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【ガラス業界】開発職に求められる専門性とは?大手3社の特許で読み解く技術分野

 今回はガラス業界に焦点をあてます。

 従来的にはガラスというと窓材や容器が思い浮かぶかもしれませんが、近年では、エレクトロニクスや医療などテクロジーを支える素材として挙げることができます。

 しかし、その最先端の開発動向は一般にはなかなか見えにくいのが現状です。

 これを特許情報からみていきます。

 特許情報は企業の開発情報だと言えます。

 実際にどのような開発がおこなわれたのか特許情報に記載されています。

 今回は、ガラスメーカー3社の特許情報からどのような開発がおこなれてきたのか、また、開発にどのような専門性が求められるのか読み解きました。

 

 結論(概要)は以下の通りです。

ガラス業界の開発に求められる専門性
化学、材料分野(応用化学、物理化学、高分子化学、有機化学、分析化学、電気化学、材料化学、化学工学、材料工学、材料科学など)
物理系分野(応用物理学、物理化学など)
機械系分野(機械工学、材料工学、精密工学など)
その他分野(電気工学、電気電子工学などの電気系分野、情報通信工学、制御工学などの情報系分野など)
 ただし、上記専門は企業の一部の特許情報に基づくものであり、全てをあらわすものではありません。また、求められる専門は特許の解釈によって変わってきますので、個々の特許情報をご確認ください。

 

 

1 業界サーチの概要

 特許情報は企業の開発情報だと言えます。

 業界サーチは、業界における主要企業の特許情報から、その業界の企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。

 特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。

 すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。

 

2 ガラス業界

2.1 ガラス業界とは

 ここでは、さまざまな用途のガラス製品を製造、販売する業界を意図します。

 用途として、建築・自動車用や液晶パネル用などが挙げられますが、ここでは技術的な区別はしていません。

 

2.2 サーチ対象

 以下のガラスメーカー3社を対象にしました。

(1)日本板硝子
(2)AGC
(3)日本電気硝子 

 

2.3 使用プラットフォーム

 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat

 

3 サーチ結果

3.1 結果概要

開発イメージは下表のとおりです。 

 

 

モノの開発

サービスの開発

個人向け

 

 

 

 

 

法人向け

ガラス繊維用ガラス組成物
化学強化用ガラス組成物
ガラスフィラーの製造に適したガラス組成物
光吸収性組成物
車両用ガラス板モジュール
リアガラス
ガラスアンテナシステム
PCR反応に用いられる反応処理容器
防曇膜付き樹脂基板
センサモジュール
積層基板
光学フィルタ
含フッ素重合体
撥液剤組成物
医薬品容器用ガラス
LiO-AlO-SiO系結晶化ガラス
ガラス板の製造装置
ガラスフィラメント紡糸用ブッシング
イマージョン回折素子
電子部品を保護するキャップ
ガラス板梱包体
シート供給装置
など

化学強化ガラスの製造方法
溶融塩組成物の組成回復方法
押出成形フィルムの製造方法
ハロゲン化カルボニルの製造方法
酸化物状態のケイ素を含む部材への凹部形成方法
ガラス物品の製造方法
微笑物体の検査方法
など

 

 モノの開発としては、例えば、ガラス組成物が挙げられます。

 サービスの開発としては、例えば、ガラスの製造方法などが挙げられます。 

 

3.2 出願件数の推移

 下図はガラスメーカー3社の特許出願件数の推移です。

 

 年によって出願件数が大きく異なっていますが、3社とも毎年一定数出願しています。

 すなわち、そのような出願につながる開発が日々おこなわれていることが推測されます。

 

3.3 開発の活発度

 特許出願件数≒開発の活発度、だと考えるなら、

 AGC>日本電気硝子>日本板硝子

だと言えます。

  

3.4 主な開発分野

 各社ごとに特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。

 各社の出願上位3つの技術分野を抽出して並べています(特許出願されていても、その企業の出願件数上位に入っていない技術分野は除外されています)。

 各記号は発明の技術分類をあらわします。

 

 分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)

  

 B60J車両の窓などに関連する分類です。
 安全装置などがこれに該当します。
 日本板硝子がこの分野から多く出願しています。

 

 Ⅽ03Bガラスの製造などに関連する分類です。
 ガラスのプレス成形などがこれに該当します。
 AGC、日本電気硝子がこの分野から多く出願しています。
 
 Ⅽ03Ⅽガラスの化学組成などに関連する分類です。
 ガラスの組成物などがこれに該当します。
 全3社がこの分野から多く出願しています。

 

 G02B光学装置などに関連する分類です。
 半導体でつくられたものなどがこれに該当します。
 全3社がこの分野から多く出願しています。

 

3.5 ガラスメーカー3社の近年の開発トレンドと求められる専門の例

 特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。

 ここ10年のトレンドは以下のとおりです。

 発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。

 出願件数が少ない技術分野は除外しています。

 発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。

 関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。

 

 個別の情報を詳しく確認したい場合は、それぞれのリンク先に飛んでください。

 特許は難解ですが、GeminiChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。

参考記事 【AI活用】難解な特許が小学生レベルの内容に!1分で特許を読み解く方法

 

(1)日本板硝子|開発トレンドと専門性

 

 上図期間中、Ⅽ03Ⅽが最も多いです。次いでG02B、B60J、H01Q、Ⅽ12M、B32Bが多いです。

 Ⅽ03Ⅽは既述のとおり、ガラスの化学組成などに関連する分類です。
 具体例としてガラス繊維用ガラス組成物が挙げられます。
 従来のガラス繊維組成物では、ヤング率の向上と耐酸性の両立が困難であり、特に高ヤング率化には多量の高価な希土類酸化物を必要とするなどの問題がありました。
 これに対し、特定の組成範囲(質量%でSiO2:59.5~62.5%、Al2O3:19~21.2%、(省略))を含む組成により耐酸性、ヤング率、量産性に優れたガラス繊維用ガラス組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7235928/15/ja

  関連する専門分野の例:物理化学(ガラスの溶解過程におけるエンタルピー変化やエントロピー変化の評価、組成と溶融性の関係の解明、特定の成分が耐酸性に寄与するメカニズムの解明、異なる組成におけるヤング率の予測)、機械工学(溶融ガラスを安定的に紡糸するためのノズル形状や引き取り機構の設計、温度、粘度、引き取り速度などの製造パラメータを最適化するための制御システムの構築、安定した品質のガラス繊維を量産するためのプロセス条件の確立)

 

 別の例として耐アルカリ性を有する化学強化用ガラス組成物が挙げられます。
 従来の化学強化用ガラス組成物では、溶融温度が高くフロート製法への適用が困難であったり、耐アルカリ性が十分に検討されていなかったりする問題がありました。
 これに対して、特定のモル%組成範囲(SiO2:66~71%、Al2O3:2~4%、(省略))に加え、特定のモル比および特定の成分合計量を満たすことにより比較的低い溶融温度で耐アルカリ性を有し、表面圧縮応力と圧縮応力層深さを適切な範囲に制御可能な化学強化用ガラス組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7652542/15/ja

  関連する専門分野の例:応用化学(ガラス中のアルカリ金属イオンの拡散挙動の解析、イオン交換プロセスにおける組成の影響の評価、ガラス表面とアルカリ溶液との反応メカニズムの解明、さまざまな組成のガラスに基づく組成と特性の相関モデルの構築)、材料工学(化学強化ガラスの製造プロセスの最適化、所望の機械的特性(強度、耐衝撃性)を実現するための条件の探求)

 

