今回は塗料業界に焦点をあてます。
塗料と言えば、建物の外壁や自動車のボディに使用される化学品が想像されます。
ただ、多くがBtoBで取引されるものですし、一般の人たちにとって、その開発領域をうかがい知ることはできません。
これを特許情報からみていきます。
特許情報は企業の開発情報だと言えます。
実際にどのような開発がおこなわれたのか特許情報に記載されています。
今回は、塗料メーカー5社の特許情報からどのような開発がおこなれてきたのか、また、開発にどのような専門性が求められるのか読み解きました。
結論(概要)は以下の通りです。
・化学、材料系分野(高分子化学、化学工学、物理化学、材料化学、界面化学、材料科学、有機化学など)
・物理系分野(応用物理学など)
・機械系、電気系分野(機械工学、電子工学、計測工学など)
・情報系分野(情報科学など)
1 業界サーチの概要
特許情報は企業の開発情報だと言えます。
業界サーチは、業界における主要企業の特許情報から、その業界の企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。
特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。
すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。
2 塗料業界
2.1 塗料業界とは
ここでは、建築物、自動車、船舶、工業製品などのさまざまな対象物の表面を保護・美化する塗料を製造・販売する業界を意図します。
2.2 サーチ対象
以下の塗料メーカー5社を対象にしました。
(2)関西ペイント
(3)エスケー化研
(4)中国塗料
(5)大日本塗料
日本ペイントには日本ペイントホールディングス株式会社と日本ペイント株式会社の情報を用いました。
2.3 使用プラットフォーム
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
3 サーチ結果
3.1 結果概要
開発イメージは下表のとおりです。
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モノの開発 |
サービスの開発 |
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個人向け |
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法人向け |
・塗料用樹脂組成物 |
・塗料性状の予測方法 |
モノの開発としては、例えば、各種の塗料組成物が挙げられます。
サービスの開発としては、例えば、塗膜の形成方法などが挙げられます。
3.2 出願件数の推移
下図は塗料メーカー5社の特許出願件数の推移です。

2000年代前半に日本ペイントと関西ペイントの特許出願件数が減少しつづけ、その他各社を含め、現在は年間50件以内のペースで出願されています。
ただし、出願件数は多くないものの、各社とも毎年一定数出願しており、そのような出願につながる開発がおこなわれていることが推測されます。
3.3 開発の活発度
特許出願件数≒開発の活発度、だと考えるなら、
関西ペイント>日本ペイント>大日本塗料>エスケー化研>中国塗料
だと言えます。
ただし、データ直近5年(2018年から2022年)で見ると、
関西ペイント>大日本塗料≒中国塗料>日本ペイント>エスケー化研
となっています。
3.4 主な開発分野
各社ごとに特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。
各社の出願上位3つの技術分野を抽出して並べています(特許出願されていても、その企業の出願件数上位に入っていない技術分野は除外されています)。
各記号は発明の技術分類をあらわします。

分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)
液体または他の流動性材料を適用する方法などがこれに該当します。
全5社がこの分野から多く出願しています。
非平面形状を有する積層体などがこれに該当します。
エスケー化研がこの分野から多く出願しています。
設計されるプリンティングに特徴がある選択的プリンティング機構などがこれに該当します。
大日本塗料がこの分野から多く出願しています。
重合方法などがこれに該当します。
関西ペイント、中国塗料がこの分野から多く出願しています。
無機物質に基づくコーティング組成物などがこれに該当します。
全5社がこの分野から多く出願しています。
溶解被覆材料のスプレーによる被覆などがこれに該当します。
日本ペイントがこの分野から多く出願しています。
3.5 塗料メーカー5社の近年の開発トレンドと求められる専門の例
特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。
ここ10年のトレンドは以下のとおりです。
発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。
出願件数が少ない技術分野は除外しています。
発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。
関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。
特許は難解ですが、GeminiやChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。
(1)日本ペイント|開発トレンドと専門性

上図期間中、Ⅽ09Dが最も多いです。次いでB05D、B32B、H01Fが多いです。
具体例として屋外環境下での塗膜形成を想定した塗料用樹脂組成物が挙げられます。
従来の耐候性塗膜は有機成分と無機成分のハイブリッド構造により耐候性を向上させていましたが、屋外環境下でのクラック発生や耐衝撃性に課題がありました。これは有機成分と無機成分が化学的に結合することで、それぞれが持つ特性を十分に発揮できなかったためと考えられます。
