海外では電気自動車(EV)シェアが拡大する一方、国内でのEV普及は停滞している印象です。
将来にそなえ、国内メーカーもEV開発に取組んでいるはずですが、どのような企業がEVのどのような技術開発に取り組んでいるのでしょうか?
今現在の開発が将来の勢力図を変える可能性もあるはずです。
これを特許情報からみていきます。
特許情報は企業の開発情報だと言えます。
実際にどの企業によって、どのような開発がおこなわれたのか特許情報に記載されています。
本記事では、採用サイトとは別の視点で、EV技術の開発に関わる企業の研究・開発職ニーズと関連する専門性を特許情報から解読します。
結論(概要)は以下の通りです。
・電気系分野(電気電子工学など)
・機械系分野(機械工学など)
・化学系分野(材料科学、電気化学、物理化学など)
・情報、制御系分野(情報工学、制御工学など)
・その他(物理学など)
- 1 本サーチの概要
- 2 EV技術
- 3 サーチ結果
- 4 開発に求められる専門性
- 5 まとめ
- 6 次に何をすべきか迷っている方へ
1 本サーチの概要
本サーチは、電気自動車に関わる先端技術の開発をおこなっている企業とその開発にどのような専門性が求めらるのかを特許情報にもとづき客観的に導き出そうとするものです。
2 EV技術
2.1 検索条件
2.2 留意事項
本特許検索は、関連技術全体を広くカバーすることを目的としています。
そのため、検索キーワードや技術領域をある程度包括的に設定し、主要な技術分野や関連企業を洗い出すことを優先しています。
一方、特許情報は非常に多岐にわたり、必ずしもすべての関連技術や企業を網羅できるわけではありません。
このアプローチには情報漏れや情報ノイズが一定程度ある可能性が高いです。
そのため、検索結果においては関連性が薄い情報が含まれる場合や、逆に重要な情報が見落とされている場合もあることをご留意ください。
3 サーチ結果
3.1 結果概要:開発品イメージ
開発イメージは下表のとおりです。
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モノの開発 |
サービスの開発 |
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個人向け |
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法人向け |
・二次電池(部品含む) |
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モノの開発としては、例えば、全固体電池を含む各種電池や電極などの電池部品が挙げられます。
EVの最終ユーザーには個人が多く含まれるでしょうが、本記事での開発品はEV完成までのBtoB取引の対象物ということで法人向けとしました。
3.2 結果概要:出願件数の推移
下図は特許出願件数の推移です。

2008年頃から出願件数が急増し、2013年から2015年までやや減少し、再び増加しています。
3.3 結果概要:企業別の出願件数
下図は最近(2015年~2022年)における企業別の特許出願件数です。

その推移が下図です。

3.4 各企業の個別情報
2015年からのトレンドは以下のとおりです。
発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。
技術分野の記号分類に関する詳細は特許庁のサイトをご覧ください(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p1101
発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。
関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。
特許は難解ですが、GeminiやChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。
(1)トヨタ自動車|開発トレンドと専門性

上図期間中、H01Ⅿが最も多いです。続いてH02J、B60L、B60Wが多いです。
具体例として電池に用いられる電極が挙げられます。
従来は高温環境において電池の性能低下、特に容量低下と抵抗増加という問題がありました。
これに対して、電極を二層構造として各層のバインダの被覆率を異なる割合にすることで高温時の電極の安定性を向上させています。特に、集電体に近い方の層(第1電極層)のバインダの被覆率を高くすることで高温時の電解液によるバインダの膨潤を抑え電極構造の安定性を維持する電極が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-067290/11/ja
従来の水系カリウムイオン電池ではAl集電体の腐食による性能低下が問題となっていました。
これに対して、アルミニウムの表面に保護膜を形成し電解液との反応を抑制するピロリン酸カリウムを電解液に加えることで、アルミニウムの溶出を抑制する水系カリウムイオン電池が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-032362/11/ja
具体例としてバッテリ管理装置が挙げられます。
従来、SOC(充電状態)推定は主に電池セルに流れる電流を積算することで行われてきましたが、OCV(開放回路電圧)の変化が小さい範囲(第1のSOC範囲)では、この方法による推定誤差が大きくなるという問題がありました。
これに対して、バッテリのSOCが第1のSOC範囲に長時間留まっている場合に複数のセルの中から1つのセル(対象セル)を選択し他のセルから電力を供給することで対象セルのSOCをOCVの変化が大きい第2のSOC範囲に移行させ、対象セルのOCVの測定値からSOCを推定し、他のセルのSOCも補正することでバッテリ全体のSOC推定精度を向上させるバッテリ管理装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-024201/11/ja
具体例として電気自動車の運転モードの切換えに関する技術が挙げられます。
従来の電気自動車はアクセルペダル操作のみで加速するものが一般的でした。
これに対して、一般的なEVモードとMT車のような運転感覚が得られるMTモードに切り替えでき、MTモードでは電気モーターの出力特性を仮想的なエンジン、クラッチ、変速機を組み合わせたモデルで制御してMT車のような運転感覚を実現することで運転の楽しさを向上させた電気自動車が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-082905/11/ja
具体例として車両制御装置が挙げられます。
従来の車両制御では前方車両との衝突の可能性があると判断した場合、すぐに回避動作を開始することが一般的でした。
これに対して、車の前方カメラで取得した画像データから前方車両の方向指示器の状態を判断して移動方向を予測し、前方車両の移動方向に応じて回避動作のタイミングを調整し、自車と前方車両の距離や相対速度にもとづき衝突の可能性を評価して適切なタイミングで回避動作を開始することで衝突を回避する車両制御装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-029080/11/ja
(2)本田技研工業|開発トレンドと専門性

