生活や産業に不可欠なエネルギーを供給する電力業界ですが、発電設備の維持管理や需給調整といった従来的な領域だけでなく、昨今の変革に伴い、再生可能エネルギー、スマートグリッド構築、脱炭素化など、その領域は多岐にわたります。
開発の内情を知ろうにも、企業サイトの情報だけでは、どのような研究開発がおこなわれているのか、どのような専門性が求められるのかなど、その全体像を把握するのは容易ではありません。
この問題に対し、特許情報を活用します。
特許情報は企業の開発の軌跡であり、客観的なエビデンスになり得る情報です。
本記事では、採用サイトとは別の視点で、北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の研究・開発職ニーズと関連する専門性を特許情報から解読します。
結論(概要)は以下の通りです。
・電気系分野(電気工学、電子工学など)
・機械系分野(機械工学など)
・情報系分野(情報工学、情報科学など)
・その他分野(化学工学、材料科学、環境などの化学系、土木・建築系など)
1 業界サーチの概要
業界サーチは、業界における主要企業の特許情報から、その業界の企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。
特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。
すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。
2 電力業界
2.1 電力業界とは
ここでは、電気を作り(発電)、送る(送配電)電気事業者が集まる業界を意図します。
国内の電気事業者は1500以上ありますが、今回は電力大手10社に絞ります。
2.2 サーチ対象
以下の電力会社10社を対象にしました。
(1)北海道電力株式会社
(2)東北電力株式会社
(3)東京電力ホールディングス株式会社
(4)中部電力株式会社
(5)北陸電力株式会社
(6)関西電力株式会社
(7)中国電力株式会社
(8)四国電力株式会社
(9)九州電力株式会社
(10)沖縄電力株式会社
東京電力ホールディングスは「東京電力」と記します。
2.3 使用プラットフォーム
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
3 サーチ結果
3.1 結果概要
電力10社の開発イメージは下表のとおりです。
|
モノの開発 |
サービスの開発 |
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個人向け |
|
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法人向け |
・ケーブルの劣化診断装置 |
・電力管理の効率化 |
モノの開発としては、例えば、ケーブルなどの劣化を検出する診断装置が挙げられます。
サービスの開発としては、例えば、太陽光発電設備の故障診断などが挙げられます。
モノの開発が同時にサービスの開発になっているものも多いです。
最終的に個人に提供されるであろうサービスもありますが、基本的に法人向けです。
3.2 出願件数の推移
下図は電力10社の特許出願件数の推移です。

意外にも中国電力の特許出願が最も多いです。
同社サイトでも特許登録件数業界1位と記載がありました(以下URL)。
https://www.energia.co.jp/eneso/senryaku/chizai/index.html
業界売上トップの東京電力は2番手です。
業界全体に言えますが、特許出願件数は減少傾向です。
以下は、もう少し各社の差がわかるようした拡大図です。

3.3 開発の活発度
特許出願件数≒開発の活発度、だと考えます。
直近では、上位層は、
中国電力>東京電力>中部電力
です。ただし、各社とも減少傾向です。
出願件数は、中国電力が約200件/年、東京電力が約90件/年、中部電力が約50件/年です。その他は約10件/年かそれ以下です。
電気・機械・化学系のメーカーに比べると電力業界全体として企業規模の割には出願件数は控えめです。
3.4 主な開発分野
各社ごとに特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。
各社の出願上位3つの技術分野(沖縄電力だけ件数の関係で上位4つの技術分野)を抽出して並べています(特許出願されていても、その企業の出願件数上位に入っていない技術分野は除外されています)(出願件数の表示上限200件)。
各記号は発明の技術分類をあらわします。

分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)
上図の左から説明します。
例えば、植物の生産方法や生産装置がこれに該当します。
四国電力から多く出願(各技術分野の中で相対的に多く出願)されています。
例えば、排ガスの無害化処理がこれに該当します。
中部電力から多く出願されています。
例えば、風力発電装置がこれに該当します。
沖縄電力から多く出願されています。
例えば、電力ケーブルの劣化の評価方法がこれに該当します。
北海道電力、東北電力、四国電力、九州電力から多く出願されています。
例えば、電力量計がこれに該当します。
沖縄電力を除く9社から多く出願されています。
例えば、蒸気の流量や水位の計測システムがこれに該当します。
東京電力と中国電力から多く出願されています。
例えば、海底ケーブルやその敷設方法がこれに該当します。
沖縄電力から多く出願されています。
例えば、電力貯蔵装置がこれに該当します。
関西電力と九州電力から多く出願されています。
例えば、電力ケーブルの接続装置がこれに該当します。
北海道電力、北陸電力、中国電力、沖縄電力から多く出願されています。
例えば、送電制御装置やプログラムがこれに該当します。
東北電力、東京電力、中分電力、北陸電力、関西電力、沖縄電力から多く出願されています。
3.5 電力10社の近年の開発トレンドと求められる専門の例
特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。
ここ10年のトレンドは以下のとおりです。
発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。
出願件数が少ない技術分野は除外しています。
発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。
関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。
特許は難解ですが、GeminiやChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。
(1)北海道電力|開発トレンドと専門性

