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パナソニックの研究開発職|特許からわかる技術領域・専門分野

 パナソニックのように、生活に密着した家電製品から電気自動車の二次電池、工場の自動化やサプライチェーン管理といったシステムソリューションまで極めて広大な事業ドメインを抱える総合メーカーは、その研究開発の全体像が極めて多層的です。

 身近な生活に関係するBtoCのイメージと、革新的なBtoB技術が共存しており、 研究開発の現場を外部から正確に捉えることは困難です。

 また、その事業領域の圧倒的な広さゆえに、企業サイトの断片的な情報収集だけでは、現場でどのような研究開発がおこなわれているのか、どのような専門性が求められるのか、といったことを把握するのは容易ではありません。

 この問題に対し、特許情報を活用します。

 特許情報は企業の開発の軌跡であり、客観的なエビデンスになり得る情報です。

 本記事では、採用サイトとは別の視点で、パナソニックの研究・開発職ニーズと関連する専門性を特許情報から解読します。

 

 結論(概要)は以下の通りです。

開発に求められる専門性
(1)電池関連技術:材料系、化学系、物理系の分野(材料科学、材料工学、電気化学、応用物理学など)
(2)空調関連技術:機械系、電気系、情報系の分野(機械工学、電気電子工学、制御工学、情報工学など)
(3)半導体関連技術:物理系、電気系、機械系分野(応用物理学、電気工学、機械工学など)
(4)電気加熱機器関連技術:電気系、機械系分野(電気電子工学、電気工学、人間工学など)
(5)印刷回路関連技術:機械系、電気系、情報系分野(機械工学、電気工学、制御工学、情報工学など)
(6)画像通信関連技術:情報系、電気系、機械系、材料系分野(情報工学、電気電子工学、機械工学、材料工学など)
(7)照明関連技術:物理系、機械系、材料系分野(応用物理、機構工学、材料科学など)
(8)各種システム関連技術:情報系、経営系分野(情報工学、情報科学、経営工学など)
(9)データ処理関連技術:情報系その他分野(情報工学、通信工学、ソフトウェア工学、対象とする情報に関わる分野(例えば建築情報を扱う場合は建築学)など)
(10)給電、配電等関連技術:電気系、情報系分野(電気工学、制御工学、システム工学など)
 ただし、上記専門は企業の一部の特許情報に基づくものであり、全てをあらわすものではありません。また、求められる専門は特許の解釈によって変わってきますので、個々の特許情報をご確認ください。

 

 

1 企業サーチの概要

 特許情報は企業の開発情報だと言えます。

 企業サーチは、企業の特許情報から、その企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。

 特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。

 すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。

 

2 総合メーカー

2.1 総合メーカーとは

 ここでは、いわゆる大企業で複数の分野の製品やシステムを自社で開発・製造する企業を意図します。

 企業規模や分野の数など厳密なものではありません。

 

2.2 サーチ対象

 以下の2社を対象にしました。

(1)パナソニック株式会社
(2)パナソニックIPマネジメント株式会社

 以下、上記2社をパナソニックと表記します。

 

2.3 使用プラットフォーム

 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat

 

3 サーチ結果

3.1 結果概要

開発イメージは下表のとおりです。 

 

 

モノの開発

サービスの開発

個人向け

空調システム
加熱調理機
照明システム
撮像装置
など

不要な通知を容易にオフに設定できる技術
など

法人向け

電極触媒
レーザーアニール装置
プラズマ処理システム
キャリアテープ管理装置
カメラ設置の支援装置
人員計画システム
情報処理装置
など

素子チップの製造方法
など

 

 モノの開発としては、例えば、空調システムが挙げられます。

 サービスの開発としては、例えば、素子チップの製造方法などが挙げられます。

 

3.2 出願件数の推移

 下図はパナソニックの特許出願件数の推移です。

 

 3000~5000件/年で出願されています。

 これらの出願に関わる数の開発がおこなわれていることが推測されます。

 

3.3 主な開発分野

 特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。

 出願上位10の技術分野を抽出して並べています。

 各記号は発明の技術分類をあらわします。

 発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。

 関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。

 

 個別の情報を詳しく確認したい場合は、それぞれのリンク先に飛んでください。

 特許は難解ですが、GeminiChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。

参考記事 【AI活用】難解な特許が小学生レベルの内容に!1分で特許を読み解く方法

 

 

 

 分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)

 

3.4 パナソニックの近年の開発トレンドと求められる専門の例

 特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。

 ここ10年のトレンドは以下のとおりです。

 発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。

 

(1)H01M|開発トレンドと専門性

 

 H01M化学的エネルギーを電気的エネルギーに直接変換するための方法または手段(例えば電池)に関する分類です。

 具体例として固体酸化物形燃料電池(SOFC)などに用いられる電極触媒が挙げられます。
 従来のプロトン伝導性酸化物は電解質材料としての研究が主であり、電極触媒としての性能は十分ではありませんでした。
 これに対し、定の化学式Baa​Zr1−x−y​Ybx​Fey​O3−δ​(ただし、0.95≤a≤1.05, 0<x<1, 0<y<1, 0<(x+y)<1, 0<δ<1)で表される組成により、鉄(Fe)が触媒活性サイトとして機能し、プロトン伝導性を有する電解質を用いたSOFCにおいて低い反応抵抗を示す電極触媒が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7344417/15/ja

  関連する専門分野の例:材料科学(元素の組成比率(a, x, y, δ)の最適化、原料の選定、焼成条件(温度、時間、雰囲気)の検討)、電気化学(作製された電極触媒を用いた電気化学セルの評価、電極反応機構の解明、燃料電池の性能評価)

 

 別の例として扁平形リチウム一次電池が挙げられます。
 従来の扁平形リチウム一次電池では放電に伴う正極の膨張が電池ケースの変形を引き起こし、正極ペレットとケースとの電気的接続不良により内部抵抗が増加し、十分な放電容量が得られないという問題がありました。
 これに対して、円柱形状の正極ペレットが、少なくとも一部の側周面を含む黒鉛含有率の低い第1部分と、その内側の少なくとも一部を囲む黒鉛含有率の高い第2部分とで区分され、第2部分の黒鉛含有率が高く設定されることで、放電時の正極ペレットの中心部の膨張を促進し、電池ケースの変形に対して正極ペレットとケースの良好な電気的接続を維持し、放電時の内部抵抗の上昇を抑制して高い放電容量を実現する扁平形リチウム一次電池が開発されています(以下URL)。
 黒鉛含有率が異なる第1、第2の区分設定により放電容量を高めた扁平形リチウム一次電池https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7620896/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(正極活物質の膨張メカニズムの解析、電池内部の電気伝導パスの最適化、材料の物性評価、電池の電気化学特性の測定と解析)、材工料工学(正極活物質、導電剤、結着剤の選定と配合比の最適化、正極ペレットの成形プロセスの設計、電池ケースの材料選定)

