一般的にゲーム開発といえばヒット作を生み出すシナリオやデザインといったクリエイティブな側面が想起されますが、キャラクターの挙動を制御するアルゴリズムや革新的なユーザーインターフェース、ネットワークを介した同期技術など、さまざまな技術が用いられています。
近年では、フォトリアルな描画を実現するレイトレーシング技術や物理演算を用いたリアリティの追求、クラウドゲーミングを支える通信最適化、VR/ARによる没入体験の創出など、多角的な専門性が求められています。
しかし、実際にどのような研究開発がおこなわれているのか、どのような専門性が求められるのか、その全貌を把握するのは容易ではありません。
この問題に対し、特許情報を活用します。
特許情報は企業の開発の軌跡であり、客観的なエビデンスになり得る情報です。
本記事では、採用サイトとは別の視点で、任天堂、スクウェア・エニックス、バンダイナムコ、コナミ、コーエーテクモ、カプコン、グリーの研究・開発職ニーズと関連する専門性を特許情報から解読します。
結論(概要)は以下の通りです。
・情報系(情報学、情報科学など)、数理系(数学、物理学など)の分野
・デザイン系の分野(デザイン学など)
・その他(心理系、商学、経営学など)
1 業界サーチの概要
業界サーチは、業界における主要企業の特許情報から、その業界の企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。
特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。
すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。
2 ゲーム業界
2.1 ゲーム業界とは
ここでは各種ゲームの開発、販売をおこなう業界を意図します。
ハードウェア、ソフトウェアの区別、家庭用ゲーム機、スマホゲームの区別、コンピュータゲーム、玩具、パチスロの区別については厳密におこなっていません。
2.2 サーチ対象
以下の7社を対象にしました。
(2)スクウェア・エニックス・ホールディングス(スクエニ)
(3)バンダイナムコホールディングス(バンナム)
(4)コナミグループ(コナミ)
(5)コーエーテクモホールディングス(コーエーテクモ)
(6)カプコン
(7)グリー
バンダイナムコホールディングスについてはバンダイナムコエンターテインメント、バンダイナムコゲームス、バンダイ、バンダイナムコアミューズメント、バンダイナムコオンラインの情報を、コナミグループについてコナミデジタルエンタテインメント、コナミアミューズメントの情報を対象にしました。
以下、上記括弧書があるものは、その中の略語で記します。
2.3 使用プラットフォーム
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
3 サーチ結果
3.1 結果概要
開発イメージ(例)は下図のとおりです。
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モノの開発 |
サービスの開発 |
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個人向け |
・ゲーム関連のプログラム |
・課金決済手段選択サービス |
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法人向け |
・スロットマシン |
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モノの開発としては、例えば、レースゲームで異なるコースを選択できるようにするプログラムやゲームキャラクタのパラメータ変化によって戦略的に楽しめるようするプログラムなどゲームに関わるプログラムが挙げられます。
サービスの開発としては、例えば、ゲーム内課金の決算手段を選択できるようにするサービスなどが挙げられます。
モノの開発が同時にサービスの開発になっている場合が多いです。
最終消費者(個人ユーザー)に向けた開発が多くを占めています。
3.2 出願件数の推移
下図はゲーム7社の特許出願件数の推移です。

各社、毎年、一定件数特許出願していて、技術開発が継続しておこなわれていることが推測されます。
3.3 開発の活発度
特許出願件数≒開発の活発度、だと考えます。
2013年~2022年の10年間における平均出願件数にもとづくと、多い順から
バンナム>コナミ>グリー>カプコン>任天堂>スクエニ>コーエーテクモ
です。
ただし、作られたゲームタイトル数だけ特許出願されているわけではありません。
ここで言う開発とは新作ゲーム数のことではなく、特許出願につながるような開発のことです。
3.4 主な開発分野
各社ごとに特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。
各社の出願上位3つの技術分野を抽出して並べています(特許出願されていても、その企業の出願件数上位に入っていない技術分野は除外されています)。
各記号は発明の技術分類をあらわします。

