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【日用品・化粧品業界】開発職に求められる専門性とは?トイレタリー&化粧品メーカー8社の特許で読み解く技術分野

 今回は、トイレタリーと化粧品に焦点をあてます。

 トイレタリーは洗剤やおむつといった日用品、化粧品は説明するまでもなく多くの人に馴染みがある商品です。

 ただ、これらの分野に複合的に関わっている企業もあり、その線引きを含め、当該業界のメーカーがどの製品の開発に注力しているのか、どのような専門性が求められるのかは外部からは見えにくいです。

 これを特許情報からみていきます。

 特許情報は企業の開発情報だと言えます。

 実際にどのような開発がおこなわれたのか特許情報に記載されています。 

 今回は、トイレタリー&化粧品メーカー8社の特許情報からどのような開発がおこなわれてきたのか、また、開発にどのような専門性が求められるのか読み解きました。

 

 結論(概要)は以下の通りです。

日用品・化粧品業界の開発に求められる専門性
素材開発系(材料工学、高分子化学、化学工学、機械工学など)
化学品開発系(応用化学など化学系全般、薬学、農学、生物学、医学など)
容器などの物品開発系(機械工学、人間工学など)
その他(情報系など)
 ただし、上記専門は企業の一部の特許情報に基づくものであり、全てをあらわすものではありません。また、求められる専門は特許の解釈によって変わってきますので、個々の特許情報をご確認ください。

 

 

1 業界サーチの概要

 特許情報は企業の開発情報だと言えます。

 業界サーチは、業界における主要企業の特許情報から、その業界の企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。

 特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。

 すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。

 

2 日用品・化粧品業界

2.1 日用品・化粧品業界とは

 ここでは、日常的に使われる製品(日用品やトイレタリーと言われる製品)を製造、販売、流通させる業界、および化粧品や美容関連商品などを製造、販売、流通させる業界の2つの業界を意図します。

 両方の業界にかかわる企業もあり、特許検索において境界があいまいなため、両業界をまとめました。その他、製薬業界との境界もあいまいです。本記事は厳密な区別はしていません。

 

2.2 サーチ対象

 以下のトイレタリー・化粧品メーカー8社を対象にしました。

(1)花王
(2)ユニ・チャーム
(3)ライオン
(4)アース製薬
(5)小林製薬
(6)資生堂
(7)コーセー
(8)ロート製薬

 

2.3 使用プラットフォーム

 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat

 

3 サーチ結果

3.1 結果概要

開発イメージは下表のとおりです。 

 

モノの開発

サービスの開発

個人向け

組成物(歯磨き、殺虫剤、化粧品、洗浄剤、口腔用抗炎症剤など)
吸収性物品(おむつ、生理用品、ペット用品など)
容器(化粧品など)
歯ブラシ、鼻洗浄器
睡眠促進具
など

肌状態の評価サービス
など

法人向け

錠剤の製造方法
ウイルスなどの検体の判定支援装置
など

 

 

 

 

 

 モノの開発としては、例えば、化粧品や殺虫剤などの組成物(化学品)やおむつや生理用品などの衛生等用品などが挙げられます。

 サービスの開発としては、例えば、肌状態の評価方法などが挙げられます。

 化学系の要素を含む開発品が非常に多いです。 

 

3.2 出願件数の推移

 下図は日用品、化粧品メーカー8社の特許出願件数の推移です。

 

 上図全期間にわたって花王が最も多く出願しています。

 花王以外がわかりづらいので縦軸のレンジを変えたものを以下に示します。

 

 出願件数に差はありますが、いずれも毎年出願されていて技術開発が継続的におこなわれていることが推測されます。

 

3.3 開発の活発度

 特許出願件数≒開発の活発度、だと仮定すると、

 花王>ユニ・チャーム>ライオン>資生堂>小林製薬>コーセー>ロート製薬>アース製薬

です。

 

3.4 主な開発分野

 各社ごとに特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します(縦軸の表示上限1000件)。

 各社の出願上位3つの技術分野を抽出して並べています(特許出願されていても、その企業の出願件数上位に入っていない技術分野は除外されています)。

 各記号は発明の技術分類をあらわします。

 

 分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)

  

 A01K動物の飼育や養殖などの技術に関連する分類です。
 鶏舎や牛舎、ペット用の飼育道具などがこれに該当します。
 ユニ・チャームがこの分野から多く出願しています。

 

 A01M動物の捕獲などの技術に関連する分類です。
 害虫駆除装置などがこれに該当します。
 アース製薬がこの分野から多く出願しています。
 
 A01N殺生物剤などに関連する分類です。
 殺虫剤などがこれに該当します。
 アース製薬がこの分野から多く出願しています。

 

 A23L食料品や非アルコール飲料などに関連する分類です。
 ダイエット食品などがこれに該当します。
 小林製薬、ロート製薬がこの分野から多く出願しています。
 
 A41Bシャツ、下着、ベビー用リネン製品などに関連する分類です。
 ベビー用パンツなどがこれに該当します。
 花王、ユニ・チャームがこの分野から多く出願しています。

 

 A45D理美容器具や化粧品などに関連する分類です。
 くしや化粧用鉛筆などがこれに該当します。
 資生堂、コーセーがこの分野から多く出願しています。
 
 A61F医療用具などに関連する分類です。
 包帯や救急箱などがこれに該当します。
 花王、ユニ・チャームがこの分野から多く出願しています。

 