直近で伸びているという分野は特段見あたりません。
相対的に出願件数が多いのが、G01N、G06Q、H02Gです。
具体例として鉄筋コンクリート内部の検査装置が挙げられます。
従来の磁気を使った検査方法では構造物に付着した金属物などが磁界を乱して正確な検査が困難でした。
これに対し、温度分布の経時変化を測定し、そこから構造物の応力変動を推定することで内部の鉄筋の損傷を検出し、構造物に付着した金属物などの影響を受けずにより広範囲な構造物の検査する装置が開発されています(以下URL)。
温度分布の経時変化に基づく鉄筋コンクリート内部の検査装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-161250/11/ja
具体例として要求に応じて設備情報を地図上に表示するクライアント装置が挙げられます。
従来のシステムでは、異なる種類の設備情報ごとにレイヤーを作成し、それらを重ね合わせることで地図を表示していたため操作性が低いという問題がありました。
これに対し、すべての設備情報を単一の透明レイヤーに重ねて表示することで、ユーザが自由に表示したい設備情報を指定できるようにした装置が開発されています(以下URL)。
要求に応じて設備情報を地図上に表示するクライアント装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7307210/15/ja
具体例として柱上機器の取り付け金具が挙げられます。
従来の柱上機器の取り付け金具(支柱に取り付けられた腕金に直交する腕金を設けその上に機器を取り付ける)では腕金の交差部分に雪が積もって問題になっていました。
これに対し、柱上機器取付け部材と挟持部材で支柱取付け腕金を挟み込む構造にすることで直交する腕金が不要となり、雪が積もる交差部分をなくしたシンプルな構造にした金具が開発されています(以下URL)。
柱上機器の取り付け金具→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-000566/11/ja
関連する専門分野の例:機械工学(金具の構造設計、強度計算)、電気工学(安全な設置方法の検討)
(2)東北電力|開発トレンドと専門性

H02Jが他の分類よりも多く出願されています。その他は件数としては少ないですが、G06Q、H01Fが比較的多く出願されています。
具体例として太陽光発電システムの検査装置が挙げられます。
従来技術では太陽電池モジュールの僅かな不具合を捉えることが難しく、また、温度や日射量の影響を考慮していませんでした。
これに対し、パワーコンディショナを制御して太陽電池モジュールの電流電圧特性を測定し、同時に温度や日射量も取得し、これらのデータからFF値(フィルファクター:太陽電池モジュールの性能を表す指標)を算出し、健全な状態との比較をおこなうことで異常兆候を早期に発見する検査装置が開発されています(以下URL)。
太陽光発電システムの検査装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-024953/11/ja
具体例として電力取引支援システムが挙げられます。
従来技術ではスマートメータのデータを用いた電力取引がおこわれておらず、電力料金の精算も正確におこえませんでした。
これに対し、電力取引サーバと決済サーバを連携させて電力取引サーバで売買注文をマッチングし、決済サーバでスマートメータのデータに基づき電力料金を精算することで、検定された正確な電力量に基づいた電力取引ができる電力取引支援システムが開発されています(以下URL)。
電力取引支援システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6767561/15/ja
具体例として電磁機器が挙げられます。
従来技術では、可変リアクトルの鉄心接触面で渦電流が発生し、絶縁フィルムの劣化や磁気特性の劣化を引き起こしていました。
これに対し、第1鉄心と第2鉄心の脚磁心を直交させ、かつ接触面における積層鋼板の積層方向を同じ方向に整列させることで渦電流の発生を抑制し、絶縁フィルムが不要な構造とすることで、軽量かつ構造が簡単で大きなリアクタンス変化が可能な電磁機器が開発されています(以下URL)。
電磁機器→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-168345/11/ja
関連する専門分野の例:電気工学(鉄心形状や巻線配置の設計)、材料工学(磁性材料の選定、評価)
(3)東京電力|開発トレンドと専門性