分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)
特定の分野に開発が集中しています。
特にA63Fに集中しています。
テレビゲーム、携帯ゲーム、オンラインゲームなどのビデオゲームなどがこれに該当します。
全社この分野で多く出願しています。
こま、人形、フープまたは積木などがこれに該当します。
バンナムがこの分野で多く出願しています。
プログラム制御のための装置などがこれに該当します。
任天堂、コナミ、グリー、スクエニ、コーエーテクモがこの分野で多く出願しています。
eコマース、オンラインバンキングなどのビジネス方法などがこれに該当します。
コナミ、カプコンがこの分野で多く出願しています。
画像の強調、復元、分析、符号化、変換などなどがこれに該当します。
バンナム、任天堂、スクエニ、コーエーテクモ、カプコンがこの分野で多く出願しています。
受像機、表示装置、画像伝送システムなどがこれに該当します。
グリーがこの分野で多く出願しています。
3.5 ゲーム7社の近年の開発トレンドと求められる専門の例
特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。
ここ10年のトレンドは以下のとおりです。
発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。
出願件数が少ない技術分野は除外しています。
発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。
関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。
特許は難解ですが、GeminiやChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください(超便利!)。
(1)任天堂|開発トレンドと専門性

A63Fが最も多く、上図期間中、一定して出願されています。
次にG06Fが多く、その次がG06Tです。
具体例としてプレイヤーキャラクタがオブジェクトに隠れた際のシルエット表示を抑制するプログラムが挙げられます。
従来のプログラムでは、Zバッファ(奥行情報に関する領域)を用いてオブジェクトの隠蔽状態を判定しシルエットを表示していたが、処理が複雑になる可能性がありました。
これに対して、仮想カメラに対応する位置と複数の判定点を結ぶ線分がオブジェクトと衝突するか否かを判定し、その結果に基づいてシルエット表示を制御することでZバッファを用いる場合に比べて簡易な処理でシルエットの表示機会を抑制するプログラムが開発されています(以下URL)。
所定の線分とオブジェクトの関係からシルエット表示を抑制するプログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7371199/15/ja
関連する専門分野の例:情報学(オブジェクトなどの配置、動作設計、判定手段の実装)、情報理工学(判定制御アルゴリズムの設計)
従来のレースゲームではコースが単調な周回コースである場合に同じ経路を何度も走行するためゲーム展開に変化が乏しいという問題がありました。
これに対して、コースの分岐部分においてプレイヤー操作オブジェクトが進入可能な分岐先を当該オブジェクトのレースゲームにおける進行度合いに応じて切り替え、同一コースでもプレイヤーの進行度合いによって異なるルートを走行できるようにしてゲームの多様性を高めるプログラムが開発されています(以下URL)。
オブジェクトの進行ルート選択にバリエーションを持たせるゲームプログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-136345/11/ja
関連する専門分野の例:情報学(ゲームルールの設計)、情報理工学(進行度合いを判定するアルゴリズム設計)
具体例として慣性センサーを備える操作装置の情報処理プログラムが挙げられます。
従来の技術では慣性センサーの出力に基づいて振り操作を検出していましたが、判定精度に問題がありました。
これに対して、操作装置が振り状態であるか否か、どの方向に回転したか、上下どちらに振られたかを判定し、これらの組み合わせにもとづいて処理を実行することにより、振り操作の判定精度を向上させて多様な操作入力に対応する情報処理プログラムが挙げられます(以下URL)。
操作装置の情報処理プログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-160998/11/ja
具体例として仮想空間の画像表示処理に関する情報処理プログラムが挙げられます。
従来の技術では被写界深度に応じて画像をぼかす技術がありましたが、ぼかしをおこなう範囲を仮想カメラの状態に合わせて変更することができず視認性が悪くなることがありました。
これに対して、仮想カメラからの距離に応じたぼかしの強度で画像をぼかすとともに、ぼかし画像内の位置に応じてぼかしの強度を決定して仮想空間内の注目位置と仮想カメラとの距離および仮想カメラの撮影方向の少なくとも一方に応じてぼかし画像内の少なくとも一部の位置についてぼかしの強度を変更することで仮想カメラの状態に合わせて表示画像の視認性を向上させる情報処理プログラムが挙げられます(以下URL)。
表示画像の視認性向上プログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-143093/11/ja
(2)スクエニ|開発トレンドと専門性