 A61K化粧用製剤などに関連する分類です。
 化粧品などがこれに該当します。
 花王、ライオン、小林製薬、アース製薬、資生堂、コーセー、ロート製薬がこの分野から多く出願しています。

 

 B65D容器に関する技術に関連する分類です。
 各種材料からなる容器などがこれに該当します。
 ライオン、小林製薬、コーセー、ロート製薬がこの分野から多く出願しています。

 

 C11D洗浄性組成物に関連する分類です。
 石鹸などがこれに該当します。
 ライオンがこの分野から多く出願しています。

 

 G01N材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析に関連する分類です。
 分析装置などがこれに該当します。
 資生堂がこの分野から多く出願しています。

 

3.5 日用品&化粧品メーカー8社の近年の開発トレンドと求められる専門の例

 特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。

 ここ10年のトレンドは以下のとおりです。

 発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。

 出願件数が少ない技術分野は除外しています。

 発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。

 関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。

 

 個別の情報を詳しく確認したい場合は、それぞれのリンク先に飛んでください。

 特許は難解ですが、GeminiChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。

参考記事 【AI活用】難解な特許が小学生レベルの内容に!1分で特許を読み解く方法

 

(1)花王|開発トレンドと専門性

 

 上図期間中、A61Kが最も多いです。次いでA61Fが多いです。その次がB65D、G03Gで件数は同程度です。

 A61Kは既述のとおり、化粧用製剤などに関連する分類です。
 具体例として練歯磨組成物が挙げられます。
 既存の練歯磨組成物には粘性を付与するためにアルギン酸ナトリウム、カラギーナン等の粘結剤が用いられていますが、歯磨剤組成物使用後の歯面の感触については十分な検討がなされていませんでした。
 これに対し、κ-カラギーナンを特定量で含有すると共にアニオン界面活性剤、プロピレングリコール、及び特定量のグリセリンを各々特定の質量比で含有することにより歯面においてつるつるとした感触を高めつつ低温域から高温域にわたって保存安定性を確保する練歯磨組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-121326/11/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(κ-カラギーナンの分子量や構造、アニオン界面活性剤との相互作用の最適化、歯面における滑り感を向上させるための配合条件の検討)、界面化学(κ-カラギーナンとアニオン界面活性剤の混合系における界面張力や吸着挙動の解析)

 

 別の例として顔用シートマスクが挙げられます。
 従来のシート状化粧料では冷却感を高めるためにメントールなどが配合されていましたが刺激感の問題がありました。
 これに対して、シート基材に特定の量のメントールと水を含有する組成物を含浸させることで顔に適用する際の冷却感を好ましいものとしつつ刺激感を抑制した顔用シートマスクが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-125634/11/ja

  関連する専門分野の例:界面化学(メントールと他の成分との相互作用の解析、刺激感を抑制するための配合検討)、材料工学(メントール含有組成物を適切に保持し、肌に効果的に届けることができるシート基材の設計)

 

 A61Fは既述のとおり、医療用具などに関連する分類です。
 具体例として生理用ナプキン等の吸収性物品が挙げられます。
 従来の吸収性物品では液漏れ抑制のために吸収性能を高めると着用時の違和感が増大する傾向にありました。例えば、吸収体の一部を厚くする(中高部)と長時間使用や就寝時にヨレが発生しやすくなり違和感の原因となっていました。
 これに対して、吸収体の後方領域に液拡散抑制領域と一対の後方圧搾溝を設けることで、液拡散抑制領域への圧縮力やねじれ応力の伝達を抑制してヨレの発生を抑制しつつ、吸収性能と着用時の違和感低減を両立させた吸収性物品が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7453306/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(吸収性物品の着用時における変形挙動の解析、最適な後方圧搾溝の設計)、化学工学(吸収性物品における体液の拡散挙動の解析し液漏れが発生しやすい箇所や体液が拡散しやすい経路を特定)

 

 別の例として生理用ナプキン等に使用される吸収体の製造技術が挙げられます。
 従来は吸収体の厚みを部分的に変える(中高部)と積繊密度が不均一になる、反対面が窪む等の問題があって一定品質の吸収体製造が困難でした。
 これに対して、回転ドラムとダクトを備えた積繊装置においてダクトに開口部と制御機構を設け、開口部からの誘引空気量を制御することで吸収体の特定箇所に原材料を効率的に積繊できるようにして簡便な装置構成で所望の形状の吸収体を一定品質で製造できる吸収体の製造技術が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-154208/11/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(ダクトの制御機構、シャッター部材の開閉機構の設計)、材料工学(吸収体の繊維材料の選定、吸収体の吸収量、漏れ防止性能、着用感の評価)

 

 B65Dは既述のとおり、容器に関する技術に関連する分類です。
 具体例として二重構造の容器が挙げられます。
 従来の二重容器では内容器の固定方法が不十分であったり外観を損ねるなるなどの問題がありました。
 これに対して、内容器に複数の周壁部を設け外容器の環状部と嵌合させ、フランジに指かけ部を設けることで、容易な着脱と安定した固定を両立させた容器が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-017781/11/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(内容器と外容器の嵌合機構の設計)、材料工学(内容器の材料を選定し最適な成形方法を検討)

 