出願数は出願年によってばらつきがありますが、G06Q、H02G、H02Jが相対的に多く出願されています。
具体例として電力取引管理装置が挙げられます。
従来技術では、基幹系統と配電系統の混雑管理が別々におこなわれており、非効率な約定処理が行われる懸念がありました。
これに対し、配電用変電所の下流側の混雑状況に応じて買い入札と売り入札を調整して全国市場における約定価格が最適化されています。具体的には、混雑時には一部の入札を非約定とし、混雑解消後に改めて約定処理をおこなうことでより効率的な電力取引を実現する装置が開発されています(以下URL)。
電力取引管理装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-166557/11/ja
具体例としてケーブル送出装置が挙げられます。
従来技術では、ケーブル挿抜作業にチェーンブロックを用いた人力作業が必要で、多くの作業員と熟練した技術が求められ工事費用の高騰や作業安全性の問題がありました。
これに対し、ケーブルを挟み込む2つの回転体を逆向きに回転させることでケーブルを前方または後方に送出することにより、少ない作業員で容易にケーブル挿抜作業をおこなうことができ、工事費用の削減や作業安全性の向上につながるケーブル装置が開発されています(以下URL)。
ケーブル送出装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-125494/11/ja
具体例として太陽光発電の発電状態を推定する情報処理装置が挙げられます。
従来技術では気象データを用いた発電量算出方法がシステムの複雑化を招いていました。
これに対し、配電系統の有効電力と無効電力の関係性をベクトルとして捉え、そのベクトルの向きに基づいて太陽光発電装置の発電の有無を判定することで、気象データを用いることなく配電系統における太陽光発電装置の発電状態を容易に推定する情報処理装置が開発されています(以下URL)。
太陽光発電の発電状態を推定する情報処理装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-155399/11/ja
関連する専門分野の例:電気工学(電力潮流計算ができる配電系統モデルの設計)、情報工学(発電状態を推定するためのアルゴリズム設計)
(4)中部電力|開発トレンドと専門性

H02J、G06Q、H02Gが相対的に多く出願されています。
具体例として電気自動車(EV)の充電を管理するシステムが挙げられます。
既存技術では、EVの充電時間率に基づいて充電順序を決定していましたが、これではEVの電欠や事業所の契約電力量超過、電気料金高騰のリスクがありました。
これに対し、日射量、外気温、湿度、曜日等の気象・暦情報を説明変数とした電力需要予測モデルにより事業所の消費電力量を予測し、予測された消費電力量が契約電力量を下回る時間帯にEVの充電電力量を割り当てることで電欠リスクを抑制しつつ契約電力量超過や電気料金高騰を抑制するシステムが開発されています(以下URL)。
EVの充電を管理するシステム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-060468/11/ja
具体例として水資源取引システムが挙げられます。
従来、ウォーターニュートラル(使う水と同じ量の水を自然に還す概念)の取り組みは個々の組織に委ねられており、企業グループなど大きな単位での実現は困難でした。
これに対し、森林の涵養量を定量的に評価し、その価値を「涵養量権利」として可視化することで、企業などがウォーターニュートラルを達成するための取引を可能にする水資源取引システムが開発されています(以下URL)。
水資源取引システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-001568/11/ja
具体例としてケーブルカッターとそのリングアタッチメントが挙げられます。
従来のケーブルカッターでは切断対象ケーブルへの環状体の巻き付け作業が煩雑でスライド中にワイヤーが外れる可能性があり作業効率が低いという問題がありました。
これに対し、リングアタッチメントに設けた孔にケーブルを通して切断対象位置までスライドさせることでケーブルの損傷を抑制しつつ容易に装着でき、また、アーム装置または電動装置と接続することで切断作業を効率的におこうことができるケーブルカッターのリングアタッチメントが開発されています(以下URL)。
ケーブルカッターとそのリングアタッチメント→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-184281/11/ja
関連する専門分野の例:機械工学(リングアタッチメントの最適化)、電気工学(伝動装置の制御回路設計)
(5)北陸電力|開発トレンドと専門性

直近で伸びている分野は特段見あたりませんが、H02G、H02Jが相対的に多く出願されています。
具体例として送電線作業用の足場が挙げられます。
従来の梯子状足場は大型で運搬が困難かつ作業範囲が限定されるという問題がありました。
これに対し、送電線に引っ掛けるフック部、柱部、踏板部を備えた軽量な足場、より具体的には、フック部は断面C字状のフック本体と開閉可能な閉鎖部材を備えて送電線への確実な設置と作業中の移動を可能にし、柱部は分割可能で高さ調整可能な構造により作業者の体格や作業内容に合わせた作業空間を確保でき、踏板部は作業者が安定して作業できる十分な広さを持つ、安全で使いやすい送電線用足場が開発されています(以下URL)。
送電線作業用の足場→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2014-062399/11/ja
具体例として複数の充放電器を有する充放電システムが挙げられます。
従来のシステムでは停電時にどの充放電器をマスターとして自立運転させる必要や補機の放電制御をユーザーがおこなう必要があり複雑で煩雑でした。
これに対し、負荷の大きさに応じて、放電を行う補機の数を自動的に調整するなどして停電時に蓄電装置の健全な状態が維持されるようにするシステムが開発されています(以下URL)。
複数の充放電器を有する充放電システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7315739/15/ja
関連する専門分野の例:電気工学(充放電器の制御アルゴリズム設計)、情報工学(制御アルゴリズムの実装、充電器を制御するプログラム開発)
(6)関西電力|開発トレンドと専門性