 

 さらに別の例として巻回型非水電解質電池が挙げられます。
 従来の巻回型電池では負極のリチウム-アルミニウム合金が深放電時に粒界で電気的接続が断たれやすく、低温での出力特性が低下する問題がありました。また、負極缶への圧延時に合金の粒界に割れが生じ、放電特性を悪化させる場合もありました。
 これに対して、特定の方法で製造されたリチウム-アルミニウム合金シート、具体的には、合金シート表面の平均粒界数N(ΣGi/ΣLi)が8.75以下、特定の長方形領域における対角線を横切る粒界数Gα、Gβの平均値((Gα+Gβ)/2)が14以下である合金シートにより、深放電状態においてもリチウム-アルミニウム合金粒子間の電気的接続を維持し、低温における高い出力特性を可能とする巻回型非水電解質電池が開発されています(以下URL)。
 巻回型非水電解質電池https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7653636/15/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(リチウム-アルミニウム合金の溶融、凝固、押出成形条件の最適化、合金組織の制御による粒界数の調整、負極シートの機械的特性評価)、電気化学(リチウム-アルミニウム合金負極の電気化学的挙動の解析、電池の充放電メカニズムの解明、インピーダンス測定による内部抵抗の評価、低温環境下での電池特性評価)

 

(2)F24F|開発トレンドと専門性
 
 F24F空気調節、空気加湿、換気などに関する分類です。
 具体例として空調室内機と換気装置がダクトで接続された空気調和システムが挙げられます。
 従来のシステムでは空調停止中に換気をおこなうと室内機のフィルタからの空気逆流や室温変動による無駄な再運転が発生する可能性がありました。
 これに対して、室内ファンと換気ファンが連動し、室内ファン駆動中は換気ファンも駆動、停止中は換気ファンも停止し、空調停止後の室内ファン駆動時(内部クリーン運転時など)は換気ファンが停止して空気の逆流を防ぎ、サーモオフ時は換気ファンが停止または弱風量となり無駄な換気を抑制し、空質改善モードではサーモオフ時も換気ファンが駆動し、省エネ優先モードでは停止または弱風量となり、自動切替モードでは外気温と設定温度差に基づきこれらのモードが自動で切り替わることで、利便性を確保しつつ省エネ性を高めた空調システムが開発されています(以下URL)。
 空調室内機と換気装置がダクトで接続された空気調和システムhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7507423/15/ja

  関連する専門分野の例:システム工学(空調室内機と換気装置という複数の要素が連携するシステム全体の設計、運転モードの最適化、省エネルギー性の評価、ユーザーインターフェースの設計)、制御工学(室内ファンと換気ファンの連携制御アルゴリズムの設計、運転モードの自動切替ロジックの設計、各種センサーからの情報に基づいた最適なファン駆動制御、システムの安定性と応答性の評価)

 

 別の例として冷媒センサの寿命を気づかせやすくする空気調和装置が挙げられます。
 従来の技術では冷媒センサの寿命を報知するのみで利用者がその警告に気づきにくいという課題がありました。
 これに対して、冷媒センサの積算通電時間が基準時間を超えるとリモコンに警告を発すると同時に空調運転を所定期間ごとに停止させる制御部を備えることで、空調運転の停止という明確な形で利用者に警告を認識させ、冷媒センサの交換などの適切な対応を促す空気調和装置が開発されています(以下URL)。
 冷媒センサの寿命を気づかせやすくする空気調和装置https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7617516/15/ja

  関連する専門分野の例:電気電子工学(冷媒センサの選定と回路設計、リモコンへの警告表示機能の実装、制御部のマイコンプログラミング、積算通電時間計測回路の設計)、情報工学(制御部のファームウェア設計、リモコンとの通信プロトコルの設計、警告発報と運転停止シーケンスの制御ロジック設計、積算通電時間のデータ管理)

 

 さらに別の例として樹脂製フィンガードを備える室外機が挙げられます。
 従来の室外機では金属製のフィンガードが一般的であり、錆び対策のための塗装が必要で工程とコストが増加するという問題がありました。
 これに対して、吸込口を覆うフィンガードが塗装を不要とする樹脂製で、格子状一体成形であり筐体固定部と接続する一部のガードが他のガードより太くされることで強度を高められ、吹出口には金属製のファンガードが設けられ、フィンガードに設けられた把手の少なくとも一辺が固定部接続ガードとなって運搬時の強度を確保することで、コストを抑制しつつ耐久性と室外機運搬時の施工性を向上させた室外機が開発されています(以下URL)。
 樹脂製フィンガードを備える室外機https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7660303/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(樹脂製フィンガードの形状、厚み、リブ構造などの設計、把手の配置や固定方法の検討)、生産工学(樹脂製フィンガードの量産に適した成形方法の選定、成形条件の最適化)

 

(3)H01L|開発トレンドと専門性

 

 H01L特定の半導体装置などに関する分類です。 

 具体例としてアモルファスシリコン膜のアニール処理において、結晶粒サイズに応じてレーザ光の波長を制御するレーザアニール装置が挙げられます。
 従来のレーザアニール装置では単一波長のレーザ光を使用するためアモルファスシリコン膜の状態によらず処理条件が一定となり、形成されるポリシリコン膜の品質にばらつきが生じる可能性がありました。また、複数の光源を空間合成する方式では波長ごとに照射位置や範囲がずれるという問題がありました。
 これに対して、異なる波長のレーザ光源を複数備え、各光源からのレーザ光を回折格子によって同一の光軸上に回折し、制御部ではアモルファスシリコン膜の結晶粒サイズに応じてレーザ光の出射をオンにするレーザ光源を複数の光源から少なくとも一つ以上選択可能とすることにより、照射するレーザ光の波長(420nm~460nmの範囲を含む)をアモルファスシリコン膜の状態に合わせて最適化でき、照射位置や範囲を一定に保ちつつ、均質な高品質のポリシリコン膜を形成することができるレーザアニール装置が開発されています(以下URL)。
 結晶粒サイズに応じてレーザ光の波長を制御するレーザアニール装置https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7466080/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(レーザ光源の選定と特性評価、レーザ光とアモルファスシリコン膜の相互作用の解析、回折格子の設計と光学系の構築、レーザ照射条件とポリシリコン膜の結晶性との関係の検証)、電気工学(レーザ光源の駆動回路設計、装置全体の電力制御システム設計、制御部のハードウェア設計、各種センサーからの信号処理回路設計)