これに対し、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とシロキサンオリゴマー(a2)を含む主剤(A)と、ポリエポキシド(b1)と硬化触媒(b2)を含む硬化剤(B)から構成される樹脂組成物であって、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)およびポリエポキシド(b1)と、シロキサンオリゴマー(a2)との反応が抑制されており、これにより、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とポリエポキシド(b1)の反応物からなる有機系の第1ポリマー部分と、シロキサンオリゴマー(a2)の重合物からなる無機系の第2ポリマー部分が実質的に独立した形で塗膜中に存在することにより、有機成分の柔軟性と無機成分の紫外線・熱耐性がそれぞれ発揮され、塗膜のクラック抑制と耐衝撃性が向上し、また、シロキサンオリゴマー(a2)は、線形に近い構造を形成しやすい特定の繰り返し単位比率(n/(m+n)≧0.19)を満たすことで、第2ポリマーの柔軟性が向上し、塗膜全体の耐衝撃性を高めた樹脂組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7576075/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(アミノ基含有アクリル樹脂のモノマー組成と重合条件の調整によるアミン価と分子量の制御、ポリエポキシドのエポキシ当量と分子量の最適化、シロキサンオリゴマーの一般式(x)と(y)で表される構造単位の比率(n/(m+n))を制御するためのシラン化合物の選択と縮合重合条件の検討)、材料科学(動的粘弾性測定(DMA)によるガラス転移温度(Tg)と損失正接(tanδ)のピーク解析、第1ポリマー部分と第2ポリマー部分の相溶性や相互侵入高分子網目(IPN)構造の形成状態の評価、透過電子顕微鏡(TEM)を用いた塗膜の観察による有機成分と無機成分の分離状態や絡み合い構造の確認、クラック抑制メカニズムと耐衝撃性向上要因の解明)
従来の技術では、熟練作業者の経験や簡易的な理論式に基づいて塗料の調整を繰り返すため、特に微細な色差が求められる塗料では調色に時間と労力を要し、ロット間の色ムラが発生しやすいという問題がありました。
これに対して、調整前の塗料性状データと、塗料性状調整用の原料の補正配合組成データを人工知能モデルに入力し、調整後の塗料性状を予測する方法であり、塗料性状の変動量を予測することで、計測器の誤差やばらつきを相殺し、熟練調色士の経験に頼ることなく塗料の調色が可能となり、特にコイルコーティング用塗料のような厳密な色管理が求められる分野での品質向上と生産性向上に貢献する塗料性状の予測方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7116266/15/ja
関連する専門分野の例:情報科学(さまざまな種類の塗料性状データ(色彩、光沢、粘度、塗膜異常など)と補正配合組成データの関連性の分析およびモデル学習に適した特徴量の抽出、機械学習アルゴリズムの中から塗料性状予測に適したモデルの選択)、化学工学(塗料の分散状態、顔料のロット差、溶剤の揮発性などが塗料性状に与える影響の解析およびこれらの変動要因をデータとしてモデルに組み込む方法の検討、再現性の高いデータを効率的に収集するための測定方法や機器の選定、予測された補正配合組成が実際の塗料製造ラインでどのように添加されるべきかの混合・分散プロセスにおける課題(例:添加剤の均一分散性、泡立ち抑制など)の特定と解決策の検討)
従来の塗料は水平方向の飛散抑制に主眼が置かれており、垂直方向の塗装では塗料が液滴となって飛散しやすく、周囲の汚れや作業効率低下の問題がありました。
これに対して、塗料組成物の第一法線応力差が10~200Pa、損失正接(Tanδ)が0.50~1.00、塗料糸のくびれ発生抑制(CON)値が0.20~0.45であることを特定の物性値の範囲として特徴とし、第一法線応力差が高くされることで塗料糸が破断しても塗装面やローラー方向に戻る力が働き、飛散を抑え、Tanδが低くされることで塗料糸の伸びすぎを抑制し、くびれや破断を防止し、CON値が小さくされることで塗料糸中のミクロな構造の破壊による粘度低下やくびれ発生を抑制し、結果としてアクリルエマルションを樹脂成分とし、アルカリ膨潤型粘性調整剤およびウレタン会合型粘性調整剤を含む粘性調整剤の組み合わせにより、水平方向のみならず垂直方向の塗装においても飛散抑制効果を発揮する塗料組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7281309/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(アクリルエマルションのモノマー組成や重合条件による粒径、分子量、架橋度などの制御を通じた塗膜形成能力と粘弾性特性の向上の検討、アルカリ膨潤型粘性調整剤やウレタン会合型粘性調整剤の分子構造(例えば、疎水性部位の導入、会合基の種類や数)の設計)、物理化学(さまざまなせん断速度や周波数条件下での塗料の粘度、貯蔵弾性率、損失弾性率、法線応力差などの物理的特性の測定、ローラー塗装時の塗料糸の形成、伸長、くびれ、破断といった動的な挙動の観察および測定されたレオロジーデータと実際の飛散挙動との因果関係の分析)
具体例として耐候性と隠蔽性と外観に配慮した複層塗膜の形成方法が挙げられます。
従来の複層塗膜では、着色層とトップコート層の機能・構成の違いから長期経過で層間剥離が生じやすく、特に紫外線による着色顔料の分解がその一因でした。また、隠蔽性や外観にも改善の余地がありました。
これに対して、被塗物に着色塗料組成物を塗装して着色層を形成し、その上からトップコート塗料組成物を塗装してトップコート層を形成する方法であり、着色塗料組成物の顔料体積濃度(PVC1)を2~20%の範囲とし、さらにトップコート塗料組成物の顔料体積濃度(PVC2)とPVC1の比率(PVC2/PVC1)を0.2~0.7の範囲、かつPVC2を0.4%以上14%未満に制御することで、トップコート層が適度な光線透過率を持つようになり、着色層への紫外線到達を抑制しつつ高い隠蔽性を維持し、着色層中の顔料の劣化や樹脂の分解に起因する層間剥離を防止し、塗膜のチョーキング現象も抑制することで、長期にわたって耐候性と隠蔽性を維持し、基材の透けや刷毛のカスレがない良好な外観の複層塗膜を実現する複数塗膜の形成方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7456840/15/ja