 G03Gはエレクトログラフィーなどの技術に関連する分類です。
 具体例として電子写真方式に用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法が挙げられます。
  従来は離型剤をトナー中に均一に内包することが難しく、ホットオフセット(トナーがローラーに付着し、次の紙に転写されること)が発生しやすいという問題がありました。
 これに対して、まず離型剤と特定のポリエステル樹脂(A)を混ぜて乳化させて離型剤の粒子を作り、次にこの離型剤粒子と別のポリエステル樹脂(B)を混ぜて凝集させてトナーの元となる粒子を作り、最後にこれらの粒子を融着させてトナー粒子を完成させる工程においてポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分を特定の脂肪族ジオールとすることでホットオフセットの発生を抑制できる製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-098717/11/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(ポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分の種類、炭素数、分岐構造などの最適化)、界面化学(離型剤粒子の分散安定化機構を解析し、分散剤の種類や添加量を最適化)

 

(2)ユニ・チャーム|開発トレンドと専門性
 
 A61Fが最も多いです。次いで多いのがA41Bです。その次がA01K、B65Dで件数は同程度です。
 A61Fは既述のとおり、医療用具などに関連する分類です。
 具体例として生理用ナプキンの吸収性コア構造が挙げられます。
 従来のナプキンでは吸収体の変形によるヨレや横漏れが問題でした。
 これに対して、吸収性コアに長手方向の開口部と高坪量部の間に低密度の隣接部を設け、毛細管現象により排泄物を長手方向に誘導し、開口部とシートを接合することで吸収体の変形を抑制しフィット感を向上させた吸収物品が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-088545/11/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(繊維材料の組み合わせ、坪量、密度を変化させた吸収性コアの試作、液体拡散性能、吸収性能、圧縮特性などの評価)、人間工学(さまざまな体型の被験者で着用感、フィット感、動作追従性などの評価)

 

 別の例として吸収性物品用複合シートが挙げられます。
 従来の複合シートでは肌触りの良さと耐久性の両立が困難でした。
 これに対して、第1不織布にポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂を含む複合繊維層とポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維層を組み合わせ、第2不織布との接合強度を高めることで肌触りの良さを維持しつつ耐久性に優れた複合シートが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-177943/11/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(複合繊維と不織布の組み合わせを試作、複合シートの強度、柔軟性、耐久性、肌触りなどの評価)、高分子化学(相溶化剤による接合強度の向上を検討)

 

 A41Bは既述のとおり、シャツ、下着、ベビー用リネン製品などに関連する分類です。
 具体例として使い捨ておむつが挙げられます。
 従来のおむつでは乳児のへそ部分を圧迫したり、おむつの角が肌に当たり刺激を与える可能性がありました。
 これに対して、おむつの前端縁に凹部を設けて後端縁に凸部を設けることで、へそ部分への圧迫を軽減し、おむつの四隅に曲線状の切欠き部を設けることで肌への刺激を抑制したおむつが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2017-136112/11/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(最適形状の設計)、人間工学(さまざまな体型の乳児を対象とした装着実験をおこない、おむつの形状、素材、構造を最適化)

 

 A01Kは既述のとおり、動物の飼育や養殖などの技術に関連する分類です。
 具体例としてペットシートが挙げられます。
 従来のペットシートは使用時にカバーシートを剥がしたり、展開するのに手間がかかるという問題がありました。
 これに対して、裏面に結合面を露出させた状態で二つ折り可能な折り曲げラインを設けられた片手で展開できるペットシートが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-044528/11/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(各種材料による結合面の試作、接着力、剥離性、耐久性などの評価)、機械工学(ペットシートの折り曲げラインの形状、配置、強度などの評価、設計)

 

 B65Dは既述のとおり、容器に関する技術に関連する分類です。
 具体例として吸収性物品(生理用ナプキン等)の収容体が挙げられます。
 従来の紙製パッケージはプラスチック製に比べて硬く、開封時にミシン目(切り取り誘導線)が不要に広がり防湿性が低下する問題がありました。
 これに対して、ミシン目を構成する切り込みを折り曲げ誘導線と重複しない位置に配置することで開封前のミシン目の広がりを抑制して防湿性を高めた収容体が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-185697/11/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(パッケージの強度、防湿性、環境負荷を考慮した紙素材の選定と評価)、機械工学(パッケージの開封機構(ミシン目、折り曲げ誘導線)の設計)

 

(3)ライオン|開発トレンドと専門性

 

 A61Kが最も多いです。次いで多いのがC11Dです。その次がB65D、A46Bで件数は同程度です。

 A61Kは既述のとおり、化粧用製剤などに関連する分類です。
 具体例として特定の薬物成分(A成分:アリルイソプロピルアセチル尿素等、B成分:ロキソプロフェン等)を含む錠剤の製造方法が挙げられます。
 従来は錠剤の摩損を改善するために水溶性高分子を使用すると崩壊性が低下する問題がありました。
 これに対して、A成分とB成分の合計含有量を造粒粒子に対して80質量%以上、A成分/B成分の質量比を0.1~1.5にして造粒し、水溶性高分子の含有量を抑えることで良好な崩壊性を維持しつつ摩損を抑制した錠剤の製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-014238/11/ja

  関連する専門分野の例:化学工学(各種添加剤の組み合わせによる錠剤の崩壊性、摩損度、硬度を評価)、薬理学(錠剤からの薬物放出速度を評価し、目標とする薬物動態プロファイルが得られるようにする)

 

 別の例として液体皮膚洗浄剤組成物が挙げられます。
 従来の液体皮膚洗浄剤組成物ではタオルドライ後の肌の弾力と低温安定性に優れた性能を十分に両立させることが困難でした。
 これに対して、特定の割合でアニオン性界面活性剤(パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、カチオン性ポリマー(塩化ジメチルジアリルアンモニウム重合体等)、ポリエチレングリコールを配合(アニオン性界面活性剤とポリエチレングリコールの質量比を特定の範囲に調整)することで肌の弾力と低温安定性を向上させた液体皮膚洗浄剤組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-191760/11/ja

