新しい味付けやメニューを考案する商品開発のイメージが強いかもしれませんが、近年では、持続可能な食糧供給を実現する代替タンパク質(培養肉・植物肉)や個々の体質に合わせたパーソナライズ・フード、AIを用いた異物混入検知や賞味期限延長のための包装技術など技術範囲は多岐にわたります。
製品としては身近ですが、実際にどのような研究開発がおこなわれ、どのような専門性が求められるのか、その全体像を把握するのは容易ではありません。
この問題に対し、特許情報を活用します。
特許情報は企業の開発の軌跡であり、客観的なエビデンスになり得る情報です。
本記事では、採用サイトとは別の視点で、味の素、キューピー、キッコーマン、ハウス食品、ミツカン、カゴメ、ヱスビー食品、永谷園の研究・開発職ニーズと関連する専門性を特許情報から解読します。
結論(概要)は以下の通りです。
・食品分野(食品科学、食品工学など)
・化学分野(化学工学、応用化学、その他)、農学分野、薬学分野
・機械分野(機械工学など)
・その他(情報、デザインなど)
1 業界サーチの概要
業界サーチは、業界における主要企業の特許情報から、その業界の企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。
特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。
すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。
2 食品業界
2.1 食品業界とは
2.2 サーチ対象
以下の調味料、加工食品メーカーを対象にしました。
(2)キューピー
(3)キッコーマン
(4)ハウス食品グループ本社(ハウス食品)
(5)Mizkan Holdings(ミツカン)
(6)カゴメ
(7)ヱスビー食品
(8)永谷園HD(永谷園)
以下、上記括弧書があるものは、その中の略語で記します。
2.3 使用プラットフォーム
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
3 サーチ結果
3.1 結果概要
調味料、加工食品メーカー社の開発イメージは下表のとおりです。
|
モノの開発 |
サービスの開発 |
|
|
個人向け |
・食品、調味料 |
・栄養改善サービス |
|
法人向け |
・包装材 |
・食品の冷凍方法 |
モノの開発としては、例えば、調味料などの加工食品そのものが挙げられます。
サービスの開発としては、例えば、栄養改善を促すサービスなどが挙げられます。
モノの開発が同時にサービスの開発になっている場合が多いです。
また、企業によっては、半導体の部品など他分野の開発も一部おこなわれています。
3.2 出願件数の推移
下図は加工食品メーカー8社の特許出願件数の推移です。

味の素が毎年100件以上、それ以外は数十件という出願ペースです。
出願件数に差はありますが、いずれの企業も特許出願につながる開発が継続的におこなわれていることが推測されます。
3.3 開発の活発度
特許出願件数≒開発の活発度、だと考えるなら、業界において最も開発が活発なのは味の素だと言えます。
2000年代から2010年代の半ばまでの出願件数では、キューピーが味の素の次に多く、開発の活発さがうかがえます。
その他の企業も毎年一定数、出願していることから、常に開発活動がおこなわれていることが推測されます。
3.4 主な開発分野
各社ごとに特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。
各社の出願上位3つの技術分野を抽出して並べています(特許出願されていても、その企業の出願件数上位に入っていない技術分野は除外されています)。
各記号は発明の技術分類をあらわします。