 さらに別の例として樹脂組成物の低誘電率化に貢献するガラスフィラーの製造に適したガラス組成物が挙げられます。
 従来の低誘電率ガラス組成物では、耐水性の向上が困難であり、その点が考慮されていませんでした。
 これに対して、特定の質量%範囲(SiO2:50~65%、B2O3:20~30%、Al2O3:5~12.68%)を含み、さらに特定の組成範囲を満たし、かつBaOの含有率が0.5%以下に制限されることで、低誘電率を維持しつつ優れた耐水性を示すガラスフィラーの製造に好適なガラス組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7576091/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(ガラスの分極率や誘電損失と組成との関連性の解析、ガラス構造中の原子配置や結合状態が誘電特性に与える影響の評価、核磁気共鳴(NMR)や赤外分光法(IR)などの分光学的測定によるガラス表面の水分子の吸着状態や水素結合の形成状態の解析、耐水性に関わる構造的特徴の解明)、高分子化学(ガラスフィラーと各種熱可塑性樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート)を異なる配合比率で混合した樹脂組成物の作製およびその誘電率、強度、耐熱性、線熱膨張係数などの測定、ガラスフィラーの形状(鱗片状、チョップドストランドなど)や表面処理が樹脂組成物の特性に与える影響の評価、最適なフィラーの形態と表面処理方法の検討)

 

 G02Bは既述のとおり、光学装置などに関連する分類です。
 具体例として光吸収性化合物と紫外線吸収性化合物とを含有する光吸収性組成物が挙げられます。
 既存技術では、ハロゲン化アリール基等を有するホスホン酸が用いられてきましたが、環境負荷低減の観点からハロゲンフリーの材料が求められています。
 これに対して、特定の透過スペクトルを有する紫外線吸収性化合物が併用され、特定のホスホン酸と銅成分の組み合わせ及びそれらの含有量比が調整されることで、ハロゲンを含有しないながら人間の視感度に近い光吸収特性を実現する光吸収性組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7431078/15/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(各ホスホン酸や紫外線吸収性化合物の合成ルートの確立、収率や純度を向上させるための反応条件の最適化、核磁気共鳴(NMR)、質量分析(MS)、赤外分光法(IR)などによる合成化合物の構造特定、紫外可視分光光度計(UV-Vis)によるホスホン酸と銅成分の錯体の吸収スペクトルの測定、錯形成の条件(pH、温度、反応時間など)と吸収特性の変化の調査、異なるアリール基やアルキル基を有するホスホン酸の銅錯体の光吸収特性の比較検討)、物理化学(ホスホン酸と銅イオンの溶液中での錯形成反応の追跡と錯体の生成定数や安定度定数の決定、紫外線照射下での紫外線吸収性化合物の分解挙動に基づき安定性を向上させるための添加剤や組成の最適化の検討、光吸収性化合物と紫外線吸収性化合物の混合系における濃度と吸収特性の関係のモデル化)

 

 別の例として固体撮像素子の色再現性向上に用いられる光学フィルタが挙げられます。
 既存技術では、人間の視感度に近い透過スペクトルを得るために改良の余地があり、特に波長400nm付近の光の遮蔽が課題でした。
 これに対して、特定の透過率条件を満たす光吸収膜を形成する光吸収性組成物であって、ホスホン酸及び銅成分を含む化合物と、特定の紫外線吸収性化合物とを含有しており、これらの成分の組み合わせと含有量比(ホスホン酸/紫外線吸収性化合物=質量比で10~300)により波長400nm付近の光を効果的に遮蔽し、人間の視感度に近い光吸収特性を実現する光吸収組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7364486/15/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(種々の置換基を有するアリールホスホン酸やアルキルホスホン酸の合成条件(反応温度、反応時間、触媒、溶媒など)の検討、高収率かつ高選択的な合成法の確立、紫外線吸収性化合物の吸収波長や吸収強度を制御するための分子構造の異なる化合物の設計・合成、合成したホスホン酸と銅塩との錯形成反応の解析、生成する錯体の構造や組成、安定性の解明)、高分子化学(光吸収性化合物や紫外線吸収性化合との相溶性が高く可視光透過性に優れた各種高分子材料(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂など)の選定・評価、光吸収性化合物や紫外線吸収性化合物の凝集を防ぎ透明性の高い均一な光吸収膜を形成するための条件の最適化)

 

 B60Jは既述のとおり、車両の窓などに関連する分類です。
 具体例として車両用ガラス板モジュールが挙げられます。
 既存技術では、樹脂製ウィンドウアセンブリーの剛性不足が問題でした。
 これに対して、ガラス板周縁に取り付けられた樹脂製ウィンドウアセンブリーと、車内側の周縁部に取り付けられた少なくとも1つの補強部材を備え、補強部材の少なくとも1つがガラス板の角部に対応する周縁部に配置され、仮止め部材の1つがガラス板上の角部に対応する位置に補強部材と対向して取り付けられ、補強部材の一部は装飾部材の有無に対応する位置に配置されていることにより、ウィンドウアセンブリーの剛性を高め、車両への仮固定を安定させることが可能なガラス板モジュールが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7240427/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(車両へのガラス板モジュールの取り付け構造の設計、モジュールの振動特性や強度を解析、仮止め部材の形状や材質、配置の設計)、応用化学(各種樹脂材料の機械的強度(引張強度、曲げ強度、衝撃強度など)や熱的特性、耐紫外線性の評価、用途に最適な材料の選定、ガラスと樹脂を強固に接着させるための表面処理技術や接着剤の検討)

 

 別の例としてカメラによる車外撮影を可能とするリアガラスが挙げられます。
 既存技術では、遮蔽層と非遮蔽領域の熱膨張差により成形時にガラスに歪みが生じ、撮影像が歪むという問題がありました。
 これに対して、車両の後部に取り付けられるリアガラスであって、厚みが2.0mm以上の単板ガラス板に、車外からの視野を遮る遮蔽層と、車内カメラによる車外撮影を可能とする2500mm²以下の撮影窓が形成されており、ガラス板の両側部に配置された一対のバスバーと、それらを連結する複数の加熱線(少なくとも中央部を含む領域の第1加熱線と、撮影窓またはその周囲の第2加熱線を含む)を備えることで、遮蔽層と非遮蔽領域の熱膨張差に起因する歪みを抑制し、撮影窓を通じた正確な車外撮影を可能にするリアガラスが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6998661/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(リアガラスの設計が撮影画像に与える影響の解析、遮蔽層の形成がガラス板に与える応力や加熱線の発熱によるガラスの温度分布の解析、リアガラスの耐久性や光学特性の安定性を確保するための条件の検討)、電気工学(リアガラスに組み込まれる加熱線(デフォッガ)の設計、所望の発熱量を得るための加熱線の抵抗値や配置の計算、電源供給システムの電気回路設計)

 

 H01Qはアンテナに関連する分類です。
 具体例として駆動時にノイズを発生するDC-DCコンバータが後部に配置された車両におけるFMラジオの受信感度を向上させるガラスアンテナシステムが挙げられます。
 既存のガラスアンテナでは、十分な受信感度が得られない場合やハイブリッド車等に搭載されたDC-DCコンバータから発生するノイズによって受信感度が低下する問題がありました。
 これに対して、リアガラスに形成されたFMアンテナ素子と、複数の加熱線を有する加熱ヒータとを備え、これらが容量結合されており、補機用バッテリと加熱ヒータの陽極バスバーとの間にコイル素子を含むノイズフィルタが設けられ、陰極バスバーと車体アースの間にはノイズフィルタを設けない構成であり、また、給電端子が陰極バスバー側に配置されることで、ノイズの影響を低減し、良好なFMラジオの受信を可能にするガラスアンテナシステムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7373010/15/ja