 

 別の例として金属膜を有する半導体基板を分割する素子チップの製造方法が挙げられます。
 従来のダイシング方法では金属膜が反応性に乏しい場合、プラズマエッチングが困難であり精度にも課題がありました。
 これに対して、まず基板裏面のアライメントマークに対応する領域を露出させ、カメラでマークを撮像して分割領域の位置を算出し、次に算出された分割領域に対応する金属膜をレーザ光で除去して半導体層を露出させ、その後、露出した半導体層を除去することで高精度なダイシングを実現する素子チップの製造方法が開発されています(以下URL)。
 金属膜を有する半導体基板を分割する素子チップの製造方法https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7641519/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(レーザ加工ヘッドの機構設計、基板を正確に位置決めするステージの設計、自動搬送ロボットの制御システムの構築)、物理工学(半導体材料の光学特性の評価、撮像に適した波長範囲の特定、レーザー照射による金属膜の溶融や蒸発の現象の解析、最適なレーザー光源や照射条件の設定)

 

 さらに別の例としてプラズマ処理システムが挙げられます。
  従来技術では部品が劣化するとプラズマ処理の継続が困難となり装置停止とメンテナンスが必要でした。
 これに対して、部品の劣化度に基づいてプラズマ処理条件の設定値の許容範囲が決定され、設定値が許容範囲を外れた場合に許容範囲内に収まるようにレシピが自動的に変更されることで、部品が劣化してもプラズマ処理を停止することなく継続することが可能なプラズマ処理システムが開発されています(以下URL)。
 プラズマ処理システムhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7637893/15/ja

  関連する専門分野の例:電気電子工学(プラズマ処理装置の制御システムの設計、各種センサーによる部品の劣化度を検出するシステムの構築、プラズマ発生のための電源制御、レシピの自動変更アルゴリズムの設計)、応用物理学(プラズマと処理対象物や装置部品との相互作用の解析、部品の劣化がプラズマ状態に与える影響の評価、最適なプラズマ処理条件の探索)

 

(4)H05B|開発トレンドと専門性

 

 H05B電気加熱などに関する分類です。

 具体例として複数の加熱領域を有する誘導加熱調理器のコイルユニットが挙げられます。
 従来の誘導加熱調理器では加熱ムラが生じやすく効率的な加熱が求められていました。
 これに対して、中央の円形状の第1加熱領域とその周囲に配置された扇形状の第2加熱領域を備え、第2加熱領域が放射状の境界ラインによって複数のコイル配置領域に分割され、各領域に沿ってコイルピースが配置されることで、第1加熱領域と第2加熱領域の組み合わせによって加熱対象物をより均一かつ効率的に加熱することが可能なコイルユニットが開発されています(以下URL)。
 複数の加熱領域を有する誘導加熱調理器のコイルユニットhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7634206/15/ja

  関連する専門分野の例:電気工学(最適なコイル駆動方法や安全な回路設計、ユーザーフレンドリーな制御インターフェースの検討)、機械工学(コイルの冷却構造の設計、トッププレートの材質選定、調理容器との熱的接触の最適化、過熱防止機構の設計)

 

 別の例として加熱調理器が挙げられます。
 従来の薄型加熱調理器では内部温度の上昇の問題があり、効果的な放熱機構が求められていました。
 これに対して、吸気口が筐体の一端に設けられ、加熱コイル下方の制御基板に配置された発熱部品に対し第1のヒートシンクが加熱コイルと操作ユニット間に、第2のヒートシンクが操作ユニットの側方に吸気口方向へ延伸して配置されることにより、吸気された冷却風が効率的にヒートシンクに当たり、薄型化を実現しつつ効果的な放熱を可能にする加熱調理機が開発されています(以下URL)。
 加熱調理器https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7599104/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(効率的な冷却構造の設計、筐体の空気流路の最適化、ファンの選定と配置、熱シミュレーションによる冷却性能の評価)、電気工学(発熱部品の特性評価、適切なヒートシンクの選定、冷却システムの電気的制御、システム全体の熱設計)

 

 さらに別の例として照明システムが挙げられます。
 従来の照明システムではタスクライトとアンビエントライトが固定されており、空間のレイアウト変更時に照明環境を容易に変更できませんでした。
 これに対して、複数の機能ユニット(タスク照明用とアンビエント照明用)が取付ベースの複数のエリアに着脱可能に配置されることで、必要に応じて各照明ユニットの数や配置を柔軟に変更でき、空間の変化に合わせた最適な照明環境を容易に構築可能な照明システムが開発されています(以下URL)。
 照明システムhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7603266/15/ja

  関連する専門分野の例:建築学(照度分布シミュレーションによる最適なユニット配置の検討、グレアやコントラストを考慮した照明設計、省エネルギーに配慮した制御システムの提案、建築基準法や関連法規への適合性の確認)、人間工学(各種作業における適切な照度や色温度の調査、照明条件と作業効率・疲労度の関係の実験的評価、利用者の主観評価による快適性の検証)

 

(5)H05K|開発トレンドと専門性

 