分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)
特定の分野に開発が集中していることがうかがえます。
特にA23Lに集中しています。
遺伝子組み換え技術を用いて植物の性質を改変したり、植物の細胞や組織から新しい個体を育成する技術などがこれに該当します。
カゴメから多く出願されています。
冷蔵、冷凍、乾燥、塩漬け、燻製、缶詰など食品を腐敗や変質から守るための様々な方法や食肉のスモーク加工、果物の乾燥、野菜の漬物など食品の風味や食感を変えるための加工方法などがこれに該当します。
永谷園から多く出願されています。
チョコレートや菓子などの製造方法や製造装置などがこれに該当します。
ハウス食品から多く出願されています。
食品の調理方法や混合、加工など食品を加工する方法、冷蔵、冷凍、乾燥、真空パックなど食品を保存する方法、食品の栄養改善、食品の形状や構造を変化させるための物理的な処理がこれに該当します。
業界的に多く出願されていて、特に多いのがキューピー、味の素です。
医薬品を錠剤、カプセルなどの形態にする技術、化粧品をクリーム、ローションなどの形態にする技術などがこれに該当します。
味の素、キューピー、カゴメ、ヱスビー食品から多く出願されています。
ビンや缶などの容器の構造や形状、プラスチック、紙、金属などの包装材料、製品を容器に詰める方法などがこれに該当します。
業界的に多く出願されている分野です。
酢の製造方法、酢の精製方法、食品添加物としての酢の利用などがこれに該当します。
ミツカンから多く出願されています。
微生物の培養、遺伝子操作、酵素の開発、遺伝子組み換え作物などがこれに該当します。
味の素、キッコーマンから多く出願されています。
3.5 大手加工食品8社の近年の開発トレンドと求められる専門の例
特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。
ここ10年のトレンドは以下のとおりです。
発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。
出願件数が少ない技術分野は除外しています。
発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。
関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。
特許は難解ですが、GeminiやChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください(超便利!)。
(1)味の素|開発トレンドと専門性

直近ではC08Lが伸びています。その他としてA23L、C08Gが続きます。
具体例として樹脂組成物が挙げられます。
従来の樹脂組成物では高温下での誘電特性の悪化や製造過程でのクラック発生といった問題がありました。
これに対して、液晶性を有する有機充填材、エポキシ樹脂、活性エステル化合物を組み合わせることで誘電特性の改善とクラック耐性を向上させた樹脂組成物が開発されています(以下URL)。
液晶性を有する有機充填材を組み合わせた樹脂組成物→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-058172/11/ja
当該分野から類似の特許が大量に出されています。
これらは半導体プロセスなどへの適用を目的とした特許であり、食品製造で培った高分子材料に関する技術を電子材料分野に応用した例だと言えそうです。
具体例として焼き餃子用の組成物が挙げられます。
従来の焼き餃子では羽根の広がりや食感を向上させることが課題でありました。
これに対して、リン酸架橋うるち米澱粉や酢酸うるち米澱粉といった特定の澱粉を使用することで羽根の広がりを良くし焼き面の食感を向上させた焼き餃子羽組成用組成物が開発されています(以下URL)。
焼き餃子用の組成物→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7215618/15/ja
具体例として樹脂組成物が挙げられます。
従来のプリント配線板では高温高湿環境下での絶縁層の密着性が課題でありました。
これに対し、特定の種類のマレイミド化合物を使用することで高温高湿環境下でも導体層との密着性を維持する樹脂組成物が開発されています(以下URL)。
樹脂組成物→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-067987/11/ja
(2)キューピー|開発トレンドと専門性

出願件数はA23Lが最も多いです。直近で増減が大きな分類は見当たりませんが、上図期間中のトータル出願件数では他にC12N、B65Dが多いです。
具体例として植物由来の液卵代替品が挙げられます。
従来の植物性液卵は植物特有の味が強かったり卵のような凝固性が得られないという課題がありました。
これに対し、特定の種類の植物性タンパク質とカルシウムを特定の割合で配合して卵のような風味と食感を持つようにした液卵代替品が開発されています(以下URL)。
植物由来の液卵代替品→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7378193/15/ja
具体例として、さまざまな病気の予防や治療に有用なマイクロRNAの働きを活発にする薬や食品が挙げれます。
プテロスチルベンという成分によって特定のマイクロRNAの働きを促すマイクロRNAの発現亢進剤が開発されています(以下URL)。
マイクロRNAの発現亢進剤→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-143030/11/ja
具体例として容器に装着される熱収縮性フィルムが挙げられます。
従来の熱収縮性フィルムは容器の開栓時に空回りするという問題がありました。
これに対し、フィルムの特定の領域に滑り止め領域を設けることで製造コストを上げることなく空回りを抑制した熱収縮性フィルムが開発されています(以下URL)。
容器に装着される熱収縮性フィルム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-182959/11/ja
(3)キッコーマン|開発トレンドと専門性

