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建設・住宅・設備業界の就職・転職先比較|研究開発職の違い(建設・戸建住宅・住宅設備)【特許情報から分析】

 建設業界・戸建住宅業界・住宅設備業界はいずれも建築物に関わる分野ですが、研究開発の内容や技術領域には違いがあります。

 その違いを十分に理解しないままでは自分に合った業界選択や志望動機の整理が難しくなる可能性があります。

 また、これらの業界は外から見ると似ている部分も多く、どのような技術を強みとしているのかを比較して把握することは容易ではありません。

 本記事では、特許情報をもとに建設業界・戸建住宅業界・住宅設備業界の3分野について、研究開発職の特徴や技術領域の共通点・相違点を比較分析しました。

 業界ごとの違いを整理し、自分の専門がどの分野に適しているのかを検討するための参考情報として活用できます。

 

 結論(一部)は以下の通りです。

 推測される研究開発職の共通点・相違点の一例

  業界共通的な専門分野 建築業界が重視 戸建住宅業界が重視 住宅設備業界が重視
専門分野の例 ・機械工学
・電気工学
・土木工学
・材料工学(コンクリート)
・建築学(構造、意匠)
・環境工学(断熱、省エネ)
・化学工学表面処理、素材)
・流体工学(水力・熱管理)
業務内容の例 ・脱炭素化技術の開発
・施工の省人化、DX
・大規模構造物の施工法
・建設用ロボットの開発
・耐震、免震構造の開発
・ZEH(省エネ)住宅設計
・防汚、抗菌素材の表面加工
・水まわりの節水、流体制御

 

 建設は『現場のプロセス』、戸建は『住まいのパッケージ』、住設は『製品の機能』に開発の重心があることが推測されます。

 

 

1.対象とする業界と企業

 過去記事における以下の業界と企業(ある程度、特許出願件数が多い企業)を対象にしました。いずれも過去記事と同一条件の出願人です。

・建築業界(過去記事:建設業界

 鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店

・戸建住宅業界(過去記事:戸建住宅業界

 大和ハウス、積水ハウス

・住宅設備業界(過去記事:住宅設備業界

 LIXIL、TOTO

 

2.一般的情報の限界

 一般的に公開されている情報では、開発の全体像や個別の工程を体系的に把握することは困難です。

 また、業界をまたいでどのような周辺企業が開発に関わっているのか、その実態を正確に捉えることも容易ではありません。

 

3.特許分析の意義

 特許情報は企業が将来を見据えて投じた開発の成果であり、客観的なエビデンスです。

 一般的な情報からは見えてこない開発の軌跡や注力分野を判断する有用な材料になります。

 本記事では、このデータを活用し、研究開発現場に求められる専門性や企業の立ち位置を可視化します。

 

4.特許分析方法

・2014年から2023年までに特許出願された情報を対象範囲にしました。

・上記特許出願された情報から特許分類(FI:筆頭FI)(※)を抽出しました。

 ※FIとは技術内容を分類するコードであり、その中で筆頭FIとは、リストの一番最初に記載れているものです。発明の最も本質的な技術特徴が筆頭FIです。

・上記筆頭FIを目印にして各業界、各企業の発明の技術分野の特徴を分析しています。

 

5.注意点

・過去記事における対象範囲とズレが生じていることがあります。

・各業界からピックアップした企業の特許情報に基づきます。

・分析結果は業界内の全ての企業にあてはまるものではありません。

・分社化などによる別法人での特許出願は反映されていません。

・本分析はあくまで特許情報を活用した想定であり、実態と乖離している場合が多々あると考えられます。

 

6.結果

6.1 各社の特許出願状況の比較

 各社の特許出願状況(横軸:出願年、縦軸:出願件数)は以下の通りです。

 

 上図は出願件数に関する全体像をとらえるための情報であり、あまり深い意味はありません。

 

6.2 技術の分散・集中度の比較

 各社の特許出願からHHIという指標の逆数(実質的な技術的機軸数(逆数HHI))を用いて、何本の太い技術の柱を持っているか、を算出しました。

 各社の技術ポートフォリオの分散・集中度をあらわす逆数HHIの推移は以下の通りです。縦軸値が大きいほど技術分野が分散しており、逆に小さいほど技術分野が集中していることを意味します。

