵条件の最適化、フェニル酢酸とフェニルアセトアルデヒドの生成量を制御する技術の開発)、食品科学(フェニル酢酸とフェニルアセトアルデヒドの配合比率が飲料の香味や飲み応えに与える影響の評価)
具体例として、麦由来のオフフレーバーが抑えられた発酵ビールテイスト飲料が挙げられます。
既存は高アルコール化のために麦芽の使用量を増やすとオフフレーバーが強くなるという問題がありました。
これに対して、原麦汁エキス濃度が12°P以上かつ外観エキス濃度と外観最終エキス濃度の差(エキス差)が0.1以上になるように発酵条件が調整されることで、オフフレーバーの原因物質であるトランス-2-ノネナール(E2N)の生成を抑制したビールテイスト飲料が開発されています(以下URL)。
麦由来のオフフレーバーが抑えられた発酵ビールテイスト飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7368585/15/ja
関連する専門分野の例:微生物学(高濃度麦汁に適した酵母の選抜・育種、発酵条件(温度、圧力、時間)がE2N生成に与える影響の解明)、食品科学(麦芽由来成分のE2N生成への寄与解明、発酵・貯蔵中のE2N生成抑制機構の解明、高感度なE2N分析法の検討)
具体例として高アルコール濃度のユーザーが好みの飲料をカスタマイズできる飲料供給装置が挙げられます。
従来技術では成分を混合する分配弁が必須で品質のばらつきやメンテナンスの手間が問題でした。
これに対して、複数のシロップと希釈液が別々の経路で注出され、ユーザーインターフェースでベースフレーバーと追加フレーバーが選択でき、特徴パラメータの調整により好みの飲料をカスタマイズでき、各シロップは特徴パラメータと紐付けられてユーザーがパラメータを調整すると追加フレーバーの配合が自動で更新され、分配弁を使用しない構成のため、品質のばらつきやメンテナンスの手間が軽減され、品質が安定した飲料を提供できる飲料供給装置が開発されています(以下URL)。
高アルコール濃度のユーザーが好みの飲料をカスタマイズできる飲料供給装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7332291/15/ja
関連する専門分野の例:化学工学(シロップと希釈液の最適な混合比率、注出速度、混合方法の検討、装置の衛生管理やメンテナンス性向上の検討)、情報工学(ユーザーの操作履歴や嗜好データの解析、最適なフレーバーや特徴パラメータを提案するレコメンド機能の設計、入力インターフェースの設計)
(2)キリン|開発トレンドと専門性

A23Lが最も多いです。次いで、C12G、C12C、A61Kが多いです。
具体例としてビールテイストノンアルコール飲料が挙げられます。
従来のノンアルコールビールはアルコールを除去する過程で風味が損なわれるという問題がありました。
これに対して、HPLC分析用ゲル濾過法で分画されたペプチドのうち、分子量800~1500Daのペプチド質量比率を22~57%に調整することで、アルコール飲料に近い飲みごたえのある風味を実現したビールテイストノンアルコール飲料が開発されています(以下URL)。
ビールテイストノンアルコール飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7557512/15/ja
関連する専門分野の例:微生物学(風味向上に関与するペプチドの特定、その生成・分解に関わる微生物や酵素の探索)、分析化学(HPLCゲル濾過法の最適化によるペプチドの高精度な分画・定量、風味特性とペプチド組成の相関解析)
従来の炭酸飲料は時間の経過とともに泡が消え爽快感が失われるという問題がありました。
これに対して、ローズヒップなどに含まれるティリロサイドを炭酸飲料に添加することで泡の持続性を向上させ、開封後も炭酸飲料本来の風味と爽快感を長く楽しむことができる容器詰め炭酸飲料が開発されています(以下URL)。
容器詰め炭酸飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7463449/15/ja
関連する専門分野の例:食品科学(泡の持続性に影響を与える要因の特定、最適なティリロサイド添加量の検討)、有機化学(ローズヒップなどからのティリロサイドの効率的な抽出・精製法の検討、ティリロサイドの安定性や溶解性を向上させる方法の検討)
具体例として高香味容器詰アルコール飲料の製造方法が挙げられます。
従来の柑橘系アルコール飲料は果汁感を高めようとするとアルコール感が強くなり、アルコール感を抑えようとすると果汁感が損なわれるという問題がありました。
これに対して、通常は柑橘系飲料において好ましくないとされるパラサイメンを特定の条件下で塩化ナトリウムと組み合わせ、果汁感とアルコール感のバランスを最適化し、より嗜好性の高い飲料とする製造方法が開発されています(以下URL)。