 H05K印刷回路などに関する分類です。 

 具体例として電子部品梱包キャリアテープのリール情報を管理し、テープ終端の状態を自動判定するキャリアテープ管理装置が挙げられます。
 従来、作業者はキャリアテープの終端状態を自身で判断し、部品実装機へのセット前に手作業で前処理をおこなう必要があり、判断ミスや作業負荷が問題になっていました。
 これに対して、テープ種別ごとの終端状態を記録したデータベースとリールのコード読取部、コード情報から終端情報を取得し状態を判定する終端判定部、判定結果をリール毎に記録するデータベースを備えることにより、リールコードを読み取るだけでテープ終端の状態が自動的に判定され、作業者が前処理を効率的におこなうことができるキャリアテープ管理装置が開発されています(以下URL)。
 キャリアテープ管理装置https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7573230/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(高速かつ正確なリールコード読取機構(第1読取り部)の設計、キャリアテープの終端状態を非接触で高精度に検出する機構やセンシング技術の検討、キャリアテープやリールの搬送機構、装置全体の動作制御に関する設計)、情報工学(テープ種別と終端情報を紐付ける終端情報データベースの設計・構築、リールコードからテープ種別を特定して該当する終端情報をデータベースから検索するアルゴリズムの設計)

 

 別の例として部品搭載装置を含む実装ラインにおいて部品吸着用の真空ポンプの無駄な運転を抑制する実装基板製造システムが挙げられます。
 従来の部品搭載装置では部品搭載作業がおこなわれていない間も真空ポンプが運転し続けるため電力消費の無駄が多く更なる省エネルギー化が求められていました。
 これに対して、部品搭載ヘッドと真空ポンプを有する部品搭載装置を含む実装ラインにおいて、ライン稼働中に真空ポンプの停止・再開を判断する判断部とそれに基づきポンプを制御する真空ポンプ制御部を備え、判断部では部品搭載作業がおこなわれずにポンプ運転開始からの時間が故障防止のための第1時間に達した場合にはポンプ停止を判断することで不必要なポンプ運転を停止させ、省エネルギー効果を高める実装基板製造システムが開発されています(以下URL)。
 部品吸着用の真空ポンプの無駄な運転を抑制する実装基板製造システムhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7561400/15/ja

  関連する専門分野の例:電気電子工学(真空ポンプの効率的な運転制御をおこなうための電力制御回路および制御アルゴリズム設計、ポンプの運転時間や停止時間を高精度に計測するタイマー回路の設計)、制御工学(ポンプの停止・再開のタイミングを最適化する判断ロジックの検討、ポンプの運転時間に基づいて故障リスクを評価して安全な範囲でポンプを停止させるための制御アルゴリズムの設計)

 

 さらに別の例として部品がキャリアテープによって梱包されたロール体を収納する無線タグ付きカセットを用いた部品搭載装置が挙げられます。
 従来の部品搭載装置ではロール体の交換時にトレーサビリティが不明になるという問題がありました。
 これに対して、第1と第2のカセットが直列に配置され、部品供給ユニットが第2のカセットからテープ搬送を開始するのに連動して第1のカセットの無線タグ情報を更新する構成により、ロール体の移動と対応して無線タグ情報が更新され、ロール体のトレーサビリティを確保することができる部品搭載装置が開発されています(以下URL)。
 部品搭載装置https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7630093/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(カセットの出し入れ機構、キャリアテープの搬送機構、部品供給ユニットの装着機構の設計)、情報工学(無線タグからの情報を効率的に読み取り管理するためのデータ処理アルゴリズム設計、部品供給ユニットの動作と無線タグ情報の更新をリアルタイムに連携させるための制御ソフトウェアの設計)

 

(6)H04N|開発トレンドと専門性

 

 H04N画像通信に関する分類です。

 具体例として複数の撮影装置を用いた顔認証システムにおいて適切なカメラ設置を支援する技術が挙げられます。
 既存技術では複数の監視カメラの重複範囲表示はあったものの顔認証に必要な人物追跡のためのカメラ配置に関する具体的な支援機能は不足していました。特に、通路における人物の移動を複数のカメラで途切れることなく捉えるための設置方法が課題でした。
 これに対して、通路の地面からの高さを入力する入力部と、入力された高さにおける各撮影装置の水平断面での撮影範囲およびそれらの重複範囲を算出する制御部と、算出した撮影範囲や重複範囲を通路内の所定領域と共に表示する表示部とを備えることで、入力した高さにおいて各撮影装置の撮影範囲がどのように重なり合い、通路全体をカバーできるのかを視覚的に確認できて、人物の移動を途切れることなく捉えて高精度な認証を実現するためのカメラ設置をおこなうことができる設置支援装置が開発されています(以下URL)。
 適切なカメラ設置を支援する技術https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7445906/15/ja

  関連する専門分野の例:情報工学(入力されたパラメータに基づいて撮影範囲や重複範囲を正確に計算するアルゴリズム設計、ユーザが直感的に操作できるGUIの設計)、電気電子工学(撮影装置の光学特性を考慮した撮影範囲の算出方法の検討、設置環境における光の状況やノイズなどが撮影範囲に与える影響の分析)

 

 別の例として撮像素子から発生する熱を効率的にハウジングへ伝達して放熱性を高めるための撮像装置が挙げられます。
 従来の撮像装置では撮像素子とハウジングが熱伝導シートを介して接続されていましたが、シートとハウジングとの接触面積が限られており十分な放熱性が得られない場合がありました。
 これに対して、撮像素子を含む撮像モジュールとハウジングの間に熱伝導シートが配置され、この熱伝導シートは撮像モジュールに接触する第1の端部とハウジング内面に接触する第2の端部を備え、さらに第1の端部と第2の端部の中間部が外側に凸状に湾曲してハウジング内面の一部に接触する構造であり、この湾曲した中間部がハウジングと接触することで、熱伝導シートとハウジング間の接触面積が増加し、撮像モジュールからハウジングへの熱伝達効率が向上し、装置全体の放熱性を高めた撮像装置が開発されています(以下URL)。
 放熱性を高めた撮像装置https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7291897/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(最適な放熱設計をおこなうための熱解析シミュレーション、熱伝導シートの湾曲形状、接触面積、圧力分布などが熱伝達効率に与える影響の評価)、材料工学(撮像モジュールやハウジングの材質、熱伝導シートの材料の選定、それぞれの熱的特性(熱伝導率、熱抵抗など)の評価)

 