H01Mが最も多く、続いてH02K、H02Jが多いです。
具体例としてリチウムイオン電池の出力制御装置が挙げられます。
従来のリチウムイオン電池の出力制御では単純に電流や電圧の制限値を設定していましたが、電池内部で発生する不均一な反応(リチウムの析出や正極材料の劣化)を完全に抑制することは困難でした。
これに対して、電池の負極と正極における電流や電位の分布を計算してリチウムの析出や正極材料の劣化が起こりやすい箇所を特定し、それぞれの電極で許容される電流や電位の限界値を設定して計算結果との比較により電池の劣化を抑制し、電池の状態を常時監視して必要に応じて出力電流や電圧を調整することで最適な状態を維持することでリチウムイオン電池の寿命を延ばす出力制御方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-148092/11/ja
具体例として磁石とロータコアの結合に関する技術が挙げられます。
従来はモーターのロータに磁石を固定する方法として接着剤を使用する方法や樹脂で固める方法などが知られていましたが、磁石とロータコアの間に隙間が生じたり接着不良が起こったりする可能性がありモーターの性能低下につながるという問題がありました。
これに対して、磁石に溝を設けた樹脂層を形成して磁石をロータコアに圧入することで磁石とロータコアを強固に結合させることで磁石がロータコアから剥がれることを防止し、モーターの耐久性と性能を向上させるロータが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-139323/11/ja
具体例として蓄電システムが挙げられます。
従来の蓄電システムでは充電設備の電圧に対応するために複数の電圧変換器が必要となりシステムが複雑化しコストも高くなるという問題がありました。
これに対して、直列接続と並列接続を切り替えでバッテリの電圧を調整して異なる電圧の充電設備に対応し、インバータやコンバータなどの電力変換によりバッテリからモータへの電力供給を効率化し、またプリチャージ回路によってバッテリの過電流を防ぐことで安全性を確保する、製造コストを抑制できる蓄電システムが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-052465/11/ja
(3)デンソー|開発トレンドと専門性

H02Mが最も多く、続いてH01M、H02Kが多いです。
具体例として電力変換装置が挙げられます。
従来の冷却方法では冷却性能と装置の厚さの両立が困難でした。
これに対して、 ケースの一部を冷却器として利用し大流量の冷媒を流し、半導体モジュールに直接接触する別の冷却器で小流量の冷媒を流して局所的な冷却をおこない、冷媒の流量と断面積のバランスにより圧力損失を抑えつつ冷却性能を維持しながら薄型化した電力変換装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-059830/11/ja
具体例として二次電池の劣化を抑制するためのシステムが挙げられます。
従来は二次電池の温度管理に重点が置かれていました。
これに対して、二次電池の使用履歴から電池の老化の原因となる具体的なダメージ(カレンダー劣化やサイクル劣化など)を特定し、そのダメージの種類や程度に応じて電池の温度や充電量の上限設定、充電速度、充電サイクルの調整など電池の使用状況に合わせた調整をおこなう劣化抑制システムが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-130794/11/ja
具体例として回転電機のステータを製造する装置が挙げられます(回転電機:電気エネルギーと機械エネルギーを相互に変換する装置の総称 ステータ:回転電機において固定されている部分 ステータコア:ステータの骨格となる部分)。
従来の技術ではステータコアの軸芯と基準軸がずれている場合に作業精度が低下する問題がありました。
これに対して、ステータコアを固定する支持部と実際に作業を行う作業部の間に配置された調芯部と呼ばれる専用の機構がステータコアの位置をリアルタイムで計測して必要に応じて微調整し、ステータコアの軸芯と装置側の基準軸を一致させて作業精度を高めるステータ製造装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-175337/11/ja
(4)エルジーエナジーソリューション|開発トレンドと専門性