直近で伸びている分野は特段見あたりませんが、G01N、G06Q、H02Jが相対的に多く出願されています。
具体例としてワイヤロープの素線切れ状態を検査する方法が挙げられます。
従来、ワイヤロープの損傷は潜水士による目視点検や画像解析によっておこなわれていたので、危険を伴い時間とコストがかかるという問題がありました。
これに対し、アコースティックエミッショワイヤロープに力が加わるタイミングを捉え、そのタイミングから所定時間経過までのアコースティックエミッション(AE)エネルギーの積算値を用いて素線切れ状態を検査することでワイヤロープの損傷度合いを早期かつ効率的で安全に判定する検査方法が開発されています(以下URL)。
ワイヤロープの素線切れ状態を検査する方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-021417/11/ja
具体例として各家庭における温室効果ガス削減行動を促進するための装置が挙げられます。
従来技術では温室効果ガスの排出量を管理できても具体的な削減行動を促す効果はありませんでした。
これに対し、各家庭の温室効果ガス排出量を把握し、その削減量に応じて代替性トークン(仮想通貨)などの特典を付与することにより各家庭の温室効果ガス削減を促す装置が開発されています(以下URL)。
各家庭における温室効果ガス削減行動を促進するための装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-057579/11/ja
具体例として電力管理システムが挙げられます。
従来は、電力使用量の精算はおこなわれていましたが、再生可能エネルギーと非再生可能エネルギーの種別を明確化する管理はおこなわれていませんでした。
これに対し、電力使用区画の必要電力量を再生可能エネルギーと非再生可能エネルギーの内訳を含めて取得し、その合計値を目標に電力調達をおこない、調達した電力は内訳に応じて各区画に配分され、その実績を管理することで各区画の希望に沿った電力配分と実績把握を可能にする電力管理システムが開発されています(以下URL)。
電力管理システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-076721/11/ja
関連する専門分野の例:電気工学(電力調達先の組合せ、需要に応じた電力調達計画策定)、情報学(電力使用量などの各種データを収集、分析するシステム構築)
(7)中国電力|開発トレンドと専門性

10社中最も出願件数が多い中国電力ですが、その中でもH02Gが目立っています。ただし、目立って減少しています。その他だとG06Q、H02Jが相対的に多く出願されています。
具体例として清掃具が挙げられます。
従来は、送電鉄塔に設置された故障点標定装置のセンサの清掃時に停電が必要で事前準備に多大な労力を要していました。
これに対し、間接活線工具に連結可能な杆の先端に弾性材からなる摩擦部材と、その表面を覆う拭き取り部材を設け、これらを固定部材で固定することで離れた位置から安全にセンサ清掃が可能となり、水滴の残存や傷つきのリスクも低減できる清掃具が挙げられます(以下URL)。
清掃具→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-103159/11/ja
具体例として温室効果ガスの削減量を算出する方法、装置が挙げられます。
従来はバイオ炭の環境価値が適切に評価されず普及が進んでいませんでした。
これに対して、バイオ炭の単位重量あたり削減量、施用量、農産物生産量を取得し、これらを用いて農産物単位重量あたりの削減量を算出することで農産物の環境価値を定量的に評価できバイオ炭の普及促進に貢献する方法、装置が開発されています(以下URL)。
温室効果ガスの削減量を算出する方法、装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-174392/11/ja
具体例として再生可能エネルギー発電設備と蓄電ユニットを用いた電力供給システムが挙げられます。
従来技術では再生可能エネルギーの出力変動により電力系統の安定化が困難でした。
これに対し、発電量を予測する演算装置と充放電を制御する制御装置を備えて予測電力量を電力系統に放電することにより、電力系統の安定化を図りつつ再生可能エネルギーを効率的に活用する電力供給システムが開発されています(以下URL)。
電力供給システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-139843/11/ja
関連する専門分野の例:電気工学(電力系統、蓄電システムの設計)、情報学(充放電を最適化する制御アルゴリズム設計)
(8)四国電力|開発トレンドと専門性

