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【石油業界】開発職に求められる専門性とは?石油開発・精製4社の特許で読み解く技術分野

 石油はガソリン、灯油、軽油といった燃料油からプラスチックやさまざまな化学製品の元であり、生活に不可欠です。

 すなわち、単に油を作るということを超え、高度な技術が関わる分野だと言えます。

 しかし、これらの開発は、外部からはどのような技術や製品が開発されているのかが見えづらいです。

 これを特許情報からみていきます。

 特許情報は企業の開発情報だと言えます。

 実際にどのような開発がおこなわれたのか特許情報に記載されています。

 今回は、石油開発・精製に関わる4社の特許情報からどのような開発がおこなれてきたのか、また、開発にどのような専門性が求められるのか読み解きました。

 

 結論(概要)は以下の通りです。

石油業界の開発に求められる専門性
化学系(応用化学、分析化学、有機化学、物理化学、材料化学、環境化学など)
工学系(化学工学、制御工学、資源工学、環境工学、材料工学、地盤工学など)
その他(情報科学、応用数学、応用物理学など)
 ただし、上記専門は企業の一部の特許情報に基づくものであり、全てをあらわすものではありません。また、求められる専門は特許の解釈によって変わってきますので、個々の特許情報をご確認ください。

 

 

1 業界サーチの概要

 業界サーチは、業界における主要企業の特許情報から、その業界の企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。

 特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。

 すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。

 

2 石油業界

2.1 石油業界とは

 ここでは、原油や天然ガスの採掘、精製、販売、関連製品の製造に関わる業界を意図します。業界には、石油元売り企業と原油・天然ガスの開発・生産企業が存在します。

 地下資源を探し、採掘し、生産する技術と原油を精製し、ガソリンや軽油、化学製品などの製品に加工する技術の区別はしていません。

 

2.2 サーチ対象

 以下の石油元売りと原油・天然ガスの開発生産に関わる企業を対象にしました。

(1)ENEOSホールディングス(ENEOS)
(2)出光興産
(3)コスモエネルギーホールディングス(コスモ)
(4)INPEX

 以下、上記括弧書があるものは、その中の略語で記します。
 ENEOSの情報は、ENEOS株式会社とENEOSホールディングス株式会社の情報を、コスモの情報はコスモエネルギーホールディングスとコスモ石油の情報を、INPEXの情報は株式会社INPEXと帝国石油株式会社の情報をまとめたものです。 

 

2.3 使用プラットフォーム

 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat

 

3 サーチ結果

3.1 結果概要

開発イメージは下表のとおりです。 

 

 

モノの開発

サービスの開発

個人向け

 

 

 

 

 

法人向け

潤滑油組成物
硬化性樹脂組成物
プロセスオイル
有機EL素子
熱伝導性フィラー
など

触媒の選択方法
石油化学原料を使用する方法
石油増進回収方法
地殻応力測定方法
など

 

 モノの開発としては、例えば、潤滑油組成物が挙げられます。

 サービスの開発としては、例えば、触媒の選択方法などが挙げられます。

 

3.2 出願件数の推移

 下図は石油開発・精製に関わる4社の特許出願件数の推移です。

 

 企業によって出願件数の差があり、また、同一企業においても時期によって出願件数に差があります。

 ただし、各社とも毎年出願しており(INPEX、石油資源開発については直近では出願件数一桁で、出願が確認されない年も有)、そのような出願につながる開発が日頃からおこなわれていることが推測されます。

 

3.3 開発の活発度

 特許出願件数≒開発の活発度、だと考えるなら、

 ENEOS>出光>コスモ>石油資源開発、INPEX

だと言えます(石油資源開発、INPEXは出願総数では同程度)。

 

3.4 主な開発分野

 各社ごとに特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。

 各社の出願上位3つの技術分野を抽出して並べています(特許出願されていても、その企業の出願件数上位に入っていない技術分野は除外されています)。

 各記号は発明の技術分類をあらわします。

 

 分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)

 B01D分離に関連する分類です。
 蒸発や蒸留などがこれに該当します。
 INPEXがこの分野から多く出願しています。

 

 B01J化学的または物理的方法に関連する分類です。
 物質の化学的または物理的変化を生じさせるため低圧または高圧を利用するプロセスなどがこれに該当します。
 エネオス、コスモ石油、INPEX、石油資源開発がこの分野から多く出願しています。

 

 C01B非金属元素などに関連する分類です。
 水素などがこれに該当します。
 エネオス、石油資源開発がこの分野から多く出願しています。

 

 C07C非環式化合物または炭素環式化合物に関連する分類です。
 特定の炭化水素の製造などがこれに該当します。
 出光がこの分野から多く出願しています。

 