具体例としてリチウムイオン二次電池の負極材料が挙げられます。
従来のシリコン系負極では充放電に伴って体積膨張し、電池の寿命が低下するという問題がありました。
これに対して、バインダーにα,β-不飽和ニトリルやジアクリルアミドなどの化合物を添加することでできる部分的な架橋構造で網目状の構造を形成し、この網目構造がシリコン粒子の膨張収縮に伴う電極の変形を抑制して電極の機械的強度を向上させた負極組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-508143/11/ja
具体例としてリチウムイオン電池パック内の異常なセルの検出装置が挙げられます。
従来のバッテリーパックの異常検出は温度上昇や電圧変動の閾値を超えた場合にアラームを出すなどの単純な方法が一般的でした。
これに対して、ディープラーニングにより各セルの電圧変化を予測し、実際の電圧との誤差の分析により異常な挙動を示すセルを特定する検出装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-500893/11/ja
具体例としてリチウムイオン電池パックのバッテリーマネジメントシステム(BMS)の消費電力を制御する装置が挙げられます。
従来はBMSの消費電力を削減するのにソフトウェアによる制御が一般的でした。
これに対して、電池電圧に応じて動作する演算増幅器とトランジスタを用いた回路が充電器の接続状態や電池の残量に応じてBMS内の特定の回路の電源を切ることでハードウェアレベルで消費電力を削減し電池の寿命を延ばす消費電力制御装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-551242/11/ja
(5)エルジーケム|開発トレンドと専門性

H01Mが最も多く、続いてG01R、H02Jが多いです。
具体例としてリチウムイオン二次電池の正極活物質が挙げられます。
従来のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物系正極活物質には熱安定性の低下や表面へのリチウム副生成物の生成といった問題がありました。
これに対して、ニッケルの含有量を60モル%以上に設定することで高容量化し、正極活物質を単一の粒子とすることで粒子間の界面を減らし充放電サイクルでの劣化を抑制し、正極活物質の表面に特定の金属酸化物からなるコーティング層を形成することでリチウム副生成物の生成を抑制して構造安定性を向上させることで高容量化、長寿命化した正極活物質が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-512946/11/ja
具体例として二次電池の低電圧不良を予測するための装置が挙げられます。
従来の低電圧不良の予測は経験的な判断や限られたデータにもとづいておこなわれており精度や予測時間が課題でした。
これに対して、機械学習により過去の充電・放電データから低電圧不良を予測するモデルを構築し、このモデルをさまざまな種類の二次電池に適用できるようにモデルの転移学習により少ないデータで予測できる二次電池の低電圧不良予測装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-509525/11/ja
具体例としてバッテリパック内の各セルの電圧差を均一化しバッテリーの寿命を延ばすためのバランシングシステムが挙げられます。
従来のバランシングシステムでは発熱による誤差やバランシング時間が長くなるという問題がありました。
これに対して、セルバランシング動作中の発熱に着目して温度センシングによって発生する熱量を推定することでデューティ比(バッテリセルのバランシングをおこなうためのスイッチング素子がオンの状態にある時間とオフの状態にある時間の割合)を調整し発熱を抑えつつ効率的なバランシングをおこなうバランシングシステムが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-174530/11/ja
(6)パナソニックIPマネジメント|開発トレンドと専門性

具体例として全固体電池が挙げられます。
従来の全固体電池ではデンドライト(電池内部で成長して短絡を引き起こす恐れのある樹枝状の金属結晶)の成長が大きな課題でした。
これに対して、固体電解質層にイオン伝導度の異なる2種類の材料を混合することでリチウムイオンの移動経路を制御しデンドライトの成長を抑制する全固体電池が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-099676/11/ja
具体例として電動車と家庭内の電力システムを連携させる充放電装置が挙げられます。
従来は電動車と充放電装置の接続状態を維持するためには常に微弱な電力をやり取りする必要があり電力ロスや装置の劣化といった問題がありました。
これに対して、EVと接続した状態で待機している間にEVから必要な情報だけを定期的に取得する仕組み、具体的にはEVと接続後に一度だけ充電シーケンスを実行して取得した車両情報を記憶しておき、定期的にエネルギ管理システムに送信することでEVの状態を把握して効率的なエネルギー管理を実現する充放電装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-165093/11/ja
具体例としてEVと家庭の電力を連携させるシステム(V2Hシステム)において突入電流防止回路を備えた電力変換装置が挙げられます。
従来のV2Hシステムでは突入電流防止回路の故障検出が十分におこなわれていませんでした。
これに対して、蓄電池と電力変換装置間の電圧を比較することで、具体的に、充電または放電開始前に蓄電池と電力変換装置に電圧を印加しその電圧を比較することで突入電流防止回路の異常を判断する電力変換装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-011948/11/ja
(7)三菱電機|開発トレンドと専門性