  関連する専門分野の例:電気電子工学(ガラスアンテナの設計、FM放送の周波数帯に適したアンテナ素子の長さの計算、アンテナと受信回路間のインピーダンス整合の最適化、ノイズフィルタの等価回路の解析、FM受信帯域における減衰特性の評価)、情報通信工学(自動車走行中のFM受信における電波環境の評価、DC-DCコンバータをはじめとする車載電子機器から発生するノイズの周波数特性と強度の測定、ノイズがFM受信に与える影響の評価、ノイズの種類や伝搬経路に応じた適切なノイズ対策(フィルタ設計、シールドなど)の検討、最適なアンテナ配置の検討)

 

 Ⅽ12Mは酵素学または微生物学のための装置に関連する分類です。
 具体例として微量のDNAを増幅するPCR反応に用いられる反応処理容器が挙げられます。
 従来のPCR反応容器では、高温での反応中に試料の水分が蒸発し、低温部分で凝縮して流路を塞ぐことがあり、試料の移動が阻害され安定したPCR反応が困難になるという問題がありました。
 これに対して、樹脂製基板に形成された試料が移動するための流路と、流路両端の一対の空気連通口、サーマルサイクル領域、分注可能な領域および複数の孔を備え、サーマルサイクル領域と少なくとも一方の空気連通口の間に複数の分岐流路が設けられたことにより、主となる流路が蒸発物で閉塞した場合でも別の分岐流路を通して空気圧を試料に伝えて試料の移動を確保でき、また、高温領域の近傍への分岐部の設置や高温領域の近傍を通る分岐流路の設置により蒸発物の凝縮を防ぐ効果が期待できる反応処理容器が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7034992/15/ja

  関連する専門分野の例:化学工学(流路内の試料の蒸発・凝縮現象の解析、温度分布、流路形状および材質が蒸発量や凝縮箇所に与える影響の評価、流路閉塞が試料の流動性に与える影響の評価、安定した試料移動を実現するための流路設計の指針の確立)、機械工学(送液システムの設計、空気圧による試料の駆動に必要な圧力、流量および制御シーケンスの算出、流路の形状や閉塞状態を考慮した流体抵抗モデルの構築、送液ポンプの選定や制御パラメータの最適化)

 

 B32Bは積層体に関連する分類です。
 具体例として水に長時間浸漬後や高温水蒸気に曝されてもQRコードの情報を読み取ることができる防曇膜付き樹脂基板が挙げられます。
 従来の防曇膜付き樹脂基板では、吸水性ポリマーを多く含むと防曇性は向上するものの耐水性や耐摩耗性が低下し、長期使用や厳しい環境下で性能が劣化する問題がありました。
 これに対して、特定の構造を持つシランカップリング剤(アミノ基と短鎖炭化水素基を有するシランカップリング剤A、アミノ基と長鎖炭化水素基を有するシランカップリング剤Bまたは複数のアミノ基を有するポリマーであるシランカップリング剤C)、吸水性ポリマー、ポリエーテル変性シロキサンおよび炭素数2~8のジオールを含む組成により、耐水性と親水性を両立させ、水に浸漬後や高温水蒸気に曝されても透明な連続膜を形成し、QRコードの読み取りが可能な防曇膜付き樹脂基板が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7210812/15/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(各成分の配合比率を系統的に変化させた防曇膜の試作および水接触角、吸水率、ヘイズ率、引張強度などの測定、透過型電子顕微鏡(TEM)や原子間力顕微鏡(AFM)を用いた膜の表面構造や内部構造の観察、成分の分散状態や架橋構造の評価、核磁気共鳴(NMR)やフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いた膜中の化学結合状態や成分間の相互作用の解析、最適な組成と架橋構造の解明)、応用物理学(防曇膜の光学的特性(透過率、ヘイズ率)と膜の微細構造(表面粗さ、屈折率分布)との関係の解明、水蒸気凝縮時に形成される水膜の厚さや均一性が光の散乱に与える影響の評価、QRコードの読み取り評価における光の経路の解析)

 

(2)AGC|開発トレンドと専門性
 
 Ⅽ03Ⅽが最も多いです。次いでⅭ03B、G02B、B32B、Ⅽ08L、Ⅽ07Ⅽ、H01Q、Ⅽ08F、Ⅽ09K、H01Lが多いです。
 Ⅽ03Ⅽは既述のとおり、ガラスの化学組成などに関連する分類です。
 具体例として化学強化ガラスを製造する方法が挙げられます。
 従来の化学強化ガラスの製造方法では、ガラス中の水分量(β-OH値)が高いとイオン交換性が低下し、十分な強度が得られない場合がありました。また、強度向上のために化学強化後の研磨やエッチング処理が必要となる場合があり、外観品質を損なう可能性がありました。
 これに対して、アルカリイオンを含むガラス板と、それよりもイオン半径の大きい他のアルカリイオンを含む無機塩を準備し、露点温度を20℃未満に制御した雰囲気下でガラス板を溶融塩に浸漬してイオン交換をおこなうことにより、ガラスのβ-OH値に依存せずイオン交換が促進され、高い圧縮応力(CS)と深い圧縮応力層(DOL)を持つ高強度な化学強化ガラスの製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7396445/15/ja

  関連する専門分野の例:無機化学(ガラス組成と化学強化処理条件(特に露点温度)が、ガラスのイオン交換速度、圧縮応力層の形成およびガラス表面の化学的安定性に与える影響の評価、異なるガラス組成における最適な露点温度範囲の特定、強化層の構造や組成変化の評価)、物理化学(さまざまな水蒸気圧条件下におけるガラスネットワーク中でのアルカリイオンの拡散挙動の解析、SIMS(二次イオン質量分析法)によるガラス表面近傍の水素濃度プロファイルの測定、低露点処理による水素侵入抑制効果の評価)

 

 別の例として屋外設置に適した強化ガラス製の保護部材を備えるセンサモジュールが挙げられます。
 従来の樹脂製保護部材は剛性、耐傷性、耐候性に課題があり、屋外環境下での使用には不向きでした。
 これに対して、センサや振動子を覆う保護部材の一部または全部が特定の表面圧縮応力値(200MPa以上)と圧縮応力層の深さ(200μm以上)、さらに深層部の応力値が表面近傍の応力値に対して一定以上の比率であり、板厚が1.5mm以上であることで、樹脂製保護部材と比較して高い剛性、耐傷性、耐候性を実現し、屋外での過酷な環境下でもセンサを保護し、安定したセンシングを可能にするセンサモジュールが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7517377/15/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(化学強化ガラスの組成、強化条件(イオン交換処理の温度、時間、溶融塩の種類)および板厚が得られる強化ガラスの表面圧縮応力値、圧縮応力層の深さならびに深層部の応力分布に与える影響の評価、高剛性と耐衝撃性を両立させるための最適なガラス組成と強化プロセス条件の特定)、応用物理学(強化ガラスの機械的強度(破壊強度、耐衝撃性)とガラス内部の応力分布との関係の解析)

 