 C07D複素環式化合物に関連する分類です。
 置換基のないラクタムの製造などがこれに該当します。
 出光がこの分野から多く出願しています。

 

 C10G炭化水素油の分解や液体炭化水素混合物の製造などに関連する分類です。
 炭素の酸化物からの組成の不明確な液体炭化水素混合物の製造などがこれに該当します。
 コスモ石油、INPEX、石油資源開発がこの分野から多く出願しています。

 

 C10L特定の燃料、天然ガスなどに関連する分類です。
 液体炭素質燃料などがこれに該当します。
 コスモ石油がこの分野から多く出願しています。

 

 C10M潤滑組成物などに関連する分類です。
 鉱油または脂肪油である基材によって特徴づけられる潤滑組成物などがこれに該当します。
 エネオス、出光がこの分野から多く出願しています。

 

3.5 石油開発・精製4社の近年の開発トレンドと求められる専門の例

 特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。

 ここ10年のトレンドは以下のとおりです。

 発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。

 出願件数が少ない技術分野は除外しています。

 発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。

 関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。

 

 個別の情報を詳しく確認したい場合は、それぞれのリンク先に飛んでください。

 特許は難解ですが、GeminiChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください(超便利!)。

参考記事 【AI活用】難解な特許が小学生レベルの内容に!1分で特許を読み解く方法

 

(1)ENEOS|開発トレンドと専門性

 

 上図期間中、C10Mの出願が最も多いです。次いでC07C、C01B、C08G、B01Jが多いです。

 C10Mは既述のとおり、潤滑組成物などに関連する分類です。
 具体例として潤滑油組成物、特に油圧作動油が挙げられます。
 従来の潤滑油組成物では酸化安定性が不十分であり、特に高圧下での使用において劣化が進行しやすいという問題がありました。
 これに対し、水素化精製鉱油、特定のヒンダードアミン化合物、ジアルキルジチオリン酸銅(I)を組み合わせることで、酸化安定性を向上させた潤滑油組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7641869/15/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(潤滑油の酸化安定性や摩耗防止性を向上させるための新規添加剤を設計、合成)、物理化学(潤滑油の粘度、流動性、酸化安定性などの評価、最適な組成の決定)

 

 別の例として内燃機関用潤滑油組成物が挙げられます。
 従来の潤滑油は高油温時の省燃費性のみに焦点が当てられていました。
 これに対して、特定の二種類の金属系清浄剤(ホウ酸カルシウムサリシレートとマグネシウムサリシレート)の組み合わせ、およびそれらの配合量、潤滑油の粘度特性が最適化され、低温時も含めた省燃費性能が高められた内燃機関用潤滑油組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7603538/15/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(省燃費性を高まるためホウ酸カルシウムサリシレートとマグネシウムサリシレートの化学構造を最適化)、物理化学(潤滑油の粘度特性、摩擦特性、摩耗特性の評価、最適な配合条件を決定)

 

 C07Cは既述のとおり、非環式化合物または炭素環式化合物に関連する分類です。
 具体例としてイソプレンの製造方法が挙げられます。
 従来のイソプレン製造法では原料転化率は高いものの収率や安定性に課題があり長時間安定した製造が困難でした。
 これに対し、ゼオライト骨格に亜鉛(Zn)などの特定の金属を導入し、ルイス酸性と強い固体塩基性を有する触媒を用いることで高収率でイソプレンを安定的に製造する方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7421767/15/ja

  関連する専門分野の例:応用化学(ゼオライト骨格に導入する金属の種類や量を変化させ触媒活性や選択性に与える影響を評価、イソペンテンの脱水素反応に最適な触媒の検討)、化学工学(さまざまな反応条件におけるイソプレンの収率、触媒寿命、副生成物の生成量の評価、最適な反応条件の決定)

 

 C01Bは既述のとおり、非金属元素などに関連する分類です。
 具体例として水素化物を原料とする脱水素反応を利用した水素供給システムが挙げられます。
 従来のシステムでは反応停止時に不活性ガスでパージするため触媒劣化やエネルギーロスが生じていました。
 これに対し、脱水素反応部と気液分離部の間、または気液分離後の水素含有ガスが反応部に再供給されることで、水素雰囲気下での停止を可能にし触媒劣化を防ぎつつ外部からの水素供給を減らしてシステム効率を高めた水素供給システムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7626608/15/ja

  関連する専門分野の例:化学工学(脱水素反応部への水素供給経路の最適化、反応停止時の水素供給量、供給速度、供給タイミングなどのプロセス条件最適化)、応用化学(脱水素反応条件における触媒の耐久性評価、触媒劣化を抑制する新しい触媒材料の探索)

 