 さらに別の例として主映像に重畳されたグラフィックスの輝度を、主映像の輝度に応じて調整する映像処理方法が挙げられます。
 既存技術ではグラフィックス(例えば字幕)が重畳された映像において主映像とグラフィックスの輝度を独立して調整することが困難でした。特に、主映像の輝度に合わせてグラフィックスの輝度を適切に調整する機能が不足していました。
 これに対して、まず入力された第1映像信号からグラフィックスが重畳された第1領域を検出し、次に第1映像から第1領域を除いた第2領域(主映像領域)のピーク輝度(第1ピーク輝度)を算出し、第1映像全体に対して第1ピーク輝度よりも大きい輝度を低減するトーンマップ処理(第1ピーク輝度以下の輝度は低減されない)をおこない、最後にトーンマップ処理後の第2映像を示す第2映像信号を出力することで、主映像の輝度を維持しつつグラフィックスの輝度のみを調整することが可能となる映像処理方法が開発されています(以下URL)。
 主映像に重畳されたグラフィックスの輝度を調整する映像処理方法https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7641516/15/ja

  関連する専門分野の例:情報工学(映像信号からグラフィックス領域を正確かつ効率的に検出するアルゴリズムの設計、色情報、形状、時間的な変化などの特徴量から誤検出を低減する手法の検討)、電気電子工学(映像信号を扱うための電子回路やシステムの設計、高速な映像処理を実現するためのハードウェアアーキテクチャの検討、実装)

 

(7)F21S|開発トレンドと専門性

 

 F21S非携帯の照明装置などに関する分類です。

 具体例として基板の無駄を減らしつつ照明器具のランプイメージを大きく見せるための照明器具が挙げられます。
  従来の照明器具では発光素子を配置する基板に円弧状の形状を用いることがあり、一枚の板材から複数の基板を切り出す際に無駄が多くなるという問題がありました。また、円形のランプイメージを大きく見せるためには発光素子を円環状に配置することが望ましいものの基板の形状との兼ね合いが課題でした。
 これに対して、多角形状の外形を有する基板とその主面に配置された複数の発光素子を備え、発光素子は基板の外形に沿った第1素子列、その内側の第2素子列、そして第1と第2素子列の間に配置された第3発光素子を含み、基板の辺に沿った第1領域よりも角部に近い第2領域において第1素子列と第2素子列の間隔が大きくされ、その第2領域に第3発光素子が配置されることで、角部付近の発光素子の密度を高めてランプイメージを大きく見せることを可能にした照明器具が開発されています(以下URL)。
 照明器具のランプイメージを大きく見せるための照明器具https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-018702/11/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(多角形状の基板における発光素子の配置と照明器具全体の配光特性の評価、発光モジュールからの光を効率よく拡散・集光させて意図したランプイメージを実現するための光学設計)、材料科学(照明器具に使用される基板、光学部材、筐体などの材料の選定、発光素子から発生する熱を効率的に放散するための基板材料や構造の検討)

 

 別の例として導光体を用いた照明装置が挙げられます。
  従来のプリズム導光体を用いた照明装置ではプリズム面からの意図しない光の漏れが多く光の利用効率や制御性に課題がありました。
 これに対して、凹プリズムを有する第1導光体と凸プリズムを有する第2導光体が、それぞれのプリズム面において複数の凹プリズムと複数の凸プリズムとが空気層を介して嵌合するように配置され(第1導光体と第2導光体は同じ材料、プリズムは軸対称の円錐形状または半球形状)、光源からの光を少なくとも一方の端面から入射させ、第1導光体から漏れやすい光を空気層を透過して第2導光体へ導き、第2導光体内部で反射させることでその光を再び第1導光体に戻し光の利用効率を高め、制御可能な光を増加させる照明装置が開発されています(以下URL)。
 導光体を用いた照明装置https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7637915/15/ja

  関連する専門分野の例:光工学(凹プリズムと凸プリズムを用いた導光体の設計、所望の配光特性を実現するための精密なプリズム形状、配置および空気層の設計)、応用物理学(プリズム界面における光の挙動のモデル化、光制御のメカニズム解明、照明光の色味や演色性を評価・改善するための検討)

 

 さらに別の例としてプリズム導光板が挙げられます。
 従来のプリズム導光板を用いた照明装置では、光が出射する第1主面と反対側の第2主面に形成されたプリズムの制御角を小さくすることでグレアを抑制しようとすると導光板の表面や内部の異物あるいは表面の傷が目立ちやすくなり、外観品質が低下するという問題がありました。
 これに対して、光源から入射した光が出射する第1主面と、その反対側に位置し、二次元状に複数の凹状の第1プリズムが形成された第2主面とを有する導光板において、前記複数の第1プリズムの少なくとも一つに重なるように1つ以上の凹状の第2プリズムが形成され、この第2プリズムの制御角は第1プリズムよりも大きく、第1プリズムは光源の光軸と交差する方向に長尺状の長溝形状を有し、正面視において1つの第1プリズムにおける第2プリズムの総開口面積は当該第1プリズムの開口面積の10分の1以下、というプリズム構成により、照明装置におけるグレアを抑制しつつ導光板表面や内部の異物や表面の傷が目立つのを抑制し、外観品質の低下を防ぐ導光板が開発されています(以下URL)。
 プリズム導光板https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7515058/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(導光板内部における光の伝搬、第1プリズムおよび第2プリズムでの反射・屈折の挙動の解析、第1プリズムの長溝形状、第2プリズムの形状・配置・制御角、両プリズムのサイズ比率などが導光板の配光特性や異物・傷の視認性に与える影響の評価)、材料工学(導光板の材料として適切な透明性、屈折率、耐候性、成形性を有する高分子材料の選定、成形条件の最適化、第2主面に微細なプリズム構造を高精度かつ均一に形成するための金型設計および製造プロセスの検討)

 

(8)G06Q|開発トレンドと専門性

 

 G06Q管理目的、商用目的、金融目的、経営目的または監督目的に特に適合した情報通信技術などに関係する分類です。

 具体例として複数のタスクに人員を割り当てる人員計画システムが挙げられます。
  既存の人員計画では物量や生産性の変動、人数や時間の制約、タスク間の時間的な制約などを考慮して効率的な人員配置を行うことが困難でした。特に、複数の現場で物量や生産性が異なる場合や時間帯によって必要な人数が変動する場合に人数の過不足を抑えつつ生産性を向上させることは難しいという問題がありました。
 これに対して、各タスクの物量を生産性で除算して業務量を算出し、可変タスクの人数や時間を制約条件内で変動させながら総人時を指標とするベーススコアと制約違反の程度を指標とするペナルティスコアに基づいた複合スコアを最適化することにより、物量や生産性が異なる複数の現場において人数の変動を抑制しつつ生産性の向上を図る人員計画情報を提供する人員計画システムが開発されています(以下URL)。
 複数のタスクに人員を割り当てる人員計画システムhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7422339/15/ja