出願件数はA23Lが最も多いです。
また、上図期間中のトータル出願件数では他にC12N、B65Dが多いです。
具体例として粉末醤油が挙げられます。
従来の粉末醤油は加熱や湿気によって固まりやすいという問題がありました。
これに対し、醤油粕を配合し粒子のアスペクト比を特定の範囲に調整することで問題を解決した粉末醤油が開発されています(以下URL)。
粉末醤油→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-175473/11/ja
具体例としてイソプレノイド(生物が作り出す多様な有機化合物の総称)の一種であるアスコフラノンやアスコクロリンを効率的に生産する方法が挙げられます。
従来の特定の菌を培養することで得られるイソプレノイドは収率が低く安定的な生産が困難でした。
これに対し、イソプレノイドの生合成に関わる特定の遺伝子を欠損させることで目的とするイソプレノイドの生産性を向上させる方法が開発されています(以下URL)。
イソプレノイドの生産性を向上させる方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-030077/11/ja
具体例として包装材料が挙げられます。
従来の包装材料は内容物が付着しやすく全量を取り出すことが難しかったり経時的に付着防止効果が低下するなどの問題がありました。
これに対し、特定の凹凸構造を持つ下地層と疎水性微粒子を含む機能層を組み合わせることで機能層の撥水性により付着を防止する包装材料が開発されています(以下URL)。
包装材料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-157535/11/ja
(4)ハウス食品|開発トレンドと専門性

出願件数はA23Lが最も多いです。
また、上図期間中のトータル出願件数では他にA61K、B65Dが多いです。
具体例として呈味増強用組成物が挙げられます。
従来は食品の塩味を増強するために様々なスパイスが使われてきたました。
これに対し、加熱処理したクミンを含有することで食品の旨味を際立たせ塩味を控えめにしても満足のいく味にする組成物が開発されています(以下URL)。
呈味増強用組成物→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7498381/15/ja
具体例として糖化反応を抑制する組成物が挙げられます。
クローブ、桂皮、スターアニスなど特定のスパイスを組み合わせることで糖化反応を抑制する効果を高め、老化や疾患の予防に役立てる組成物が開発されています(以下URL)。
糖化反応を抑制する組成物→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-023147/11/ja
具体例として包装袋が挙げられます。
従来の包装袋は開封しにくかったり内容物を容器に移す際にこぼれる問題がありました。
これに対し、包装袋の上縁に特殊な形状のシール部と弱化線を設けることでこれらの問題を解決した包装袋が開発されています(以下URL)。
包装袋→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-104879/11/ja
(5)ミツカン|開発トレンドと専門性

出願件数はA23Lが最も多いです。
また、上図期間中のトータル出願件数では他にB65D、A23Dが多いです。
具体例として液体調味料が挙げられます。
従来の胡麻風味調味料では胡麻そのものの風味を強く出すために胡麻の使用量を増やす必要がありました。
これに対し、2-ヘプタノンとメチオナールの特定の組み合わせによって胡麻の風味を強化した液体調味料が開発されています(以下URL)。
液体調味料→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7217909/15/ja
具体例として包装袋が挙げられます。
従来の包装袋は開封するために熱溶着部分を切り取る必要があり手間がかかっていました。
これに対し、封止部分の厚みを場所によって変えることで簡単に開封できる構造にした包装袋が開発されています(以下URL)。
包装袋→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2017-218210/11/ja
具体例として調味オイルが挙げられます。
従来は魚介類の風味を出すには実際に魚介類を焼いたり煮たりする必要がありました。
これに対し、2-メチルブタナールや2-エチルフランなどの特定の香気成分を組み合わせること魚介風味を食品に付与する調味オイルが開発されています(以下URL)。
調味オイル→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-033178/11/ja
(6)カゴメ|開発トレンドと専門性