 さらに別の例として化学強化用ガラスの化学強化処理に用いられる溶融塩組成物の組成回復方法が挙げられます。
 化学強化処理を繰り返すと溶融塩組成物中にガラスから放出された小さいアルカリ金属イオンが蓄積し、イオン交換効率が低下するという問題がありました。
 これに対して、アルカリ金属イオン吸着剤を添加用容器に充填し、溶融塩組成物に投入した後、特定の条件(吸着剤充填率10~80%、投入量2~10質量%、振動幅30㎜以上)で添加用容器を振動させることにより、吸着剤と溶融塩組成物との接触効率を高め、溶融塩組成物中の不要なアルカリ金属イオンを効率的に吸着除去する溶融塩組成物の組成回復方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7663017/15/ja

  関連する専門分野の例:応用化学(さまざまなガラス原料や吸着材に基づく合成物の特性評価、溶融塩中での材料の溶解度や腐食性の評価、長期使用に耐えうる材料の選定、吸着剤の表面に存在する官能基や細孔構造の制御による特定のイオンに対する吸着選択性の向上の検討)、化学工学(溶融塩組成物の組成回復プロセス全体の評価、添加用容器の設計、振動方法の最適化、連続的な組成回復システムの構築)

 

 Ⅽ03Bは既述のとおり、ガラスの製造などに関連する分類です。
 具体例としてシリコーン樹脂層をガラス基材上に設けた積層基板が挙げられます。
 従来のポリイミド膜製造技術では、剥離基板として用いられるシリコーン樹脂層から剥離したポリイミド膜に光学的なムラが生じ、透明な電子デバイスへの適用において問題がありました。
 これに対して、ガラス基材上に配置されるシリコーン樹脂層のポリイミドワニス塗布面となる側の表面粗さRaのばらつきが1.00nm以下かつ膜厚のばらつきが1.5μm以下に制御されることで、剥離後のポリイミド膜の光学的なムラを抑制できる積層基板が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7371813/15/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(ポリイミド膜の光学特性(透明性、均一性)とシリコーン樹脂層の表面特性(表面粗さ、膜厚均一性)との関係性の解析、原子間力顕微鏡(AFM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などによるポリイミド膜とシリコーン樹脂層の界面構造の解析)、応用物理学(シリコーン樹脂層の表面粗さの統計的パラメータ(平均粗さ、二乗平均平方根粗さ、相関長など)とその上に成膜されたポリイミド膜のヘイズ(曇り度)や透過率の異方性などの光学特性との定量的な関係の解明、レーザー光散乱法や分光エリプソメトリーなどの光学計測技術を用いた微細な表面構造からの散乱光の強度分布や偏光状態の解析、表面粗さと光学特性の相関モデルの構築、光学ムラを抑制するためのシリコーン樹脂層の表面構造の設計)

 

 G02Bは既述のとおり、光学装置などに関連する分類です。
 具体例としてカメラやセンサなどの撮像装置に用いられる光学フィルタが挙げられます。
 従来の誘電体多層膜を用いた光学フィルタでは、入射角によって分光透過率が変化し、特に高入射角において可視光の透過率が低下したり、リップルと呼ばれる透過率の急激な変化が生じたりする問題がありました。
 これに対して、近赤外線吸収ガラスと特定の吸収特性を有する厚さ10μm以下の樹脂膜が積層された基材の少なくとも一方の主面に最外層として誘電体多層膜が設けられた光学フィルタであって、樹脂膜が680~740nmに最大吸収波長を有する色素(NIR1)を含有することで近赤外領域の特定の波長を効率的に吸収し、誘電体多層膜の反射特性と基材の吸収特性が相乗的に作用することで、高入射角においても可視光領域の透過率と近赤外光領域の遮蔽性を両立する光学フィルタが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7511103/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(多層膜の透過率・反射率を入射角と波長の関数として計算するシミュレーションモデルの構築、高入射角における可視光の透過率低下や近赤外光の漏れの原因の物理的解明、これらの問題を解決するための多層膜設計や材料選定)、有機化学(所望の吸収特性(最大吸収波長、吸収強度、半値幅など)を有する有機色素の設計・合成、合成した色素の溶解性、耐光性、耐熱性などの物性評価)

 

 B32Bは既述のとおり、積層体に関連する分類です。
 具体例としてポリイミド膜を製造するための積層基板が挙げられます。
 従来の技術では、支持基材から剥離したポリイミド膜に光学的なムラが生じることがあり、透明な電子デバイスへの適用において課題となっていました。
 これに対して、ガラス基材上にシリコーン樹脂層が配置された構成を有し、特にシリコーン樹脂層の表面粗さRaのばらつきが1.00nm以下、膜厚のばらつきが1.5μm以下に制御されることで、シリコーン樹脂層上に形成されるポリイミド膜の光学的なムラを低減する積層基板が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7371813/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(ポリイミドワニスのシリコーン樹脂表面における接触角や濡れ広がり速度と表面エネルギーとの関係の評価、薄膜の乾燥過程における溶媒蒸発挙動や膜の収縮応力の解析)、高分子化学(ポリイミドワニスの粘度や溶媒の種類、塗布方法、乾燥条件(温度、時間)などが形成されるポリイミド膜の膜厚均一性や表面粗さに与える影響の評価、シリコーン樹脂層との界面におけるポリイミドの濡れ広がり性や凝集性の評価)

 

 Ⅽ08Lは高分子化合物の組成物に関連する分類です。
 具体例として押出成形フィルムの製造方法が挙げられます。
 既存技術では、テトラフルオロエチレン系ポリマーフィルムのUVレーザー加工性を向上させるためにUV吸収剤を添加すると電気特性が低下し、高温処理をおこなうと製造装置に制約がありました。
 これに対して、溶融温度が270~320℃の第1のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と平均粒子径が1~10μmの芳香族性ポリマーの粒子の溶融混練物と、溶融温度が270~320℃の第2のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子との混合物を、第2のテトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融流れ速度を前記溶融混練物の溶融流れ速度±8g/10分の範囲に制御して溶融押出成形することにより、電気特性の低下を抑制しつつUVレーザーによる孔開け加工性に優れた押出成形フィルムを得る製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7443969/15/ja

  関連する専門分野の例:化学工学(溶融混練時の各ポリマーの滞留時間分布の解析、最適な混練条件(温度、スクリュー回転数など)の決定、押出成形における流動シミュレーションによるダイ内部での溶融樹脂の流れの予測、膜厚の均一化や異物混入の抑制に貢献するダイ形状の設計)、応用物理学(フィルム中の芳香族性ポリマーによる紫外光吸収メカニズムの物理的解明、レーザー照射時のフィルムの熱応答の解析、アブレーション(蒸発除去)の効率と周辺への熱損傷を最適化するためのレーザー照射条件の探索)

 

 Ⅽ07Ⅽは非環式化合物または炭素環式化合物に関連する分類です。
 具体例としてハロゲン化カルボニルの製造方法が挙げられます。
 従来のハロゲン化カルボニルの製造方法では、高温や触媒を必要とするためエネルギーコストが高く、副生成物の生成や装置の腐食といった問題もありました。また、反応の制御が難しい場合もありました。
 これに対して、クロロメタンと酸素を含む混合ガスを流動させながら特定の波長範囲(180nm以上500nm以下)の高エネルギー光を照射することにより、光化学反応を誘起するもであり、流動させることで反応ガスを効率的に光に曝露させ、均一な反応を促進し、特定の波長範囲の光により目的とする反応を選択的に進行させ、副生成物の生成を抑制するハロゲン化カルボニルの製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7239953/15/ja

  関連する専門分野の例:物理化学(クロロメタンや酸素分子が特定の波長の光を吸収するメカニズムおよびその後の励起状態からハロゲン化カルボニルが生成する反応経路の量子化学的解析、光強度や反応温度が生成物の収率に与える影響を評価するためのモデル構築)、化学工学(ハロゲン化カルボニル製造プロセス全体の最適化、原料の供給、生成物の分離・精製、未反応ガスのリサイクルなど周辺設備を含めた総合的なシステム設計)