A63Fが最も多く、2020年まで多く出願されています。
その他はG06T、G06Fが多いです。
具体例としてユーザの自由度を高めつつ満足度の高いコンテンツを提供するプログラムが挙げれます。
従来のアドベンチャーゲームのテキスト入力方式ではプログラマ想定の文字列と一致した場合のみストーリーが進行し、選択肢方式ではユーザの推理が反映されずユーザの満足度が低いという問題がありました。
これに対して、ユーザ入力情報が進行要素に対応する文字列と類似すると判定した場合にコンテンツを進行させることでユーザは完全一致の文字列を入力する必要がなくなって自由度が高まり、また、進行要素を変更する手段を備えることでユーザの入力に応じてストーリー展開を変化させることができるプログラムが開発されています(以下URL)。
ユーザ入力に応じストーリー展開を変化させるプログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7428775/15/ja
関連する専門分野の例:情報学(文字列の類似度を判定するアルゴリズム設計)、情報理工学(コンテンツ提供プログラムの全体設計)
具体例として拡張現実(AR)を用いたイベント提供プログラムが挙げられます。
従来技術として、ライブイベントとARを組み合わせる方法が記載されていたがAR表示と物販・サービス提供を組み合わせることは考慮されていませんでした。
これに対して、仮想オブジェクトをAR表示する機能、仮想オブジェクトを用いた表現を制御する機能、およびオブジェクト、イベント、表現に関係する商品・サービスの権限取得用情報を表示する機能により、AR表示によるイベント開催と関連商品・サービスの提供を同時にプログラムが開発されています(以下URL)。
AR表示によるイベント提供プログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-123652/11/ja
具体例として吹き出し生成プログラムが挙げられます。
従来のビデオゲームでは吹き出しの形状は予め用意された画像データ(アセット)に限定されていたため、表現の幅が狭くプレイヤーの興味を引くことが難しいという問題がありました。
これに対して、計算式に基づいて吹き出しの外観を生成することで多様で演出効果の高い吹き出しをゲーム画面に表示することを可能にしたプレイヤーのゲームに対する興味を向上させる吹き出し生成プログラムが開発されています(以下URL)。
吹き出し生成プログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-041095/11/ja
(3)バンナム|開発トレンドと専門性