出願件数はA23Lが最も多いです。
また、上図期間中のトータル出願件数では他にA61K、G16Hが多いです。
具体例として、トマト加工品の製造方法が挙げられます。
従来のトマトのうま味成分であるイノシン酸を増やすためのデアミナーゼ酵素を用いる方法ではトマトの風味を損なうという問題がありました。
これに対し、トマト原料にデアミナーゼ酵素を添加して最適な温度で一定時間反応させることでイノシン酸を生成することで風味の劣化を抑制したトマト加工品の製造方法が挙げられます(以下URL)。
トマト加工品の製造方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-073915/11/ja
具体例として組成物が挙げられます。
従来から野菜の摂取が血糖値上昇を抑制する効果があることが報告されていました。
これに対し、トマトまたは柑橘由来の食物繊維を有効成分として含有させることで、摂取後の細胞へのグルコースの取り込みを抑制して血糖値の上昇を抑制する血糖値上昇抑制組成物が開発されています(以下URL)。
血糖値上昇抑制組成物→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-167281/11/ja
具体例として野菜摂取量の改善を促すシステムが挙げられます。
従来は野菜不足を自覚しにくく摂取量を把握することが困難でした。
これに対し、皮膚のカロテノイドレベルを測定することで非侵襲的に野菜摂取量を推定し、不足している栄養素を可視化する野菜摂取量改善システムが開発されています(以下URL)。
野菜摂取量の改善を促すシステム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-062278/11/ja
(7)ヱスビー食品|開発トレンドと専門性

出願件数はA23Lが最も多いです。
また、上図期間中のトータル出願件数では他にA61K、B65Dが多いです。
具体例として混合半乾燥食品を製造する方法が挙げられます。
従来の半乾燥食品の製造方法は生鮮食品を直接半乾燥化するため品質保持期間が短く生産計画が立てづらいという課題がありました。
これに対し、混合する乾燥食品の種類や割合によって最終製品の食感や風味を調整し、混合した乾燥食品に適切な量の水分を添加することで生鮮食品のような食感を実現する製造方法が開発されています(以下URL)。
混合半乾燥食品を製造する方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-139544/11/ja
具体例として抗肥満剤が挙げられます。
従来の肥満の治療には食事療法や運動療法や副作用のある薬剤や効果が不十分な植物抽出物が試されてきました。
これに対し、抗肥満作用を有するバジルやコリアンダーの粉末、抽出物を用いた抗肥満剤が開発されています(以下URL)。
抗肥満剤→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2019-151580/11/ja
具体例として凍食品の品質を向上させるため製造方法が挙げられます。
従来の冷凍食品は加熱調理後に冷凍されるため解凍時に再度加熱することで品質が劣化し風味のばらつきが生じるという問題がありました。
これに対し、油脂とα化(糊化)前の澱粉を含む第一の凍結組成物と低耐熱性素材を含む第二の凍結組成物を互いに混ざり合うように配置することで加熱時に熱が均一に伝わるようにし、澱粉がα化し始める温度を制御することで食品の品質劣化を抑制し風味のばらつきを抑えた製造方法が開発されています(以下URL)。
凍食品の品質を向上させるため製造方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2019-149943/11/ja
(8)永谷園|開発トレンドと専門性

出願件数はA23Lが最も多いです。
その他は上図期間中のトータル出願件数ではいずれも1件です。
具体例として乾燥野菜の製造方法が挙げられます。
従来の乾燥野菜は復元に時間がかかったり元の野菜の食感が損なわれていました。
これに対し、野菜を糖アルコールを含む加温された水溶液に浸しその後乾燥させることで問題を解決した乾燥野菜の製造方法が開発されています(以下URL)。
乾燥野菜の製造方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-162440/11/ja
(8)まとめ
各社とも加工食品、調味料そのものやそれらの製造方法に関する特許が多くを占めています。
一方、味の素では半導体材料の特許も多く既存分野の技術を他分野に展開していることがうかがえます。
また、これらの開発は自社や自社グループ内だけでの出願が多く、開発が自社(自社グループ)内で完結している(あまり外部に依存していない)ことが多いと言えます。
3.6 共同出願人との開発例
共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。
今回の対象企業は共同出願の割合は多くはなく開発を自社完結させている場合が多いと予想されますが、技術によっては開発をアウトソーシングしている可能性もあります。
各社の共同出願人(筆頭出願人)は以下のとおりです。
共同出願人が筆頭出願人(願書の【出願人】の欄の一番上に記載された出願人)になっているものをカウントしました。
また、グループ企業や現存しない企業については、共同出願人としてのカウントから除外している場合があります。
(1)味の素

