大学には航空工学科や航空宇宙工学科という専攻がありますが、航空機など飛行体の製造に関わっているとすぐにわかる名称の企業は見たりません(私が高校の頃から航空科は人気でしたが、卒業後の進路がどうなっているのかは謎でした)。
飛行技術にはロマンがありますが、どこをどう進めばそのような分野の開発に関わることができるでしょうか。
特許情報からこれらの疑問に対する一つの答えを出すことができます。
特許情報は企業の開発情報そのものだからです。
本記事では、採用サイトとは別の視点で、航空技術の開発に関わる企業の研究・開発職ニーズと関連する専門性を特許情報から解読します。
結論(概要)は以下の通りです。
・航空分野(航空宇宙工学など)
・機械分野(機械工学など)
・電気分野(電気電子工学など)
・情報、制御系分野(情報工学、情報科学、制御工学など)
・その他(材料科学など)
- 1 技術サーチの概要
- 2 航空関連技術
- 3 サーチ結果
- 4 開発に求められる専門性
- 5 まとめ
- 6 次に何をすべきか迷っている方へ
1 技術サーチの概要
本サーチは、飛行体に関連(以下、航空関連、と言います)する先端技術の開発をおこなっている企業とその開発にどのような専門性が求めらるのかを特許情報にもとづき、客観的に導き出そうとするものです。
2 航空関連技術
2.1 検索条件
2.2 留意事項
本特許検索は、関連する技術全体を広くカバーすることを目的としています。
そのため、検索キーワードや技術領域をある程度包括的に設定し、主要な技術分野や関連企業を洗い出すことを優先しています。
一方、特許情報は非常に多岐にわたり、必ずしもすべての関連技術や企業を完全に網羅できるわけではありません。
このアプローチには情報漏れや情報ノイズが一定程度ある可能性が高いです。
そのため、検索結果においては関連性が薄い情報が含まれる場合や、逆に重要な情報が見落とされている場合もあることをご留意ください。
3 サーチ結果
3.1 結果概要:開発品イメージ
開発イメージは下表のとおりです。
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モノの開発 |
サービスの開発 |
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個人向け |
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法人向け |
・機首、翼などの構造 |
・機体の表面処理 |
モノの開発としては、例えば、機首や翼など機体に関する構造が挙げられます。
サービスの開発としては、例えば、機体の表面処理などが挙げられます。
モノの開発が同時にサービスの開発になっているもの(飛行体の管理など)もあります。
3.2 結果概要:出願件数の推移
下図は特許出願件数の推移です。

2015年頃から出願件数が増えています。
3.3 結果概要:企業別の出願件数
下図は2015年~2022年における企業別の特許出願件数です。

その推移が下図です。

3.4 各企業の個別情報
2015年からのトレンドは以下のとおりです。
発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。
技術分野の記号分類に関する詳細は特許庁のサイトをご覧ください(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p1101
発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。
関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。
特許は難解ですが、GeminiやChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。
(1)ボーイング|開発トレンドと専門性