 C08Gは炭素-炭素不飽和結合のみが関与する反応以外の反応によって得られる高分子化合物に関連する分類です。
 具体例として高耐熱性硬化物を得るための硬化樹脂組成物が挙げられます。
 従来のエポキシ樹脂とフェノール樹脂硬化剤を用いた組成物では硬化性、成形性、保管安定性、耐熱性の全てを両立することが困難でした。
 これに対し、特定の多官能ベンゾオキサジン化合物、多官能エポキシ化合物、硬化剤およびジアザビシクロアルケンのビスフェノール塩の組み合わせにより、速硬化性と耐熱性に優れた硬化樹脂組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7314143/15/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(硬化反応速度、硬化物の構造と物性の関係性の評価、硬化物の構造解析に基づく高性能な硬化樹脂組成物の設計)、材料工学(硬化樹脂組成物の配合割合、硬化条件が硬化物の物性に与える影響の評価)

 

 B01Jは既述のとおり、化学的または物理的方法に関連する分類です。
 具体例として触媒反応における触媒の選択方法が挙げられます。
 従来技術では触媒の探索に膨大な計算時間と費用を要し、効率的な触媒選択が困難でした。
 これに対し、触媒反応の中間体・遷移状態のエネルギーを記述子とし、機械学習ポテンシャルを用いて記述子と反応性のマップを作成し、候補物質をプロットしてスクリーニングすることで高活性な触媒を効率的に選択する方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7289969/15/ja

  関連する専門分野の例:応用化学(さまざまな触媒材料の評価に基づき触媒活性・選択性・耐久性を向上させるための材料設計、反応条件の最適化や触媒の改良)、情報科学(計算化学シミュレーションの高速化・高精度化をおこなうアルゴリズム設計、機械学習モデルの構築)

 

(2)出光興産|開発トレンドと専門性

 

 C10Mの出願が最も多いです。次いでH05B、C08L、C07D、C08Gが多いです。

 C10Mは既述のとおり、潤滑組成物などに関連する分類です。
 具体例として潤滑油組成物が挙げられます。
 従来の潤滑油組成物では高温環境下で摩擦調整剤の効果が十分に発揮されないという問題がありました。
 これに対し、特定の構造を持つ非ホウ素変性ポリイソブテニルコハク酸ビスイミドが基油に分散剤として配合されることで、摩擦低減効果と高温清浄分散性を両立する潤滑油組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7164764/15/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(さまざまな化学構造を持つ分散剤の合成、潤滑油組成物への配合による摩擦低減効果と高温清浄分散性への影響評価)、物理化学(潤滑油組成物の粘度、流動性、熱安定性などの物理的性質の評価、実際のエンジン試験機での潤滑油組成物の摩擦低減効果と高温清浄分散性の評価)

 

 別の例としてディーゼルエンジン油などの潤滑油組成物が挙げられます。
 従来技術では潤滑油劣化に伴うスス混入時の耐摩耗性低下が問題でした。
 これに対して、窒素原子含有量0.50~1.50質量%、重量平均分子量10万以上の分散型粘度指数向上剤が組成物全量基準で0.05質量%超5.0質量%未満配合されることで、ススによる潤滑膜の摩耗を防ぎエンジン部品の耐久性を向上させた潤滑油組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7640335/15/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(さまざまな窒素含有量、分子量、分子量分布を持つ分散型粘度指数向上剤の合成、潤滑油組成物への配合による耐摩耗性への影響評価)、材料工学(潤滑油組成物が使用されるエンジン部品の材料特性の評価、潤滑油添加剤がエンジン部品の表面に形成する被膜の構造や特性の分析)

 

 H05Bは電気加熱などに関連する分類です。
 具体例として有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)が挙げられます。
 従来の有機EL素子ではフェナントロリン化合物を中間層に用いると寿命が短くなる問題がありました。
 これに対し、特定の積層発光ユニットと陰極側有機層の組み合わせ、具体的には、第一と第二の発光層を持つ積層発光ユニットの陰極側にフェナントロリン化合物を含む陰極側有機層が配置され、第一と第二の発光層はそれぞれ異なるホスト材料と同一または異なる発光性化合物を含み、特定の三重項エネルギーの関係を満たすようにすることで、発光効率と寿命を向上させた有機エレクトロルミネッセンス素子が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7569368/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(有機EL素子のデバイス構造、作製プロセス、電気的・光学的特性の評価、高性能化のためのデバイス設計やプロセス条件の最適化)、物理化学(発光層における励起子の生成・消滅過程、エネルギー移動現象の解析、発光効率向上に寄与する材料や構造の検討)

 