上図期間中ではA63Fが最も多いです。
一方、A63Hの出願数が増加していて2022年にそれぞれの出願件数が逆転しています。
その他にはG06Qが多いです。
具体例として複数のユーザが参加するゲームイベントの進行を代表者ユーザがコントロールしやすくすることを目的としたゲームシステムが挙げられます。
従来のゲームイベントでは参加者同士が自由に対戦したりコンピュータが対戦相手を決定したりしていたため、主催者(代表者ユーザ)がイベントの進行を把握・管理しづらくイベントが盛り上がりに欠けるという問題がありました。
これに対して、代表者ユーザがイベントに参加する複数のユーザの中からゲームプレイをおこなうユーザを選択してプレイヤ組み合わせを設定し、イベント処理部が所定の条件が満たされた場合にこのプレイヤ組み合わせに基づいてイベントを開催することで、代表者ユーザはイベントの進行をコントロールしやすくなって意図した盛り上がりや見せ場を演出できるシステムが開発されています(以下URL)。
演出システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7592672/15/ja
関連する専門分野の例:情報学(イベント開催条件やプレイヤ組合せ設定などの機能の実装、ユーザーインターフェイスの設計)、経営学(イベント企画、コミュニティ活性化検討)
具体例として形態変化可能な玩具が挙げられます。
従来の玩具ではカプセル自体を玩具の部品として利用していましたが、カプセルの形状(球形)に玩具の形状が左右されてキャラクターのイメージを維持しにくい、展示状態が不安定などの課題がありました。
これに対して、主体部(第1部品と第2部品から構成)が外殻をなす第1形態、人形体の載置部を成す第2形態をとり、第2部品は左右対称の第1パーツ部と第2パーツ部と異なる形状の第3パーツ部から構成されることで、玩具の形状の自由度が高まり展示状態も安定する玩具が開発されています(以下URL)。
形態変化可能玩具→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7565979/15/ja
具体例として商品提供システムの決済と提供方法が挙げられます。
従来技術ではゲームカード(有体物)からキャラクター情報(無体物)を読み取りゲームを行う技術がありましたが、無体物と有体物を組み合わせた商品の提供方法は十分に検討されていませんでした。
これに対して、無体物である第1オブジェクトと有体物である第2オブジェクトの代価の決済完了を条件に第1オブジェクトをユーザに提供することでユーザ識別子と第1オブジェクトを関連付け、第1オブジェクトの利用によってこの関連付けが解除された場合に初めて第2オブジェクトの引渡手続きを実行することでユーザが両オブジェクトを確実に受け取り、提供者側も不正利用を防止できるオブジェクト提供システムが挙げられます(以下URL)。
商品提供システムの決済と提供方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7441254/15/ja
(4)コナミ|開発トレンドと専門性

A63Fが最も多く、上図期間中、一定して出願されています。
次にG06F、G06Qが続きます。
具体例としてゲーム進行に寄与する寄与キャラクタと交替要員である待機キャラクタを効率的に活用するゲームシステムが挙げられます。
従来のゲームでは待機キャラクタのパラメータは変化せず利用が促進されないという問題がありました。
これに対して、待機キャラクタのパラメータを所定の規則に従って更新される変動値にもとづいてゲーム進行に有利な内容に変更し、この変動値を所定のゲーム状況に基づいてリセットすることでプレイヤーが待機キャラクタを積極的に活用しゲームの戦略性が向上するゲームシステムが開発されています(以下URL)。
キャラクタ活用ゲームシステム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7486841/15/ja
関連する専門分野の例:情報学(寄与キャラクタなどのゲームシステム設計)、数理情報学(待機キャラクタのパラメータ設計、変動値の決定)
従来のスロットマシンでは有利区間の継続ゲーム数や獲得メダルの差枚数がリミット値を超えると有利区間が終了し非有利区間へ移行していたため、遊技者は有利区間中の大きな獲得を期待しホール側は過度の払い出しを抑制する目的でこのリミッタ機能が設けられていました。
これに対して、有利区間中に複数の指示状態を設けて各状態において異なる頻度で有利な情報を提供することにより、有利区間中の遊技の盛り上がりを維持して遊技者の満足度を高め、特定の条件を満たすと有利区間が終了する仕組みを設けてホール側の利益も確保するスロットマシンが開発されています(以下URL)。
スロットマシン→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7420409/15/ja
関連する専門分野の例:情報科学(遊戯者の期待値やホールの収益に関する確率論にもとづくシミュレーション)、経営学(スロットマシンの収益構造の分析と収益のバランス化検討)
具体例としてメッセージシステムが挙げられます。
従来の技術ではメッセージが時系列に表示されるもののメッセージ数が多い場合に自分宛のメッセージを特定しづらいという問題がありました。
これに対して、メッセージの宛先情報にもとづいて自分宛のメッセージとそれ以外のメッセージを異なる表示態様で表示することでユーザが自分に関係のあるメッセージを容易に特定することができるようにしたメッセージシステムが開発されています(以下URL)。
メッセージシステム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7398154/15/ja
具体例としてゲーム画面を広告素材として活用する広告配信システムが挙げられます。
従来のゲーム広告では広告素材の用意に手間がかかり古いゲーム画面が使われ続けたり最高のシーンを捉えられなかったりする問題がありました。
これに対して、複数のプレイヤーから提供されたゲーム画面の中から所定の選定基準にもとづいて一部のゲーム画面を選定し広告を生成するとともに、ゲーム画面を提供したプレイヤーに選定されたことなどを通知してプレイヤーの貢献意欲に応えゲーム画面の収集を促進する広告配信システムが開発されています(以下URL)。
ゲーム画面活用広告配信システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7569093/15/ja
(5)コーエーテクモ|開発トレンドと専門性