  関連する専門分野の例:界面化学(最適な界面活性剤の検討、選定)、薬学(さまざまな皮膚タイプの被験者に対して液体皮膚洗浄剤組成物の安全性、有効性を評価)

 

 C11Dは既述のとおり、洗浄性組成物に関連する分類です。
  具体例として液体洗浄剤組成物が挙げられます。
 既存の洗浄剤は界面活性剤の多用による繊維の風合い劣化や動物性繊維への浸透性不足が問題でした。
 これに対して、特定のアルキルエーテルが用いられた非石鹸系界面活性剤(A成分)と特定の平均付加モル数を持つポリエチレンイミン誘導体(B成分)が組み合わせされ、界面活性剤の使用量を抑えつつ洗浄力、浸透性、柔軟性を向上させた洗浄剤組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7122447/15/ja

  関連する専門分野の例:界面化学(各種界面活性剤の組み合わせによる洗浄力、浸透性、柔軟性の評価)、高分子化学(ポリエチレンイミン誘導体の分子量、分岐構造、官能基などを変化させたポリマーの合成、評価)

 

 B65Dは既述のとおり、容器に関する技術に関連する分類です。
 具体例として合成樹脂製容器が挙げられます。
 従来の容器は薄肉化に伴い減圧変形しやすく、特に楕円形状では正面が凹みやすい問題がありました。
 これに対して、胴部に交差する凹状リブによりリブ交点を減圧変形開始点近傍に配置することで変形応力を分散させ凹みを抑制した合成樹脂製容器が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-091380/11/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(容器の形状、材料、リブ形状などのパラメータを変化させて減圧変形に対する強度を評価)、機械工学(最適な成形プロセスの検討、設計)

 

 A46Bはブラシに関連する分類です。
 具体例として歯ブラシのブラシ成形体が挙げられます。
 従来の一体成形歯ブラシはフィラメントと基台が一体であるため成形時にフィラメントが金型に強く接着し変形しやすい問題がありました。
 これに対して、基台部の保持面から背面側に突出する構造体(基台と底壁に繋げて幅方向の中央に配置)が設けられたことで成形時の離型抵抗によるフィラメントの変形を抑制するブラシ成形体が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-091379/11/ja

  関連する専門分野の例:応用力学(ブラシ成形体の形状、材料、構造体の形状などのパラメータを変化させて離型抵抗に対する強度を評価)、機械工学(射出成形条件(温度、圧力、速度など)を最適化し、フィラメントの変形や成形不良を抑制)

 

(4)アース製薬|開発トレンドと専門性

 

 A01Nが最も多いです。次いでA01M、A61Kが多いです。

 A01Nは既述のとおり、殺生物剤などに関連する分類です。
 具体例として網戸用害虫防除方法が挙げられます。
 従来は連続噴射型のエアゾールが主流であり、薬剤付着量の不均一性や作業効率の悪さが問題でした。
 これに対して、定量噴射型エアゾールにより害虫防除成分を含む原液と噴射剤からなるエアゾール組成物を特定の噴射圧(5~50gf)で網戸から20~80cm離れた距離から噴射することで網戸への薬剤付着率と均一性を高めた網戸用害虫防除方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7352050/15/ja

  関連する専門分野の例:応用化学(害虫防除成分の種類や配合量を変化させて対象害虫に対する防除効果や網戸への付着性を評価)、流体工学(噴霧粒子の速度、粒径分布、拡散範囲などの測定、最適な噴射条件の設計)

 

 別の例として室内のダニ対策に関する技術が挙げられます。
 従来の殺ダニ剤はダニの死骸を増加させてアレルゲンを悪化させる可能性がありました
 これに対して、揮散性ピレスロイドを有効成分として含む薬剤組成物を空間に拡散させて有効成分の1日あたりの落下量を0.1~25mg/m2に調整することでダニの致死を抑制しつつ活動性を減衰させる技術が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7506275/15/ja

  関連する専門分野の例:薬学(各種揮散性ピレスロイドのダニに対する効果を比較検討し、最適な有効成分を選定)、生物学(各種ダニ(コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニなど)に対する薬剤の効果を比較検討、効果の高いダニ種を特定)

 

 A01Mは既述のとおり、動物の捕獲などの技術に関連する分類です。
 具体例としてハチ捕獲器が挙げられます。
 従来はハチが着地する場所を見つけられずに飛び去ってしまうことがあり捕獲効率が低いという問題がありました。
 これに対して、ハチが着地しやすいポート部を設け、そこから捕獲口へスムーズに誘導することでハチの捕獲率を向上させたハチ捕獲器が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-173372/11/ja

  関連する専門分野の例:農学(対象となるハチの生態や行動を調査し、捕獲器の設計に反映)、機械工学(ハチが着地しやすいポート部の形状、傾斜角度、表面の凹凸などの設計)

 

 A61Kは既述のとおり、化粧用製剤などに関連する分類です。
 具体例として口腔用抗炎症組成物が挙げられます。
 従来のグリチルリチン酸単独の抗炎症組成物では効果が不十分でした。
 これに対して、グリチルリチン酸またはその塩と特定の植物抽出物(セイヨウサンザシ、ハマメリスなど)を組み合わせることで抗炎症効果を増強させた口腔用抗炎症組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-052833/11/ja