高香味容器詰アルコール飲料の製造方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7372419/15/ja
関連する専門分野の例:食品科学(パラサイメンと塩化ナトリウムが果汁感とアルコール感に与える影響のメカニズム解明、最適な添加量の検討)、有機化学(柑橘系香料の成分分析とパラサイメンの定量、パラサイメンの安定性や溶解性を向上させる方法の検討)
従来のプリン体低減ビールは健康志向のニーズに応える一方で、味の厚みが損なわれるという問題がありました。
これに対して、クエン酸比率の調整によりアルコール添加に頼らずにプリン体低減ビールに十分な味の厚みを与える飲みごたえのあるビールテイスト飲料が開発されています(以下URL)。
ビールテイスト発酵アルコール飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7499002/15/ja
関連する専門分野の例:微生物学(クエン酸比率と味の厚みの相関解析、最適な発酵条件の検討)、分析化学(味の厚みを客観的に評価する指標の検討、官能評価による味の厚みの検証、データ解析によるクエン酸比率の最適化)
具体例としてビール風味発酵アルコール飲料が挙げられます。
従来の糖質低減ビールは発酵を促進することで糖質を極限まで減らすため、味が平板になりやすく飲みにくいという問題がありました。
これに対して、γ-ブチロラクトンとマルトールの濃度が特定の範囲に調整されることで、味の厚みを維持しつつ後味のべたつきを抑えた飲みやすいビール風味飲料が開発されています(以下URL)。
ビール風味発酵アルコール飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7518875/15/ja
関連する専門分野の例:微生物学(γ-ブチロラクトンとマルトールの生成に関わる酵母の代謝経路の解明、最適な発酵条件の検討、原料や発酵条件が香味成分濃度に与える影響の解析)、分析化学(γ-ブチロラクトンとマルトールの高精度な分析法の開発、官能評価による味の検証、データ解析による香味成分濃度の最適化)
具体例として血圧を降下させる組成物が挙げられます。
従来の血圧降下剤は副作用や日常摂取の困難さがあり、安全で手軽な血圧降下作用を有する食品素材の開発が求められていました。
これに対して、乳タンパク質酵素分解物に含まれるテトラペプチド「GTWY」を含む組成物により安全で血圧降下の効果を有する組成物が開発されています(以下URL)。
血圧を降下させる組成物→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7231313/15/ja
関連する専門分野の例:生物化学(乳タンパク質の酵素分解条件の最適化、GTWYの生成量を増やすための微生物スクリーニング)、薬学(GTWYの血管平滑筋への作用機序の解明、GTWYの体内吸収率と代謝経路の解析)
(3)サントリー|開発トレンドと専門性

A23Lが最も多いです。次いで、C12G、C12C、A23F、A61Kが多いです。
具体例としてゴマ蛋白の酵素分解物を含む穀物茶飲料が挙げられます。
従来のゴマペプチド飲料は健康効果がある一方で、特有のぬめりが飲用感を損なうという問題がありました。
これに対して、5-メチル-2-フルアルデヒドの濃度が特定範囲に調整され、ゴマタンパク質由来の独特な後味のぬめりを低減してゴマペプチドの良さを活かした穀物茶飲料が開発されています(以下URL)。
ゴマ蛋白の酵素分解物を含む穀物茶飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7182742/15/ja
関連する専門分野の例:食品科学(ゴマタンパク質分解物の酵素処理条件の最適化、官能評価による最適な配合比率の決定)、分析化学(5-メチル-2-フルアルデヒドの分析法の開発、LVYペプチドの血圧降下作用の評価)
従来、タンニンは健康効果がある一方でナトリウムと共存すると渋味が強まり、飲料の嗜好性を損なう問題がありました。
これに対して、ナトリウムとcis-ローズオキシドが特定の濃度となるように配合されることで、ナトリウムが含有されていてもタンニン由来の渋味を抑えた飲みやすい飲料が開発されています(以下URL)。
タンニン及びナトリウムを含有する飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7209122/15/ja
関連する専門分野の例:食品科学(cis-ローズオキシドの渋味抑制効果の検証、最適な配合比率の決定、官能評価による嗜好性の評価)、応用化学(cis-ローズオキシドの安定性や分解されやすさの評価、cis-ローズオキシドとタンニンやナトリウムとの相互作用解析)
具体例として梅酒または梅酒含有飲料が挙げられます。