 C08Lは高分子化合物の組成物に関連する分類です。
 具体例としてスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)配合用のプロセスオイル(ゴムやプラスチックに混ぜて、柔らかくしたり加工しやすくしたりする油)が挙げられます。
 従来のプロセスオイルでは、TPSの物性低下やブリード(成分の染み出し)が生じる問題がありました。
 これに対し、プロセスオイルのSP値(SPp)がTPSのエラストマーセグメントのSP値(SPR)に近い範囲に調整され、低沸点留分と高沸点留分のSP値の差(|SPHD-SPLD|)が小さくされることで、TPSとの相溶性を高め物性低下とブリードを抑制するプロセスオイルが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7389702/15/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(さまざまなSP値を持つプロセスオイルをTPSに配合して物性、ブリード、成形加工性などの評価、TPSのミクロ相分離構造に対するプロセスオイルの影響解析、最適なSP値の設計)、化学工学(プロセスオイルの製造・精製プロセスの設計・最適化)

 

 C07Dは既述のとおり、複素環式化合物に関連する分類です。
 具体例として有機EL素子の性能向上に寄与するピリミジン誘導体が挙げられます。
 従来技術では有機EL素子の効率や寿命を十分に改善する材料が不足していました。
 これに対し、所定の式で表される置換基が導入されたピリミジン誘導体により発光効率と寿命を向上させた有機EL素子が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7482263/15/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(多様な置換基を導入して構造と物性の相関の解析、ピリミジン誘導体の効率的な合成ルートの探索)、材料化学(合成されたピリミジン誘導体を用いた有機EL素子の作製、発光特性、電荷輸送特性、寿命などの評価)

 

 C08Gは既述のとおり、炭素-炭素不飽和結合のみが関与する反応以外の反応によって得られる高分子化合物に関連する分類です。
 具体例としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の製造方法が挙げられます。
 従来技術ではPEEKの結晶化温度を向上させるための十分な改善が見られませんでした。
 これに対し、4,4'-ジクロロベンゾフェノンとハイドロキノンを原料とし、反応混合物の最高温度を260~320℃に制御することで、従来要した添加物を使用せずに高結晶化温度のPEEKを効率的に製造できるPEEKの製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7275401/15/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(溶液粘度、分子鎖の広がりなどの特性評価、反応機構の解明と副反応抑制のための反応条件の最適化)、材料工学(射出成形、押出成形など各種成形法におけるPEEKの成形性評価、成形体の機械的特性(引張強度、曲げ強度、衝撃強度など)評価)

 

(3)コスモ|開発トレンドと専門性

 

 C10Gの出願が最も多いです。次いでC10L、B01J、C08L、G01Nが多いです。

 C10Gは既述のとおり、炭化水素油の分解や液体炭化水素混合物の製造などに関連する分類です。
 具体例として廃プラスチックから石油化学原料を製造する方法が挙げられます。
 従来のリサイクル技術では廃プラスチックを高温で溶融する必要があり、設備コストやエネルギー消費の面で課題がありました。
 これに対し、ハンセン溶解度パラメータという指標を用いて特定の樹脂(主に塩素を含むもの)を溶解させずに、それ以外の樹脂のみを溶解する溶媒を選択することで低温での溶解が可能となり、既存の石油精製設備をそのまま利用できる製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7597515/15/ja

  関連する専門分野の例:応用化学(さまざまな廃プラスチック混合物に対する最適な溶媒の選定と溶解条件の最適化、溶解液から石油化学原料を効率的に分離・精製するプロセスの検討)、環境工学(本リサイクルプロセスの環境負荷評価と既存のリサイクル技術との比較評価、廃プラスチックの回収・選別システムの構築)

 

 別の例として重質油の水素化脱硫方法が挙げられます。
 従来の間接脱硫装置では重質油を処理すると油水分離不良が発生し、装置の効率が低下していました。
 これに対して、高密度・高硫黄・高残留炭素の第1の炭化水素油と低密度・低硫黄・低残留炭素の第2の炭化水素油を特定(第1の炭化水素油:第2の炭化水素油=0.5:99.5~30:70)で混合することで、油水分離性を改善し、水素化脱硫を効率する方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7383447/15/ja

  関連する専門分野の例:化学工学(効率的な油水分離プロセスの設計、分離装置の最適化、反応器の設計・最適化)、応用化学(さまざまな重質油の性状を分析し、最適な混合比と水素化脱硫条件の最適化、水素化脱硫触媒の選定、触媒寿命を延ばすための条件検討)

 