上図期間中、B64Cが最も多いです。次いでB64D、B64Fが多いです。
具体例として航空機の機首構造が挙げられます。
従来の構造ではノーズ・ランディングギア・ベイ(機首に設置された着陸装置であるノーズ・ランディングギアの収納空間)が限られメンテナンスや設備の設置が困難であったという課題がありました。
これに対して、ノーズ・ランディングギア・ベイを形成する主要な部品群を圧力デッキ、隔壁、ノーズ・ランディングギア・ボックスなどの構造体と高水準システムの配線などを収容するトランスポート要素を支持する床パネル支持材から構成することで機内空間の効率的な利用とメンテナンス性を高めた機首構造が開発されています(以下URL)。
所定の床パネル支持材等から構成される航空機の機首構造→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-041912/11/ja
従来は翼と胴体を接合する際に金属製のパネルに穴を開け、そこにファスナを取り付ける方法が一般的でしたが、この方法では穴のバリ取り作業が必要となり製造時間やコストが増大するという問題がありました。
これに対して、 翼と胴体のパネル間に挟み込むパネルでファスナ穴が事前に開けられた継ぎ目パネルが、翼のパネルに仮組みされ、穴のバリ取りがされた後に胴体に翼と胴体のパネルを貫通するファスナで組付けられることでバリ取り作業を効率化した接合が開発されています(以下URL)。
航空機の翼と胴体の接合→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-107213/11/ja
具体例として航空機への電力供給およびデータ通信のセキュリティを確保するための技術が挙げられます。
従来の航空機への電力供給およびデータ通信システムはセキュリティ、信頼性、効率性、複雑性といった問題を抱えていました。
これに対して、航空機に設置された電力コネクタとデータコネクタを介して地上システムから供給される電力とデータの電気的特性および通信特性を監視し、異常な値が検出された場合に電力供給またはデータ通信を遮断することで不正なアクセスや機体へのダメージを防ぐ装置が開発されています(以下URL)。
不正なアクセスや機体へのダメージを防ぐ装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-123033/11/ja
従来のAPUは一定の回転速度で動作し環境条件の変化に柔軟に対応できないという問題がありました。
これに対して、APUの回転速度を空気密度、負荷、航空機速度などの環境条件や動作パラメータに応じて可変にし、空気密度が変化した場合に回転速度を調整することで出力動力を一定に維持し、発電機の負荷変動に応じて回転速度を調整し、運転を効率化する制御システム が開発されています(以下URL)。
APUの制御システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-125105/11/ja
具体例として航空機と地上システム間のデータ交換に関する演算方法が挙げられます。
従来は航空機の種類や搭載されているシステムによって地上システムとの通信に異なるプロトコルが必要となりシステムの複雑化や運用コストの上昇を招いていました。
これに対して、航空機の種類や搭載システムなどを表す「航空機分類子」という概念を導入し、この分類子に基づいて最適な通信プロトコル(航空機API)を選択する仕組みにより、多種多様な航空機との間でも統一的なインターフェースでデータ交換できるようにする演算方法が開発されています(以下URL)。
航空機と地上システム間のデータ交換に関する演算方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-049971/11/ja
(2)ゼネラル・エレクトリック(GE)|開発トレンドと専門性

F01Dが最も多いです。次いでF02C、B64Dが多いです。
具体例としてタービンやファンブレードなどの翼形部が挙げられます。
従来のタービンやファンブレードの冷却構造では内部の冷却チャネル形成時に生じる空洞が熱伝達を妨げ、冷却効率の低下を引き起こす問題がありました。
これに対して、複数のピースを界面で接合して翼形部を形成し、内部には冷却チャネルと並行に配置された熱伝導性ピン(空洞内に収まりつつピースを貫通する形で設置され、高い熱伝導性を持つ材料で構成)を設け、当該ピンが構造支持体としても機能する冷却効率を向上させた翼形部が開発されています(以下URL)。
翼形部→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-544013/11/ja
従来のターボ機械のブレード構造では流体の流れによる損失が問題となっていました。
これに対して、ブレードのミッドスパン領域の軸方向幅を根元および先端領域よりも小さくし、ブレード開口部対ピッチ比を大きくすることで流体の流れをミッドスパン領域に集中させことで端壁付近の二次損失を低減させて空気力学的性能や耐久性を向上させるブレード構造が開発されています(以下URL)。
ターボ機械のブレード構造→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-056400/11/ja
具体例としてターボ機械の構成要素の内部の表面処理が挙げられます。
従来の技術ではコーティングが脆いためピーニング(金属にハンマーなどで衝撃を与える表面処理)によって剥がれたり、ピーニング後のコーティング適用により残留応力が緩和される問題がありました。
これに対して、ローターブレードの内部冷却通路の表面に耐熱性や耐摩耗性に優れたコーティング(例えば、拡散アルミナイドコーティング)を施し、コーティング面にピーニング媒体(例えば、ショット)を衝突させて表面に圧縮残留応力を生じさせ、また、ピーニングの際に冷却通路の一部にマスクを適用することでピーニング媒体が冷却通路内に侵入するのを防ぎ冷却通路の形状を維持することで摩耗や疲労に対する耐性を向上させる表面処理が開発されています(以下URL)。
ターボ機械の構成要素の内部の表面処理→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-143668/11/ja
具体例として航空機のハイブリッド電気推進システムが挙げられます。
従来の航空機では高温環境下でターボ機械が過熱し、推力が低下したり寿命が短くなったりする問題がありました。
これに対して、高温環境下での飛行でターボ機械の温度が上昇するとシステム検知により電気モーターに動力供給してターボ機械の負担を軽減して過熱を防ぎ、温度が下がれば電気モーターへの電力供給を減らすことでターボ機械の負荷を軽減して高温環境下でも安定する推力システムが開発されています(以下URL)。
航空機のハイブリッド電気推進システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2019-048615/11/ja
(3)キヤノン|開発トレンドと専門性