従来の梅酒はシアン化水素低減のために希釈すると熟成感やコクが失われる問題がありました。
これに対して、フルフラールまたはオクタン酸エチルの含有量を特定範囲に調整することで熟成感や上質なコクを向上させた梅酒または梅酒含有飲料が開発されています(以下URL)。
梅酒または梅酒含有飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7551713/15/ja
関連する専門分野の例:微生物学(フルフラールやオクタン酸エチルの生成に関わる微生物の探索、微生物制御による風味向上の検討)、分析化学(シアン化水素、フルフラール、オクタン酸エチルの分析法の開発、フルフラールやオクタン酸エチルの添加による風味変化の解析)
従来のアルコール飲料は加熱処理による風味の変化やコストの問題があり未加熱ではミネラル由来の刺激が問題でした。
これに対して、トリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの重量比と合計含有量が特定範囲に調整され、ポリデキストロース、難消化性グルカン、難消化性デキストリンから選ばれる多糖類が加えられることで、ミネラル由来のピリピリ感を抑制し、飲料の美味しさを向上させるアルコール飲料が開発されています(以下URL)。
加熱処理をしていないアルコール飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7519400/15/ja
関連する専門分野の例:食品科学(ミネラルと多糖類の相互作用の解明、ピリピリ感の発生メカニズムの解明、官能評価による最適な配合比率の決定)、分析化学(ミネラル含有量や多糖類含有量の精密な分析法の開発、ピリピリ感に関与する成分の特定)
具体例としてビールテイスト飲料が挙げられます。
従来のビールテイスト飲料はアルコール度数を高めると味が辛口になり、飲みにくくなる傾向がありました。
これに対して、リアルエキス濃度が11.8質量%以下、アルコール度数が10.5(v/v)%以上に設定され、麦芽比率が調整されることで、ビールらしい風味と飲みやすさを兼ね備えたビールテイスト飲料が開発されています(以下URL)。
ビールテイスト飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7312237/15/ja
関連する専門分野の例:応用生物学(酵母の選定と発酵条件の最適化、麦芽の種類と配合比率の検討、リアルエキス濃度とアルコール度数の制御、官能評価による風味の評価)、食品科学(ビールテイスト飲料の成分分析と風味特性の解明、麦芽由来の風味成分の特定、苦味成分の分析と調整、香味安定性の評価)
具体例として容器詰めのブラックコーヒー飲料が挙げられます。
従来は保存安定性を高めるために中性領域にpH調整するとコーヒー本来の良好な香味が損なわれるという問題がありました。
これに対して、γ-アミノ酪酸(GABA)が特定の範囲で添加されることにより、中性領域でありながらレギュラーコーヒーのようなキレの良い酸味と良好な香りが付与されたブラックコーヒー飲料が開発されています(以下URL)。
ブラックコーヒー飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7329100/15/ja
関連する専門分野の例:食品科学(コーヒー豆の品種と焙煎条件の最適化、GABAの添加量とpHの関係性の解明、酢酸フルフリルなどの香気成分の分析と評価)、農学(コーヒー豆の品種選定と栽培条件の最適化、コーヒー豆由来の機能性成分の探索)
具体例としてプロテインL-イソアスパラギン酸メチルトランスフェラーゼ(PIMT)を活性化する組成物が挙げられます。
既存技術ではPIMTの活性化物質や皮膚におけるPIMTの役割が十分に解明されていませんでした。
これに対して、シソ科植物の花、茎、葉から抽出された30~90vol%エタノール水溶液または1,3-ブチレングリコール水溶液により皮膚の老化を抑制するPIMT活性化用組成物が開発されています(以下URL)。
プロテインL-イソアスパラギン酸メチルトランスフェラーゼ(PIMT)を活性化する組成物→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7213307/15/ja
関連する専門分野の例:薬学(シソ科植物の有効成分の特定、皮膚組織への有効成分の浸透性評価、臨床試験による有効性・安全性の評価)、生物学(PIMTの細胞内での役割解明、PIMT遺伝子の発現制御機構の解明、老化モデル動物を用いた有効性評価)
(4)サッポロ|開発トレンドと専門性

C12Gが最も多いです。次いでA23L、C12Cが多いです。
具体例としてアルコール飲料が挙げられます。
既存技術ではアルコール飲料の香味は主に成分の配合によって調整されていました。