  関連する専門分野の例:薬学(グリチルリチン酸と植物抽出物の抗炎症作用の相乗効果の検証)、歯学(歯周病患者や口内炎患者を対象とした臨床試験の計画・実施)

 

(5)小林製薬|開発トレンドと専門性

 

 A61Kが最も多いです。次いでB65Dが多いです。その次がA61L、A61Fで件数は同程度です。 

 A61Kは既述のとおり、化粧用製剤などに関連する分類です。
 具体例として発泡錠剤型の口腔内装着器具洗浄剤が挙げられます。
 従来の洗浄剤では消臭効果に限界がありました。
 これに対して、シクロデキストリンと特定のアルキル硫酸塩または炭酸水素塩、および炭酸塩と酸を組み合わせた消臭効果を発揮する発泡錠剤型の口腔内装着器具洗浄剤が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7502577/15/ja

  関連する専門分野の例:応用化学(アルキル硫酸塩や炭酸水素塩の種類・濃度を検討し、最適な組み合わせを決定)、薬学(錠剤の硬度、崩壊性、発泡性などの物性評価、最適な製剤設計)

 

 別の例として外用組成物が挙げられます。
 キラル-イノシトールは育毛効果が期待される成分ですが、水を含む組成物では乾燥後に析出物が生成しやすいという問題がありました。
 これに対して、糖アルコール(エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール)を配合することで、析出物の生成を抑制し、使用感を向上させた外用組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-133519/11/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(キラル-イノシトールの安定性を向上させるための化学修飾や包接化などの検討)、製剤学(育毛効果や使用感を評価するための臨床試験の計画・実施)

 

 B65Dは既述のとおり、容器に関する技術に関連する分類です。
 具体例として鼻洗浄器が挙げられます。
 従来の鼻洗浄器では容器をスクイズした際に口部が変形し、洗浄液の噴射が阻害されるという問題がありました。
 これに対して、容器の胴部を偏平形状とし周壁部を湾曲させることでスクイズ時の口部の変形を抑制し、安定した洗浄液の噴射を可能にした鼻洗浄器が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-183502/11/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(最適なノズル形状やチューブの配置の設計)、人間工学(実際の使用環境を想定した使用試験の実施、評価)

 

 A61Lは医療や衛生における殺菌などの技術に関連する分類です。
 具体例として薬液を揮散させる装置が挙げられます。
 従来の揮散装置では薬液が染み込んだ芯が露出しており、使用前に薬液が漏れる可能性がありました。
 これに対して、通常は閉じた弁機構を設けてカバーを取り付けた時のみ弁が開くようにすることで薬液の漏れを防ぐ薬液揮散装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-112038/11/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(薬液の種類や粘度に適した弁機構の設計)、化学工学(薬液の揮散速度や揮散量の測定・評価、最適な揮散体や容器の形状の検討)

 

 A61Fは既述のとおり、医療用具などに関連する分類です。
 具体例として耳に装着して耳を温めることで睡眠を促進する睡眠促進具が挙げられます。
 従来の耳を温める温熱具は耳全体を覆う袋状のものが一般的でした。
 これに対して、耳甲介に嵌め込み可能な耳装着具と耳甲介を温める温熱体とを備えて、温熱体は空気と反応して発熱する化学反応を利用し、通気性の異なるシートで覆うことで放熱を制御する、温め箇所を耳甲介に特化した睡眠促進具が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-075388/11/ja

  関連する専門分野の例:人間工学(実際の使用環境を想定した装着試験の実施)、材料工学(発熱組成物の配合やシートの材質、厚みを変化させて温度や持続時間の制御性を評価)

 

(6)資生堂|開発トレンドと専門性

 

 A61Kが最も多いです。次いでA45Dが多いです。その次がG01N、A61Bで件数は同程度です。

 A61Kは既述のとおり、化粧用製剤などに関連する分類です。
 具体例として血管を安定化させる効果に着目した組成物が挙げられます。
 従来の血管安定化に関する研究では特定の受容体チロシンキナーゼの活性化に着目したものが多い状況でした。
 これに対して、天然由来のベニバナエキスがVEカドヘリンの発現を上昇させるという知見に基づく安全性を高めた血管安定化組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-177144/11/ja

  関連する専門分野の例:薬学(ベニバナエキスの安全性や有効性を評価するための臨床試験の計画・実施)、分子生物学(VEカドヘリンの発現上昇が血管内皮細胞のバリア機能や血管新生に与える影響を解析)

 

 別の例としてほてりやホットフラッシュなどを改善するための組成物が挙げられます。
 従来の体質改善剤は効果発現に時間がかかる漢方薬や副作用が懸念される西洋医薬が主流でした。
 これに対して、天然由来のクロマメノキとアムラを組み合わせることで相乗的な体質改善効果が得られる組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7379648/15/ja

  関連する専門分野の例:薬学(クロマメノキおよびアムラの産地や品種、抽出方法などの条件を変化させて有効成分の含有量や体質改善効果を比較検討)、栄養学(臨床試験により体質改善効果の有無や程度、最適な摂取量や摂取方法などを検証)

 

 A45Dは既述のとおり、理美容器具や化粧品などに関連する分類です。
 具体例として化粧品容器が挙げられます。
 従来の化粧品容器では蓋部が硬質材料で一体成形されているため、塗布時の把持感が悪く微妙な力加減での塗布が困難でした。
 これに対して、蓋部を中心部と中心部を囲む柔軟な外周部とで構成し、外周部を複数の棒状部、格子部またはチェインメイル部で形成することで、蓋部を単一材料で一体成形しつつ外周部を柔軟にして把持感を向上させ、塗布時の操作性を高めた化粧品容器が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-163589/11/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(外周部の形状、寸法、材料の変形量と荷重の関係を解析)、人間工学(ユーザを対象に官能評価を実施、蓋部の把持感や操作性を客観的に評価)