A63Fが最も多く出願されています。
G06T、G06Fが続きます。
具体例として対戦ゲームにおけるゲームキャラクターの演出に関するゲームプログラムが挙げられます。
従来のゲームでは仮想カメラはゲームキャラクターを追尾したり、予め定められた方向から撮影するように制御されていたため攻撃動作と連動したダイナミックなカメラワークによる演出が不足していました。
これに対して、攻撃動作開始前に攻撃が当たるか否か、相手を所定の状態にすることが可能か否かを判定し、可能な場合に仮想カメラを所定の位置・向きに連続的に移動させることでゲームキャラクターをより格好良く見せるゲームプログラムが開発されています(以下URL)。
ゲームキャラクター演出に関するゲームプログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7427710/15/ja
関連する専門分野の例:情報学(攻撃の成否判定などのロジックの実装)、映像学(格好よく見せるための映像演出の検討)
具体例として三次元仮想空間内で撮影された原画像をユーザーが望む絵柄や画風の二次元処理画像に変換する情報処理装置が挙げられます。
従来技術では3DCGで表現された画像をそのまま利用することが多く、ユーザーが求める特定の絵柄や画風に加工する手段が限られていました。
これに対して、原画像から線画領域を検出して設定情報(絵柄や画風のパラメータ)に基づいて線画を描画し色を塗り、原画像の撮影タイミングに応じてエフェクトを付加することでユーザーの意図に沿った多様な表現の処理画像を生成する情報処理装置が開発されています(以下URL)。
二次元処理画像に変換する情報処理装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7603461/15/ja
具体例としてタッチパネルを備えた情報処理装置におけるリスト表示技術が挙げられます。
従来のタッチパネル操作ではリスト項目をタップして選択する必要があり、指のサイズに合わせて項目幅を大きくする必要があったため、一度に表示できる項目数が限られていました。
これに対して、タッチパネル操作(スワイプ、フリック)に応じてカーソルとリストを相対的に移動させることで項目を選択し、リスト表示領域内ではカーソルのみを移動させ、範囲外ではカーソルを端部に固定したままリストをスクロールさせることにより項目幅を小さくすることで表示項目数を増やし、カーソル移動とリストスクロールをスムーズに連携させることで操作性を高めるユーザーインターフェース処理プログラムが開発されています(以下URL)。
ユーザーインターフェース処理プログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7196246/15/ja
(6)カプコン|開発トレンドと専門性

A63Fが最も多く出願されています。
G06Q、G06Tが続きます。
具体例としてゲームコンテンツの有効期間に応じてユーザーに有利な効果を発生させるゲーム媒体の価値を調整するゲームプログラムが挙げられます。
従来のゲームでは期間限定イベント終了とともにゲーム媒体の価値が失われイベント終盤ではユーザーの入手意欲が低下するという問題がありました。
これに対して、ゲーム媒体の対価を有効期間の残り期間に応じて調整、具体的には残り期間が少ないほど対価を低く設定することでイベント終盤でもユーザーのゲーム媒体入手意欲を維持するゲームプログラムが開発されています(以下URL)。
ゲーム媒体価値調整プログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7393718/15/ja
関連する専門分野の例:情報学(ゲーム内経済システムの設計)、経済学(ユーザー心理やゲーム媒体の価格分析)
具体例としてゲーム内課金決済の情報処理システムが挙げられます。
従来のゲーム課金では決済手段による差異は決済手数料程度であり、ユーザーは最も手軽な決済手段を選択しがちでしたた。
これに対して、ユーザーが選択した決済手段に応じてゲーム内で得られるアイテムのレアリティやゲーム進行を有利にする効果などを変化させユーザーが決済手段を選択する動機付けを得てゲームへの関与度を高める情報処理システムが開発されています(以下URL)。
ゲーム内課金決済の情報処理システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7368755/15/ja
具体例として仮想空間におけるアバターの表示態様を決定する情報処理システムが挙げられます。
従来技術ではアバターの表示は一律であり、仮想空間の多様性を十分に表現できていませんでした。
これに対して、領域ごとに異なる属性(例えば特定のアイテムと関連付けられている属性)を設定し、その属性に応じてアバターの表示を変化させることで、ユーザーの仮想空間への没入感を深めて豊かなゲーム体験を得ることができる情報処理システムが開発されています(以下URL)。
アバター表示態様決定システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7460922/15/ja
(7)グリー|開発トレンドと専門性