H05Bが最も多いです。次いでG03G、C07Fが多いです。
ただし、以下の発光装置や組成物は航空機用途に限られないので、いずれも航空関連特有の技術ではありません。
具体例として有機EL素子を用いた発光装置が挙げられます。
従来の有機EL素子ではマイクロレンズと発光領域が重なり合うように配置されることが一般的でしたが、斜め方向への発光強度が不足し光学系との組み合わせにおいて光利用効率が低いという問題がありました。
これに対して、発光素子とマイクロレンズのずらした配置により特定の方向への光の出射を制御し、マイクロレンズをアレイ状にして配置することで視野角で高輝度な表示になる発光装置が開発されています(以下URL)。
有機EL素子を用いた発光装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-136208/11/ja
トナーなどの特許が多くを占めています。これらの明細書中に航空技術とは無関係に「飛行」、「翼」といったワードが原因の情報ノイズです。本記事の狙いとは全く無関係の内容なので省略します。
具体例として有機EL素子の発光に関わるイリジウム錯体組成物が挙げられます。
従来のイリジウム錯体では発光効率が十分でないという問題がありました。
これに対して、イリジウム原子を中心に特定の構造を持つ3種類の配位子が結合したイリジウム錯体と、割合が全体の1.5%以上となる所定構造の異性体との組成物を用いることで発光素子の発光効率を向上させるイリジウム錯体組成物が開発されています(以下URL)。
イリジウム錯体組成物→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-178798/11/ja
(4)エスゼット ディージェイアイ テクノロジー(DJI)|開発トレンドと専門性

H04N、G05D、B64Cが多く、それぞれの出願件数は同程度です。
具体例としてドローンなどの飛行体の画像処理装置が挙げられます。
従来、画像合成は静止画を対象としていて動画像の合成には対応していなかったので、飛行体のように移動しながら撮影を行う場合にはカメラの振動や光の変化などで高品質な合成画像を得ることが困難でした。
これに対して、 同じルートを複数回飛行する異なる時間の撮影によって同一のシーンを複数枚の画像として取得し、これらの画像の合成によってノイズを低減し、ダイナミックレンジを拡大することで高品質な動画を生成する画像処理装置が開発されています(以下URL)。
飛行体の画像処理装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-093592/11/ja
具体例としてドローンなどの複数の可動装置が同時に動作する環境における制御方法が挙げられます。
従来、複数のドローンが同時に飛行する場合には衝突のリスクが高く、効果的な衝突回避システムが求められていました。
これに対して、各可動装置に可動装置の種類や実行するタスクの重要度や飛行経路などに応じた優先順位レベルが割り当てられ、その優先順位レベルに応じたサイズの安全ゾーンが設定され、各可動装置は他の可動装置の安全ゾーンとの位置関係を監視し、衝突の危険性がある場合に自分の速度や方向を調整することで衝突を回避する制御方法が開発されています(以下URL)。
複数の可動装置が同時動作する環境の制御方法→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-091851/11/ja
具体例としてドローンに搭載された照度センサに関する技術が挙げられます。
従来のドローンでは照度センサの測定値がドローンの姿勢変化の影響を受けやすく正確な照度測定が困難でした。
これに対して、ドローンの姿勢変化の許容範囲について閾値が設定され、ドローンの姿勢変化が小さい時(閾値を超えていない時)にのみ照度センサの測定値を有効とし、それ以外(閾値超)の場合は前回の測定値を使用することで正確な照度測定となるようにする装置が開発されています(以下URL)。
ドローンの照度センサ技術→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-094891/11/ja
(5)三菱重工業|開発トレンドと専門性