出願件数トップの共同出願人はフジシールインターナショナル、三菱化学です。
従来の遮光カバーが視認窓が小さく輸液量の確認が困難であったり窓部からの光線侵入による輸液の変質がありました。
これに対し、朱色と黄色のインキを組み合わせた着色層と紫外線を吸収・遮断する処理を施すことでこれらの問題を解決した輸液容器用遮光カバーが開発されています(以下URL)。
ただし、当該企業との共同出願が確認されたのは2000年代前半までです。
輸液容器用遮光カバー→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2006-271761/11/ja
従来の非アミノ有機酸の生産に用いられてきた嫌気性細菌には高コストな培地が必要でした。
これに対し、より効率的に非アミノ有機酸を生産できるシトレートシンターゼの活性を増強させた細菌が開発されています(以下URL)。
ただし、当該企業との共同出願が確認されたのは2000年代までです。
非アミノ有機酸を生産するための細菌→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2008-067627/11/ja
従来の位置検出システムでは複数の移動体が近接した場合に誤検出が発生していました。
これに対し、ICタグの間隔を広げて2つのリーダで読み取ったIDの組み合わせによって位置と方向を特定することにより問題を解決した位置検出システムが開発されています(以下URL)。
ただし、当該企業との共同出願が確認されたのは2000年代までです。
位置検出システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2007-057969/19/ja
(2)キューピー

共同出願の例としてゲル化物の素とそれを用いた食品が挙げられます。
従来のアルギン酸塩を用いたゲル化食品で即時調理が前提で長期間の保存が難しいという問題がありました。
これに対し、アルギン酸塩、食用油脂、乳化剤、水分を特定の割合で混合することで長期間保存してもゲル化機能を維持できるゲル化物の素が開発されています(以下URL)。
ゲル化物の素とそれを用いた食品→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-056154/11/ja
従来のキャップでは絞り出し口の形状が鋭角であったためペーストがスムーズに出ず目詰まりを起こしやすいという問題がありました。
これに対し、天板に円錐状の凸部を作り頂点に開口する孔と孔の周縁から放射状に切り込まれたスリットを設けることで星形の断面を持つペーストをスムーズに絞り出すことを可能にした絞り出し容器用キャップが開発されています(以下URL)。
容器用キャップ→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2005-096776/11/ja
従来のヒンジキャップでは容器を振とうした際に液体がキャップ内部に飛散してヒンジ部分などが汚れていました。
これに対し、上蓋の内側に非反転性の突部を設けることで上蓋内の空間を制限して液体の飛散量を抑制したヒンジキャップが開発されています(以下URL)。
ヒンジキャップ→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2016-097990/11/ja
(3)キッコーマン

従来使用していた酵素では生産性に課題がありました。
これに対し、特定の塩基配列(配列番号1)を持つ遺伝子を麹菌を持つゲノムに導入することにより麹菌の蛋白質分解酵素の分泌量を増やした蛋白質分解酵素の生産方法が開発されています(以下URL)。
遺伝子組換え技術→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2011-092204/11/ja
従来のスフィンゴ糖脂質は水中では沈殿しやすく安定な乳化状態を得ることが困難でした。
これに対し、スフィンゴ糖脂質を含む粒子を100nm以下の非常に小さなサイズに分散させることで透明度を向上させた乳化組成物が開発されています(以下URL)。
肌質改善用組成物→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2017-214323/11/ja
(4)ハウス食品