直近で伸びている分野は特段見あたらず、出願件数は少なめですが、G01Nが他の分野より多く出願されています。
具体例として鉄筋コンクリート構造物の寿命計算プログラムが挙げられます。
従来技術では腐食ひび割れ発生後の評価が加わっておらず、鉄筋コンクリートの材料評価として不十分でした。
これに対し、塩化物イオンの見かけの拡散係数、腐食発生限界塩化物イオン濃度、腐食速度、腐食ひび割れ発生時の鉄筋腐食量から寿命を計算し、鉄筋の体積減少率が限界値に達した場合を寿命の終点とすることで材料評価を高精度におこなう寿命計算プログラムが開発されています(以下URL)。
鉄筋コンクリート構造物の寿命計算プログラム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2019-200113/11/ja
関連する専門分野の例:土木工学(構造物の耐久性評価)、情報学(鉄筋コンクリートの腐食進行のシミュレーション)
(9)九州電力|開発トレンドと専門性

直近で伸びている分野は特段見あたらず、出願件数は少なめですが、G01Rが他の分野より多く出願されています。
具体例としてケーブルの部分放電診断方法が挙げられます。
従来、停電を伴う診断やスポット的な診断による誤判定、機械学習のみでは信頼性確保が困難といった課題がありました。
これに対し、エッジ装置で波形データを生成し、統計解析処理によって部分放電の疑いがあるか否かを判定し、サーバ装置でAIモデルと統計解析処理を組み合わせた判定をおこない、クラスタリング処理によってAIモデルの精度を向上させることによりオンライン状態での信頼性の高いケーブル診断が開発されています(以下URL)。
ケーブルの部分放電診断方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-115893/11/ja
関連する専門分野の例:電気工学(ケーブルの診断方法の原理や適用条件の検討)、情報学(部分放電の判定AIモデルの開発)
(10)沖縄電力|開発トレンドと専門性

上図で示された分野以外の分野も含めて特許出願されない年も多いです。
直近ではB64Fが連続で出願されていますが、他の電力会社との共同出願かつその後名義変更もされています(権利者でなくなっている)ので具体例の紹介は省略します。
(11)まとめ
技術分野が多岐にわたる特許も多く、それがどのような技術分野だと一概には言えません。
ただ、各社とも以下の技術課題に対する取組みが多い印象です。
・ケーブルなど設備の劣化や異常をいかに見つけるか
・送電制御など電力系統をいかに安定化するか
その他には、温室効果ガス、再生可能エネルギー、EVに関わる出願が確認されます。
また、上では触れませんでしたが、共同出願が非常に多いです。
各社の単独出願の多少は以下のとおりです。
<単独出願の数>
半分未満:少ない
半分を超える:多い
| 北海道電力 | 少ない |
| 東北電力 | かなり少ない |
| 東京電力 | 半々 |
| 中部電力 | 少ない |
| 北陸電力 | 少ない |
| 関西電力 | 少ない |
| 中国電力 | 多い |
| 四国電力 | かなり少ない |
| 九州電力 | かなり少ない |
| 沖縄電力 | かなり少ない |
自社だけで開発されたものだと通常、単独出願になります。
中国電力や東京電力はそのようなものが相対的に多いです。
共同出願の場合、共同出願企業が開発の主となっているものもそれなりにあることが推測されます。
3.6 共同出願人との開発例
共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。
技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。
各社の共同出願人(複数件の出願をおこなった出願人)は以下のとおりです。
共同出願人が筆頭出願人(願書の【出願人】の欄の一番上に記載された出願人)になっているものをカウントしました。
また、グループ企業や現存しない企業については、共同出願人としてのカウントから除外している場合があります。
(1)北海道電力

共同出願の例として、蒸気発生器給水内管のサーマルスリーブ補修方法が挙げられます。
従来、サーマルスリーブの補修に際し溶接や熱処理が必要で作業が煩雑でした。
これに対し、給水内管の一部とサーマルスリーブを分離し、取り外した後に新しいサーマルスリーブを取り付け、取り外した給水内管の一部を再度取り付けることで容易にサーマルスリーブを補修することを可能にした方法が開発されています(以下URL)。
蒸気発生器給水内管のサーマルスリーブ補修方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2013-181742/11/ja
従来、デフロスト(霜取り)運転時に暖房が中断されるという問題がありました。
これに対し、デフロスト運転モード時に高段側膨張手段を全開にし、カスケード熱交換器を介して高段側冷媒の熱を低段側冷媒に供給することで、第2の熱交換器(空気採熱用熱交換器)のデフロストをおこなうと同時に第1の熱交換器(低段側温水加熱用熱交換器)を介して低段側冷媒の熱を被加熱媒体に供給することで暖房を継続するヒートポンプシステムが開発されています(以下URL)。
ヒートポンプシステム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2013-228122/11/ja
関連する専門分野の例:機械工学(ヒートポンプサイクルの最適化、熱交換器の設計)、電気電子工学(運転モードの切換え制御、システム全体の回路設計)
(2)東北電力