これに対して、酸度0.1~1.5w/v%、甘味度1.0~10.0w/v%のアルコール飲料において、色度a値-0.280~0.350、色度b値5.000~20.171、明度L*値90.000~98.861、濁度(OD660)0.110以下にされることで、「とげとげしい酸味」を低減し、「あと切れの良い甘さ」を増強できるアルコール飲料が開発されています(以下URL)。
あと切れの良い甘さのアルコール飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7631267/15/ja
関連する専門分野の例:農学(香味や色度に直接影響する原料の品種、栽培条件、鮮度の最適化、目標とする色度と香味を実現するための製造条件の確立)、心理学(色度と香味の感じ方の関係性の検証、官能評価における評価バイアスの低減方法の検討)
既存技術ではアルコール飲料の香味は主に成分の配合によって調整されていました。
これに対して、酸度0.1g/100mL以上のアルコール飲料において、酢酸ゲラニルを0.7~2.0ppm、リナロールを0.3~1.0ppm含有させることで、レモン飲料らしい果実味、後味の引き締まり、果皮感を増強させたアルコール飲料が開発されています(以下URL)。
果皮感を増強させたアルコール飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7351999/15/ja
関連する専門分野の例:食品科学(アルコール飲料の成分分析、呈味成分の特定、酢酸ゲラニルとリナロールが果実味、後味の引き締まり、果皮感に与える影響の解明)、分析化学(酢酸ゲラニル、リナロールの定量分析法の確立、他の香味成分との相互作用の解明)
具体例として飲料が挙げられます。
従来の飲料ではフローラルな香りと柑橘系の香りを十分に引き出すことが難しいという問題がありました。
これに対して、ゲラニルアセテートを1.5μg/L以上、β-カリオフィレンを0.2μg/L以上、ヌートカトンを3.0~15.0μg/L含有させることで、優れた香りを実現する飲料が開発されています(以下URL)。
優れた香りを実現する飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7352676/15/ja
関連する専門分野の例:微生物学(発酵条件の最適化による香気成分の生成量の制御、新規酵母の探索による香気成分の増強)、農学(原料の選定と配合比率の最適化による香気成分の調整、官能評価による香味の評価と改善)
従来のノンアルコールビールテイスト飲料は香味の点でビールに劣るという問題がありました。
これに対して、2,3-ペンタンジオンを5~180μg/L、エタノールを0.02~0.75v/v%含有させることでビールらしい発酵感、味の厚み、キレを実現するビールテイスト飲料が開発されています(以下URL)。
ビールテイスト飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7493344/15/ja
関連する専門分野の例:微生物学(発酵条件の最適化による2,3-ペンタンジオン生成量の制御、新規酵母の探索による2,3-ペンタンジオン生成能の向上)、食品科学(2,3-ペンタンジオンとエタノールがビールテイスト飲料の香味に与える影響の解明、官能評価による香味の定量化)
具体例として麦芽発酵飲料が挙げられます。
従来の麦芽発酵飲料には香味、特に口当たりとキレの点で改善の余地がありました。
これに対して、イソマルトース資化性を有しグルコース抑制が解除された酵母の使用により、具体的には、原料中の麦芽比率、アルコール度数、特定の糖類の含有量が特定の範囲に調整されることで口当たりとキレが改善された麦芽発酵飲料が開発されています(以下URL)。
口当たりとキレが改善された麦芽発酵飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7572996/15/ja
関連する専門分野の例:微生物学(酵母の代謝経路の解明、発酵条件の最適化による香味成分の生成制御、遺伝子工学的手法による酵母の改変)、食品科学(原料の選定と配合比率の最適化、発酵条件の制御による香味成分の調整、官能評価による香味の評価)
従来の低糖質ビールテイスト飲料は風味の点で課題があり、特に酢酸イソアミル臭が強い傾向にありました。
これに対して、発酵工程で特定の酵素(グルコアミラーゼ、β-アミラーゼ、プルラナーゼ)が添加されることで、糖質を効率的に分解し、酢酸イソアミル臭を抑制でき、麦原料を多く使用しても低糖質で風味の良いビールテイスト飲料が開発されています(以下URL)。
ビールテイスト飲料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7365450/15/ja