 

 H01Qは既述のとおり、アンテナに関連する分類です。
 具体例として車両用窓ガラスが挙げられます。
 従来の車両用窓ガラスでは、複数の異なる周波数帯の電波を受信する際に十分なアンテナ利得が得られないという問題がありました。
 これに対して、ガラス板上に第1周波数帯とそれより高い第2周波数帯の電波を受信するアンテナ、通電加熱式のデフォッガ(窓ガラスの曇り止め)およびデフォッガから外側へ分岐する分岐エレメントを備え、アンテナは第1給電部、第2給電部およびそれぞれに電気的に接続された複数のエレメントを有し、第1エレメントは折り返し構造を持ち、第2エレメントの一部と分岐エレメントの一部が並走することで容量結合を生じさせる構成により、複数の周波数帯で効率的に電波を受信し、高いアンテナ利得を実現する車両用窓ガラスが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7571639/15/ja

  関連する専門分野の例:電気電子工学(アンテナの等価回路モデルの構築、各周波数帯におけるインピーダンス特性の解析、給電部のインピーダンス整合回路の設計、特定の方向への感度を高めるためのエレメント配置や形状の検討)、材料工学(ナノ粒子やITO(酸化インジウムスズ)などの透明導電膜材料のシート抵抗、光透過率および高周波特性の評価、導電性ペーストの塗布方法(スクリーン印刷、インクジェットなど)と焼成条件がアンテナエレメントの導電率やガラス基板への密着性に与える影響の検証)

 

 Ⅽ08Fは炭素-炭素不飽和結合のみが関与する反応によってえられる高分子化合物に関連する分類です。
 具体例として特定のフッ素系モノマーを主成分とする含フッ素重合体が挙げられます。
 従来の含フッ素重合体、例えばPFAなどは耐候性や耐薬品性に優れるものの、シリカナノ粒子などの無機微粒子を添加しない限り材質の異なる多様な基材に対する接着性が不十分であるという問題がありました。
 これに対して、1,1,2‐トリフルオロ‐1‐プロペン(1243yc)、1,1,2,3‐テトラフルオロ‐1‐プロペン(1234yc)および1,1,2,3,3‐ペンタフルオロ‐1‐プロペン(1225yc)から選択される少なくとも1種の単量体(a)に基づく単位(a)を全単位に対して80~100モル%含むことにより、側鎖のC‐H結合が多様な基材との接着性を向上させ、主鎖のC‐F結合により従来の含フッ素重合体の優れた特性が維持される含フッ素重合体が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7415778/15/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(特定のフッ素系モノマーの重合反応における反応条件(重合開始剤の種類と量、反応温度、反応時間、溶媒の有無と種類)が得られる含フッ素重合体の分子量、分子量分布およびモノマー単位の配列に与える影響の解析、目的とする分子量や構造を持つ重合体を効率的に合成するための最適な重合条件の確立)、材料科学(接着性を向上させるための要因の特定、重合体の分子構造、表面エネルギーおよび基材の表面状態が接着強度に与える影響の評価)

 

 Ⅽ09Kは特定の物質に関連する分類です。
 具体例として撥液剤組成物が挙げられます。
 従来のペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系撥水撥油剤はアルカリ加水分解で性能が低下しやすく、ペルフルオロアルキル基を有しない含フッ素重合体では撥アルコール性が不十分でした。また、非フッ素系ポリマーに反応性乳化剤を導入する技術はありましたが、撥アルコール性を付与できませんでした。
 これに対して、特定のペルフルオロアルキル基を有するビニル化合物(単量体a)に基づく単位と、重合性炭素-炭素二重結合を有する非フッ素ノニオン性界面活性剤(単量体b)に基づく単位と、共重合可能な他の単量体(単量体c)に基づく単位とを含有する含フッ素重合体であって、単量体aに基づく単位と単量体cに基づく単位との合計に対する単量体aに基づく単位の割合が60~80質量%、単量体bに基づく単位の割合が0.5~5質量%とされることで、撥水性、撥油性に加え撥アルコール性を有する撥液剤組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7613368/15/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(特定のフッ素系モノマー(単量体a)や重合性界面活性剤(単量体b)および共重合に用いられる可能性のあるさまざまな単量体(単量体c)の効率的な合成ルートの探索、工業的な大量合成に適し収率が高く不純物の少ない合成方法の確立)、物理化学(含フッ素重合体の溶液物性(分子量、分子鎖の形状、会合状態など)と水性媒体中での分散安定性の評価、重合体の分子構造や組成が表面張力、濡れ性および撥液性能に与える影響の解析、均一で高性能な撥液膜を形成するための条件の解明)

 

 H01Lは特定の半導体装置に関連する分類です。
 具体例として酸化物状態のケイ素を含む部材への凹部形成方法が挙げられます。
 従来のドライエッチング法は高精度な加工が可能であるものの、加工速度が遅く、凹部を有するケイ素含有部材の迅速な製造が困難でした。
 これに対して、酸化物状態のケイ素を含む部材の表面の一部に活性材を設置した後、加熱環境下でフッ素系ガスを供給することにより活性材の下側の表面に凹部を形成することで、活性材がフッ素系ガスからのフッ素ラジカルの乖離を促進し、酸化物状態のケイ素との反応性が高まり、μm/分オーダーの高いエッチング速度を実現し、溝や孔などの凹部を有するケイ素含有部材を従来技術よりも迅速に製造することが可能な製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7567547/15/ja

  関連する専門分野の例:物理化学(計算化学的手法による活性材表面でのフッ素系ガスの吸着構造や解離反応のエネルギープロファイルの解析、質量分析や分光法などの実験的手法による反応中間体や生成物の同定と反応経路の推定)、応用物理学(スパッタリング装置のRFパワー、ガス圧、基板温度などの成膜条件の違いによって得られた活性材薄膜の膜厚、組成、表面粗さの評価、薄膜の微細構造や結晶性の確認、成膜条件とエッチング特性(速度、均一性)との相関に基づく最適な成膜プロセスの検討)

 

(3)日本電気硝子|開発トレンドと専門性

 

 Ⅽ03Ⅽが最も多いです。次いでⅭ03B、G02B、H01L、B65D、G01N、B65H、H01Mが多いです。 

 Ⅽ03Ⅽは既述のとおり、ガラスの化学組成などに関連する分類です。
 具体例として医薬品容器用ガラスが挙げられます。
 従来の着色された医薬品容器用ガラスは紫外線遮蔽性は有するものの、近年要求される高い化学的耐久性を十分に満たしていませんでした。特に、ガラスからの成分溶出による薬液の変質が懸念されていました。
 これに対して、SiO2、Al2O3、B2O3、Na2O+K2O、Fe2O3、TiO2を特定の質量%で含有し、CaO+BaOの含有量が0~1.8%、CaO/BaOの比率が0.5以下とされることで、ガラスからのCaOおよびBaOの溶出を抑制し、加水分解抵抗性を実現し、また、Fe2O3とTiO2の共存により、医薬品の光変質を防ぐための十分な紫外線遮蔽能力を発揮する医薬品容器用ガラスが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7348599/15/ja