共同出願の例として電力需要を推定する電力需要管理システムが挙げられます。
従来は、新規需要家の情報不足や類似需要家の抽出・分類、需要パターン生成、配電系統負荷量算出などを統合的におこなうシステムがありませんでした。
これに対し、既存需要家を類似するグループに分類し、各グループの代表的な需要パターンを抽出し、新規需要家の情報と類似する既存需要家のグループの需要パターンに基づいて新規需要家の需要パターンを生成し電力需要を推定する電力需要管理システムが開発されています(以下URL)。
電力需要を推定する電力需要管理システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-070897/11/ja
従来はタービン冷却と燃焼器冷却に同一温度の圧縮空気を用いていたため、それぞれの冷却に必要な温度条件を満たすことが困難でした。
これに対し、昇圧した圧縮空気をタービン冷却用と燃焼器冷却用に分岐し、それぞれの流路に流量調整機構や冷却・加熱手段を設けることで各部の温度を個別に最適化してタービンのチップクリアランス調整と燃焼器の効率的な冷却を両立させたガスタービンが開発されています(以下URL)。
ガスタービン→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2015-083834/11/ja
従来は太陽光発電量のない需要家のデータから負荷モデルを作成し、それと類似する需要家のデータから太陽光発電量を推定していましたが、類似する需要家を探す手間がかかる、負荷パターンが類似しない場合には推定精度が低いという問題がありました。
これに対し、雨の日の負荷カーブが類似する需要家を抽出し、その負荷モデルと晴れの日の買電量との差分量に売電量を加えることで太陽光発電量を推定することにより類似する需要家を抽出し、負荷パターンが類似しないことによる推定精度の低下を防ぐ、簡便で高精度に電力メータから太陽光発電量を推定する装置が開発されています(以下URL)。
太陽光発電量を推定する装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-021188/11/ja
関連する専門分野の例:電気工学(需要家の負荷特性を表現する負荷モデルの構築、モデルのパラメータ調整の検討)、情報学(機械学習を用いた発電量推定モデルの構築)
(3)東京電力

共同出願の例として超電導ケーブルの絶縁破壊時に発生するアーク放電による損傷を低減する技術が挙げられます。
従来はケーブルコアの接地層外周に耐アーク層を備えることで対策していましたが、断熱管の損傷を小さくしケーブル外部への悪影響を低減することが課題でした。
これに対し、ケーブルコアと断熱管の間に、耐熱紙と耐熱布を積層した複合層を設けることで、アーク放電による熱伝導を抑制し、気化ガスの流れを分散させ、断熱管の損傷を低減できる超電導ケーブルが開発されています(以下URL)。
アーク放電による損傷低減技術→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-027679/11/ja
従来は受信信号の振幅のみを用いて液体の有無を判定していましたが、液体がある場合とない場合で受信信号の振幅の差が小さい場合には液体の有無を判定できないという問題がありました。
これに対し、受信信号の数と継続時間に基づいて液体の有無を判定することで振幅の差が小さい場合でも液体の有無を判定、具体的には受信信号が複数ある場合や受信信号の継続時間が基準値より長い場合に液体があると判定する超音波測定装置が開発されています(以下URL)。
超音波測定装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-038119/11/ja
従来、放射性ダストモニタはダストを捕集するろ紙の交換時に一定期間放射能濃度を測定できない時間帯が発生していました。
これに対し、2つの放射性ダストモニタ部を設け、それぞれのろ紙交換タイミングをずらすことで、常にどちらかのモニタ部が放射能濃度を測定できる状態を維持し、測定の空白期間を解消して常に正確な放射能濃度を把握できるにようにした放射性ダストモニタが開発されています(以下URL)。
放射性ダストモニタ→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-006555/11/ja
関連する専門分野の例:原子力工学(放射性ダストモニタの構築)、電気工学(放射線ダストモニタの動作制御)
(4)中部電力

共同出願の例として酸素イオン電導性セラミック膜材の製造方法が挙げられます。
従来はセラミック膜はランダムな配向の多結晶構造を有しており、酸素イオン伝導性が十分に発揮されにくいという問題がありました。
これに対し、定の結晶面に配向した基板上に蒸着法(PLD法またはイオンビーム蒸着法)を用いてセラミック膜を配向度20%以上となるように結晶配向させた状態で形成することで酸素イオンの伝導経路を短縮し、酸素イオン伝導性を向上させたペロブスカイト型セラミック膜材の製造方法が開発されています(以下URL)。
酸素イオン電導性セラミック膜材の製造方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2010-132972/11/ja
従来は光ケーブルの接続作業に高度な技能と工数がかかり防水性にも問題がありました。
これに対し、光レセプタクル組立体を筐体の両端部に設けて、この組立体に外部光コネクタを接続することで接続作業を容易にし、シール部材を設けることで防水性を高め、部品点数を減らすことでコスト抑制した光ケーブル接続用クロージャが開発されています(以下URL)。
光ケーブル接続用クロージャ→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-095184/11/ja
従来は原子力プラント等で使用されるSUS304系やSUS316系ステンレス鋼において応力腐食割れ(SCC)の発生が完全に防止できていないという問題がありました。
これに対し、特定の化学組成を持つオーステナイト系ステンレス鋼においてCe, Sc, Zr, Hfといった元素を特定の量で固溶させることで水素加速酸化を抑制し耐SCC性を向上させたオーステナイト系ステンレス鋼が開発されています(以下URL)。
オーステナイト系ステンレス鋼→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-186423/11/ja
関連する専門分野の例:材料工学(ステンレス鋼の組成設計)、原子力工学(ステンレス鋼の耐SCC性を評価)
(5)北陸電力

