鉄道車両そのものはメーカーが製造していますが、鉄道各社は設備点検の自動化運行制御アルゴリズム、駅空間のスマート化などへの取組みが見られ、近年ではAI・ドローンを活用した構造物診断、車両の環境負荷低減など、さまざまな技術領域と関わっています。
しかし、一般的に知られる情報だけでは、どのような研究開発がおこなわれているのか、どのような専門性が求められるのか、その全体像を把握するのは容易ではありません。
この問題に対し、特許情報を活用します。
特許情報は企業の開発の軌跡であり、客観的なエビデンスになり得る情報です。
本記事では、採用サイトとは別の視点で、JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州、JR貨物の研究・開発職ニーズと関連する専門性を特許情報から解読します。
結論(概要)は以下の通りです。
・電気系分野(電気電子工学など)
・機械系分野(機械工学など)
・土木、建築系分野(土木工学、建築学など)
・情報、制御系分野(情報工学、制御工学など)
・その他(材料工学など)
1 業界サーチの概要
業界サーチは、業界における主要企業の特許情報から、その業界の企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。
特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。
すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。
2 鉄道業界
2.1 鉄道業界とは
ここでは運行を主たる仕事とする業界を意図します。
すなわち、鉄道によって旅客や貨物をおこなう業界です。
2.2 サーチ対象
以下のJR各社を対象にしました。
(2)東日本旅客鉄道(JR東日本)
(3)東海旅客鉄道(JR東海)
(4)西日本旅客鉄道(JR西日本)
(5)四国旅客鉄道(JR四国)
(6)九州旅客鉄道(JR九州)
(7)日本貨物鉄道(JR貨物)
以下、それぞれ社名を上記括弧書内の名称で示します。
2.3 使用プラットフォーム
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
3 サーチ結果
3.1 結果概要
JR各社の開発イメージは下表のとおりです。
|
モノの開発 |
サービスの開発 |
|
|
個人向け |
・特典付与サービス など
|
|
|
法人向け |
・駅ホームの監視システム |
・レールの劣化検出方法 |
モノの開発としては、例えば、駅ホームの監視システムやレールの締結装置が挙げられます。
サービスの開発としては、例えば、レールの劣化検出方法や乗客に特典を付与する方法が挙げられます。
モノの開発が同時にサービスの開発になっている場合が多いです。
3.2 出願件数の推移
下図はJR各社の特許出願件数の推移です。

JR東日本の特許出願が一番多く、JR東海、JR西日本が続いています。
これらは毎年一定数の出願があることから、継続的な技術開発がおこなわれていることが推測されます。
この3社以外は、相対的に出願件数が少ないです(3社以外からは、出願されない年もあれば、複数件出願される年もあります)。
3.3 開発の活発度
特許出願件数≒開発の活発度、だと考えるなら、
直近では、
JR東日本>JR東海>JR西日本>それ以外
の順で開発が活発だと言えます。
なお、この中で出願件数が最も多いJR東日本でも最大で年間約200件というのは、同規模の製造業と比較すると少ないです。
3.4 主な開発分野
各社ごとに特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。
各社の出願上位3つの技術分野を抽出して並べています(特許出願されていても、その企業の出願件数上位に入っていない技術分野は除外されています)。
各記号は発明の技術分類をあらわします。

分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)
JR四国が多く出願しています。
JR東海、JR九州、JR貨物が多く出願しています。
JR東海、JR西日本、JR北海道が多く出願しています。
JR四国が多く出願しています。
業界的に多く出願されていて、特にJR東日本、JR西日本が多いです。
業界的に多く出願されていて、特にJR東日本、JR東海、JR西日本が多いです。
3.5 JR7社の近年の開発トレンドと求められる専門の例
特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。
ここ10年のトレンドは以下(1)~(7)のとおりです。
発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。
出願件数が少ない技術分野は除外しています。
発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。
関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。
特許は難解ですが、GeminiやChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。
(1)JR北海道|開発トレンドと専門性

出願されない年も多く、出願された年でも1件にとどまります。
上図の期間中、最も多い分類はE01Bです。
具体例としてレール研磨装置に関が挙げられます。
従来のレール研磨装置は手押し式で作業者のペースに左右され研磨量が不均一でした。
これに対し、車体の走行速度や研磨材の回転速度を検出し一定の速度に達してから研磨を開始することで上の課題を解決したレール研磨装置が開発されています(以下URL)。
所定速度以上で研磨をおこなうレール研磨装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2016-142112/11/ja
(2)JR東日本|開発トレンドと専門性