関連する専門分野の例:材料化学(紫外線吸収能力が高く顔料との相互作用が良好な新規な塗膜形成樹脂の探索、顔料の種類(有機顔料、無機顔料)、粒径、表面処理が塗膜の光透過率、隠蔽力、耐光性および顔料分散安定性に与える影響の評価と顔料選定、塗膜形成樹脂と顔料その他の添加剤(光安定剤、紫外線吸収剤、分散剤など)の配合比率の調整)、応用物理学(異なる顔料組成や膜厚の塗膜における可視光および紫外線の透過率、反射率、吸収率の測定、顔料の光散乱・吸収特性が塗膜の隠蔽性(Y/YW比)や色差(ΔE*)に与える影響の評価、顔料の最適配合比率の導出、紫外線による塗膜劣化メカニズムの光学的分析)
具体例として意匠性と遮熱性を有する積層塗膜が挙げられます。
従来の遮熱塗料は赤外光の反射率を高めるために顔料の選択に制約があり、特に濃色系では意匠性が損なわれるという問題がありました。
これに対して、被塗物上に形成されるベース塗膜と、その上に形成される赤外反射性塗膜から構成される積層塗膜であり、赤外反射性塗膜は鱗片状の赤外反射性顔料と樹脂を含有し、この赤外反射性顔料は誘電体層と銀化合物からなる金属薄膜層が交互に積層され、最外層が誘電体層である積層体で、金属薄膜層の膜厚は5~15 nmであり、誘電体層の膜厚は特定波長域(250~980 nm)の入射光の波長と誘電体層の屈折率に基づき、ベース塗膜の赤外反射率R1は80%未満であり、赤外反射性塗膜の赤外反射率R2はR1よりも大きくなるように設計されることで、可視光透過性を保ちながら赤外光反射性を実現し、意匠性と遮熱性の両立を可能な積層塗膜が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6898858/15/ja
関連する専門分野の例:材料科学(誘電体層を構成する材料(二酸化チタン、五酸化ニオブなど)の屈折率、膜厚および積層数と金属薄膜層(銀化合物)の膜厚が赤外光反射率と可視光透過率に与える影響の解析、スパッタリング、電子ビーム蒸着、溶液塗布などの成膜方法における各層の均一性、密着性および結晶性を制御するための最適な条件(成膜温度、圧力、レート、前処理・後処理など)の検討)、化学工学(赤外反射性顔料を樹脂中に均一に分散させるための最適な分散条件(分散機の種類、回転速度、分散時間、顔料濃度、分散剤の種類と量など)の検討、塗料の貯蔵安定性や塗布性への影響の評価、塗料の塗布方法(エアスプレー、バーコーターなど)や乾燥条件(温度、時間、風速など)が塗膜中の顔料の配向性、膜厚の均一性および塗膜欠陥(ハジキ、ダレ、ワキなど)に与える影響の評価)
具体例として磁気粘弾性流体が挙げられます。
従来の磁気粘性流体は粒径の大きな磁性粒子の沈降による分散分離やそれに伴う装置の損傷・不作動が問題でした。シランカップリング処理や分散助剤では十分な安定性が得られませんでした。
これに対して、磁性粒子と分散媒に加え、特定の平均粒子径(20~1500 nm)を有する樹脂粒子を特定の質量割合(0.3~20質量%)で含み、磁性粒子の割合が35~95質量%に設定され、この樹脂粒子が磁性粒子の沈降を抑制し、長期的な分散安定性を実現し、磁場印加時に形成される磁性粒子の鎖状クラスタの構造を安定させ、これにより流体の見かけの粘度(または降伏応力)を向上させることにより、磁性粒子の表面処理といった複雑な工程を不要としつつ安定した磁場応答性により多様な装置の性能向上と長寿命化に貢献する磁気粘弾性流体が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6682608/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(樹脂粒子の種類(アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂など)、架橋度および平均粒子径が磁性粒子の沈降抑制効果、流体の磁場応答性および耐熱性・耐溶剤性に与える影響の解析、コア-シェル構造や表面修飾などのさまざまな形態の樹脂粒子の設計・合成による磁性粒子との相互作用メカニズムの解明、樹脂粒子の合成プロセスにおける粒子径分布、均一性および生産性を高めるための重合条件(モノマーの種類と比率、重合開始剤、分散剤、温度、圧力など)の最適化)、応用物理学(磁性粒子、樹脂粒子、分散媒の配合比率および外部磁場強度・周波数が磁気粘弾性流体のせん断応力、降伏応力、粘度、貯蔵弾性率、損失弾性率などの特性に与える影響の測定および解明、実使用環境下での流体挙動(例:流路内の圧力損失、熱発生、応力伝達効率)を予測・評価するための構成式や数値モデルの構築)
(2)関西ペイント|開発トレンドと専門性

具体例として光輝性塗料組成物が挙げられます。
従来のインクジェット方式による光輝性塗料では、顔料の沈降やノズル詰まりが発生しやすく塗膜の品質(金属調光沢やムラ)が課題でした。
これに対して、水、特定の粒径を有する鱗片状アルミニウム顔料およびナノセルロースが配合された組成物であって、ナノセルロースが顔料の分散安定性を高め、液体吐出ヘッド(特にピエゾ型)を用いた塗装においてもノズル詰まりなく塗料を安定して吐出できるため、金属調光沢と均一な塗膜を実現できる光輝性塗料組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7249476/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(異なるモノマー組成や分子量を持つアクリル樹脂の合成およびそのガラス転移温度(Tg)や水酸基価の測定による塗膜の硬度や耐薬品性との相関の評価、ナノセルロースの種類(CNF、CNC)やアスペクト比が塗料の分散安定性や塗膜形成時の顔料配向にどう影響するかの解析)、界面化学(アルミニウム顔料の表面処理剤の選定と最適化およびその吸着挙動の評価、ナノセルロースが顔料表面に吸着することで顔料の沈降防止や再凝集抑制にどう寄与するかの検証、顔料の均一な配向メカニズムの解明)
従来の技術では、プラスチック成形品に塗布されるプライマーの水性化が進む一方で塗装機の洗浄性が不十分であるという問題がありました。塗装機に塗料が残存すると、塗膜欠陥が発生する原因となります。