従来は活性炭触媒シートを用いたハニカム触媒構造体は強度が低く、長期使用における耐久性に問題がありました。
これに対し、積層された脱硫触媒シートを支持部の上方領域で接着または溶着することで触媒構造体の強度を向上させ、流路空間の開口端部を樹脂で固化することで耐久性を向上させた石炭・石油の燃焼排ガス中の硫黄酸化物の処理のための触媒ユニットが開発されています(以下URL)。
触媒ユニット→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2013-212506/11/ja
関連する専門分野の例:化学工学(脱硫反応のメカニズム解析、触媒設計)、機械工学(触媒ユニットの構造設計)
(6)関西電力

共同出願の例としてニッケル系合金粉末の製造方法が挙げられます。
従来はニッケル粉末は高温下で焼結が進み気孔率が低下する、酸化ニッケルを耐熱性材料と混合したサーメットでもニッケルの凝集が起こり発電効率が低下するという問題がありました。
これに対し、特定の条件下で硝酸マンガン水溶液を酸化ニッケル懸濁液に添加し、加熱・粉砕することでニッケル粉末表面にニッケルとマンガンの複合酸化物を形成させて耐還元性を向上させた酸化ニッケル粉末が開発されています(以下URL)(同社との共同出願では権利として維持されているものはわずかでした)。
ニッケル系合金粉末の製造方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2011-157248/11/ja
従来、防蟻ケーブルは高価なナイロン材料や3重シース構造にする必要があり、難燃性も両立させるのが困難でした。
これに対し、内部防食層に難燃ポリ塩化ビニル、外部防食層に難燃ポリプロピレンを使用し、外部防食層の厚さを内部防食層の50%以下にすることで安価かつ難燃性試験に合格する防蟻ケーブルが開発されています(以下URL)。
難燃防蟻ケーブル→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2016-006794/11/ja
従来のアミン吸収液は、吸収性能と二酸化炭素/硫化水素の放出性能のバランスが課題でした。
これに対し、鎖状モノアミン、ジアミン、特定の環状化合物、水を組み合わせることで吸収性能を維持しつつ放出性能を向上させエネルギー効率の良い二酸化炭素/硫化水素除去装置および方法が開発されています(以下URL)。
複合アミン吸収液→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7321420/15/ja
関連する専門分野の例:化学工学(吸収液組成の設計、吸収塔の設計)、有機化学(アミン化合物、環状化合物の選択、評価)
(7)中国電力

共同出願の例として石炭灰造粒物を用いた水処理装置が挙げられます。
従来の石炭灰造粒物を用いた水処理装置は、濾過筒が必要で大規模な設備となっていました。
これに対し、石炭灰造粒物を保持する網袋とフロート材を連結し、ロープと錘で固定することで大規模な設備が不要となり、容易に設置・撤去が可能な水処理装置が開発されています(以下URL)。
水処理装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-115552/11/ja
従来、超臨界水ガス化システムでは熱交換器内でのタールやチャーの生成による閉塞が問題でした。
これに対し、超臨界水ガス化系統圧力以上の高圧蒸気でスラリー体を予熱し、生成物を冷却するシステム構成により熱交換器のコンパクト化、タール・チャー生成抑制、燃料ガス効率的生成を同時に実現する燃料ガス生成システムが開発されています(以下URL)。
バイオマス超臨界水ガス化システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6704587/15/ja
従来、脱水器にGHスラリーを供給する際、スラリーが脱水器内で均一に拡散されず脱水効率が低下する問題がありました。
これに対し、脱水器底板にクッションボックスを設け、供給管をクッションボックス外壁に接続することでスラリー流速を減速・拡散させて脱水器内での均一な脱水処理を可能にした脱水装置が開発されています(以下URL)。
脱水装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2009-235327/11/ja
関連する専門分野の例:化学工学(ガスハイドレートの生成メカニズム解明、脱水条件設計)、機械工学(スラリー拡散を促進する脱水装置の構造設計)
(8)四国電力