出願件数としてはB61Lが最も多く2016年には40件です。
直近で出願件数が増加している分野はありませんが、上図期間中では他にE01B、G06Q、E02Dが多いです。
具体例としてバラスト(砕石)の劣化状態を自動的に診断するシステムが挙げられます。
従来のバラストの劣化状態は線路巡視員による目視検査が主流でした。
これに対し、軌道の撮影画像から枕木領域と道床領域を分割して白色と黒色に二値化処理することで採石や砂利の劣化診断をおこなえるようにした軌道材料劣化診断システムが開発されています(以下URL)。
砕石劣化状態の自動診断システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-041217/11/ja
具体例としてレールの融雪システムが挙げられます。
従来の融雪システムはポイントの至近部に固定されたノズルから温水を噴射する方式が一般的でした。
これに対し、噴射された流体の到達位置を検知して目標位置とのズレに基づいてノズルの調整を行うことで正確な融雪を可能にした融雪システムが開発されています(以下URL)。
レールの融雪システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-097865/11/ja
具体例として鉄道駅の構内の人流を推定するためのシステムが挙げられます。
従来の駅構内人流推定システムでは改札とプラットフォーム間の移動に着目した詳細な分析が不足しており人流の推定精度が低いという課題がありました。
これに対し、改札ごとに利用者数を集計し、集計された利用者数を利用したと推定されるプラットフォームごとに分割することで各プラットフォームへの人流をより正確に把握できるようにした駅構内人流推定装置が開発されています(以下URL)。
鉄道駅構内の人流推定システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-147768/11/ja
具体例として駅ホーム補強構造が挙げられます。
従来の石積みの駅ホームでは地震時に石積みが崩れる危険性がありました。
これに対し、上下方向に貫く芯材で一体化した石積ブロックを用いて強度を高めた駅ホーム補強構造が開発されています(以下URL)。
駅ホーム補強構造→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-165092/11/ja
(3)JR東海|開発トレンドと専門性

直近で出願件数は減っていますが、最も多いのがB61Dです。
その他に上図期間中トータル数が多いのがB60L、B61Fです。
出願件数が増加傾向にある技術分野は見あたりません。
具体例として衝突時の衝撃力を緩和し乗客や乗務員の安全性を高めるための車両構造が挙げられます。
従来の鉄道車両では前面衝突時に車両の先頭部が大きな衝撃を受け乗客や乗務員に大きな被害が及ぶ可能性がありました。
これに対し、支柱のうち隅柱の位置を調整することで衝突時に妻柱と隅柱が同時に変形せず衝撃力を段階的に吸収させて車両へのダメージを軽減できる鉄道車両が開発されています(以下URL)。
車両構造→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-187081/11/ja
具体例として列車の運行遅延に対応する列車群制御システムが挙げられます。
従来の列車制御システムでは複数の列車が密集して運行する場合や複数の信号機で列車が停止する場合に不要な加減速が発生して遅延解消に時間がかかっていました。
これに対し、複数の列車の位置関係に基づいて速度と時間の関係を示したランカーブを作成して複数の列車の運行を最適化することでダイヤの安定性を向上させた列車群制御システムが開発されています(以下URL)。
運行遅延対応列車群制御システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-016941/11/ja
具体例として鉄道車両の転覆危険度を評価するシステムが挙げられます。
従来の鉄道車両の横風に対する安全性評価では風速の測定地点が限られていたので任意の地点での風速を正確に把握することが難しい問題がありました。
これに対し、走行中の車両から検知した情報に基づき算出した値から超過遠心力による影響を減じた転覆危険率を算出することで正確な評価を可能にした安全評価システムが開発されています(以下URL)。
転覆危険度評価システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-171326/11/ja
(4)JR西日本 |開発トレンドと専門性

上図期間中、最も出願件数が多いのはB61Lです。
次がコンスタントに出願されているE01Bで、その次が2021年に最も件数が多かったA47Cです。
具体例として列車の動揺の発生位置を特定するシステムが挙げられます。
従来の列車の動揺測定では高価な専用の測定装置を用いたりGPS信号の受信に依存していたことからコストが高くなり場所によっては測定が困難な場合がありました。
これに対し、動揺が発生した際の画像情報を加速度情報と紐付けることでGPS信号が途絶えても周囲の風景を手がかりに動揺が発生した位置を推定できるようにしたシステムが開発されています(以下URL)。
列車の動揺発生位置特定システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-157128/11/ja
具体例として既存の手動転轍器を自動転轍器へ改造するためのユニットが挙げられます。
従来の手動転轍器を全て自動転轍器に交換するには大きなコストと工事が伴っていました。
これに対し、既存の手動転轍器の操作レバーにモーターなどの駆動源と連結する回動機構を追加するだけで自動化した転轍機変換ユニットが開発されています(以下URL)。
転轍機変換ユニット→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-183111/11/ja
具体例としてリクライニングチェアが挙げられます。
従来のリクライニングチェアでは背もたれの回転中心が座部の下方にあるため背もたれを倒した際に背もたれの上部が大きく後方に突き出てしまう問題がありました。
これに対し、背もたれの回転中心を高く設定するとともに背もたれが後方に傾く際に連動機構が座部を後方に移動させ、さらに後端が下がり前端が上がるように傾斜させることで後方への突出量を少なくしたリクライニングチェアが開発されています(以下URL)。
リクライニングチェア→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2010-088814/11/ja
(5)JR四国|開発トレンドと専門性