これに対して、水性ポリオレフィン系樹脂(A)と、アニオン性基およびポリオキシアルキレン基を有するアクリル樹脂(B)を必須成分として含有し、pH9.5以上のアルカリ洗浄水を用いて塗装機を洗浄する工程を含む塗装プロセスでの使用想定であり、塗装機の洗浄性を向上させた水性塗料組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7242973/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(ポリオレフィン系樹脂(A)のグラフト変性における不飽和カルボン酸や酸無水物の種類、グラフト量の最適化、アクリル樹脂(B)のアニオン性基とポリオキシアルキレン基の種類や導入割合の調整による水性分散性、アルカリ洗浄水への溶解性、塗膜形成能に与える影響の評価、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)や核磁気共鳴(NMR)などによる合成した樹脂の分子量、分子量分布および組成の分析)、界面化学(アクリル樹脂(B)が有するアニオン性基とポリオキシアルキレン基がアルカリ洗浄水中でどのように塗料粒子を分散・乳化させるかの評価、ジエステル化合物(F)やリン酸化合物(G)が塗料の表面張力、粘度および基材への濡れ性に与える影響の測定、接触角測定や動的光散乱(DLS)などを利用した塗料の安定性、粒子径および洗浄時の塗膜剥離挙動の評価)
従来の自動車用水性塗料は、揮発性有機化合物(VOC)削減のため高固形分化が進められていますが、塗膜表面のワキ(泡状欠陥)が発生しやすいという問題がありました。これは、塗料中の溶媒が急激に蒸発することで気泡が生じ、塗膜欠陥となるためです。
これに対して、樹脂粒子(A)、架橋剤(B)、顔料(C)およびナノセルロース(D)を必須成分として含有し、ナノセルロース(D)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し固形分量で0.5~2.0質量部に設定され、塗料固形分濃度が45~65質量%の範囲内であり、かつ、20℃、ローター回転速度60rpmでのブルックフィールド型粘度計による塗料粘度が350~1200mPa・sの範囲内に制御されることで、塗料の作業性と塗膜欠陥の発生を抑制する自動車外装用水性塗料組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7225476/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(樹脂粒子(ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン複合樹脂など)の種類、分子量、官能基(水酸基、カルボキシル基など)、ガラス転移温度、粒子径が塗膜性能(耐タレ性、耐ワキ性、平滑性、耐チッピング性など)に与える影響の系統的な解析と最適な構造設計、ナノセルロースの種類(セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタルなど)、表面改質および分散安定性が塗料のレオロジー特性(粘度、チクソトロピー性など)と塗膜のワキ発生抑制メカニズムに与える影響の解明)、界面化学(樹脂粒子や顔料の水中での分散メカニズムの解明、凝集を防ぎ安定した分散状態を維持するための界面活性剤の選定、ナノセルロースが塗料の粘弾性や流動挙動に与える影響を剪断速度依存性や温度依存性といった観点から評価、ワキやタレの発生を抑制する最適な粘度設計)
具体例として自動車外板などへの複層塗膜の形成方法が挙げられます。
従来の金属調塗料では、光沢感が不十分であるか、または塗膜の密着性などの性能が不足するという問題がありました。
これに対して、被塗物上にインジウム粒子、表面調整剤および有機溶剤を含有する光輝性塗料組成物(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成する工程と、その上に水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物を含有するクリヤ塗料組成物(Z)を塗装してクリヤ塗膜を形成する工程、そしてこれらの塗膜を硬化させる工程を含み、光輝性塗料組成物(Y)がインジウム粒子を主成分とし、特定の表面調整剤(シリコーン系、アクリル系、ビニル系、フッ素系から選択)と有機溶剤を含有し、その固形分含有率が0.1~15質量%と低濃度に設定されていることにより、インジウム粒子が塗膜中で均一に配向し、金属調光沢と塗膜性能が実現する複層塗膜の形成方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7263629/15/ja
関連する専門分野の例:材料科学(光輝性塗料組成物中のインジウム粒子(y1)の形態(サイズ、厚さ、形状、凝集状態など)とそれが塗膜の光学特性(金属調光沢)に与える影響の解析および最適化、表面調整剤(y2)の種類や配合量がインジウム粒子の配向性や塗膜表面の平滑性にどう影響するかの解明)、高分子化学(クリヤ塗料組成物(Z)を構成する水酸基含有樹脂(z1)とポリイソシアネート化合物(z2)の反応メカニズムとそれによって形成されるポリウレタンネットワーク構造が塗膜の物性(付着性、耐チッピング性、硬度、耐久性など)に与える影響の探求、両者の架橋密度や官能基の種類、分子量の最適化)
既存技術では、省エネルギー化のため複数層の塗料を一度に焼き付ける方式(3コート1ベーク方式)が試みられていますが、水性塗料を用いると、光輝性顔料の配向が乱れやすく、平滑性や光輝感の低下という問題がありました。