 C10Lは既述のとおり、特定の燃料、天然ガスなどに関連する分類です。
 具体例として軽油組成物が挙げられます。
 従来の軽油組成物は低温性能を向上させるために水素化脱硫灯油の配合割合を増やすと潤滑性や発熱量が低下するという問題がありました。
 これに対し、特定の性状を持つ高圧脱硫分解軽油(常圧蒸留による90容量%留出温度が320.0℃~360.0℃等)と高圧脱硫分解灯油(上記軽油と同様の原料油を高圧水素化処理後に分留等)が特定の割合(上記軽油を50容量%~60容量%、上記灯油を40容量%~50容量%混合)で混合されることで得られる低温性能と発熱性・潤滑性の両立する軽油組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7650738/15/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(さまざまな原料油の性状の分析、水素化処理条件と分留条件の最適化)、物理化学(軽油組成物の性状と内燃機関の性能との相関関係の解析、軽油組成物の低温性能を向上させるための内燃機関側の燃料供給系、燃焼室などの対策検討)

 

 B01Jは既述のとおり、化学的または物理的方法に関連する分類です。
 具体例として炭化水素油の水素化処理触媒用担体が挙げられます。
 従来の触媒では重質炭化水素油の処理において高温高圧条件が必要であり触媒劣化が問題でした。
 これに対し、カルボキシ基を1個以上持ち、水への溶解度が低い有機酸を担体へ担持させることで、活性金属の凝集を抑制して高分散化を促し、触媒の活性点が増加して水素化活性と触媒寿命が向上した炭化水素油の水素化処理触媒用担体が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7605678/15/ja

  関連する専門分野の例:応用化学(最適な有機酸の選定、担体への担持方法の最適化、活性金属と担体、有機酸との相互作用の解析)、材料化学(担体の細孔構造、比表面積、酸性度などの制御による触媒材料の設計、触媒の耐久性、耐熱性、耐薬品性などの評価)

 

 C08Lは既述のとおり、高分子化合物の組成物に関連する分類です。
 具体例としてゴムや樹脂に混ぜて熱伝導性を向上させるための炭素系フィラーが挙げられます。
 従来の熱伝導性フィラーには軽量性を損なうセラミック材料や高コストな黒鉛材料が用いられていました。
 これに対し、石油コークスを700~2400℃で焼成し、平均粒子径を1~100μm、X線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を3.36~3.50Å、炭素原子含有量を88.0~99.9質量%に制御して得られる、安価で、強度低下を抑制する熱伝導性フィラーが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2017-132974/11/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(石油コークスの焼成条件とフィラーの物性の関係性の解析、最適な製造条件の探索)、高分子化学(フィラーの分散性向上、ゴムや樹脂との界面接着性向上の検討)

 

 G01Nは既述のとおり、材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析に関連する分類です。
 具体例として灯油の臭気の不快度を判定する方法が挙げられます。
 従来の灯油の品質管理では揮発成分の量を測定することで臭気の強さを評価していましたが、必ずしも臭気の強さと不快感には相関がないことが課題でした。
 これに対し、灯油を密閉容器内で気液平衡状態にして気相中の硫化水素濃度を測定することで実際の使用環境における臭気の不快度をより正確に判定できるようにする臭気の不快度判定方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2019-215313/11/ja

  関連する専門分野の例:分析化学(灯油の気液平衡状態における硫化水素濃度の測定方法の確立、測定精度の評価、硫化水素以外の臭気成分の影響の排除)、環境化学(灯油の成分と硫化水素生成量の関係性の解析、灯油の使用環境における硫化水素の拡散挙動や人体への影響の評価)

 

(4)INPEX|開発トレンドと専門性

 

 B01Jの出願が最も多いです。次いでB01D、C23Fが多いです。

 B01Jは既述のとおり、化学的または物理的方法に関連する分類です。
 具体例として光触媒の製造方法が挙げられます。
 従来の光触媒は紫外光でしか機能せず、太陽光の利用効率が低いという問題がありました。
 これに対し、特定の金属酸化物表面に窒化物または酸窒化物を析出させて貴金属等を担持させることで、可視光領域で高い水素生成活性を示す光触媒の製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2019-037918/11/ja

  関連する専門分野の例:物理化学(金属酸化物、窒化物、貴金属の組み合わせとそれらの構造・組成が触媒活性に与える影響の評価)、材料化学(光触媒の性能(光吸収特性、表面積、結晶構造など)を制御するための材料設計と評価)

 

 B01Dは既述のとおり、分離に関連する分類です。
 具体例として大気中の二酸化炭素を効率的に回収し濃度を低減するシステムが挙げられます。
 従来の二酸化炭素回収システムは大量の空気を処理する必要があり多大なエネルギーを消費していました。
 これに対し、二酸化炭素と反応して固体化するアミン化合物の溶液を利用することで気液接触装置内で二酸化炭素を効率的に析出・分離し、空気輸送のエネルギー消費を抑えつつ高効率な二酸化炭素回収とアミン化合物の再生を可能にするシステムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-075122/11/ja