(一般的なHHI(集中度)とは異なり本分析の分散度(逆数HHI)は、数値が大きいほど技術分野が多角化(分散)しており、小さいほど特定の技術に資源を集中していることを意味します。)

 

 

 

 上図の縦軸値からイメージされる組織構造を下表(表1)に示しています。

 表1を踏まえて上図を見ると、いずれの企業も主たる事業に開発資源を集中していることが読み取れます。

 

<表1> 逆数HHIに基づく組織類型とキャリア環境イメージ

数値 組織構造 キャリア・開発環境のイメージ
50超 広域分散型 非常に幅広い技術分野に人員を分散配置している状態。専門外の領域に触れる機会が多く、特定の技術に固執しない汎用的な動きが求められる環境。
30 ~ 50 多分野並行型 複数の独立した技術部門が並立している状態。社内には多様な専門性を持つ集団が混在しており、異動などを通じて複数の技術基盤を経験できる可能性がある。
21 ~ 29 基盤・周辺展開型 主力技術を維持しつつ関連分野への展開も並行している状態。特定分野の習熟とその知見を活かした周辺領域への応用開発の両面を経験できる環境。
10 ~ 20 特定領域重点型 収益の柱となる主要部門に人員を集中させている状態。個々の開発成果が事業利益に直結しやすく担当技術の事業上の位置付けが明確な環境。
10未満 専門領域特化型 限定された特定の技術領域に多くの人員を投入している状態。他分野への目移りをせず限られた専門領域を突き詰めることが求められる環境。

 

 上図に表1をあてはめると次のようになります。

 

 開発領域をかなり集中させている企業から周辺展開している企業まで広がりがあり、開発環境に相違があることが推測されます。

 この前提を踏まえて、共通点と相違点を分析していきます。
 

6.3 各社の技術分野トップ10と研究開発の共通点、相違点の分析

 以下、各社の技術分野(筆頭FI)とその割合(その企業におけるその技術分野の出願の割合)トップ10を示します(下表)。各社がどの技術分野にリソースの多くを投入しているかわかります。

 割合が大きいほど、各企業にとって鉄板の技術分野だと言えます。

 FIコード照会(特許情報プラットフォーム):j-platpat

 

<表2> 各社のFIトップ10と割合

鹿島建設 大林組 清水建設 大成建設 竹中工務店 大和ハウス 積水ハウス LIXIL TOTO
E02D 15.0% E02D 12% E04B 12% E21D 13% E04B 25% E04B 23% E04B 24% E06B 22% E03D 36%
E21D 11.1% E04B 12% E04G 8.0% E02D 12% E02D 11% E04G 7.7% E04H 15% E03D 17% A47K 18%
E04G 10.7% E04G 7.5% E02D 7.6% E04B 10% E04H 10% E04H 6.6% E04F 9.4% A47K 13% E03C 13%
E01D 6.4% E21D 7.0% E04H 5.4% E04G 8.8% E04G 8.4% E02D 5.4% E02D 5.2% E03C 9.7% H01L 4.6%
E04B 6.4% E04H 5.0% E21D 5.3% E04H 5.0% F24F 6.7% H02J 4.7% E06B 4.4% E04B 3.8% H01M 2.7%
E04H 3.8% E01D 3.6% G06Q 4.5% G01N 3.7% G06Q 3.7% F24F 4.6% E04G 4.0% A47B 3.1% A47B 2.1%
E02B 3.3% G06Q 3.4% F24F 3.9% E01D 2.3% G06F 2.7% G06Q 4.6% E04D 3.6% E05B 2.8% C04B 1.7%
G01N 2.9% C04B 3.1% G01N 3.5% C04B 1.9% E04F 2.2% E04F 4.0% G06Q 3.0% E04H 2.6% E04F 1.7%
C04B 2.3% G01N 2.5% F16F 2.9% G01C 1.9% F16F 2.1% G06F 2.4% G06F 2.7% E04F 1.9% G01N 1.3%
B09B 1.7% F16F 2.4% H02J 2.1% E04C 1.6% C04B 2.0% A01G 2.2% G09B 1.7% E05D 1.9% H04Q 1.3%

 

 次に、表2からわかる特徴を解説します(6.3.1~6.3.4)。

 

6.3.1 建設業界の共通点と相違点:鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店

■共通点(建築技術の基盤、DXシフト)

 5社すべてにおいて建築・土木技術の根幹となるコードが上位を占めています。

基礎的な建築・土木構造(E02D, E04B, E04G)