共同出願の例として農作物の鮮度保持方法が挙げられます。
従来、農作物の鮮度保持には冷蔵や薬剤が用いられてきましたが、コストや安全性、適用範囲に課題がありました。
これに対し、近赤外光を照射するだけで広範囲の農作物に対して簡便かつ安全に鮮度保持効果が得られる農作物の鮮度保持方法が開発されています(以下URL)。
農作物の鮮度保持方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2017-093433/11/ja
関連する専門分野の例:農学(農作物の生理現象の解明)、生物学(近赤外線の性質、農作物への影響解析)
その他は省略します。
(9)九州電力

共同出願の例として組電池システムが挙げられます。
従来、各ユニットにDC-DCコンバータを設ける方法が知られていましたがコストが高くなる問題がありました。
これに対し、各ユニットに電流制御素子を設け、制御手段によって各素子に流れる電流を調整することで各ユニットの電流を均一化し電池の寿命を延ばした並列構成の組電池が開発されています(以下URL)。
組電池システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2011-177025/11/ja
従来技術では需給アンバランスまたは周波数変動のいずれか一方に着目した制御が行われており、十分な周波数安定化効果が得られませんでした。
これに対し、需給アンバランスと周波数変動の両方に基づいて蓄電池への指令値を生成し、さらに他の蓄電池との連携を考慮した制御抑制部を設けることで、より高度な周波数安定化を実現する周波数安定化装置が開発されています(以下URL)。
蓄電池の制御技術→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2015-223036/11/ja
関連する専門分野の例:電気工学(電気制御システムの設計)、制御工学(蓄電池の充放電制御の設計)
(10)沖縄電力

従来技術では発電プラント側の故障を特定できない、あるいは検出が遅れて周波数低下を許容限界以下に抑えられないという問題がありました。
これに対し、発電機の有効電力出力と系統周波数の連続的な低下を検出し、両方が低下した場合に負荷遮断をおこなうことで、プラント側の故障による発電機脱落を早期に検出し、過剰制御を抑制しつつ系統周波数の低下を防止する系統安定化システムが開発されています(以下URL)。
系統安定化システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2011-050152/11/ja
従来技術では停電復旧作業は人手に頼っており迅速性に課題がありました。
これに対し、停電前の消費電力と系統周波数に基づいて復旧可能電力を算出し、その範囲内で復旧対象負荷設備を選出することで、系統周波数の安定性を確保しつつ迅速な復旧を可能にする方法が開発されています(以下URL)。
電力系統における停電復旧支援技術→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2013-085403/11/ja
関連する専門分野の例:電気工学(制御システムの設計)、情報工学(負荷設備の選定アルゴリズム設計)
(11)上記(1)~(10)(共同出願人)のまとめ
全体を通して見ると、三菱重工、三菱電機、日立製作所、NTTデータが出願件数で目立っています。
設備や装置そのもの、システム構築においては一定以上外部依存している可能性が考えられます。
ただ、各社との共同出願の多くが10年以上前であり、ここ数年ではかなり減少しています。
4 開発に求められる専門性
上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。
上記3の特許出願に関連するものを挙げていきます。
・電気系分野(電気工学、電子工学など)
・機械系分野(機械工学など)
・情報系分野(情報工学、情報科学など)
・その他分野(化学工学、材料科学、環境などの化学系、土木・建築系など)
ただし、これらの専門は表現上のものであり、境界があいまいな場合も多く、単純に大学の専攻名と結びつけられるものではないです(上記3の具体例などから判断する必要があります)。
また、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。
5 まとめ
電力設備や電力管理システム、再生可能エネルギーなど特許出願分野は多岐にわたっていて様々な開発がおこなわれていることがうかがえました。
出願件数には事業者によって大きな差があり、また、共同出願の多さから外部資源を活用している場合も多そうです。
大学の専攻と関係づけるとしたら、特に電気、機械、情報などにおける研究分野が該当する可能性があります。
上記以外には化学、環境、土木、建築などにおける研究分野も該当する可能性があります。
本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。
参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4
以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
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・総合メーカーの就職・転職先一覧|研究開発に強い企業の技術分野
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<出典、参考>
・資源エネルギー庁の公開情報(統計表一覧|資源エネルギー庁)
・特許情報プラットフォームの公開情報(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)
・会社四季報 業界地図2024年版、2025年版 東洋経済新報社
<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許情報を独自に分析したものです。
・本サイトでは、特許情報を正確かつ最新の状態でお伝えするよう努めていますが、情報の完全性を保証するものではありません。
・特許情報のご活用や解釈は読者ご自身の責任でお願いいたします。
・詳細な確認や重要な判断が必要な場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。