出願されない年も多く、出願された年でも2件にとどまります。
上図の期間中、最も多い分類はB61Lです。
出願件数が増加傾向にある技術分野は見あたりません。
具体例として線路設備の状態を推定するための装置が挙げられます。
従来の鉄道設備の状態推定には単一のセンサーデータに基づくことが多く外部要因による影響を十分に考慮できていませんでした。
これに対し、列車の走行経路上の複数の地点で収集したデータを測定時点における線路の状態(列車の有無、信号の状態など)に応じて複数のグループに分類して用いることでより正確な設備状態を推定できるようにした装置が開発されています(以下URL)。
線路設備状態推定装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-075098/11/ja
(6)JR九州|開発トレンドと専門性

上図期間中、出願されなかった年はありませんが、出願件数は多くて年2回です。
その中で最も多いのはB60Lです。
具体例として列車の自動運転のためのシステムが挙げられます。
従来の列車自動運転システムは専用の自動列車制御装置を必要とし既存の路線に導入する際には高額なコストがかかっていました。
これに対し、列車が出発を要求した際に指令所で生成されたワンタイムパスワードによって出発許可を与える仕組みにより既存の装置を用いることができる列車制御システム(制御方法)が開発されています(以下URL)。
列車自動運転システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7038187/15/ja
(7)JR貨物|開発トレンドと専門性

出願されない年も多く、出願されても年1件にとどまります。
上図の期間中、最も多い分類はB65Gです。
具体例として貨物列車に積載されたコンテナの位置情報を自動的に管理し作業効率を向上させるシステムが挙げられます。
従来のコンテナの積載位置は作業員が手作業でリストを作成しているため作業負担が大きく誤りの発生もありました。
これに対し、各コンテナの積載番号の自動読取りからコンテナの位置を特定するとともに貨車の走行方向や積載方向に応じて積載番号の読み取り方を切り替えることで常に正しい積載位置情報を取得する管理システムが開発されています(以下URL)。
コンテナ位置情報管理システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6851453/15/ja
(9)まとめ
出願に係る技術分野は、全社を通じて、車両やレール、車両や構内の監視システムなど鉄道事業に関係するものが大部分を占めています。
この中で、各種情報の処理システムなど鉄道の運用に関わる技術に関しては、鉄道会社の単独出願である場合が他の技術に比べて相対的に多いです。
こうした分野の技術開発が内部でおこなわれている可能性があります。
3.6 共同出願人との開発例
共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。
技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。
各社の共同出願人(筆頭出願人)は以下のとおりです。
共同出願人が筆頭出願人(願書の【出願人】の欄の一番上に記載された出願人)になっているものをカウントしました。
また、グループ企業や現存しない企業については、共同出願人としてのカウントから除外している場合があります。
(1)JR北海道