これに対して、硬化電着塗膜の上に第1着色塗膜、第2水性塗膜、第3水性着色塗膜、クリヤーコート塗膜の4層を順次ウェット・オン・ウェットで塗装し、最後にこれらの塗膜を同時に加熱硬化する方法であり、特に、光輝性顔料を含む第3水性着色塗料(P3)の下に特定の粘度特性(塗着1分後の粘度V2P2が3~500Pa・sec、かつ、塗着1分後の粘度V2P2の、せん断速度0.1sec-1・温度23℃で測定した粘度V1P2に対する比V2P2/V1P2が1.1/1~5/1)を持つ第2水性塗料(P2)を硬化膜厚5~20µmで形成することで、光輝性顔料の良好な配向を維持し、ムラのない高い光輝感と優れた平滑性を両立した塗膜を実現する複層塗膜形成方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7024146/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(第2水性塗料(P2)に使用される水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A)や水酸基含有ポリエステル樹脂についてそのモノマー組成、分子量、官能基の種類と量、コア/シェル構造の最適化の検討、塗料の塗着後の粘度上昇挙動の制御のための高分子のガラス転移温度(Tg)や水酸基価、酸価などの調整およびレオロジー特性に影響を与える高分子の構造の設計)、界面化学(各塗料層(第1着色塗膜、第2水性塗膜、第3水性着色塗膜、クリヤーコート塗膜)間の濡れ性や表面張力の測定、ウェット・オン・ウェット塗装における層間の混層を防ぎ良好な積層構造を形成するための塗料物性(粘度、表面張力など)の検討、第2水性塗料(P2)と第3水性着色塗料(P3)間の界面において光輝性顔料(B P3)の均一な配向を促進する条件(例えば、乾燥速度、顔料のサイズや形状、表面処理)の解析)
具体例としてリチウムイオン電池電極用カーボンナノチューブ分散液が挙げられます。
既存のカーボンナノチューブ分散液は分散剤を多く使うと電池性能が低下し、少ない量では分散性が悪く塗布時の粘度が高いという問題がありました。
これに対して、分散樹脂(A)、カーボンナノチューブ(B)および水を含有する分散液であって、分散樹脂(A)がスルホン酸基で変性されたイオン性ポリビニルアルコール樹脂(a1)を含有し、これがスルホン酸変性ポリビニルアルコール樹脂(a1-1)であって総モノマー単位に対し0.1~30質量%のスルホン酸基を有するモノマー単位を含み、かつ90~99.9%のケン化度を持つことで、カーボンナノチューブを水中に安定して分散させ、電極形成時の塗布に必要な低い粘度と、電極の優れた導電性を実現し、高性能なリチウムイオン電池の製造に貢献するリチウムイオン電池電極用カーボンナノチューブ分散液が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7459371/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(重合条件(モノマー比、開始剤の種類と量、重合温度、時間など)の最適化、スルホン酸基の導入量やケン化度、分子量などのポリマー構造がカーボンナノチューブ分散液の分散安定性、粘度および最終的な電極の導電性に与える影響の評価)、電気化学(インピーダンス測定(Bodeプロット解析を含む)により電極層内のカーボンナノチューブのストラクチャー形成状態と導電パスの効率の評価、電極活物質との界面抵抗や電荷移動抵抗の解析、作製した電極を用いた充放電試験による容量維持率や出力特性の比較評価、分散液の組成と電池性能との相関の特定)
具体例として電着塗料に用いられるアミノ基含有エポキシ樹脂が挙げられます。
従来の電着塗料は安全・環境面で問題のある有機錫化合物を触媒として使用しており、その代替が求められていました。しかし、代替触媒では硬化性能が不十分であったり、低温硬化性を高めると貯蔵安定性が低下したりする問題がありました。
これに対して特定の構造を持つエポキシ系樹脂1または2と、アミン化合物とを反応させて得られるエポキシ樹脂であって、エポキシ系樹脂1または2はエポキシ基を2つ以上有する化合物と、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(特に3価以上のフェノール系化合物や3官能以上のポリイソシアネート)を反応させることで得られ、エポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.30以上、エポキシ系樹脂2では平均多官能化濃度(Y1)が0.10以上に制御された多官能構造により、低活性の触媒を用いた場合や低温での硬化性を高めつつ長期にわたる塗料の貯蔵安定性を維持するアミノ基含有エポキシ樹脂が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6997279/15/ja
関連する専門分野の例:有機化学(3価以上のフェノール系化合物や3官能以上のポリイソシアネートの選択、エポキシ化合物との最適な反応モル比の検討、平均多官能化度(X1)や平均多官能化濃度(Y1)を目標値に制御するための反応温度、時間、触媒の種類、溶媒の選定)、高分子化学(合成樹脂の分子量分布、ガラス転移温度、熱分解温度などの基礎物性測定、電着塗料としての分散安定性、粘度特性、pH安定性の評価、硬化剤(ブロック化ポリイソシアネートなど)との架橋反応性評価(DSCなどによる硬化挙動解析)、得られた塗膜の機械的強度(鉛筆硬度、衝撃性など)、耐薬品性、耐食性(塩水噴霧試験など)、光沢度、平滑性などの塗膜性能評価、低温硬化性や貯蔵安定性の改善メカニズムの解明)
(3)エスケー化研|開発トレンドと専門性

B32Bが最も多いです。次いでⅭ09K、E04F、B05Dが多いです。
具体例として建築物の内装用積層体が挙げられます。
従来の吸放湿性壁材は珪藻土などの多孔質材料を使用することで湿度調整効果はあったものの、その反面、十分な耐久性や強度を確保することが難しいという問題がありました。
これに対して、基材上に化粧被膜が形成され、この化粧被膜は表面に特定の凹凸形状(輪郭曲線要素の平均長さ0.1~3mm、平均高さ1.5mm以下)を有し、化粧被膜の表面に特定の長さ(平均繊維長1~20mm)の繊維が単位面積あたり3~100本/cm²の密度で散在しており、これらの繊維が化粧被膜の2以上の凸部を跨ぐように配置され、この繊維の橋架け効果と凹凸形状との組み合わせにより、吸放湿量を維持しつつ耐久性(耐水性、耐洗浄性など)と強度(付着強度0.5N/mm²以上)を実現する積層体が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6666632/15/ja