A63Fが最も多く出願されています。
G06F、H04Nが続きます。
具体例として動画を配信する情報処理システムが挙げられます。
従来の動画配信では視聴者は動画を視聴するのみで出演者とのインタラクションは限定的でした。
これに対して、視聴者が複数の出演者に関連付けられた複数のオブジェクトの中からギフトを選択し、そのギフトの選択数が最も多い出演者が視聴者によって応援されている出演者として特定され、特定された出演者には特定のオブジェクトが関連付けられ動画内で表示されることにより、視聴者は応援する出演者を可視化できて出演者は応援されていることを実感できるため双方の意欲向上に繋がるシステムが開発されています(以下URL)。
動画配信システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7455300/15/ja
関連する専門分野の例:情報学(動画配信システムの設計)、心理学(視聴者の動機や出演者の心理の分析)
具体例として実行プログラムの処理負荷や通信負荷を低減する情報処理システムが挙げられます。
従来のプログラム開発支援装置ではプログラム実行時の負荷低減が困難でした。
これに対して、ソースコードをパース(変換処理)してデータ構造に、実行プログラムの要素にインデックスを付与することを含め、変更を加え、実行プログラムの実行結果に基づいて実行部分と非実行部分を区別する2値情報をインデックスに対応付けることにより実行時に必要な部分のみを処理することで負荷を低減する情報処理システムが開発されています(以下URL)。
プログラムの負荷低減システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7455300/15/ja
具体例としてユーザの行動に応じてゲーム内パラメータを変化させてユーザの意欲向上を図る技術が挙げられます。
従来技術ではユーザの行動とゲーム内パラメータの関連付けが不明確でユーザの積極的な行動を促すことが難しいという問題がありました。
これに対して、ユーザ端末の状態(アプリ起動、動画配信・視聴など)を判定し、その状態に応じてゲーム内パラメータの増加率を変化させることで、例えばアプリ起動中はパラメータ増加率を低くして動画配信中は高く設定することで、ユーザに特定の行動を促しゲームへの関与度を高める情報処理システムが開発されています(以下URL)。
ゲーム内パラメータ変化によるユーザ意欲向上システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7376030/15/ja
(8)まとめ
企業によって出願件数や直近の傾向にバラつきはありますが、A63Fのゲームに関わる技術分類についての出願割合が大きい点で一致しています。
これらの特許はプログラムに関わり、それぞれの目的を実現するためのアルゴリズム設計が求められます。
一方、経営学や心理学が直接関係すると評価されるように、他の分野の開発よりも、ユーザー満足度やユーザー心理などに向き合った開発が求められると推測されます。
3.6 共同出願人との開発例
共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。
技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。
各社の共同出願人(筆頭出願人)は以下のとおりです。
共同出願人が筆頭出願人(願書の【出願人】の欄の一番上に記載された出願人)になっているものをカウントしました。
個人が出願人になっている出願は除外しています。
(1)任天堂