H01Lが最も多く、続いてH02M、H02Jが多いです。
具体例としてパワー半導体を冷却する半導体装置が挙げられます。
従来のパワー半導体装置では金属接合時にバリやコンタミが発生し、部品実装面を損傷したり冷却性能を低下させるといった問題がありました。
これに対して、冷媒流路を備え、パワー半導体とヒートシンクを収めるケースを貫通する金属接合によって部品実装面へのバリやコンタミの発生を防ぐ半導体装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-158711/11/ja
具体例としてEVなどに搭載される電力変換装置が挙げられます。
従来の電力変換装置では複数のコンデンサ素子を並列に接続しバスバー(電流を流すための導体)で接続することで平滑コンデンサを構成していましたが、バスバーの経路インダクタンスが大きくなり装置の性能やコストに悪影響を与えるという問題がありました。
これに対して、バスバーが平行平板状になるようにパワーモジュールとコンデンサ素子が配置され、バスバーの一部が対向板状とされることで電流分布が均一化され、インダクタンスを低減させる電力変換装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-158713/11/ja
具体例として蓄電池システムが挙げられます。
従来の蓄電池システムでは、全ての蓄電池モジュールを均一に扱うことが多く特性の異なるモジュールが混在する場合、システム全体の効率が低下する問題がありました。
これに対して、各モジュールの電圧、電流、温度などの情報を収集して変換器の効率を推定し、推定された効率にもとづきモジュールをグループ分けし、それぞれのグループに対して最適な出力範囲を設定することでシステム全体の効率を向上させた蓄電池システムが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7599561/15/ja
(8)ソニーセミコンダクタソリューションズ|開発トレンドと専門性

H01LとH04Nが多く、次にG01Sが多いです。
具体例として半導体装置が挙げられます。
従来の半導体装置では、配線間の容量を低減するために配線間に空隙(エアギャップ)を設けていましたが、エアギャップを形成できる位置が限定され任意の場所にエアギャップを形成することが困難でした。
これに対して、ある層に形成された膜に小さな穴(エアギャップ)を作り、その上に別の膜を重ねることでエアギャップを保護しつつ任意の位置にエアギャップを形成できるようにすることで柔軟な回路設計が可能な半導体装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-179641/11/ja
具体例として固体撮像素子が挙げられます。
従来の固体撮像素子では高ダイナミックレンジ(HDR)画像を取得するためには高感度と低感度の異なるセンサーが必要だったり位相差検出のために専用のセンサーが必要だったりしました。
これに対して、1つの画素に2つの光電変換部を設けて各画素セット内のすべての光電変換部から得られる信号を1つの電荷保持部に集めることで、高ダイナミックレンジ画像に必要な情報と位相差検出に必要な情報を同時に取得できる固体撮像素子が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-015206/11/ja
具体例として測距装置が挙げられます。
従来の測距装置では、光源から発射されたパルス光が物体で反射して戻ってくるまでの時間を計測することで距離を測定していましたが、近距離と遠距離の物体からの反射光を同時に検出する場合、近距離からの強い反射光によって遠距離からの弱い反射光が埋もれてしまうという問題がありました。
これに対して、フォトンカウント型の受光素子で検出された光子の数を対数変換して強い光から弱い光まで幅広い範囲の光の強度を扱えるようにし、得られたデータをヒストグラムに集計することで光が対象物に到達して戻ってくるまでの時間を正確に測定して距離を算出することで、近距離から遠距離までさまざまな距離にある物体に対して測距が可能な測距装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7621980/15/ja
(9)半導体エネルギー研究所|開発トレンドと専門性