 

 G01Nは既述のとおり、材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析に関連する分類です。
 具体例としてOBP(odorant binding protein)発現促進剤が挙げられます。
 OBPは有害物質を捕捉し、生体を防御する役割を担っていますが、加齢や疲労などでOBP活性が低下すると有害物質が皮膚にダメージを与えやすくなります。
 これに対して、OBPの発現を促進する百合エキスを含有することで皮膚のバリア機能や保湿機能を向上させ有害物質によるダメージを低減するOBP発現促進剤が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-016710/11/ja

  関連する専門分野の例:生物学(百合エキスがOBP遺伝子の転写を活性化する転写因子やシグナル伝達経路を特定)、薬学(百合エキスの経皮吸収性や皮膚透過性を評価し、最適な投与経路や製剤設計を検討)

 

 A61Bは手術、診断などの装置などに関連する分類です。
 具体例として被験者の肌状態を評価する技術が挙げられます。
 従来の肌評価は主観的な評価や単一の指標に基づくものが多く、客観性や網羅性に課題がありました。
 これに対して、シワの深さや面積など複数のパラメータをベクトル化し、基準となる年齢別のシワベクトルとのコサイン類似度を計算することで客観的な肌状態評価を可能にする方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-067024/11/ja

  関連する専門分野の例:情報学(最適な指標の選定)、医用工学(シワの微細な特徴量の抽出の検討)

 

(7)コーセー|開発トレンドと専門性

 

 A61Kが最も多いです。次いでA45D、B65Dが多いです。

 A61Kは既述のとおり、化粧用製剤などに関連する分類です。
 具体例としてニコチン酸アミドを高濃度で配合した水中油型乳化組成物が挙げられます。
 従来のニコチン酸アミド配合組成物はべたつきや粉吹き、乳化不安定性の問題がありました。
 これに対して、リン脂質と特定のノニオン界面活性剤を併用することで肌のハリ・弾力向上、べたつき低減、粉吹き防止、乳化安定性を向上させる水中油型乳化組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-087249/11/ja

  関連する専門分野の例:応用化学(さまざまなHLBの界面活性剤の組み合わせ、乳化安定性に与える影響の評価)、薬学(ニコチン酸アミドの皮膚透過性を向上させるための添加剤や製剤技術の検討)

 

 別の例としてエイジツ抽出物を含むMMP-14活性抑制剤が挙げられます。
 既存の抗老化化粧品は真皮マトリックスの主要成分であるコラーゲンの分解に着目しておらず十分な効果が得られていませんでした。
 これに対して、MMP-14遺伝子(コラーゲンを分解し、シワ、たるみなどの原因になるもの)の発現を抑制しコラーゲン分解を抑制するエイジツ抽出物により紫外線や加齢によるシワ、たるみ、ハリの低下などの皮膚老化を抑制する真皮マトリックス分解抑制剤が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-178777/11/ja

  関連する専門分野の例:薬学(有効成分の皮膚透過性を高めるための製剤設計)、農学(有効成分を効率的に抽出するための最適な栽培条件や収穫時期の特定)

 

 A45Dは既述のとおり、理美容器具や化粧品などに関連する分類です。
 具体例として化粧料表面を保護するシートが挙げられます。
 従来の保護シートは蓋裏に密着しやすく剥がしにくいという問題がありました。
 これに対して、シート周縁のリム部に凸部を設けて蓋裏との間に隙間を作り密着を防止し、また、凹部や切り欠き部を設けることで空気の流入を促し、更に密着を防ぐことで、使用者がシートを容易に剥がすことができ、常に清潔な化粧料を使用できる化粧料用保護シートが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-034114/11/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(化粧品の内容物に対する耐性、柔軟性、透明性、コストなどを考慮した最適な材料の選定)、機械工学(シートの抜き加工や折り曲げ加工の工程設計)

 

 B65Dは既述のとおり、容器に関する技術に関連する分類です。
 具体例として不透明な蓋を備えた化粧液容器が挙げられます。
 従来の不透明な蓋を持つ容器は引き抜き式か回動式かの判別が難しく、誤った操作で破損や内容物漏れの恐れがありました。
 これに対して、容器本体の外周面を特定形状にすることで蓋を引き上げても回動させても蓋の弾性変形を利用して安全に分離できる構造とし、使用者が直感的な操作で蓋を開けることができ利便性と安全性が向上した化粧液容器が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7237226/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(ユーザーにとって使いやすい形状や操作性の検討)、生産工学(容器本体や蓋の精密な形状を効率的に製造するための成形の検討)

 

(8)ロート製薬|開発トレンドと専門性

 

 A61Kが最も多いです。次いでG01N、C12N、B65Dが多く件数は同程度です。

 A61Kは既述のとおり、化粧用製剤などに関連する分類です。
 具体例として酵素を含む洗浄組成物が挙げられます。
 従来の酵素配合洗浄組成物は酵素活性を維持するために水分を極力減らす必要がありましたが、使用感が低下するという問題がありました。
 これに対して、特定の高級脂肪酸塩、多価アルコール(特にグリセリン)、水、および酵素を特定の割合で配合することで、酵素活性の低下を抑制しつつ、使用時の水溶け性や泡立ちなどの使用感を向上させた洗浄組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7265100/15/ja