  関連する専門分野の例:分析化学(紫外可視分光光度計による鉄やチタンの酸化状態とガラスの吸収スペクトルの関係の評価、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)や原子吸光光度計(AAS)によるガラスからの微量な金属イオンの溶出量を高精度に測定する分析手法の確立、さまざまなpHの溶液を用いた溶出試験によるガラスの耐酸性、耐アルカリ性の評価)、材料工学(ガラスの軟化点や熱膨張係数の測定と成形加工の適性の評価、曲げ強度試験や衝撃試験によるガラス容器の機械的強度の評価、分光光度計によるガラスの透過率の測定と紫外線遮蔽性能の評価)

 

 別の例として強化ガラス板の製造方法が挙げられます。
 厚みが薄いガラス板を化学強化すると表裏間で強化の程度に差が生じやすく、大きな反りが発生するという問題がありました。
 これに対して、まず厚みが100μm以下のガラス板を化学強化し、表裏両面に圧縮応力層を形成し、この強化ガラス板が反り部を含む場合、凸面側の圧縮応力層の表層部をエッチング等により除去する除去工程を経ることにより、表裏間の圧縮応力層の深さや最大圧縮応力値の差を小さくし、反りを低減することができる強化ガラス板の製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7520293/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(強化条件(溶融塩の種類、濃度、温度、時間)とガラス板の応力分布(深さ、最大応力値)の関係の確認とモデルの構築、表裏間の応力差とガラス板の反りの関係の解析、エッチングによる応力緩和の程度の評価、目標とする反り量以下にするための最適なエッチング量の算出)、精密工学(さまざまなエッチング液やエッチング方法(浸漬、スプレー、局所エッチングなど)の検討と薄いガラス板への適用性の評価、原子間力顕微鏡(AFM)や走査型電子顕微鏡(SEM)によるエッチング後のガラス表面の形状や粗さの評価、エッチング後の強化ガラス板の機械的特性の変化の評価、信頼性の高い加工プロセスの設計)

 

 さらに別の例としてハイテク用品の基板などに用いられるLiO-AlO-SiO系結晶化ガラスが挙げられます。
 従来のβ-スポジュメン系結晶化ガラスは紫外~赤外域の透過性が低く、β-石英系結晶化ガラスは結晶化時の体積収縮が大きく割れやすいという問題がありました。
 これに対して、特定の質量%の組成範囲と質量比の限定、特に主結晶としてβ-石英固溶体を析出させることで、高い紫外~赤外透過性と低熱膨張性を両立し、割れにくい結晶化ガラスが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7410462/15/ja

  関連する専門分野の例:無機化学(結晶化ガラスの組成と熱処理条件がβ-石英固溶体の析出挙動、微構造および光学的特性(透過率)に与える影響の評価、添加成分であるSnO2、ZrO2、TiO2などの核形成や結晶成長への関与の解明、最適な組成と熱処理プロセスの検討)、応用物理学(結晶化ガラスの光学的特性、特に紫外~赤外域における高い透過性を実現するための物理的メカニズムの解明、結晶相とガラス相の屈折率差、光散乱、光吸収などの要因が透過率に与える影響の解析、高透過率化のための組成設計や微構造制御の検討)

 

 Ⅽ03Bは既述のとおり、ガラスの製造などに関連する分類です。
 具体例としてガラス物品の製造方法が挙げられます。
 従来の素地替え工程では、ガラス原料を直接切り替えるため溶融ガラスの特性が急激に変化し、製造されるガラス物品の品質低下や製造の不安定化を引き起こす可能性がありました。
 これに対して、第一品種から第二品種へと溶融ガラスの品種を変更する素地替え工程において、第一品種と第二品種との中間的な組成を持つ複数の異なる中間材質を段階的に供給することにより、溶融ガラスの密度および粘度の少なくとも一方の特性を第二品種の特性に緩やかに近づけ、その急激な変化を抑制することで、素地替え工程中および終了後においても高品質なガラス物品の安定した製造を可能にするガラス物品の製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7610796/15/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(第一品種と第二品種のガラス組成の違いが密度や粘度に与える影響の分析、中間材質の組成設計において目標とする密度や粘度への段階的な変化を実現するための最適な元素の組み合わせや配合比率の検討、素地替え工程におけるガラス溶融炉内での混合挙動や生成されるガラスの微細構造の評価、最終的なガラス物品の品質を保証するための条件の特定)、化学工学(ガラス溶融炉の形状や操業条件を考慮した流体解析モデルの構築、中間材質の供給パターンが炉内の流れに与える影響の可視化、異なる供給速度や温度条件下でのシミュレーション、溶融ガラスの組成均一化に要する時間や炉壁への熱負荷の変化などの評価)

 

 別の例としてガラス板の製造装置が挙げられます。
 従来のガラス板製造装置では、冷却室内の支持ローラが高温のガラスリボンとの接触により熱で劣化しやすく、頻繁な交換が必要となり製造コストが増加するという問題がありました。
 これに対して、冷却室に配置されガラスリボンと接触する支持ローラと、その支持ローラの表面を外部から冷却する冷却装置を備え、冷却装置(支持ローラに当接する冷却ローラや冷却板、または冷却ガスの吹き付け装置などで構成)により支持ローラ表面を直接冷却することで熱による劣化を抑制し、ローラ寿命を延長することで支持ローラの交換頻度を減らし、製造コストの削減を可能にするガラス板の製造装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7675324/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(支持ローラと高温ガラスリボン間の熱伝達メカニズムの解析、冷却装置による冷却効果を最大化するための設計の検討、支持ローラの材質と冷却条件における摩擦特性や摩耗特性の評価、長寿命化に最適な材料選定と冷却方法の検討)、高分子化学(支持ローラ表面に使用されるゴム材料の耐熱性、耐摩耗性、ガラスとの摩擦特性の評価、高温環境下でも長期間安定した性能を発揮する最適なゴム材料の選定、冷却によるゴム材料の物性変化の解析、冷却条件が支持ローラの寿命に与える影響の評価)

 

 さらに別の例としてガラスフィラメント紡糸用ブッシング(溶融ガラスからガラスフィラメントを引き出すためのノズル集合体)が挙げられます。
 従来のブッシングでは、全てのノズルが均一な材質・構造であったため、周囲の気流などで劣化しやすい外周部のノズルが寿命を律速し、ブッシング全体の交換頻度が高く、生産性の向上を妨げる要因となっていました。
 これに対して、ノズル群において壁厚またはロジウム含有量の少なくとも一方が互いに異なる複数のノズルを含み(二重管ノズルは除く)、劣化しやすいブッシングの外周部などに壁厚の厚いノズルやロジウム含有量の多いノズルが配置されることで、これらのノズルの寿命を延ばし、一方、劣化しにくい内側のノズルには壁厚の薄いノズルやロジウム含有量の少ないノズルが用いられることで材料コストを抑制し、ブッシング全体の寿命を延ばし、目封止によるノズル数減少を回避し、ガラスフィラメントの生産性向上に貢献するブッシングが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7207593/15/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(ガラス溶融時の腐食環境や紡糸時の気流による摩耗環境の解析、ブッシングノズルの劣化メカニズムの解明、ノズルの材質(特に白金ロジウム合金の組成)や壁厚がこれらの劣化に与える影響の評価、最適な材料と構造の設計)、応用物理学(ブッシング全体の熱収支モデルの構築、溶融ガラスの温度、周囲気流の温度や速度、ノズルの材質や形状などを考慮した熱伝導・熱対流のシミュレーション、ノズル表面の温度分布の測定およびシミュレーション結果と比較検証、ノズルの配置や冷却機構(自然冷却、強制冷却など)がノズルの温度分布と寿命に与える影響を評価)

 