共同出願の例としてゲームの興趣性を高める情報処理プログラムが挙げられます。
従来のゲームでは役割変更やキャラクタ組み合わせによる面白さはあったものの、その相互作用が十分ではありませんでした。
これに対し、操作キャラクタに役割を割り当てて所持アイテムを設定し、特殊キャラクタを操作キャラクタに関連づけてゲームイベントで連携させ、ゲーム進行に応じてパラメータを更新して特定の条件を満たすと特殊キャラクタの適性情報が操作キャラクタに付加され新たな役割が割り当て可能とすることでキャラクタ育成や戦略性を高めた多様なプレイスタイルを促す情報処理プログラムが開発されています(以下URL)。
ゲームの興趣性向上プログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7574989/15/ja
従来のゲームでは戦闘方法が単調でプレイヤーの選択肢が限られていました。
これに対し、プレイヤーキャラクタの移動操作、サブキャラクタの登場操作、サブキャラクタの移動操作に応じて異なる戦闘方式を切り替え、敵キャラクタが配置されている場所ではプレイヤー操作による戦闘(第1の方式)をおこない、敵がいない場所ではサブキャラクタが自動で移動・戦闘(第2の方式)をおこなうことにより、プレイヤーが状況に応じて戦闘方法を選択できてゲームの戦略性と多様性を高めるゲームプログラムが開発されています(以下URL)。
ゲーム戦闘プログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7482585/15/ja
関連する専門分野の例:情報学(各キャラクタの行動パターン、能力値、相互作用などの設計)、メディアデザイン学(ユーザが楽しめるストーリーや世界観の設計)
(2)スクエニ

共同出願の例としてコンテンツ視聴時の3D酔いなどの不快感を軽減するコンテンツ表示プログラムが挙げられます。
従来のVR/AR技術では視覚と体感のずれや表示される文字と仮想空間オブジェクトの動きのずれが3D酔いの原因となっていました。
これに対し、表示装置の姿勢、コンピュータ装置の姿勢、ユーザの姿勢に関する情報に応じて仮想カメラを制御し、生成された画像とコンテンツに関連する関連情報(文字情報など)を重ねて表示する際に関連情報の上下方向と仮想空間の水平方向が成す角度が所定の条件を満たすように表示することで視覚的な違和感を軽減するコンテンツ表示プログラムが開発されています(以下URL)。
3D酔い軽減表示プログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6503407/15/ja
従来技術ではNFTは単なるデジタル資産として扱われることが多くその活用方法は限られていました。
これに対し、NFTに対応するオブジェクトを特定の場所に配置するという行為に意味を持たせ、NFT保有者に継続的な特典を提供することでNFTの価値を高める源泉データ管理プログラムが開発されています(以下URL)。
源泉データ管理プログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7598695/15/ja
関連する専門分野の例:情報学(NFTに関する基本的な機能の実装、源泉データの生成、配布、管理をおこなうシステム構築)、経済学(特典の設計、NFTの流通・価格形成んどを考慮したシステム構築)
(3)バンナム

共同出願の例としてバッジ作製装置が挙げられます。
従来のバッジ作製装置は押圧型が本体に固定されており作製できるバッジの種類が限られていました。
これに対し、本体内に配置可能な第1成形ユニットと第2成形ユニットを設けて、これらを組み合わせてさまざまな形状のバッジを作製できるようにしたバッジ作製装置が開発されています(以下URL)。
バッジ作製装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-100380/11/ja
従来の対戦ゲームではプレイヤーの采配というよりも所持するキャラクタの強さが勝敗を左右することが多いという状況でした。
これに対し、プレイヤーが操作するキャラクタを投入する際にそのキャラクタの投入に消費される行動用パラメータを導入し、このパラメータの消費率や回復率をゲーム内の状況(自拠点のダメージなど)に応じて変化させることにより、プレイヤーが状況に応じてキャラクタの投入を戦略的におこなうことになるゲームプログラムが開発されています(以下URL)。
対戦ゲームのプログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2019-097702/11/ja
関連する専門分野の例:情報学(プレイヤーの行動データの分析)、心理学(プレイヤーのモチベーションを維持するゲーム設計)
従来の音楽ゲームでは操作部と音検出部からの入力を同時に受け付ける場合に両者の入力タイミングが重なり、どちらの入力が有効か判断が難しいという問題がありました。
これに対し、プレイヤーの操作と音入力をそれぞれ入力データとして取得し、これらのデータが生成されたタイミングを比較し、両方の入力データがごく短い時間内に生成された場合は操作部の入力データを有効とし、音検出部からの入力を無効とすることで操作部と音検出部の入力を正確に区別し誤検出を防止するプログラムが開発されています(以下URL)。
誤検出防止プログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2005-103241/11/ja
なお、任天堂との共同出願が確認されたのは2000年代までです。
関連する専門分野の例:情報科学(入力データの判定、比較などのアルゴリズム設計)、電気電子工学(電気、電子回路の設計)
(4)コナミ