関連する専門分野の例:材料工学(吸放湿量70g/m²以上を達成するための多孔質無機粒子(珪藻土、シリカゲルなど)の最適な粒径、比表面積、配合割合の検討、化粧被膜の付着強度0.5N/mm²以上を確保するための繊維の種類(有機/無機)、平均繊維長、繊維径および散布密度の最適化、各材料の界面での接着性や相互作用の評価、長期的な環境下(温度、湿度、紫外線など)での材料劣化メカニズムの解明、耐久性を向上させるための添加剤や表面処理技術の探索)、化学工学(粒状骨材や吸放湿性成分と合成樹脂の混合・分散プロセスの設計(攪拌条件、時間、温度など)、化粧被膜を基材に塗布する際の粘度、レオロジー特性の調整と均一な厚みと特定の凹凸形状を形成するための塗布装置(鏝、ローラー、スプレーなど)や塗布条件(塗布量、乾燥条件など)の最適化、繊維が2つ以上の凸部を跨ぐように均一に散在・固定されるための繊維の散布方法、表面張力制御、硬化メカニズムの解析)
従来の断熱材だけでは省エネルギー効果に限界がありました。
これに対して、表面層と蓄熱層が積層された構成であって、表面層が厚み方向に複数の貫通孔(大きさ1mm以上10mm以下)を有し、この貫通孔によって、表面層が居住空間側に設置された際に、外部の熱や内部の冷熱が蓄熱層と居住空間の間で効率よく移動しやすくなり省エネルギー効果を発揮できる積層体が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6545015/15/ja
関連する専門分野の例:材料科学(吸放湿量70g/m²以上を達成するための多孔質無機粒子(珪藻土、シリカゲルなど)の最適な粒径、比表面積、配合割合の検討、化粧被膜の付着強度0.5N/mm²以上を確保するための繊維の種類(有機/無機)、平均繊維長、繊維径および散布密度の最適化)、機械工学(表面層の貫通孔のサイズ、形状、配置が空気の流れ(対流)と熱の伝導に与える影響のシミュレーション、蓄熱層における相変化材料(PCM)の融解・凝固に伴う熱エネルギーの吸収・放出を最大化する設計、積層体の各層の厚みや配列や金属層の有無が定常および非定常状態での熱流束や温度分布に与える影響の解析)
具体例として蓄熱材組成物が挙げられます。
従来の潜熱蓄熱材は相変化して液体になると漏れ出す問題やカプセル化などの手法でも蓄熱材が偏在して蓄熱性能が低下する問題がありました。
これに対して、(A)脂肪酸エステルを含有する蓄熱材、(B)ポリオールとイソシアネートの反応により得られるウレタンプレポリマーを含有する結合剤、(C)含水粉粒体を含有する硬化剤という3つの成分を含有する蓄熱材組成物であって、(C)含水粉粒体に含まれる水分が(B)結合剤(ウレタンプレポリマー)と反応することで、蓄熱材がその内部に3次元架橋構造を形成し、蓄熱材が液体状態になっても外部へ漏れ出すことを抑制し、かつ液固状態変化による体積変化にも柔軟に対応できる、蓄熱性能と耐久性を両立できる蓄熱材組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-078528/11/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(結合剤として用いられるウレタンプレポリマーの合成条件、組成、分子量分布などの最適化、硬化剤である含水粉粒体との反応機構の解析、ポリウレタンマトリックスの架橋密度、機械的強度、柔軟性および蓄熱材の保持能力の制御)、有機化学(さまざまな炭素鎖長の脂肪酸とアルコールからエステル化反応により多様な脂肪酸エステルを合成して融点や潜熱量をDSC(示差走査熱量計)などによる測定を通じた最適な蓄熱材選定、蓄熱材の組成物中での長期的な安定性や繰り返し使用による劣化挙動の評価、含水粉粒体の表面に特定の官能基の化学修飾によるウレタンプレポリマーとの反応性や蓄熱材の吸着・保持能力の向上の検討)
既存の蓄熱材は高い蓄熱性能を発揮できる温度範囲が狭いという問題がありました。
これに対して炭素数14~18の直鎖状飽和炭化水素化合物と直鎖状飽和脂肪酸モノエステルを蓄熱材として含有し、さらに結合剤の配合により、従来の炭化水素化合物単体では難しかった広範な温度領域(特に0℃から37℃)において、蓄熱性能を維持しながら融点調整を実現できる蓄熱材組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-063261/11/ja
関連する専門分野の例:有機化学(脂肪酸モノエステルの合成における触媒の種類や反応条件(温度、時間、溶媒など)の検討、異なる炭素鎖長や構造を持つ脂肪酸モノエステルが炭化水素化合物との相溶性、融点、潜熱量および蓄熱温度範囲に与える影響の分析、目的の温度範囲で最適な蓄熱性能を発揮するような炭化水素化合物と脂肪酸モノエステルの組み合わせの設計・選定)、高分子化学(ポリオール化合物とイソシアネート化合物の種類や配合比率によって得られるウレタン樹脂の架橋密度や分子量、熱安定性、機械的強度の評価、蓄熱材と結合剤の相溶性を向上させるための添加剤の探索)
具体例として建築物の壁面などにおける被膜形成方法が挙げられます。
従来の鏝を用いた塗装では、立体的な凹凸模様の形成には熟練した技能が求められ、仕上がりが作業者の腕に左右されるという問題がありました。
これに対して、板厚が0.1〜1mmの可撓性を有する逆V字型先端部の鏝と、粘度が50〜2000Pa・sで水性樹脂、着色顔料、真球状中空粒子を含む水性被覆材を組み合わせることにより、鏝の先端が塗面に広範囲で接しやすくなり、真球状中空粒子が被膜の形状保持性を高めるため、比較的簡単な作業で均一かつ意匠性の高い凹凸模様を効率的に形成することが可能になる被膜形成方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2017-119266/11/ja
関連する専門分野の例:材料化学(凹凸模様の形成性、形状保持性および塗付作業性に最適な材料設計、異なるガラス転移温度を持つアクリル樹脂エマルションや異なる種類の増粘剤の組み合わせによる水性被覆材の粘度挙動が塗膜のタレや模様の保持に与える影響の評価、真球状中空粒子の種類、平均粒子径、密度および短繊維物質の種類、平均繊維長、平均繊維径が被膜の凹凸形成のしやすさや乾燥後の模様の形状安定性にどう影響するかの評価)、機械工学(塗付具(鏝)の形状と水性被覆材の塗付条件が凹凸模様の形成性、均一性、再現性および作業者の負担に与える影響の評価、最適な塗付システムの設計)