B64Cが最も多いです。次いでF01D、B64Dが多いです。
具体例として船舶などの移動体上に着陸する垂直離着陸機の自動着陸システムが挙げられます。
従来のシステムでは船舶の姿勢や相対風の方向によって垂直離着陸機の着陸が制限されていました。
これに対して、船舶に設置された風向風速計が船舶に対する相対風の方向と風速を計測し、相対風の方向に合わせて垂直離着陸機の機首方位を制御することで相対風の影響を緩和して着陸目標点へ安全に着陸させる垂直離着陸機の自動着陸システム が開発されています(以下URL)。
垂直離着陸機の自動着陸システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-097126/11/ja
具体例としてジェットエンジンのインレット(吸気口)構造が挙げられます。
従来の可変インレット構造は機械的な機構で構造が複雑化して重量が増加するという問題があり、飛行速度の変化に対して迅速に形状を変化させることが困難でした。
これに対して、エンジン内に空気を導き込むための主要な部分(第1カウル)を覆うような形で配置された第2カウルがインレットの形状を調整する役割を担う構造がとられています。具体的には飛行速度の変化に応じて第2カウルの先端部分が徐々に消えていくことにより(インレットの形状が変化することにより)エンジン性能を引き出すことで、複雑な機械装置を必要とせず軽量でシンプルなジェットエンジンが開発されています(以下URL)。
ジェットエンジンの吸気口構造→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2014-122597/11/ja
具体例として航空機の推進効率を向上させるためのファン装置が挙げられます。
従来のファン装置では機体表面との境界層の影響によりファン内部の空気の流れが不均一になり、特にローター軸に近い部分で流れが剥離しやすくなるという問題がありました。
これに対して、ファン内部の静翼の先端に流体を吸引するための小さな穴が、ファン内部の動翼の先端にも同様に流体を吸引するための穴が設けられ、 吸い込まれた流体がファン後方へ排出されることで推進効率が向上した航空機が開発されています(以下URL)。
航空機のファン装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-017518/11/ja
(6)本田技研工業|開発トレンドと専門性

B64Dが最も多いです。次いでB64Cが多いです。
具体例として航空機の電力管理システムが挙げられます。
従来はバッテリが一定レベルまで低下すると発電機を稼働させてバッテリを充電していましたが、バッテリへの負荷が大きく寿命が短くなるという問題、発電機の稼働時間が長くなり燃料消費量が増加するという問題がありました。
これに対して、飛行計画に基づいて次回の飛行に必要なバッテリの充電量を予測し、飛行中の適切なタイミングでバッテリを充電することでバッテリの寿命を延ばして燃料消費量を削減する航空機の制御装置が開発されています(以下URL)。
航空機の電力管理システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-095266/11/ja
従来のシステムでは負荷変動に迅速に対応できずバッテリの寿命が短くなるという問題がありました。
これに対して、負荷変動に応じてガスタービンと発電機の動力動作点を複数のモードで制御するシステムがとられています。具体的には、基準動作線と呼ばれるガスタービンと発電機の最適な出力関係を示す線上にシステムの動作点を維持することで負荷変動に対応(負荷変動検出により飛行状態の変化を捉えて基準動作線上の新たな目標動作点を設定し、ガスタービンと発電機の制御系が協調して動作点を移動させて出力状態を維持)することで、バッテリの負担を軽減し燃費を高めた航空機の推進システムが開発されています(以下URL)。
航空機の推進システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-047640/11/ja
具体例として垂直離着陸機のブーム(翼、ローターを支える支柱)形状が挙げられます。
従来の垂直離着陸機(VTOL機)のブームはローターを支持するために複雑な形状をしており、巡航時に大きな空気抵抗を生み出すという問題がありました。
これに対して、上面を丸く湾曲させて下面を平坦にすることで、空気の流れをスムーズにし渦の発生を抑えるブームが開発されています(以下URL)。
垂直離着陸機のブーム形状→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-092936/11/ja
(7)クボタ|開発トレンドと専門性