  関連する専門分野の例:化学工学(アミン化合物の溶液の物性や反応条件が二酸化炭素回収効率に与える影響の評価、システム全体のエネルギー効率を向上させるためのプロセス設計)、環境工学(システムのライフサイクルアセスメント)

 

 C23Fは金属材料の化学的処理に関連する分類です。
 具体例として油田やガス田で使用される採油管やパイプラインの腐食を防止するための腐食防止剤が挙げられます。
 従来の腐食防止剤では特に水分の多い環境下での腐食を十分に抑制できませんでした。
 これに対し、極性基と疎水基を持つインヒビター(A)、芳香族系溶剤(B)、疎水性微粒子であるカーボンナノチューブ(C)の配合により水分の多い環境下でも腐食防止性能を発揮する腐食防止剤が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2018-031043/11/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(カーボンナノチューブの分散性を向上させるための表面処理技術、金属表面への防食皮膜の密着性を高めるための表面改質技術の検討)、応用化学(インヒビター(A)と芳香族系溶剤(B)とカーボンナノチューブ(C)の配合比率の最適化、高温、高圧、腐食性ガスが存在する環境下での腐食防止剤の安定性評価)

 

(5)石油資源開発|開発トレンドと専門性

 

 E21Bの出願が最も多いです。次いでG01Lが多いです。

 E21Bは地中もしくは岩石の削孔に関連する分類です。
 具体例としてCO2ガスを含む圧入ガスを地下貯留し、石油増進回収をおこなう方法が挙げられます。
 従来のCO2地下貯留技術では貯留コストが高く、効率的な貯留方法が求められていました。
 これに対し、圧入井を外管と内管の二重管構造とし、内管を水流路、外管と内管の間をガス流路とすることで圧入水と圧入ガスを別々の流路で地中に送り込み、水流路の先端に設置されたファインバブル発生装置によって圧入水を高圧水ジェットとして噴射し、この高圧水ジェットによってガス流路から圧入ガスを吸い込み、微細な気泡(ファインバブル)とし、ファインバブル化された圧入ガスと圧入水をファインバブル発生装置内で混合して地層への浸透性の高い気液混合流体を生成し、この気液混合流体を石油貯留層などの浸透性地層に圧入することでCO2ガスの地層内での拡散を促進し地層内の石油と接触しやすくすることで、石油の流動性を高め、回収率を向上させる方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7369322/15/ja

  関連する専門分野の例:資源工学(実際の油田におけるCO2圧入試験による石油回収率向上効果の検証、CO2挙動予測と貯留安定性評価、ファインバブル発生装置の最適設計、圧入条件の最適化)、環境工学(地層内におけるCO2の溶解・鉱物化反応の評価、長期的なCO2固定化機構の解析、地下水モニタリングによる環境リスク評価)

 

 別の例として石油貯留層からの石油回収率を向上させるための石油増進回収方法が挙げられます。
 従来の石油回収技術では圧入ガスや圧入水を地層に注入する際に地層内の微細な間隙を効率的に通過させることが困難であり、十分な回収効果が得られませんでした。
 これに対して、圧入井をガス流路と水流路の二流路で構成し、ガス流路の内側に水流路を配置し、ガス流路と水流路の間から圧入ガスを圧入し、ガス流路の下端に設置されたマイクロバブル発生装置を通して圧入ガスを微細な気泡(マイクロバブル)として噴射し、水流路からは圧入水を圧入し、圧入井内で圧入水とマイクロバブル化した圧入ガスを混合することで、マイクロバブルを含む気液混合流体が生成され石油貯留層に効率的に浸透し、石油回収率の向上に貢献する石油増進回収方法開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7139546/15/ja

  関連する専門分野の例:資源工学(実際の油田におけるマイクロバブル圧入試験による石油回収率向上効果の検証、マイクロバブルの地層内挙動予測、圧入井の最適設計、圧入条件の最適化)、化学工学(マイクロバブル発生装置の最適設計、マイクロバブルの粒径制御、圧入ガスと圧入水の最適な混合比や地層内での反応速度の最適化)

 

 G01Lは力、応力、トルク、圧力などの測定に関連する分類です。
 具体例として地盤に作用する三次元応力要素を測定する地殻応力測定方法が挙げられます。
 従来の地殻応力測定方法では鉛直方向に掘削された坑井を対象としており、傾斜した坑井には適用できず測定精度が担保されないという問題がありました。
 これに対し、坑井から採取したサイドウォールコアの変形に基づいて地盤に作用する応力を測定、具体的には、サイドウォールコアの長手方向に離間する3つの計測断面を設定し、各断面の変形量(最大径と最小径)を測定し、これらの測定値と坑井の掘削方向やコアの位置関係などの既知のパラメータを用いて応力テンソルの独立した6成分を算出することで三次元応力要素を求める地殻応力測定方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6883811/15/ja