具体例として特定の寸法の凹凸を有するパターンローラーと特定の粘度の水性被覆材を組み合わせた被膜形成方法が挙げられます。
従来の塗装方法では、明確な凹凸模様が主流でしたが、近年ではより繊細でさりげない凹凸模様が求められています。しかし、従来のパターンローラーでは、このような繊細な模様の形成が困難であり、また大面積の塗装においては塗り継ぎムラが発生しやすいという問題がありました。
これに対して、凸部一つの表面積が0.5~20mm2、高さが0.5~5mm、凸部間隔が1~15mmのパターンローラーと、粘度が1~30Pa・sの水性被覆材により、塗付された被覆材が適度にレベリングされ、大面積でも塗り継ぎムラのない凹凸模様を簡便に形成できる被膜形成方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6788422/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(異なるガラス転移温度や粒子径を持つアクリル樹脂エマルションによる塗膜の硬化挙動とパターンローラーによる凹凸形成時のレベリング挙動の評価および最適な樹脂の選択、中空粒子や他の粉粒体の種類、粒度分布、表面処理の有無が、水性被覆材の粘度、塗付性および形成される凹凸模様の質感に与える影響の調査と最適な配合比率の検討、疎水性物質や各種添加剤が水性被覆材の塗付時の作業性、乾燥後の塗膜の物理的特性および塗り継ぎムラの抑制効果に与える影響の評価)、機械工学(異なる凸部形状や寸法のパターンローラーを用いた際に形成される凹凸模様の深さ、シャープネス、均一性および「さりげなさ」の程度の評価、ローラーの材質(ゴム製、プラスチック製、木製など)の違いが水性被覆材の付着性、剥離性および塗付時の圧力変動による模様への影響の評価、塗り継ぎムラを抑制するための最適な材質の選定)
(4)中国塗料|開発トレンドと専門性

Ⅽ09Dが最も多いです。次いでⅭ08F、B32B、E01Bが多いです。
具体例として防汚塗料組成物が挙げられます。
従来の防汚塗料は揮発性有機化合物(VOC)を多く含んでおり、環境や作業環境への影響が懸念されていました。また、VOC量を削減した水系防汚塗料では、塗膜が水と親和しやすいため海水浸漬時にクラックが発生しやすく、長期的な防汚性を維持することが困難でした。
これに対して、特定のシリルエステル系重合体と、ロジン系化合物、ポリビニルアルコール樹脂および水の特定の割合の組み合わせによって、シリルエステル系重合体は自己研磨性により防汚性を発揮し、ロジン系化合物がその消耗速度を調整し、ポリビニルアルコール樹脂が塗膜に適度な親水性と耐水性をもたらし、クラックの発生を抑制しつつ自己研磨性を妨げないため、長期防汚性と耐クラック性を両立できる水系防汚塗料が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7334313/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(シリルエステル系重合体のモノマー組成、重合度および末端基の種類による加水分解速度と自己研磨性のバランスの評価、ポリビニルアルコール樹脂のけん化度、平均重合度および微細構造が塗膜の耐クラック性および水への親和性・耐水性に与える影響の分析、最適なポリビニルアルコール樹脂の選定または設計、ロジン系化合物(特にロジン亜鉛塩)とシリルエステル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂との相互作用の解析)、材料工学(シリルエステル系重合体、ロジン系化合物、ポリビニルアルコール樹脂および防汚剤の分散状態や相分離構造が塗膜の加水分解挙動とクラック発生メカニズムに与える影響の解明、ポリビニルアルコール樹脂の添加量や種類が塗膜の耐クラック性にどのように影響するかの評価)
従来の防食塗料は低温下での塗装時に塗膜にしわが発生しやすく、低温造膜性と各種耐性(耐油性、耐溶剤性、耐薬品性、防食性)との両立が困難でした。特に、VOC規制に対応したハイソリッド型塗料や高性能な環状構造を有するアミン硬化剤を使用した場合にこの問題が顕著でした。
これに対して、エポキシ化合物(A)、アミン硬化剤(B)および特定のアルキルアミン(C)を含有し、アルキルアミン(C)はR-NH2(Rは炭素数8~10のアルキル基)で表される1級アミンであり、特定の分岐鎖を持つ化合物以外のもので、このアルキルアミン(C)の配合により各種耐性を維持しつつ、低温(10℃以下)での塗膜形成時にしわの発生を抑制し、低温造膜性を実現する防食塗料組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7309029/15/ja
関連する専門分野の例:有機化学(さまざまな分子構造を持つアルキルアミン(C)とエポキシ化合物やアミン硬化剤との反応速度論的解析、低温条件下での各成分の凝集状態や相分離挙動の解明、アルキルアミン(C)の導入量や分子量、分岐の有無などが塗膜の架橋密度、ガラス転移温度(Tg)、熱膨張係数に与える影響の特定)、高分子化学(低温環境下(例: 5℃以下)でのエポキシ樹脂とアミン硬化剤の反応速度をFT-IRやDSCを用いてモニタリング、アルキルアミン(C)が硬化過程におけるポリマーのネットワーク形成に与える影響の解析、架橋密度や分子量分布を制御する方法の検討)
従来のイソシアネート基含有塗料は人体や環境への負荷が懸念され、代替のポリシロキサン樹脂系塗料では、塗膜の硬度と耐屈曲性のバランス、耐候性、耐薬品性に改善の余地がありました。また、既存のイソシアネートフリー塗料では、エポキシ樹脂系下塗り塗膜や旧塗膜に対する付着性が不十分でした。
これに対して、イソシアネート基を含有しない塗料組成物であり、所定成分(以下の(1)~(3):(1)3級アミノ基含有アクリル樹脂(A)とカルボキシ基含有樹脂(B)、または3級アミノ基およびカルボキシ基含有アクリル樹脂(AB)、(2)エポキシ基含有シラン化合物(C)、(3)エポキシ基含有アクリル樹脂以外のエポキシ樹脂(ビスフェノール型エポキシ樹脂)(D))を含むことにより、イソシアネートフリーという環境配慮を実現しつつ、成分(A/AB)と(B)の組み合わせによる硬化反応と、成分(C)と(D)の併用による下塗り塗膜や旧塗膜への密着性の発現を可能にする塗料組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7253658/15/ja