H01Mが最も多く、続いてH01L、H02Jが多いです。
具体例としてリチウムイオン電池の正極活物質が挙げられます。
従来のリチウムイオン電池の正極活物質ではリチウムイオンの拡散速度が遅く、電池の出力やサイクル寿命が制限されるという問題がありました。
これに対して、鉄などの金属元素を含むリチウム含有複合リン酸塩の一次粒子が特定の配列で形成される二次粒子のサイズと形状を制御してリチウムイオンのスムーズな移動と電極反応の効率を高める正極活性物質が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-029977/11/ja
具体例として酸化物半導体トランジスタが挙げられます。
従来の酸化物半導体トランジスタでは、電極と半導体膜の界面でのエッチングが難しく、デバイスの特性が不安定になるという問題がありました。
これに対して、酸化物半導体膜に膜厚の薄い領域と厚い領域を形成し、その境界を滑らかにすることで電極との界面での段差をなくし電気的な特性を向上させ、酸化物半導体膜の構造を上下にゲート電極を配置するデュアルゲート構造とするなどによりデバイスの信頼性を高めた半導体装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-016840/11/ja
具体例として非接触給電システムが挙げられます。
従来の共鳴方式による非接触給電システムでは給電装置と受電装置間の距離が最適でない場合に電力伝送効率が低下するという問題がありました。
これに対して、給電装置と受電装置の間に複数の共振コイルと電磁結合コイルを配置され、これらのコイルの接続状態のスイッチによる切り替えで距離に応じて共鳴方式と電磁結合方式を切替える非接触給電システムが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-174236/11/ja
(10)GSユアサ|開発トレンドと専門性

具体例として全固体電池の性能低下を抑制する技術が挙げられます。
従来の全固体電池では充放電サイクルを繰り返すうちに電極と電解質の界面での反応や電解質の劣化により電池性能が低下するという問題がありました。
これに対して、全固体電池の正極材料として正極活物質粒子を硫化物系固体電解質で被覆した複合体と硫化物系ガラス固体電解質と硫化物系結晶性固体電解質を組み合わせたマトリックスを用いることで、電池の充放電サイクルにおける容量低下を抑制する技術が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-115721/11/ja
具体例として自動車などの移動体に搭載された蓄電池の監視装置が挙げられます。
従来の監視装置では蓄電池の電圧が低下した場合にスイッチをオフにするものの、その後、スイッチをオンにするタイミングや頻度が十分に検討されていませんでした。
これに対して、蓄電池の電圧を常時監視して設定された閾値を超えた場合や移動体の状態が変化した場合に制御、例えば走行中は高頻度で監視をおこない、駐車中は監視頻度を下げ蓄電池への負荷を軽減し、電池の負荷が軽減する監視装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-105530/11/ja
具体例として蓄電素子(主にリチウムイオン電池)の内部短絡の検出装置が挙げられます。
従来は電池の表面温度上昇を検出することで内部短絡を検出する方法が一般的でした
これに対して、導電性タブの温度の変化パターンから内部短絡を検出し、状態推定アルゴリズムから短絡抵抗を推定して内部短絡の発生を定量的に評価し、内部短絡が検出された場合は電流経路を遮断する機構により電池の損傷を防止することで内部短絡の早期検出と電池を長寿命化する検出装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-041143/11/ja
(11)まとめ
二次電池や電力変換など電気に関わる特許が多いです。
4 開発に求められる専門性
上記3.4にもとづく主な専門分野は以下のとおりです。
・電気系分野(電気電子工学など)
・機械系分野(機械工学など)
・化学系分野(材料科学、電気化学、物理化学など)
・情報、制御系分野(情報工学、制御工学など)
・その他(物理学など)
ただし、これらの専門は表現上のものであり、境界があいまいな場合も多く、単に大学の専攻名と結びつけられるものではないです(例えば、材料に関わる専門として、材料科学、材料化学、材料工学という表現がありますが、厳密に区別できるものではないです)。
また、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。
5 まとめ
「電気自動車」というワードを明細書に含む特許出願は、リチウムイオン電池などの各種電池や電池構成品などに関わる分野(H01M)が最も多く、当該分野の開発が多くおこなわれていることが推測されます。
大学の専攻としては特に化学、電気の研究に関係すると考えられます。
ただし、その他の分野も多いです。それらには、各種の構造設計やアルゴリズム設計が求められるものも多く、機械や情報の研究に関係すると考えられます。
本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。
参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4
以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
6 次に何をすべきか迷っている方へ
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<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許情報を独自に分析したものです。
・本サイトでは、特許情報を正確かつ最新の状態でお伝えするよう努めていますが、情報の完全性を保証するものではありません。
・特許情報のご活用や解釈は読者ご自身の責任でお願いいたします。
・詳細な確認や重要な判断が必要な場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。