  関連する専門分野の例:経営工学(タスクの特性、人員の能力、制約条件などの分析に基づく数理的なモデルの構築、総人時の最小化、制約違反の低減、人員配置の平準化といった目標を達成するための計画策定アルゴリズムの開発)、情報工学(可変タスクの変動範囲やタスク間の制約を効率的に処理するためのデータ構造や探索手法の設計、ベーススコアとペナルティスコアのバランスを調整するメカニズムや補正スコアの設計)

 

 別の例として倉庫における荷物作業と輸送車の動態を一元的に可視化する作業管理装置が挙げられます。
 従来の倉庫管理システムでは倉庫内の作業進捗と輸送車の到着・出発状況を別々に管理しており、サプライチェーン全体での状況把握が困難でした。例えば、ピッキング作業の遅延が輸送車の出発に与える影響などをリアルタイムに把握することが難しいという問題がありました。
 これに対して、倉庫作業、作業進捗、輸送の各データベースを備えて、進捗監視部が輸送車の計画停車時間、荷物作業の計画作業時間および実際の作業進捗を共通の時間軸上に統合した進捗状況グラフを表示することにより、管理者が倉庫作業と輸送の連携状況をリアルタイムに把握し、遅延やボトルネックを早期に発見し適切な対応を取ることが可能となる作業管理装置が開発されています(以下URL)。
 倉庫における荷物作業と輸送車の動態を一元的に可視化する作業管理装置https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7382588/15/ja

  関連する専門分野の例:経営工学(倉庫作業情報、作業進捗情報、輸送情報などの複数のデータソースの統合、ボトルネックとなっている作業や輸送ルートの特定、サプライチェーン全体を最適化する情報フローの設計)、情報工学(リアルタイムでの情報更新や高速なデータ検索を実現するためのデータベース設計、ネットワーク設計、進捗監視部が生成する各種グラフを所定の表示装置に適切に表示するためのプログラム設計)

 

 さらに別の例として施設内の人の実測された動線情報に基づきレイアウト変更後の動線をシミュレーションするプログラムが挙げられます。
 従来の技術では作業者の実績に基づいて作業を割り付けるなどの管理はおこなわれていましたが、物品や構造物のレイアウト変更が人の動線に与える影響を事前にシミュレーションする手法は十分ではありませんでした。これにより、レイアウト変更後の作業効率の低下や動線の無駄を招く可能性がありました。
 これに対して、まず施設内で実際に計測された人の動線情報を取得し、その情報に基づいて動線に関する第一パラメータ(例:エリア間の移動回数)を算出し、次にユーザが手動で入力した変更後のレイアウト情報(変更点)を取得して実測された動線情報と変更後レイアウト情報に基づいて変更後のレイアウトにおける人の動線に関する第二パラメータ(例:総移動距離)をシミュレーションし、変更前後の動線パラメータを比較して出力することで、レイアウト変更の効果を予測可能にするプログラムが開発されています(以下URL)。
 レイアウト変更後の動線をシミュレーションするプログラムhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7620886/15/ja

  関連する専門分野の例:人間工学(実測された動線データの分析、移動距離、移動時間、立ち止まり頻度などのパラメータが作業効率や疲労度に与える影響の評価、ユーザが入力する変更後レイアウト情報が人の認知特性や動作特性にどのように影響するかの予測)、情報科学(実測された動線データから人の移動パターンや行動特性を抽出するためのデータ解析手法の検討、機械学習モデルによるレイアウト変更案に対する動線パラメータの変化を高精度に予測するシミュレーションモデルの構築)

 

(9)G06F|開発トレンドと専門性

 

 G06F電気的デジタルデータ処理に関する分類です。

 具体例としてBIM(Building Information Modeling)データを利用し、建物モデルにおける特定の空間の空質(空気齢、温度分布など)を高精度に算出する情報処理装置が挙げられます。
 従来のBIMデータは建物の設計に必要な構造や設備の情報は含むものの、流体解析や熱解析を高精度に行うための詳細なデータが不足していました。そのため、BIMデータだけでは建物の空間の空質を正確にシミュレーションすることが困難であり、設計段階での詳細な検討が不足する可能性がありました。また、解析に必要なデータをBIMデータに含めるとデータ量が増大し設計効率を低下させる恐れがありました。
 これに対して、建物の構造や設備情報を含むBIMデータを格納する第1データベースとシミュレーションに必要な補填情報を格納する第2データベースを備え、プロセッサが第1データベースから建物モデルの特定空間を構成するオブジェクトの情報を取得し、第2データベースからそのオブジェクトの空気の流出入に関する補填情報を取得し、取得した空気の流出入に関する情報を用いてシミュレーションを実行することで当該空間の空質情報を算出することにより、設計段階においてBIMデータを活用しつつ、高精度な空質シミュレーションが可能にする情報処理装置が開発されています(以下URL)。
 BIMデータを利用し、建物モデルにおける特定の空間の空質を高精度に算出する情報処理装置https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7660319/15/ja

  関連する専門分野の例:建築学(意匠設計、構造設計、設備設計などの設計段階との連携を考慮したBIMデータと補填情報の効率的な統合方法の検討、設計者が空質シミュレーションの結果をどのように活用できるかの検討)、機械工学(換気設備や建具の配置、隙間の大きさなどが建物全体の空気の流れや温度分布に与える影響の分析、シミュレーションに必要なパラメータの特定、効率的で精度の高いシミュレーション手法の選定)

 

 別の例として家電機器などの動作状態に応じて通知を行う提示システムにおいてユーザが不要な通知を容易にオフに設定できるようにする技術が挙げられます。
 従来の技術では通知のオフ設定が煩雑であり、ユーザは多くの通知の中からオフにしたいものを特定して設定操作をおこなう必要がありました。これはユーザにとって手間であり端末側にも処理負荷がかかるという問題がありました。
 これに対して、機器の動作状態に対応した通知を提示するサーバと提示装置、そして通知のオンオフ設定を行う情報端末を備え、サーバが提示した通知の履歴を記憶し、情報端末がサーバからその履歴を取得して表示するため、ユーザーはこの履歴を見ながらオフにしたい通知を選択するだけで簡単にオフ設定が可能となり、また、情報端末からオフ情報がサーバに送信されるとサーバは対応する通知の送信を停止するため、ユーザは過去の通知履歴に基づいて不要な通知を容易に管理できる提示システムが開発されています(以下URL)。
 家電機器などの動作状態に応じて通知を行う提示システムhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7349642/15/ja