 G02Bは既述のとおり、光学装置などに関連する分類です。
 具体例としてイマージョン回折素子(高屈折率の媒質中で光を回折・分光させる素子)が挙げられます。
 従来のイマージョン回折素子は使用中に回折部表面に異物が付着し、回折効率の低下や迷光の発生を招く可能性がありました。また、異物を除去する際に回折部が物理的に損傷するリスクもありました。
 これに対して、回折部を囲むリブと、そのリブ上に設けられた別体の蓋部を備えることで回折部を外部環境から物理的に保護する構造を特徴とし、プリズム部の主面上に回折部とリブが一体形成され、リブによって囲まれた領域に回折部が配置され、蓋部がリブによって支持されることで回折部への直接的な異物付着を防ぎ、清掃時の破損リスクを低減したイマージョン回折素子が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7647481/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(リブの高さや幅、蓋部の厚み、使用波長などをパラメータとした回折効率、透過率、反射率、迷光のシミュレーション、最適な形状の決定、微小な異物モデルの配置による回折パターンへの影響の解析、保護構造による影響低減効果の評価)、精密工学(モールドプレス成形、フォトリソグラフィー、エッチングなどの微細加工技術の検討、プリズム、回折部、リブの一体形成プロセスの確立、蓋部とリブの接合方法としてオプティカルコンタクト、表面活性化接合、微小接着などの技術の評価、最適な接合プロセスと接合条件の確立)

 

 H01Lは既述のとおり、特定の半導体装置に関連する分類です。
 具体例として電子部品を保護するキャップが挙げられます。
 従来の保護キャップでは、蓋部に反射防止膜を設けた場合、その反射防止膜が枠部との接合部に介在することでレーザ接合時の溶着が不十分になるという問題がありました。
 これに対して、蓋部の枠部接触面に設けられた反射防止膜において、枠部と実際に接触する接触部の表面粗さSaが0.1~1.0nmの範囲に制御されることにより、接触部と枠部との密着性が向上し、レーザ照射による溶着を十分におこなうことができて接合強度と気密性を確保した保護キャップが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7627442/15/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(蓋部と枠部の候補材料(各種ガラス、セラミックス、樹脂など)の熱的特性、光学的特性、機械的特性の調査およびレーザー接合のシミュレーション結果と合わせ最適な組み合わせの選定、選定材料による保護キャップのレーザー接合後の接合強度、気密性および光学特性の変化の評価)、精密工学(レーザー接合時の熱変形を最小限に抑えて安定した接合部を形成するための治具や機構の設計、レーザー照射パスを最適化するプログラム設計、成膜装置の制御パラメータ(ターゲットの配置、シールドの形状、基板の移動機構など)の調整、目標とする表面粗さの反射防止膜を均一に形成するための条件の確立)

 

 B65Dは物品または材料の貯蔵または輸送用の容器などに関連する分類です。
 具体例としてガラス板梱包体が挙げられます。
 従来のガラス板梱包体は大型化するガラス板に合わせて梱包体も大型化し、コンテナ内壁との隙間が狭くなり、搬出入作業時に接触の危険性があり、作業性が悪化していました。
 これに対して、複数のガラス板と梱包緩衝シートを縦姿勢で積層し、底板と背板で支持するパレットを備え、ガラス板の縦辺方向において背板の上端を緩衝板の上端より低く、さらにガラス板の上端よりも低いことで梱包体の上部における突出を抑制して高さと幅を縮小するとともに、梱包緩衝シートがガラス板より上方に突出し、その上部が自重により背面側に垂れ下げることで、さらなる高さ抑制が図られ、コンテナ内壁との隙間を広げ、搬出入作業の安全性を高め、作業効率を向上させたガラス板梱包体が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7610179/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(ガラス板積層体とパレットにかかる応力や変形のシミュレーション、安全な積載荷重や搬送条件の評価、ハンドリフトによる搬送時の振動特性の解析、共振を避けるための構造設計や緩衝材の選定、梱包材の固定方法や開梱治具の設計)、経営工学(コンテナへの積載計画、倉庫内での保管方法および開梱・搬送プロセスの分析、ボトルネックとなっている部分の特定、作業時間分析や動作分析、搬出入作業や開梱作業の効率を向上させるための手順やレイアウトの検討)

 

 G01Nは材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析に関連する分類です。
 具体例として光学部品などの微小物体の全周にわたる外観検査をおこなうための検査方法が挙げられます。
 従来の微小物体の検査方法では、搬送中に検査済みの面に新たな傷や欠損が生じる可能性があり、また、全周を検査するために複雑な搬送機構や複数の撮像工程が必要でした。
 これに対して、投入、搬送、搬出の各工程で外観検査をおこない、搬送工程では微小物体を回転テーブルの吸着ステージで下面を吸着保持し、搬出工程でその下面を検査し、投入工程と搬出工程では吸着ノズルで上面を吸着保持して搬送し、投入工程では側面、搬送工程では正面、背面、上面を検査し、搬出工程で下面を検査することで、一連の外観検査が終了した後も搬送中に他の部材と接触していた面も最終工程で検査でき、新たな傷つきを防ぐ微小物体の検査方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7676941/15/ja

  関連する専門分野の例:精密工学(微小物体の安定した搬送と正確な位置決めを実現するための機構設計、吸着ノズルや吸着ステージの形状、吸着力、搬送速度などの最適化、微小物体の姿勢ずれを最小限に抑える機構の検討、撮像装置との連携で検査エリアにおける微小物体の正確な位置情報を取得・制御するシステムの構築)、応用物理学(微小物体の表面状態や欠陥を鮮明に捉えるための最適な撮像・照明条件の設計、適切な波長の光源、照明角度、偏光フィルタなどの選定、得られた画像データから微細な欠陥を自動的に検出・識別するための画像処理アルゴリズム設計)

 

 B65Hは薄板状または線条材料の取扱いに関連する分類です。
 具体例としてパレット上でガラス板と保護シートを積層する際に帯状保護シートから保護シートを切り出すシート供給装置が挙げられます。
 従来のシート供給装置では、帯状保護シートの切断後、次の切断準備中にシートが垂れ下がり、気流や装置の動作によって揺動し、カッターに意図せず接触して誤切断が発生する問題がありました。
 これに対して、帯状保護シートを送給する経路と、切断機構を備え、切断機構はシートを送り出す送り手段(ニップロール)、シートを一方面から切断するカッター、切断地点より下流でシートを一方面から押さえる押え部材、シートの他方面側を案内するガイド部材を有し、特に押え部材は上流側と下流側がガイド部材に近づくように傾斜し、中間部位の傾斜を小さくすることでシートの浮き上がりや揺動を抑制し、カッターとの意図しない接触を防ぐシート供給装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7554391/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(搬送中や切断時のシートの変形や振動のシミュレーション、シートの浮き上がりや揺動を効果的に抑制するための押え部材の形状、傾斜角度、接触面圧などの設計、カッターの進入速度や角度がシートに与える影響の分析、最適な切断条件の決定)、制御工学(シートの送給量を高精度に制御するためのサーボモーターの制御アルゴリズムの設計、カッターの動作タイミングとシートの送給速度を同期させて正確な長さでシートを切断するための制御ロジックの設計、移送機構との連携をスムーズにおこなうための通信プロトコルや制御シーケンスの確立)

 