共同出願の例としてパチンコ機が挙げられます。
従来のパチンコ機では大当たり中に開く大入賞口内に特定領域があり、そこに遊技球が入ると高確率状態に移行する仕組みがあったため、遊技者は大入賞口が開くタイミングを狙って遊技球を発射し、高確率状態に移行させようとする「狙い打ち」を行う可能性がありました。
これに対し、大入賞口への直線的な経路に加え迂回する経路や一時的に遊技球を滞留させる機構を設けることで遊技球の到達時間をバラつかせ、遊技者が大入賞口の開放タイミングに合わせて正確に遊技球を発射することが難しくなり高確率状態への移行確率を安定させるパチンコ機が開発されています(以下URL)。
パチンコ機→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2016-087153/11/ja
(5)コーエーテクモ

アカツキゲームスとの出願が1件あります。
件数が少ないので説明は省略します。
(6)カプコン

共同出願の例として異なる種類のゲームプログラムを実行しているコンピュータ同士で対戦ゲームを行うための技術が挙げられます。
従来は異なるゲームプログラム間での対戦はそれぞれのゲームの処理速度が異なるため正確なタイミングで対戦を行うことが困難でした。
これに対し、各コンピュータがゲーム内の戦闘開始時刻を記録して戦闘終了時刻を他のコンピュータに通知し、他のコンピュータは受け取った終了時刻と自らのゲーム内の時間を比較してどちらのプレイヤーが先に勝利したかを判定し、この際に映像や音響効果の処理に要する時間は考慮せずにゲームロジック上の時間を基準とすることで正確な対戦を実現するゲームプログラムが開発されています(以下URL)。
異種プログラムのコンピュータ同士対戦ゲームプログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-3822891/15/ja
(7)グリー

幾徳学園、バンダイナコゲームス、セガとの出願がそれぞれ1件あります。
件数が少ないので説明は省略します。
(8)上記(1)~(7)(共同出願人)のまとめ
コナミのパチスロ系の出願の例外はありますが、各社とも特定企業との共同出願件数は多くても2件/年といったペースです。
各社ともゲーム開発を自社技術メインでおこなっていることが推測されます。
4 開発に求められる専門性
上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。
上記3の特許出願に関連するものを挙げていきます。
・情報系(情報学、情報科学など)、数理系(数学、物理学など)の分野
ゲーム開発におけるアリゴリズム設計やデータ構造の設計、数式やモデルを用いた表現などが関係します。
・デザイン系の分野(デザイン学など)
ゲーム開発におけるゲームの世界観やキャラクタなどの設計が関係します。
・その他(心理系、商学、経営学など)
ただし、これらの専門は表現上のものであり、境界があいまいな場合も多く、単純に大学の専攻名と結びつけられるものではないです(上記3の具体例などから判断する必要があります)。
また、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。
5 まとめ
ゲームメーカーの特許出願は特定分野(主にA63F)に集中しており、当該分野の開発が多くおこなわれていることが推測されます。
大学の専攻と関連づけるとしたら、情報、数学、物理、デザイン、芸術、心理、経営における研究分野が該当する可能性があります。
本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。
参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4
以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
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<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図 2024年版、2025年版 東洋経済新報社
<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許情報を独自に分析したものです。
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