  関連する専門分野の例:情報工学(通知履歴の見やすさ、オフ設定を行う際の操作性、一括設定機能の使いやすさなどを考慮した最適なUIの検討、通知の重要度や種類に応じた通知管理方法(例えば、時間帯別設定、特定の機器からの通知の一括オフなど)の検討)、通信工学(情報端末からの履歴要求やオフ設定情報の送信、サーバから提示装置への通知送信などがスムーズにおこなわれるよう適切な通信プロトコルやデータ形式の選定・実装、通信エラーが発生した場合の再送処理やネットワーク負荷を軽減するためのデータ圧縮などの検討・実装)

 

 さらに別の例としてタッチパネル付き表示器におけるコンテンツ表示方法が挙げられます。
 従来のメッセンジャーアプリなどでは過去の会話に関連する情報(例えば、会話中に話題になった写真など)にアクセスする際、画面をスクロールしたり別の操作を行ったりする必要があり操作性が課題となっていました。
 これに対して、まず表示器に第1コンテンツ(例:会話履歴)を表示し、第1の方向(例:縦方向)のユーザーのタッチ操作に基づき第1コンテンツを移動させるとともに関連する第2コンテンツのインデックスを画面の辺付近に第1の方向に沿って移動させ、次にインデックスに対応する位置から第1の方向と異なる第2の方向(例:横方向)のタッチ操作を受け付けると第2コンテンツ(例:写真)を表示(第2コンテンツのインデックスの大きさを会話の盛り上がり度合いに応じて動的に変化)することで、関連情報の視認性を高め、ユーザが会話の流れを中断させることなく直感的かつ迅速に関連コンテンツにアクセスできるコンテンツ表示方法が開発されています(以下URL)。
 タッチパネル付き表示器におけるコンテンツ表示方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7190718/15/ja

  関連する専門分野の例:認知科学(インデックスの形状、大きさ、配置、移動速度、および動的な変化がユーザの操作性と視認性に与える影響の評価、最も直感的で効率的な操作方法と情報提示方法の設計)、ソフトウェア工学(タッチパネルからの入力処理、コンテンツデータの管理、画面描画処理、アニメーション制御などの最適化、異なるOSやハードウェア環境への移植性や拡張性を考慮したソフトウェア設計)

 

(10)H02J|開発トレンドと専門性

 

 H02J電力給電または電力配電のための回路装置または方式などに関する分類です。

 具体例として停電時に電力バックアップをおこなう電力バックアップシステムの回路が挙げられます。
 従来の電力バックアップシステムでは停電時に手動で電源ケーブルを繋ぎ替える必要があったり、漏電対策が不十分な構成であったりする場合がありユーザの利便性や安全性の面で課題がありました。
 これに対して、通常時は分電盤と負荷(設備)が接続されて漏電対策回路が第二回路から切り離された状態を維持し、停電時にはポータブル電源装置と負荷が電気的に接続されるとともにポータブル電源装置と負荷を含む第一回路に漏電対策回路が電気的に接続する状態に自動的に切り替わることにより、停電時でも漏電の危険性を低減しつつポータブル電源装置からの電力を負荷へ安全かつ自動的に供給できる回路が開発されています(以下URL)。
 電力バックアップシステムの回路https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7630106/15/ja

  関連する専門分野の例:電気工学(通常運転時と停電時の電圧・電流の変化、過負荷や短絡に対する保護機能および漏電遮断器の動作特性などの検討、信頼性の高い回路素子の選定、切り替え時の瞬断時間や過渡現象が負荷に与える影響の評価、適切な保護回路や遅延回路の設計)、制御工学(停電の検出、切り替え信号の生成、リレーやスイッチング素子の駆動シーケンスの制御およびシステム全体のシーケンス制御の設計、誤動作やチャタリングを防止するための制御ロジックや負荷の種類に応じた切り替えタイミングの制御アルゴリズム設計)

 

 別の例として絶縁電線から静電誘導を利用して電力を生成する電力生成システムが挙げられます。
 従来の技術では裸電線からの静電誘導による電力生成は可能でしたが、絶縁体で覆われた一般的な絶縁電線(例えばVVFケーブル)には適用できませんでした。絶縁電線は安全性の観点から広く普及しており、ここから電力を取り出せる技術が求められていました。
 これに対して、絶縁電線に取り付けられる第1モジュール(受電モジュール)と絶縁電線に高周波電圧を印加する第2モジュール(給電モジュール)とを備え、第1モジュールは絶縁電線の複数の導体に対向する複数の電極とこれらの電極に接続された電源回路を有し、第2モジュールから絶縁電線に印加された高周波電圧に基づき導体と電極間の静電容量によって発生する電気エネルギーを電力に変換することで絶縁電線でも効率的に静電容量を介した電力生成が可能な電力生成システムが開発されています(以下URL)。
 絶縁電線から静電誘導を利用して電力を生成する電力生成システムhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7649997/15/ja

  関連する専門分野の例:電気電子工学(絶縁破壊を引き起こさない高周波電圧の範囲の評価、効率的な電力生成と安全性を両立させるための条件の特定、電極材料の選定、電極間の距離、絶縁体の誘電率などが静電容量に与える影響の解析、所望の電力を得るための最適な電極構造の設計)、応用物理学(絶縁体の誘電特性が高周波電界下でどのように振る舞うかの評価、電極形状や配置による電界分布の変化の解析)

 

 さらに別の例として電力系統と連携し自然エネルギー発電、蓄電、燃料電池発電を組み合わせた電力供給システムが挙げられます。
 従来の電力供給システムでは自然エネルギーの有効活用や負荷への電力供給の安定化が図られていましたが、電力系統との連携時の電気代、特に買電料金と売電料金の差額を考慮した運転制御は十分ではありませんでした。そのため、系統からの購入電力が増加して電気代が高くなる可能性がありました。
 これに対して、自然エネルギー発電装置、余剰電力を充電する蓄電装置、水素貯蔵装置と燃料電池システムおよび制御装置を備え、制御装置が自然エネルギー発電の余剰電力のピーク時間帯前に買電料金または買電料金と売電料金との差である電気代に基づき蓄電装置と燃料電池システムから負荷へ供給する電力の比率を制御(特に、負荷の需要電力のピーク時間帯以降に蓄電装置が放電可能な容量を残存させるように電力比率を制御)することで、ピーク時の買電を抑制し、電気代を低減する電力供給システムが開発されています(以下URL)。
 電力系統と連携し自然エネルギー発電、蓄電、燃料電池発電を組み合わせた電力供給システムhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7457926/15/ja