関連する専門分野の例:微生物学(酵母による酢酸イソアミル生成機構の解明、酵素添加による酢酸イソアミル生成抑制機構の解明、最適な酵素の種類と添加量の検討)、食品科学(ビールテイスト飲料の香味成分の分析、酢酸イソアミルと他の香味成分との相互作用の解明、官能評価による香味の定量化)
(5)まとめ
4社とも飲料に関する出願、例えば、風味や飲みやすさなどを改良した飲料に関する出願がかなり多いです。
すなわち、各社とも飲料の改良が主な開発としておこなわれていることが推測されます。
3.6 共同出願人との開発例
共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。
技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。
各社の共同出願人(筆頭出願人)は以下のとおりです。
(1)アサヒ

共同出願の例として嫌気性汚泥を用いた排水処理装置が挙げられます。
従来の嫌気性処理装置は処理水から汚泥を分離する機能が不十分で汚泥の流出による処理効率の低下が問題でした。
これに対し、混合部と上向流部の境界に突起と溝が設けられ、ガスの流れを制御して上向流部に下向流を発生させて汚泥を混合部に戻すことで処理水中の汚泥を低減し、処理効率を向上させた排水処理装置が開発されています(以下URL)。
嫌気性汚泥を用いた排水処理装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-4932262/15/ja
ただし、当該企業との出願で確認されているのは2006年の出願までです。
(2)キリン

共同出願の例として自動販売機の効率的な商品補充計画を支援するシステムが挙げられます。
従来、自動販売機の補充計画は過去の販売実績のみに基づいており、新商品の導入や需要の変化に柔軟に対応できませんでした。
これに対し、AIによる需要予測を活用し、未導入商品の販売予測や最適な商品構成の提案によって補充計画の精度高めた支援システムが開発されています(以下URL)。
自動販売機の効率的な商品補充計画を支援するシステム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7538677/15/ja
(3)サントリー

サントリー食品インターナショナルが最も多いですが、当該企業が単独出願した後に名義変更によってサントリーホールディングスに移転されているものがほとんどのようです。
(4)サッポロ

(5)上記(1)~(4)(共同出願人)のまとめ
いずれも共同出願は少ないです。
4 開発に求められる専門性
上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。
上記各特許情報には以下の人材が関わっていると言えます。
・微生物系分野(微生物学、生物学、生物化学など)
微生物、酵素などが飲料の風味その他目的とする効果に与える影響の解析などが求められます。
・食品系分野(食品科学など)
飲料中の成分の分析や官能的な評価、風味など目的とする効果の強化が求められます。
・化学、農学、薬学系分野(分析化学、化学工学、有機化学、農学、薬学など)
機器分析などによる対象物質の解析や特定、目的とする効果を得るための検討、評価などが求められます。
・その他分野(情報工学、機械工学など)
上記出願では挙げられていませんが、製造装置や容器に関する出願には機械工学などが関係します。
ただし、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。
5 まとめ
微生物、食品、化学などに関わる出願が多く確認され、技術開発も当該分野に関わるものが多いことが推測されます。
これらを大学の専攻と関連づけるとしたら、主に生物、食品、化学、農学、薬学に関わる研究が該当する可能性があります。ただし、その境界はかなりあいまいです。
本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。
参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4
以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
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<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年版 東洋経済新報社
<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許情報を独自に分析したものです。
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