 基礎工事(E02D)や建物の一般的構造(E04B)、作業場・足場(E04G)といった現場施工に不可欠な基盤技術が全社に共通するコア領域となっています。

 

管理、ICT活用(G06Q)

 竹中工務店(G06Q:7位)や大林組(G06Q:7位)、清水建設(G06Q:6位)などに見られるように事務管理や施工管理のデジタル化(DX)への注力がうかがえます。

 

試験、測定技術(G01N)

 全社のトップ10にG01N(材料の調査・試験)が入っており、施工品質の管理や建物の維持管理診断、新材料の開発が共通課題であることがうかがえます。

 

■相違点

 得意とするであろう工事領域の差がみられます。

鹿島建設、大成建設

 この2社はE21D(トンネル、地下空洞)がトップ2にランクインしています。特に鹿島はE02Dと合わせて26%を超えており、大規模な土木事業や地下開発における技術集約が見てとれます。

 

大林組

 E04H(特殊工作物)やF16F(防振、減衰装置)がランクインしており、超高層ビルの制震技術やドーム、特殊建築物といった難易度の高い構造物への展開が推測されます。

 

清水建設

 トップ10にF24F(空気調和・換気)やH02J(給電・配電網)が入っている点が特徴的です。建物内の環境制御やスマートビルディング、エネルギーマネジメントへの注力がうかがえます。

 

竹中工務店

 他4社と異なり、土木関連(E21Dなど)がトップ10に入っていません。その分、E04B(建物の一般的構造)が25%と極めて高く、純粋な建築領域、特にオフィスビルや大規模建築の構造技術を突き詰める専門特化型であると言えそうです。

 

 各企業の発明に関する詳細分析記事:建設業界

 

6.3.2 戸建住宅業界の共通点と相違点:大和ハウス、積水ハウス

■共通点(家の機能と品質への注力)

 居住空間としての完成度を高める領域にリソースを割いています。

建築構造の基盤(E04B, E04H, E02D)

 E04B(建物の一般的構造)が両社ともに1位(約24%)を占めており、プレハブ工法や木造・鉄骨造といった独自の住宅構造が開発の主軸である点は共通しています。

 また、特殊建築物(E04H)や基礎(E02D)も上位にランクインしています。

 

内装・仕上げ技術(E04F)

 ゼネコン5社ではトップ10に入りにくかったE04F(建物の仕上げ仕事:壁、床、階段など)が両社ともに上位に入っています。居住性や意匠性、メンテナンス性へのこだわりがうかがえます。

 

管理・IT活用(G06Q, G06F)

 BIM(Building Information Modeling)の活用や施工管理システムあるいは住宅販売、顧客管理に関連するICT領域(G06Q, G06F)への注力がうかがえます。

 

■相違点

 大和ハウスは多角化、積水ハウスは住生活特化の傾向です。

大和ハウス

 H02J(給電・配電網)が5位にランクインしている点が特徴的です。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の先にある街全体のエネルギーマネジメントやV2H(Vehicle to Home)などの電力制御技術への注力が推測されます。

 F24F(空調)や10位のA01G(園芸、栽培)から、戸建住居にとどまらず商業施設や物流施設、農業(植物工場など)といった事業展開に向けた開発の広がりがうかがえます。

 

積水ハウス

 E06B(固定された建具:窓、ドア)が5位に入っており、開口部の断熱性能や防犯性能といった機能追求が見て取れます。

 E04D(屋根被覆)がランクインしている点も住宅の外観デザインと防水、耐久性能の両立へのこだわりがうかがえます。

 

 各企業の発明に関する詳細分析記事:戸建住宅業界

 

6.3.3 住宅設備業界の共通点と相違点:LIXIL、TOTO

■共通点(水回りと衛生技術)

 トイレや浴室といった水回りに関連する技術が研究開発の柱と言えそうです。

衛生設備と便器技術(E03D, A47K)

 E03D(便器およびその付属品)とA47K(衛生用具、浴室設備)が両社ともにトップ3に入っています。特にTOTOはこの2分野で全体の約54%を占めており、水回り領域への極めて高い集中度が見て取れます。

 

給排水システム(E03C)

 建物内の水利用を支える給水設備(E03C)も両社共通の上位分野です。節水技術や配管施工の効率化が共通の課題であることが推測されます。

 