A01Bが最も多いです。次いでA01Cが多いです。
具体例として無人飛行体によるセンシング情報を活用した農業支援システムが挙げられます。
従来の農業機械の自動走行システムでは障害物の検出が主に機械本体に搭載されたセンサーに依存しており、死角が生じたり環境変化に対応しづらいという問題がありました。
これに対して、無人飛行体が農業機械の前方を飛行してリアルタイムに周囲の状況をセンシングし、このセンシング情報にもとづいて農業機械に搭載された障害物検出装置の検出エリアを動的に調整することにより障害物を検出し、得られたセンシング情報と障害物検出情報を統合して農業機械の自動走行制御にフィードバックすることで安全で効率的な作業を実現するシステムが開発されています(以下URL)。
農業支援システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-104739/11/ja
具体例として散布支援システムが挙げられます。
従来は葉色や茎数などから吸収窒素量を推定して次期の施肥量を決定していましたが、土壌の保肥力や圃場の地形による影響を正確に捉えられず作物に最適な施肥量を常に保証できませんでした。
これに対して、ドローンやセンサーを用いて圃場の高低差を詳細に測定し、作物の種類や生育状況にもとづいて各区画に散布する肥料や農薬の量を計算し、高低差と事前に設定された補正情報にもとづいて計算された散布量を調整(例えば、高低差が大きい場所ではより多くの肥料が必要となるため散布量を増やす)し、散布量の情報が散布機に送られて効率的に散布作業をおこなう散布支援システムが開発されています(以下URL)。
散布支援システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-048799/11/ja
(8)KDDI|開発トレンドと専門性

G08Gが最も多いです。次いでH04Wが多いです。
具体例として飛行体の飛行に関する管理システムが挙げられます。
従来のシステムでは、飛行計画が一度設定されるとその計画から大きく逸脱することができない(例えば、ドローンが強風などで想定外の場所に移動した場合に元の飛行計画に戻ることが困難)という問題がありました。
これに対して、飛行体からGPS情報などにより現在位置を取得し、目的地までの最短経路や障害物を回避する経路などを計算して新たな飛行ルートを生成し、当該飛行ルートを元の飛行計画に追加し、更新された飛行計画にもとづいて飛行体を制御することで飛行計画の柔軟な変更を可能にする管理システムが開発されています(以下URL)。
飛行体の飛行管理システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-081287/11/ja
具体例として飛行体の情報を表示する端末装置が挙げられます。
従来は飛行体からの情報を取得する際、一つの通信方式に依存していたため通信環境の変化や障害発生時に情報取得が途絶えてしまう可能性がありました。
これに対して、複数の通信方式で送信された飛行体からの情報を受信し、受信した情報を通信方式に応じて異なる表示形式で表示し、受信した情報の信頼性や時刻情報をもとにどちらの情報を優先して表示するかを判断して表示することで安定した情報を表示する端末装置が開発されています(以下URL)。
飛行体の情報表示端末装置→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-050097/11/ja
(9)三菱電機|開発トレンドと専門性

B64Gが最も多いです。次いでG01Sが多いです。
具体例として月周回衛星が挙げられます。
従来の月探査衛星では極域の観測に困難で、特に太陽光による影が長く光学観測が難しく、合成開口レーダーを用いた場合でも極軌道では観測死角が生じて極域全体を観測することが困難でした。
これに対して、月の極域に接近する傾斜楕円軌道の採用により極域をより詳細に観測できるようにし、高解像度の地形データを取得するために、合成開口レーダーを搭載し、軌道面を回転させることにより極域のさまざまな角度から観測できるようにした月周回衛星が開発されています(以下URL)。
月周回衛星→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-113516/11/ja
具体例として画像の高解像度化に関する技術が挙げられます。
従来の超解像技術では、実際の画像劣化過程と異なる単純なダウンサンプリングを学習データとして用いていたため、高精度な高解像度画像を得ることが困難でした。
これに対して、合成開口レーダー(SAR)画像を生成する際に一部のパルスのみを用いて低解像度画像を生成し全パルスを用いて高解像度画像を生成してこれら(低解像度画像と高解像度画像のペア)を学習データとして深層学習モデルを学習させ、学習済モデルが低解像度SAR画像から高解像度画像を推定できるようにしたシステムが開発されています(以下URL)。
高解像度画像推定システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-127668/11/ja
(10)トヨタ自動車|開発トレンドと専門性