  関連する専門分野の例:応用化学(酵素の種類や組み合わせ、配合する成分の組み合わせによる酵素活性の安定性と持続性の評価)、化学工学(洗浄組成物の長期安定性の評価)

 

 別の例としてコンタクトレンズ(CL)用眼科組成物が挙げられます。
 既存のCL用眼科組成物ではCLへのタンパク質吸着を十分に抑制できないという問題がありました。
 これに対して、特定の水溶性抗酸化剤(亜硫酸、亜硫酸水素、またはそれらの塩)を配合することでCLへのタンパク質吸着を抑制し、タンパク質に起因する眼のかゆみ、炎症、感染症などの眼障害を予防・改善する眼科組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-021318/11/ja

  関連する専門分野の例:薬学(水溶性抗酸化剤の組み合わせや濃度、配合する添加剤の種類によるCLへのタンパク質吸着抑制効果と持続性の評価)、材料工学(CLの酸素透過性や潤滑性などの性能を維持しながらタンパク質吸着を抑制する材料の設計)

 

 G01Nは既述のとおり、材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析に関連する分類です。
 具体例としてウイルスなどの検体を判定するための支援装置が挙げられます。
 既存技術では検査媒体の撮影画像から検査結果領域を特定する際に画像の歪みや反射の影響で精度が低下するという問題がありました。
 これに対して、査媒体に設けたマーカーを基準に検査対象部位(判定ライン)の位置を特定、具体的には撮影画像からマーカーを認識してマーカーの位置と予め定められた位置関係に基づいて検査対象部位を特定することで撮影画像の歪みや反射の影響を受けずに高精度な検査結果の読み取りを可能にした検体検査支援装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-165674/11/ja

  関連する専門分野の例:情報工学(照明条件や撮影角度で撮影された検査媒体の画像データセットの作成)、医用工学(医療現場のニーズや検査対象物の特性を考慮した検査媒体の設計、検査プロトコルの最適化)

 

 C12Nは生化学などの技術に関連する分類です。
 具体例として特定の細胞表面マーカーを発現する臍帯由来間葉系幹細胞(UC-MSC)の培養上清を含む医薬組成物が挙げられます。
 既存の間葉系幹細胞を用いた治療法では治療効果が十分でなかったり、効果を発揮する疾患が限られていたりするという問題がありました。
 これに対して、特定の表面マーカー(CD201, CD46, CD56, CD147, CD165)を発現し、UC-MSCの培養上清がクロスべインレス-2やエクトジスプラシン-A2などのサイトカインを含むことで抗炎症作用やバリア機能亢進作用を有する医薬組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-120128/11/ja

  関連する専門分野の例:再生医学(間葉系幹細胞の分化機構や細胞間相互作用の解明、治療効果を高めるための培養条件や細胞操作技術の検討)、免疫学(間葉系幹細胞の免疫調節機構の解明、炎症性疾患や自己免疫疾患に対する治療効果を高めるための細胞操作技術の検討)

 

 B65Dは既述のとおり、容器に関する技術に関連する分類です。
 具体例として詰め替え用シャンプーやリンスなどの袋容器を保持するためのホルダーが挙げられます。
 従来のホルダーは袋容器の着脱にネジ締めなどの手間がかかるという問題がありました。
 これに対して、底板と底板から立ち上がる一対の側板と側板の上端に設けられた半筒状の保持部により袋容器を挟み込むだけで容易に着脱できるホルダーが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-032593/11/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(ホルダーの材質や形状を最適化し強度と耐久性を向上させる設計)、人間工学(ユーザーが無理なく袋容器を着脱できるようなホルダーの形状やサイズの検討)

 

(9)まとめ

 大別すると、生理用品やおむつなどの衛生等用品や、医薬用、殺菌用、洗浄用、化粧用などの各種用途の組成物、それらの容器に関するものが多く確認されました。

 これらに関連する専門としては、各種化学系(材料系、薬学系含む)と機械系、人間工学系が多いです。

 

3.6 共同出願人との開発例

 共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。

 技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。

 各社の共同出願人(筆頭出願人)は以下のとおりです。

(1)花王

 

 出願件数トップの共同出願人はブリヂストンです。
 共同出願の例としてシリカ配合ゴム組成物に使用される添加剤組成物が挙げられます。
 従来はグリセリン脂肪酸エステルが添加剤として用いられていましたが加工性、低ロス性、破壊特性の改善に課題がありました。
 これに対し、特定の脂肪酸組成とモノエステル含有量を持つグリセリン脂肪酸エステルを用い添加剤組成物、具体的には2種以上の脂肪酸から構成され最も多い脂肪酸が10~90質量%、モノエステル成分が50~100質量%であるグリセリン脂肪酸エステルによりシリカの分散性を高め、ゴム組成物の性能を向上させた添加剤組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2016-160424/11/ja
  関連する専門分野の例:高分子化学(グリセリン脂肪酸エステルの分子構造とゴムとの相互作用から最適な脂肪酸組成やモノエステル含有量を検討)、材料工学(シリカの表面処理やシランカップリング剤との併用効果の分析、シリカの分散性を最大化)
 