住設・家具関連(A47B)

 棚や収納などの家具類(A47B)もランクインしており、空間全体のパッケージ提案や使い勝手の向上に向けた開発が推測されます。

 

■相違点

 住宅部品全般をカバーするLIXIL、素材技術を深掘りするTOTOの違いがみえます。

LIXIL

 E06B(窓、ドア、建具)が22%で1位である点が最大の特徴です。水回りに加え、開口部という住宅の構成要素への注力がうかがえます。

 E05B(錠、鍵)、E05D(ドア等の支持手段)がトップ10に入っており、セキュリティや建具の可動部といったメカニカルな部品開発にも注力していることがうかがえます。

 

TOTO

 H01L(半導体)が4位、H01M(電池材料)が5位にランクインしており、セラミックス技術を半導体製造装置用部品や次世代電池などのハイテク産業へ転換していることがみてとれます。

 C04B(陶磁器、耐火物)も入っており、素材そのものの研究開発にリソースを割いていることが推測されます。

 

 各企業の発明に関する詳細分析記事:住宅設備業界

 

6.3.4 建築関係の3業界の共通点と相違点

■共通点(建物を構築・維持するための基盤技術)

建物の一般的構造(E04B)

 いずれの業界においても、E04B(一般的構造)主要な位置を占めています(TOTO除く)。建物の堅牢性や耐久性に関する基盤技術が普遍的であることを示しています。

 

■相違点

建設業界

 他業界に比べ、トンネル(E21D)や橋梁(E01D)等の大規模土木技術と現場施工(E04G)の自動化・管理技術(G06Q)にリソースを集中させています。
 巨大インフラを対象とした構造設計やICTを活用した建設現場の効率化などを追求する開発環境が推測されます。

 

戸建住宅業界

 他業界では優先度の低い内装仕上げ(E04F)や窓、ドア(E06B)に加え、街区単位の配電、給電(H02J)といった住生活に密着した技術が上位を占めます。
 エンドユーザーの快適性やデザイン性の追求やエネルギーマネジメントが主戦場となり得る開発環境が推測されます。

 

住宅設備業界

 建物構造ではなく、便器(E03D)や浴室(A47K)といった特定製品の機能と、それを支える半導体・電池材料(H01L, H01M)などの素材技術に特化しています。
 建築現場の制約から離れ、工場生産品としてのプロダクト開発やセラミックス等の知見をハイテク分野へ応用する開発環境が推測されます。

 

 以上、統計的な情報からは業界間の共通点、相違点が見えてきました。

 

6.3.5 建築関係の3業界の共通点と相違点(まとめ)

 上記情報を鑑みつつ、各業界の研究開発職の共通点・相違点のうち、優先度が高いと考えられるものをまとめました。

 あくまで一例です。

<表3> 推測される研究開発職の共通点・相違点の一例

  業界共通的な専門分野 建築業界が重視 戸建住宅業界が重視 住宅設備業界が重視
専門分野の例 ・機械工学
・電気工学
・土木工学
・材料工学(コンクリート)
・建築学(構造、意匠)
・環境工学(断熱、省エネ)
・化学工学表面処理、素材)
・流体工学(水力・熱管理)
業務内容の例 ・脱炭素化技術の開発
・施工の省人化、DX
・大規模構造物の施工法
・建設用ロボットの開発
・耐震、免震構造の開発
・ZEH(省エネ)住宅設計
・防汚、抗菌素材の表面加工
・水まわりの節水、流体制御
特徴的なFI ・E04B(建物構造一般)
・G06Q(事務、管理)
・E02D(基礎工事)
・E04G(足場・型枠)
・E04H(特定の建物)
・F24F(空調・換気)
・A47K(衛生設備)
・E03C(給排水設備)

 

7.最後に

 本記事では10年間の特許情報から建築物に関係する分野の技術ポートフォリオと研究開発職の相違を分析しました。

 これらの相違は、エンジニアのキャリアを左右する重要事項になるかもしれません。

 本記事を通して建築物に関係する分野における各業界の内側を想像する一助となれば幸いです。

 

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<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年、2026年版 東洋経済新報社

<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許情報を独自に分析したものです。
・本サイトでは、特許情報を正確かつ最新の状態でお伝えするよう努めていますが、情報の完全性を保証するものではありません。
・特許情報のご活用や解釈は読者ご自身の責任でお願いいたします。
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