 H01Mは化学的エネルギーを電気的エネルギーに直接変換するための方法または手段に関連する分類です。
 具体例としてニッケルと特定の遷移金属を含むリン酸塩からなるナトリウムイオン二次電池用正極活物質が挙げられます。
 従来のニッケル系正極活物質は初回充電時に酸素が脱離しやすく、放電容量が低下する問題や全固体電池に適用した際にナトリウムイオン伝導パスが形成されにくい問題がありました。
 これに対して、一般式Nax(Ni1-aMayP2Ozで表される特定の結晶構造を有し、骨格となるリン酸が主にピロリン酸またはメタリン酸となるため、初回充電時の酸素脱離を抑制し、放電容量の低下を防ぎ、さらに、全固体電池に適用した場合でも、固体電解質との間でナトリウムイオン伝導パスが形成されやすくなり、高い放電容量を維持できるナトリウムイオン二次電池用正極活物質が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7348600/15/ja

  関連する専門分野の例:材料科学(さまざまな組成の遷移金属リン酸塩化合物の構造や組成の評価、材料の組成や合成条件と電池性能の相関性の解析)、電気化学(活物質の酸化還元電位、イオン伝導度、反応抵抗などの評価、X線吸収分光法(XAS)やメスバウアー分光法などのin-situ測定に基づく充放電中の活物質の電子状態や構造変化の解析)

 

(4)まとめ

 自動車向けなどの従来的なガラス製品、カメラやセンサなどの光学フィルタ、電子部品などに使われる基板などの製品、これらの素材や製品の製造方法に関する出願が確認されました。

 こうした出願につながる開発がおこなわれていることが推測されます。 

 

3.6 共同出願人との開発例

 共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。

 技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。

 各社の共同出願人(筆頭出願人)は以下のとおりです。

(1)日本板硝子

 

 出願件数が少ないので詳細は省略します。

 

(2)AGC

 

 出願件数トップの共同出願人は京セラディスプレイ(京セラに吸収合併)です。

 ただし、出願年として確認されたのが2004年まででした(詳細省略します)。

 パナソニックとの共同出願では高分子電解質型燃料電池の製造方法が挙げられます。
 従来の高分子電解質型燃料電池は製造時や保管中に電極触媒層に混入する有機物が触媒を被毒し、初期性能の低下や長期使用における耐久性低下を引き起こす問題がありました。
 これに対し、電極触媒、陽イオン交換樹脂および特定の蒸気圧を持つアルコールを含む液体を用いて触媒層形成用の混合液を調製し、膜厚が20~50μmの高分子電解質膜に触媒担持量0.1~2.0mg/cm2の触媒層を形成し、触媒層形成後にアルコール由来の有機物を除去し、膜電極接合体単位面積あたりの有機物質量と触媒層および高分子電解質膜の単位面積あたり質量との比率を特定の条件を満たすように制御し、さらに、製造後の膜電極接合体を密封容器に梱包保管することにより、初期性能が高く、長期にわたる性能劣化を抑制した高分子電解質型燃料電池の製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-5551215/15/ja
  関連する専門分野の例:電気化学(触媒表面における有機物の吸着・酸化反応の解析、触媒活性低下のメカニズム解明、残存有機物の種類や量が電池性能に与える影響の評価、最適な有機物除去条件や梱包保管方法の確立)、材料化学(走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)により触媒層の微細構造や有機物の分布状態の確認やX線光電子分光法(XPS)により触媒表面の元素組成や化学結合状態の分析、有機物の吸着状態の評価)
 
 三井化学との共同出願ではポリイソシアネート硬化剤が挙げられます。
 従来のポリイソシアネート硬化剤と含フッ素共重合体を組み合わせた塗料は、弱溶剤に溶解させた際に再析出する問題や強溶剤の使用による旧塗膜への悪影響が懸念されていました。
 これに対し、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)とドデシルアルコールとの反応により得られ、アロファネートとイソシアヌレートの組成比が50/50~100/0の範囲に制御されることによりミネラルスピリットなどの弱溶剤に対する希釈性に優れ、含フッ素共重合体を硬化させた塗膜は、耐候性や塗膜物性に優れたポリイソシアネート硬化剤が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-5060757/15/ja
  関連する専門分野の例:高分子化学(IPDIとドデシルアルコールの反応機構の解析、アロファネートとイソシアヌレートの生成比率を制御する反応条件の最適化)、有機化学(ポリイソシアネート硬化剤の効率的かつ高純度な合成ルートの確立、反応中間体の構造や副生成物の生成メカニズムの解明、収率向上と不純物低減のための反応条件、触媒、後処理方法の検討)

 

(3)日本電気硝子

 

 出願件数トップの共同出願人はニューマンパワーサービスです。
 共同出願の例としてガラスの製造方法が挙げられます。
 従来のガラス製造方法では、供給管内面にガラス原料が付着・堆積し、閉塞を引き起こす可能性があり、生産安定性の課題となっていました。
 これに対し、溶融炉から上方へ延びる鉛直配置の供給管内で押出部材を下方に駆動させることで管内面に付着したガラス原料を物理的に剥離させ、これにより付着したガラス原料を効率的に除去し、供給管の閉塞を抑制するガラスの製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7099847/15/ja
  関連する専門分野の例:機械工学(供給管内のガラス原料の付着メカニズムの解析、押出部材の形状、駆動方法(速度、頻度、ストローク)および材質が剥離効率に与える影響の最適化)、材料工学(高温のガラス原料や腐食性雰囲気に対する耐性を有しかつ剥離性を高めるための供給管内面および押出部材の最適な材料の選定、表面処理技術(コーティングなど)による付着防止や剥離促進の効果の評価)

 

(4)上記(1)~(3)(共同出願人)のまとめ

 ガラス製品に関わる出願が多いです。

 ただし、共同出願件数自体は多くないです。

 

4 開発に求められる専門性

 上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。

 上記各特許情報には以下の人材が関わっていると言えます。

 

化学、材料分野(応用化学、物理化学、高分子化学、有機化学、分析化学、電気化学、材料化学、化学工学、材料工学、材料科学など)

 ガラス組成物全般、化学反応を伴う装置などに関する出願が関係します。
 ガラス中の化学的挙動の解明、組成が各種特性に与える影響の評価、反応プロセスの検討などが求められます。

 

物理系分野(応用物理学、物理化学など)

 光学フィルムなどの光学的要素、積層基板などの熱的要素など物理的要素を含む製品や製品の製造に関する出願が関係します。
 各種物理的要素の実測、計算を通じた解析などが求められます。

 

機械系分野(機械工学、材料工学、精密工学など)

 ガラスモジュールなど具体的な形状を伴う製品や製造装置などに関する出願が関係します。
 車両用などの各種ガラスの構造設計、使用される素材、形状などの検討、特定の形状の組成物などを得るための製造プロセスの検討などが求められます。

 

その他分野(電気工学、電気電子工学などの電気系分野、情報通信工学、制御工学などの情報系分野など)

 加熱線のように電気を伴う製品、電気回路を有する製品はに関する出願は電気系の分野、ガラスアンテナなどの通信を伴う製品、ガラス製造に係る装置などに関する出願は情報系の分野が関係する場合があります。
 電気回路の設計、適切な情報通信のための条件の検討、装置の制御アルゴリズムの設計などが求められます。

 

 ただし、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。

 

5 まとめ

 窓ガラスなどのガラス製品やガラスが用いられた電子部品などのさまざまな製品、その製造方法に関わる出願が多く確認され、そのような開発がおこなわれていることが示唆されました。

 大学の専攻と関連づけるとしたら、特に多いものとして、化学、物理、機械などの研究が該当する可能性があります。

 

 本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。

 参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4

 以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。

 

<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年版 東洋経済新報社

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