B64CとG08Gが多いです。
具体例として係留飛行体の安定性を向上させるための技術が挙げられます。
従来の係留飛行体は迎角が小さい状態では飛行体の下面に負圧が発生しやすく、ピッチング振動を起こしやすいという問題がありました。
これに対して、飛行体の下面における空気の流れを抑制して負圧の発生を抑えるための抑制部が飛行体の前端部から約1/4の位置に設置されることで飛行を安定させる飛行体が開発されています(以下URL)。
飛行体→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-136468/11/ja
具体例として輸送サービスにおいて乗車地点を特定できるようにするシステムが挙げられます。
従来のオンデマンドサービスでは乗車地点が固定されておらず、ユーザが地図情報などを頼りに乗車地点を探さなければならず、ユーザが乗車地点を間違えたり迷ったりする可能性がありました。
これに対して、ドローンやバスに搭載されたカメラで乗車地点の画像を撮影し、その画像がサーバを経由してユーザの端末に送信されるシステムが開発されています(以下URL)。
乗車地点特定システム→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-004357/11/ja
(11)まとめ
飛行機などの本格的な乗り物に関わる特許、ドローンに関わる特許に分けられます。
また、機首や翼の形状など有形的な特許、各種データの処理や管理などの無形的な特許、これらが融合した特許という分類もできます。
上記の特許情報にもとづくと、ボーイング、GE、三菱重工、本田技研工業、三菱電機あたりがガチ勢でしょうか。
4 開発に求められる専門性
上記3.4にもとづく主な専門分野は以下のとおりです。
・航空分野(航空宇宙工学など)
・機械分野(機械工学など)
・電気分野(電気電子工学など)
・情報、制御系分野(情報工学、情報科学、制御工学など)
・その他(材料科学など)
ただし、これらの専門は表現上のものであり、境界があいまいな場合も多く、単に大学の専攻名と結びつけられるものではないです。
また、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。
5 まとめ
図で示されてはいませんが、航空関連のワードを明細書に含む特許出願は、飛行機やヘリコプタに関わる分野(B64C)が最も多く、次に航空機の整備に関わる分野(B64D)が多いです。
当該分野の開発が多くおこなわれていることが推測されます。
大学の専攻としては特に航空、機械の研究に関係すると考えられます。
ただし、その他の分野も多いです。それらには電気や制御に関わる知識が求められるものも多く、電気や情報の研究に関係すると考えられます。
本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。
参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4
以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
6 次に何をすべきか迷っている方へ
この分野で就職・転職を考えている方へ
👉 関連する業界・企業における開発内容と求められる専門性を解説しています
技術的に近い業界:自動車業界(空飛ぶ自動車の観点)、三菱電機・日立製作所・東芝(水素推進や次世代エンジン開発の観点)、化学業界(総合)・化学業界(総合に続く規模)・非鉄金属業界(炭素繊維複合材料、セラミックス複合材料等の素材開発の観点)
研究開発職の企業の探し方がわからない方へ
👉 特許情報を使って企業を見つける方法を解説しています
自分の専攻を活かせる企業を知りたい方へ
👉 研究開発職に強い企業を専攻別に簡易的に整理した入口編です
化学系、情報系、電気系、機械系、材料系、物理系、数学系、生物系、土木・建築系、薬学系
研究開発職の全体像を知りたい方へ
👉 まずは全体を把握したい方
👉 総合メーカー志望の方はこちら
・総合メーカーの就職・転職先一覧|研究開発に強い企業の技術分野
<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年版 東洋経済新報社
<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許情報を独自に分析したものです。
・本サイトでは、特許情報を正確かつ最新の状態でお伝えするよう努めていますが、情報の完全性を保証するものではありません。
・特許情報のご活用や解釈は読者ご自身の責任でお願いいたします。
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