  関連する専門分野の例:電気工学(各機器(自然エネルギー発電装置、蓄電装置、燃料電池システム)を連携させるための電力変換回路や制御システムの設計、電力系統への接続技術の検討、系統連系保護システムの構築)、システム工学(複数のエネルギー源と負荷、電力系統が連携するシステム全体の最適化、リアルタイムでの充放電計画や電力供給比率を決定するアルゴリズムの設計)

 

3.5 共同出願人との開発例

 共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。

 技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。

 共同出願人(筆頭出願人)は以下のとおりです。

 

 トヨタ自動車との共同出願が突出しています(詳細は省略しますが、全固体電池などの電池関係の出願が非常に多いです)。

 具体例として全固体電池の電極が挙げられます。
 既存の全固体電池では活物質と硫化物固体電解質が直接接触すると固体電解質の劣化が促進され、イオン伝導性が低下し、電池抵抗が増加する問題がありました。これを防ぐため活物質を酸化物固体電解質で被覆するなどの対策が取られてきましたが、耐久後の抵抗増加率には依然として改善の余地がありました。
 これに対して、活物質を含むコア粒子の表面をフッ化物固体電解質(第1層)と硫化物固体電解質(第2層)で被覆した複合粒子とイミダゾリン系化合物とを含有する活物質層を有し、イミダゾリン系化合物が特定の量(複合粒子100質量部に対し0.05~0.1質量部)配合されることで、複合粒子の分散性が向上し、充放電時の活物質の体積変化によるイオン伝導パスや電子伝導パスの断裂を抑制し、活物質と硫化物固体電解質の間に反応性の低いフッ化物固体電解質層が設けられることで、耐久時の抵抗増加を抑制する電極が開発されています(以下URL)。
 全固体電池の電極https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7609828/15/ja

  関連する専門分野の例:応用化学(耐久性に優れた新規なフッ化物固体電解質の組成や合成プロセスの検討、複合粒子における各層の界面構造の最適化)、材料工学(コア粒子へのフッ化物層および硫化物層の均一な被覆技術の検討、イミダゾリン系化合物を用いたスラリーの分散制御技術の確立、活物質層の緻密化技術の検討)

 

4 開発に求められる専門性

 上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。

 上記各特許情報には以下の人材が関わっていると言えます。

 優先順位が高いと思われるものに焦点を当てています。

 

(1)電池関連(H01M)

材料系、化学系、物理系の分野(材料科学、材料工学、電気化学、応用物理学など)

 固体電解質や電極などの出願が関係します。
 例えば、電池素材の物性評価、選定、成形方法の検討、電気化学的なメカニズムの解析などが求められます。 

 

(2)空調関連(F24F)

機械系、電気系、情報系の分野(機械工学、電気電子工学、制御工学、情報工学など)

 空調装置などに関する出願が関係します。
 例えば、各部や全体の構造設計、回路設計、運転制御設計などが求められます。

 

(3)半導体関連(H01L)

物理系、電気系、機械系分野(応用物理学、電気工学、機械工学など)

 チップの製造装置などに関する出願が関係します。
 例えば、レーザーなどの物性評価、装置の回路や制御の設計、構造設計などが求められます。

 

(4)電気加熱機器関連(H05B)

電気系、機械系分野(電気電子工学、電気工学、人間工学など)

 加熱調理機や照明システムなどに関する出願が関係します。
 例えば、回路設計、構造設計などが求められます。

 

(5)印刷回路関連(H05K)

機械系、電気系、情報系分野(機械工学、電気工学、制御工学、情報工学など)

 基板制御装置などに関する出願が関係します。
 例えば、装置の構造設計、回路設計、制御アルゴリズム設計などが求められます。

 

(6)画像通信関連(H04N)

情報系、電気系、機械系、材料系分野(情報工学、電気電子工学、機械工学、材料工学など)

 撮像装置などに関する出願が関係します。
 例えば、信号検出などのアルゴリズム設計、回路設計、構造設計、材料の評価、選定などが求められます。 

 

(7)照明関連(F21S)

物理系、機械系、材料系分野(応用物理、機構工学、材料科学など)

 照明器具などに関する出願が関係します。
 例えば、発光素子の評価や光学的設計、構造設計、材料の評価、選定などが求められます。 

 

(8)各種システム関連(G06Q)

情報系、経営系分野(情報工学、情報科学、経営工学など)

 人員計画システムや作業管理装置などに関する出願が関係します。
 例えば、効率的な情報処理のためのシステム構築、経営管理要素を踏まえたモデル設計などが求められます。 

 

(9)データ処理関連(G06F)

情報系その他分野(情報工学、通信工学、ソフトウェア工学、対象とする情報に関わる分野(例えば建築情報を扱う場合は建築学)など)

 表示方法などに関する出願が関係します。
 例えば、目的とする情報を処理、表示するための設計、制御、ユーザーインターフェースの検討などが求められます。 

 

(10)給電、配電等関連(H02J)

電気系、情報系分野(電気工学、制御工学、システム工学など)

 電力供給システムなどに関する出願が関係します。
 例えば、電力変換回路や制御システムの設計、目的とする処理をおこなうアルゴリズム設計などが求められます。 

 

 ただし、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。

 

5 まとめ

 電池から電力供給システムまで広範囲で特許出願されており、おこなわれている開発や求められる専門性も多岐にわたると考えられます。

 大学の専攻と関連づけるとしたら、主に電気、機械、情報、化学における研究分野が該当する可能性があります。

 

 本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。

 興味を持った企業がある場合は、その企業に絞って調べることをおすすめします。

 参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4

 以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。

 

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<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年版 東洋経済新報社

<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許情報を独自に分析したものです。
・本サイトでは、特許情報を正確かつ最新の状態でお伝えするよう努めていますが、情報の完全性を保証するものではありません。
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