  関連する専門分野の例:地盤工学(さまざまな地盤条件、坑井形状におけるサイドウォールコアの変形挙動の実験的検証、実際の坑井におけるコア採取、計測、応力測定の実施、測定精度の評価、測定された応力データを用いた地盤の力学挙動のシミュレーション、モデル構築)、応用数学(応力テンソル計算のアルゴリズム設計、計測データの誤差を考慮したより正確な応力算出方法の検討)

 

(6)まとめ

 原油を元にする各種化学品やその製造方法、それらの応用品(有機EL素子など)、採掘に関わる技術(回収方法や測定方法)、リサイクルに関わる技術(廃プラからの石油原料回収)に関する出願が確認されました。

 このような出願につながる開発がおこなわれていることが推測されます。 

 

3.6 共同出願人との開発例

 共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。

 技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。

 各社の共同出願人(複数件の出願をおこなった出願人)は以下のとおりです。

 共同出願人が筆頭出願人(願書の【出願人】の欄の一番上に記載された出願人)になっているものをカウントしました。

 また、グループ企業や現存しない企業については、共同出願人としてのカウントから除外している場合があります。

 

(1)ENEOS

 

 出願件数トップの共同出願人は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(現エネルギー・金属鉱物資源機構)です。
 共同出願の例としてフィッシャー・トロプシュ(FT)合成反応を用いた炭化水素製造装置が挙げられます。
 従来技術では反応器から排出される気体成分を冷却・液化する気液分離装置において、非定常運転時にワックスが冷却器に付着し運転効率を低下させる問題がありました。
 これに対し、気液分離装置内に二つの気液分離ユニットが設けられ、上流側のユニットに充填材層と重質分返送ラインが、下流側のユニットに軽質分返送ラインが設けることでワックスの付着を抑制し、充填材層と重質分返送ラインにより気体成分中のワックス分を除去し、軽質分返送ラインにより冷却器に付着したワックスを溶解・除去する炭化水素製造装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6016694/15/ja
 ただし、当該出願人との共同出願で確認されたのは2013年の出願が最後です。
  関連する専門分野の例:化学工学(FT合成反応の反応条件、生成物組成の最適化、気液分離装置の設計、運転条件の最適化、プラント全体の物質収支、エネルギー収支の解析、最適化)、材料工学(FT合成反応に適した高性能触媒の探索、気液分離装置に使用する耐食性材料の選定、評価、充填材層に使用する材料の選定、充填方法の最適化)
 
 石油エネルギー技術センターとの共同出願ではコンピュータを用いた石油の脱硫率の推算方法が挙げられます。
 従来技術では石油の脱硫率の推算値が実測値と整合しない場合があり、高精度な推算が困難でした。
 これに対し、対象石油に含まれる硫黄原子1個を含むシングルコア分子の総環数別の存在率と脱硫率基準値に基づき脱硫率の推算値を算出し、さらに含硫黄成分の平均凝集度に基づいて推算値を補正することで高精度な脱硫率を推算する方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7454782/15/ja
  関連する専門分野の例:情報科学(分子構造と物性の相関モデルの構築、データマイニングによる脱硫反応に関わる因子の抽出、機械学習を用いた脱硫率予測モデルの構築)、化学工学(各種石油の脱硫反応における含硫黄成分の挙動解析、脱硫反応条件と脱硫率の関係性に関する実験的検証)

 

(2)出光興産

 

 出願件数トップの共同出願人は石油エネルギー技術センターです。
 共同出願の例として多成分混合物である重質油の物性値をコンピュータを用いて高精度に推算する方法が挙げられます。
 従来技術では重質油の複雑な組成により物性値の推算精度が低いという問題がありました。
 これに対し、重質油を気化させずに測定した数平均分子量を推算できる物性値と元素組成から数平均分子量、水素数、窒素数、硫黄数を算出し、それらを用いて臨界圧力、臨界温度、標準沸点を推算し、これらの推算値から密度、粘度、比熱、熱伝導度、表面張力を算出することで重質油の物性値を高精度に推算する方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7463166/15/ja
  関連する専門分野の例:化学工学(重質油の物性推算モデルの構築、石油精製プロセスの最適化)、情報科学(重質油の物性データ解析、高精度な推算モデルの構築)
 