共同出願の例として鉄道車両の車輪の偏摩耗量を推定するシステムが挙げられます。
従来の線路構造物の振動から偏摩耗量を推定する方法はレール上での振動の減衰が推定精度に影響を与えていました。
これに対し、レール上に複数の振動センサを最適に配置して得られた振動のパワーを合成することでレール上での振動の減衰の影響を低減した推定システムが開発されています(以下URL)。
車輪の偏摩耗量推定システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-124294/11/ja
従来は輸送の際に積み重ねられた車両の重量によって下側の車両の床面が変形して積み込みや積み下ろし作業に支障をきたすという問題がありました。
これに対し、積み込まれる車両の台車の高さを一定に保つことで車両間の相対的な位置関係を安定させた荷役設備が開発されています(以下URL)。
鉄道車両積込装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2013-193722/11/ja
従来の重金属捕捉剤は環境の変化によって性能が低下するなどの問題が挙げられます。
これに対し、従来のアルギン酸を用いた捕捉剤の代わりにカラジーナンという多糖類を使用することで安定性を高めた重金属捕捉剤が開発されています(以下URL)。
重金属捕捉剤→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2009-165966/11/ja
従来のセラミックスを添加した制輪子では車輪への攻撃性(摩耗、熱負荷)が高いという問題がありました。
これに対し、制動ブロックにセラミックスに加えて炭素材料を添加することで摩擦係数を向上させつつ車輪への攻撃性を低減させた車両用制輪子が開発されています(以下URL)。
制輪子→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2012-189175/11/ja
(2)JR東日本 
共同出願の例としては文章処理装置が挙げられます。
従来の技術では特定のキーワードによる分類やユーザーの視点に合わせた要約が困難でした。
これに対し、構造解析に基づいた分類と要約実績データの活用によってより正確な要約を生成する文章処理装置が開発されています(以下URL)。
文章処理装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-082746/11/ja
従来の鉄道車両の台車周りは走行風によって雪が堆積しやすく運転に支障をきたしていました。
これに対し、台車の側面に走行風を取込む穴(インテーク)から取込んだ空気をノズル部から端部ふさぎ板に吹き出すことこで雪を付きにくくする鉄道車両が開発されています(以下URL)。
着雪抑制鉄道車両→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-123219/11/ja
従来のシステムではプログラム更新中に車両の制御システムに負荷がかかり運行に支障が出る可能性がありました。
これに対し、列車の運行状態(停止状態、運転台の使用状況、動作モードなど)に基づいてプログラム更新が安全に行えるタイミングを判断して安全なタイミングで更新をおこなうプログラム更新制御装置が開発されています(以下URL)。
車載機器のプログラム更新システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-064440/11/ja
(3)JR東海 
共同出願の例として鉄道車両の脱線を検出する装置にが挙げられます。
従来の脱線検知装置の特定の周波数の振動による脱線の判断では軌道構造の違いによって検出が難しいケースがありました。
これに対し、車輪のフランジがレールから離れると特有の振動周波数が発生することにもとづくことでより正確に脱線を検出できるようにした装置が開発されています(以下URL)。
脱線検出装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2016-041556/11/ja
従来の気密性を確保するための膨張性シールゴムでは製造時の誤差や経年劣化により十分な気密性が得られていませんでした。
これに対し、リテイナー(固定部品)にシール堰き止め部を設けて膨張性シールゴムを確実に固定し気密性を向上させた鉄道車両が開発されています(以下URL)。
騒音等抑制鉄道車両→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-100106/11/ja
従来アンテナは高速走行時の風切り音が問題となっていました。
これに対し、平面視で五角形や三角形などの多角形形状の導体板を用いることでアンテナの高さを低く抑えることで風切り音を低減させてインダクタとキャパシタを組み合わせた共振回路により特定の周波数帯の電波を受信しやすくしたアンテナ装置が開発されています(以下URL)。
鉄道車両アンテナ装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-053844/11/ja
従来の電気車両では架線からの電力供給が途絶えると走行できなくなるという問題がありました。
これに対し、電車に搭載された複数のバッテリーを走行状態に応じて最適な組み合わせで利用する蓄電システムが開発されています(以下URL)。
電気車両蓄電システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2017-225323/11/ja
(4)JR西日本

なお、トヨタ紡織との共同出願ではいずれもJR東日本も共同出願人に含まれています。
共同出願の例として様々な種類のシートに共通の制御装置を使用できるようにしたシート装置が挙げられます。
従来のシート装置では単独シートと連結シートで異なる制御装置が必要となり設計や製造が複雑化していました。
これに対し、隣り合う座席の接続状況を各端子により検知して単独座席でも連結座席でも同じ種類の制御装置として使用できるようにしたシート装置が開発されています(以下URL)。
シート装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2015-020562/11/ja
従来の戸挟み検知装置では車両の振動による誤検知が発生する可能性がありました。
これに対し、両側のドアに設置された検知センサの出力信号の差を計算することで車両の振動による影響を低減して戸挟みを正確に検出できるようにした装置が開発されています(以下URL)。
ドアの戸挟検知装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2019-093901/11/ja
従来の装置ではパワーコンディショナが駅舎の電力系統と接続されている場合に地絡検出が困難でした。
これに対し、直流回路の電圧と電流の値を複数の点で測定して値を比較することで地絡発生時の特徴的な変化を検出する装置が開発されています(以下URL)。
地絡発生の変化検出装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2017-020996/11/ja
従来の速度計測装置ではレールの頭頂部が摩耗することで電磁波の反射が弱まり正確な速度計測が困難になるという問題がありました。
これに対し、速度センサを車両の床下に設置して電磁波をレールの側面に向けて照射することで摩耗の影響を受けにくい部分からの反射波を利用する列車制御システムが開発されています(以下URL)。
列車走行制御システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-018205/11/ja
(5)JR四国