共同出願の例として二日酔い抑制効果などがあるビサクロンをウコンから抽出する方法が挙げられます。
従来はビサクロンを高濃度に精製するには高価なカラム操作が必要でした。
これに対し、親水性有機溶媒と水を組み合わせた多段階の抽出操作によりビサクロンを選択的に抽出する方法が開発されています(以下URL)。
ビサクロンを選択的に抽出する方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2018-086003/11/ja
従来の包装箱は多層構造にすると積み重ねた際に傾いてしまうという問題がありました。
これに対し、シート状材料を折り畳み特定のパネルの幅を調整することで積み重ねた際に各箱の厚みが均一にして安定して積み重ねることができる包装箱が開発されています(以下URL)。
包装箱→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2013-112402/11/ja
従来のパウチは形状を保持しにくく片手で持ちにくかったり中身を最後まで出しにくかったりといった問題がありました。
これに対し、パウチを筒状のスリーブに収納する構造にすることで自立性や持ち運びやすさが向上させた包装容器が開発されています(以下URL)。
包装容器→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2010-241447/11/ja
(5)ミツカン

共同出願の例として泡出しキャップが挙げられます。
従来の泡出しキャップは中身を泡にするために複雑な構造や長いチューブが必要で容器への取り付けが難しかったり泡立ちが弱かったりといった問題がありました。
これに対し、筒状の本体内に空気管を設けてスクイズによって生じる圧力で空気を内容液と混合し微細な泡を生成する構造にして効率的に泡状の内容物を噴出できる泡出しキャップが開発されています(以下URL)。
泡出しキャップ→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2015-129004/11/ja
(6)カゴメ

上図期間中、4社との出願がそれぞれ1件あります。
以下、1社の例を挙げます。
従来の装置ではパルプが送出孔に詰まりやすく装置の停止や清掃が必要になるという問題がありました。
これに対し、液体食品が対流を起こしてパルプが送出孔に詰まるのを防ぐことができるよう貯留送出部に錐形の突部を設けた殺菌装置が開発されています(以下URL)。
殺菌装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2012-147686/11/ja
(7)ヱスビー食品

共同出願の例として容器が挙げられます。
従来の容器では開封時に剥がすシール材が開封後は廃棄されるので、開封後の気密性に影響を与えていました。
これに対し、容器の口部に金属層を設けてその上に融点が低い樹脂製の口部対向層を溶着させることで開封時には樹脂層が剥がれて開封感を与えつつ、開封後も金属層が気密性を保つ容器が開発されています(以下URL)。
気密性を保つ容器→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-027493/11/ja

以下、1社の例を挙げます。
従来の大麦若葉の乾燥方法は栄養成分が細胞壁に閉じ込められてしまい水に溶け出しにくいという問題がありました。
これに対し、大麦若葉を蒸気で加熱して複数の揉捻工程を経ることで細胞壁を破壊し栄養成分の溶出性を高めた乾燥大麦若葉の製造方法が開発されています(以下URL)。
乾燥大麦若葉の製造方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2016-010391/11/ja
(9)上記(1)~(8)(共同出願人)のまとめ
それぞれ年間の出願件数で見ると多いもので1件/年です。
食品容器のキャップなど食品とは直接関係ないものについては外部技術を活用することがあると予測されます。
4 加工食品関連の開発に求められる専門性
上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。
上記3で多かった専門分野は以下のとおりです(上から多い順)。
・食品分野(食品科学、食品工学など)
・化学分野(化学工学、応用化学、その他)、農学分野、薬学分野
・機械分野(機械工学など)
・その他(情報、デザインなど)
ただし、これらの専門は表現上のものであり、境界があいまいな場合も多く、単純に大学の専攻名と結びつけられるものではないです(上記3の具体例などから判断する必要があります)。
また、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。
5 まとめ
食品加工メーカーの特許出願は特定の分野(例えばA23L)に集中しており、当該分野の開発が多くおこなわれていることが推測されます。
また、電子部品(半導体分野)に関わる特許出願がなされているなど、一部、多角的化もうかがえます。
大学の専攻と関連づけるとしたら、化学、農学、薬学、機械の研究が該当する可能性があります(食品に直接関係する専攻はメジャーではないですが、食品科学とか食品生命といった名称の学科がそれに該当する可能性あります)。
本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。
参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4
以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
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<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年版 東洋経済新報社
<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許情報を独自に分析したものです。
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