 コロナとの共同出願では燃料電池システムが挙げられます。
 従来の燃料電池システムでは起動時に燃料電池スタックの温度が低いため、改質ガス流路内で結露が発生しやすく流路閉塞による発電効率の低下や発電停止の問題がありました。
 これに対し、燃料電池システムの起動時に燃料電池スタックに供給する改質ガス量を増加させることで流路内の改質ガス流速を速め、結露を吹き飛ばして流路閉塞を防止し、改質反応部の温度を検出して温度に応じてバーナへの燃焼用空気や燃料の供給量を調整することで改質反応部の過熱や温度低下を抑制し、安定した改質ガス生成を可能にする燃料電池システムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-4917791/15/ja
  関連する専門分野の例:化学工学(改質反応の最適化、バーナの燃焼制御、燃料電池システムの熱バランス設計)、制御工学(燃料電池システムの運転制御、温度制御、流量制御)

 

(3)コスモ

 

 出願件数トップの共同出願人は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(現エネルギー・金属鉱物資源機構)です。
 共同出願の例としてフィッシャー・トロプシュ反応を用いた炭化水素合成反応装置のスタートアップ方法が挙げられます。
 従来技術ではスタートアップ時に反応容器内に定常運転時と同量のスラリーを充填するため製品化できないオフスペック媒体液の置換に時間がかかり原料ロスも大きいという問題がありました。
 これに対し、スタートアップ時のスラリー量を定常運転時より少なくし、液面の上昇に合わせてCO転化率を制御することでオフスペック媒体液の置換時間を短縮し、原料ロスを削減し、伝熱管の有効除熱管面積に基づき除熱量を算出し、スラリー温度変化に対する除熱量の変化量が反応熱量の変化量より大きくなるよう制御することで触媒の熱劣化を防ぐ炭化水素合成反応装置のスタートアップ方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6088214/15/ja
 ただし、当該出願人との共同出願で確認されたのは2013年の出願が最後です。
  関連する専門分野の例:化学工学(反応条件(温度、圧力、流量)の最適化、触媒の選定・設計)、制御工学(スラリー液面高さ、温度、CO転化率などを制御するシステムの設計)
 
 石油エネルギー技術センターとの共同出願では特定の組成と物性を持つ接触分解触媒が挙げられます。
 既存技術では触媒上の重金属析出による触媒劣化や軽質オレフィンの収率不足、重質留分の過剰生成といった課題がありました。
 これに対し、重質炭化水素油の接触分解反応において高オクタン価ガソリン留分と軽質オレフィンを高収率で生成し重質留分の生成を抑制する接触分解触媒、具体的には、特定のソーダライトケージ構造を有するゼオライト、シリカゾル、リン酸アルミニウム、希土類金属、二価金属、粘土鉱物を特定の割合で組み合わされることで、触媒の劣化を抑制し、目的とする生成物の収率を向上させる接触分解触媒が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6632065/15/ja
  関連する専門分野の例:応用化学(触媒組成の最適化、新規触媒材料の設計、実用化に向けたプロセスの検討)、化学工学(接触分解装置の設計、触媒の性能評価、反応条件の最適化)

 

(4)INPEX

 

 出願件数トップの共同出願人は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(現エネルギー・金属鉱物資源機構)です。

 詳細は省略します。

 

(5)石油資源開発

 

 出願件数トップの共同出願人は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(現エネルギー・金属鉱物資源機構)です。

 詳細は省略します。

 

(6)上記(1)~(5)(共同出願人)のまとめ

 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(現エネルギー・金属鉱物資源機構)、石油エネルギー技術センターとの共同出願が多いです。

 これらの出願人は、同時に他の事業者とも出願している場合が多いです。

 

4 開発に求められる専門性

 上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。

 上記各特許情報には以下の人材が関わっていると言えます。 

 

化学系(応用化学、分析化学、有機化学、物理化学、材料化学、環境化学など)

 潤滑油組成物など石油由来の化合物やその製造方法に関する出願が関係します。
 化合物の構造の特定、特性の評価、配合など目的に応じた分析、評価などが求められます。

 

工学系(化学工学、制御工学、資源工学、環境工学、材料工学、地盤工学など)

 化合物の製造や製造装置など量産化に関わる出願が関係します。
 環境、システム、装置、部材などについての検討、設計、制御などが求められます。

 

その他(情報科学、応用数学、応用物理学など)

 コンピュータによる計算、シミュレーション、推定などに関わる出願が関係します。
 データ解析や計算モデルの構築などが求められます。

 

 ただし、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。

 

5 まとめ

 石油に関連する化合物、製造装置、製造方法などの特許出願が多くあり、主に当該分野の開発がおこなわれていることが推測されます。

 大学の専攻と関連づけるとしたら、特に多いものとして、化学、材料、機械、情報などの研究が該当する可能性があります。

 

 本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。

 参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4

 以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。

 

<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年版 東洋経済新報社

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