京三製作所との共同出願の例として踏切遮断機の動作時間を測定する装置が挙げられます。
従来の方法では遮断機の駆動回路の信号を直接観測していました。
これに対し、遮断機の動作に伴う電流変化にもとづき遮断機の動作時間を算出する監視装置が開発されています(以下URL)。
踏切遮断機動作時間測定装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-075146/11/ja
従来のスラスト軸受構造では軸受内部の隙間が大きく走行中の振動などで車輪の位置がずれて走行安定性が低下するという問題がありました。
これに対し、軸受部に付加される荷重を可撓部の変形により負荷分散するなどしてスムーズな回転を実現する軸受構造体が開発されています(以下URL)。
スラスト軸受構造体→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2007-315571/11/ja
(6)JR九州

鉄道総合技術研究所との共同出願の例として脱線防止ガードの継手構造が挙げられます。
従来の逸脱防止ガードでは柔軟な構造の場合に列車が脱線した際にガード材同士がずれて脱線防止効果が低下するという問題がありました。
これに対し、ガードの一端を固定してもう一方に少しだけ遊びを持たせて橋の温度変化に対応しつつ脱線時のずれを最小限に抑えた構造継手構造が開発されています(以下URL)。
脱線防止ガード継手構造→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2014-047569/11/ja
従来の接触式やレーザーを用いた障害物検出方法には高速走行への対応や安全性などの課題がありました。
これに対し、車両の左右2つのカメラで撮影した画像を比較して障害物の3次元的な位置を計算する検出装置が開発されています(以下URL)。
パンタグラフ障害物検出装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2006-250775/11/ja
従来の鉄道車両の障害物検知には専用の測定車両を用いるなど車両の運用を中断する必要がありました。
これに対し、既存の車両に遠距離用と近距離用の複数のセンサを貫通扉に固定して様々な状況下での障害物検出できるようにした鉄道車両が開発されています(以下URL)。
障害物検知機能設置鉄道車両→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-114720/11/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(センサの選定、データの処理)、情報工学(センサからのデータの解析)
従来の橋梁点検は足場を組んで人が直接目視で行うことが一般的でした。
これに対し、橋の構造データにもとづいて自動で橋の周りを運転させ検査したい部分を撮影するようにした制御方法が開発されています(以下URL)。
構造物自動点検制御方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-201850/11/ja
(7)JR貨物

共同出願の例として鉄道の乗務員運用計画を作成するシステムが挙げられます。
従来の乗務員運用計画では長期的な周期で作成されることが多く日々変動する運行状況に対応することが難しいという問題がありました。
これに対し、乗務員の勤務を細かな単位に分割して最適な組み合わせをコンピュータで自動計算することで効率的な運行計画を作成する計画作成システムが開発されています(以下URL)。
乗務員運用計画作成システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2013-011976/11/ja
従来の鋼製枕木は製造や施工に手間がかかりコストが高くなるという問題がありました。
これに対し、鋼製枕木本体にクリップを固定するための凹み(クリップ係止曲部)を直接形成することで部品点数を減らし製造工程を簡素化した鋼製枕木が開発されています(以下URL)。
鋼製枕木→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2002-180402/11/ja
(8)上記(1)~(7)(共同出願人)のまとめ
共同出願は車両や施工装置などのモノの開発に関するものが多いです。
ただし、各社とも特定企業との共同出願件数は多くても数件/年のペースです。
また、上記共同出願の開発の主体は各共同出願人である可能性もあります。
4 開発に求められる専門性
上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。
上記3で多かった専門分野は以下のとおりです。
・電気系分野(電気電子工学など)
・機械系分野(機械工学など)
・土木、建築系分野(土木工学、建築学など)
・情報、制御系分野(情報工学、制御工学など)
・その他(材料工学など)
ただし、これらの専門は表現上のものであり、境界があいまいな場合も多く、単に大学の専攻名と結びつけられるものではないです(上記3の具体例などから判断する必要があります)。
また、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。
5 まとめ
車両やレール、監視システムなどの鉄道事業に関連する特許出願が多くあり、当該分野の開発が多くおこなわれていることが推測されます。
大学の専攻と関連づけるとしたら、特に多いものとして、電気、機械、情報、土木、建築の研究が該当する可能性があります。
本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。
参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4
以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
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<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年版、2025年版 東洋経済新報社
<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許情報を独自に分析したものです。
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