 日本製紙との共同出願では皮膚化粧料が挙げられます。
 近年、化粧料の有効成分を長時間かけて徐々に皮膚に吸収させる徐放性化粧料が求められていますが、従来のセルロース含有化粧料では成分の徐放性が不十分でした。
 これに対し、特定のカルボキシアルキル化セルロースとヒドロキシベンゼンカルボン酸またはその誘導体を組み合わせ皮膚化粧料、具体的にはpKaが4.70~4.90のカルボン酸由来のカルボキシアルキル基を有する繊維状セルロースとIOB値が0.97~2.0のヒドロキシベンゼンカルボン酸誘導体を特定の質量比で配合することで有効成分がセルロースに保持され徐々に放出される皮膚化粧料が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2017-197474/11/ja
  関連する専門分野の例:高分子化学(カルボキシアルキル化セルロースの置換度や分子量の制御、徐放性に与える影響を評価)、製剤学(化粧料の粘度やpHの調整、有効成分の放出速度や皮膚への浸透性の制御)
 
 紀伊産業との共同出願では複数色のスラリー状化粧料を用いた湿式固形化粧料の製造方法が挙げられます。
 従来は仕切り板を用いた機械的な模様形成しかできず、デザインの柔軟性や温かみのある表現に課題がありました。
 これに対し、スラリー硬度の異なる化粧料を特定の順序で充填しプレス処理を施すことで仕切り板なしで模様を形成しています。具体的には、容器底面に第1化粧料を充填後、異色化粧料を部分的に充填しプレス処理により異色化粧料を底面まで到達させ、異色化粧料のスラリー硬度を第1化粧料より高く設定することで模様の境界を明確にし、使用時の化粧料の取れやすさを調整するデザインの自由度が高く温かみのある多色模様の湿式固形化粧料の製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2016-113424/11/ja
  関連する専門分野の例:化学工学(化粧料粉体の圧縮特性やせん断特性に基づき最適な製造条件を設定)、応用化学(スラリー硬度調整剤の種類や配合量から化粧料の感触や使用性に与える影響を評価) 

 

(2)ユニ・チャーム

 

 出願件数トップの共同出願人は日立製作所です。
 共同出願の例として排泄が困難な被介護者の排泄物を吸引し、その物理量から漏れや健康状態の異常を検知する健康管理装置が挙げられます。
 従来の排泄物処理では漏れを検知できず、不快感や介護者の負担増が問題でした。
 これに対し、排泄物吸引機の識別子と物理量に基づき閾値情報データベースを参照して漏れの有無や健康状態の異常を判定しメッセージを出力することで漏れの早期発見や健康管理をおこなう健康権利装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2010-158285/11/ja
  関連する専門分野の例:電気電子工学(排泄物の物理量と健康状態の関連性を分析し閾値設定やアルゴリズム設計)、情報工学(排泄物吸引機からのデータを収集・解析し異常を検知するシステムを構築)
 
 凸版印刷との共同出願ではウェットティッシュなどの包装容器の開口部を密閉するラベルが挙げられます。
 従来の密閉ラベルは剥がした後に手を離すと開口部に戻ってしまい再度剥がす手間がありました。
 これに対し、ラベルに特定の切り込みやカット線を設けられ、剥がした状態を保持して開口部が常に露出していることで、片手で内容物を取り出せる密閉ラベルが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2015-067365/11/ja
  関連する専門分野の例:材料工学(基材、粘着剤の選定、剥離領域の設計)、機械工学(ラベルの剥離力を最適化するためのカット線や切り込みの形状、配置、深さを設計)

 

(3)ライオン

 

 件数が少ないので詳細説明は省略します。

 

(4)アース製薬

 

 件数が少ないので詳細説明は省略します。

 

(5)小林製薬

 

 出願件数トップの共同出願人は桐灰化学(吸収合併により現小林製薬)です。
 詳細説明は省略します。

 

(6)資生堂

 

 件数が少ないので詳細説明は省略します。

 

(7)コーセー

 
 件数が少ないので詳細説明は省略します。

 

(8)ロート製薬

 
 件数が少ないので詳細説明は省略します。

 

(9)上記(1)~(8)(共同出願人)のまとめ

 他社を筆頭出願人とする共同出願は多くても年平均で約2件程度です。

 

4 開発に求められる専門性

 上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。

 上記各特許情報には以下の人材が関わっていると言えます。

 

素材開発系(材料工学、高分子化学、化学工学、機械工学など)

 生理用品、ペット用品などの吸収体、化粧料用のシートなどは各種素材に関わる出願が関係します。
 目的とする効果を達成するための素材の評価、選定、設計などが求められます。

 

化学品開発系(応用化学など化学系全般、薬学、農学、生物学、医学など)

 練歯磨き、化粧品、殺虫剤、洗浄剤、医薬品など各種化学品や天然成分利用品に関わる出願が関係します。
 化学物質の配合の検討や機能の評価などが求められます。

 

容器などの物品開発系(機械工学、人間工学など)

 上記組成物などの容器や歯ブラシ、睡眠促進具などの物品に関わる出願が関係します。
 所望の機能を達成するための構造設計や評価などが求められます。

 

その他(情報系など)

 ユーザー情報など開発に反映させる情報の収集、活用には情報工学などが関わってきます。

 

 ただし、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。

 

5 まとめ

 トイレタリー・化粧品メーカーの特許出願は医薬品や化粧品などの各種組成物(化学品)、おむつや生理用品などの衛生等用品、これらの容器に関するものが多く、当該分野の開発が多くおこなわれていることが推測されます。

 大学の専攻と関連づけるとしたら、主に化学、薬学、機械における研究分野が該当する可能性があります。

 

 本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。

 参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4

 以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。

 

<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年版 東洋経済新報社

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