関連する専門分野の例:有機化学(各モノマーの重合条件の検討、樹脂の分子量、ガラス転移温度(Tg)、アミン価、酸価が所望の範囲となるように制御、エポキシ基含有シラン化合物(C)やビスフェノール型エポキシ樹脂(D)とこれらの樹脂間の反応性を高めるための分子設計や触媒の選定の検討)、材料工学(引張試験、硬度試験、衝撃試験、促進耐候性試験(UV照射、温湿度サイクル)、塩水噴霧試験、耐溶剤性試験などによる塗膜の耐久性の評価、走査型電子顕微鏡(SEM)や原子間力顕微鏡(AFM)を用いた塗膜の表面・断面構造解析、X線光電子分光法(XPS)やフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いた界面分析、下塗り塗膜や旧塗膜との密着性向上メカニズムの解明)
具体例として光硬化性樹脂組成物が挙げられます。
従来の防曇技術では、防曇性能を高めると被膜の硬度が低下したり白化したりする問題がありました。
これに対して、光重合性不飽和基を3個以上有し、かつ光重合性不飽和基1個あたり2~10個のアルキレンオキサイド変性部位を有するアルキレンオキサイド変性化合物(A)と、重量平均分子量3,000以下のフッ素系ポリオキシエチレンエーテルである化合物(B)と、光重合開始剤(C)、そして硬化時にガラス転移温度(Tg)が300℃以上となるウレタン(メタ)アクリレート樹脂(D)を特定の比率で含む、特に疎水性を持つとされるフッ素系化合物を低分子量で導入し、親水性のアルキレンオキサイド変性化合物と組み合わせることで、高湿度下での防曇性と耐久性を両立できる光硬化性樹脂組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7092859/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(アルキレンオキサイド変性化合物(A)について光重合性不飽和基の数とアルキレンオキサイド変性部位の数や種類が最終的な硬化被膜の親水性、硬度、防曇性に与える影響の評価と最適な分子構造を設計、フッ素系ポリオキシエチレンエーテル(B)について重量平均分子量が3,000以下で防曇効果を最大限に引き出すための分子構造の設計と合成ルートの確立、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(D)について耐熱性と硬度を付与のためのポリイソシアネート、ポリオール、ヒドロキシ(メタ)アクリレートの組み合わせの選択とウレタン化反応の条件の最適化)、界面化学(硬化被膜表面における水滴の挙動解析、防曇性の発現メカニズムの解明、フッ素系化合物(B)が本来疎水性であるにもかかわらず親水性および防曇性の向上に寄与するメカニズムの考察、高湿度環境下での白化現象や硬度低下の解明およびそれらを抑制するための成分配合比や硬化条件の最適化)
具体例として水中防汚管中に水中用ケーブルを有する水中ケーブルが挙げられます。
従来の技術では、多様な水中環境、特に生物付着負荷の高い環境下での防汚性や海流、機器の移動、浮遊物との接触によるケーブル損傷への対策が不十分でした。
これに対して、柔軟性を有するシリコーンを主材とする基材層と、その最外層に設けられた防汚層から構成され、この防汚層はシリコーン硬化体(A)と滑り剤(B)を主要な成分として含有し、厚さが75~500μmであり、水生生物が付着しにくい滑らかな表面を実現し、防汚層には着色顔料(C)が含まれており、太陽光の遮断による藻類の発生抑制や物理的なダメージに対する耐性の向上が図られた多層構造と特殊な防汚層の組み合わせにより、水中環境下においてもケーブルの長期的な性能維持と保護を可能にする水中ケーブルが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7599291/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(各ポリマーの分子量、架橋密度、親水性/疎水性のバランスが防汚性能や機械的強度(引張強度、伸び、硬度)に与える影響の解析および最適な組成比と構造の特定、シリコーンとアクリル系ポリマー間の相溶性や界面挙動の検討、多層構造における層間接着力の向上策の探索)、材料工学(防汚層の厚さ、表面粗さおよび滑り剤の表面移行性が防汚効果に与える影響の評価および最適な層構造の確立、紫外線、温度変化、塩分などの環境要因が材料の劣化に与える影響の評価、水中ケーブルとしての総合的な耐ダメージ性(引張強度、切断時伸び、耐摩耗性)の向上に向けた材料の組み合わせや補強材の導入の検討)
具体例としてスラブ式軌道のセメントアスファルトモルタル層の保護方法が挙げられます。
従来のスラブ式軌道では、セメントアスファルトモルタル層が凍結融解により劣化しやすく、頻繁な補修に多くの時間と労力がかかっていました。特に寒冷地では劣化が顕著で、効率的な補修が課題でした。
これに対して、エポキシ化合物(A)、反応性アクリロニトリルブタジエン共重合体(B)およびポリアミドアミン(C)を主要成分とする樹脂組成物をスラブ式軌道のセメントアスファルトモルタル層表面に塗装することで、保護層の伸度が向上し、走行車両による応力にも耐えうる柔軟性、反応性アクリロニトリルブタジエン共重合体(B)によって可撓性が、ポリアミドアミン(C)によって硬化性と密着性が付与され、スプレー塗装による短時間での均一な膜厚形成が可能で施工効率も向上したスラブ式軌道のセメントアスファルトモルタル層の保護方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7413126/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(エポキシ化合物(A)、反応性アクリロニトリルブタジエン共重合体(B)、ポリアミドアミン(C)の最適な分子構造や官能基の選定およびそれらの配合比率の検討、ゴム成分(B)の導入による応力緩和効果のメカニズムの解明、添加剤が樹脂組成物の物性や長期耐久性に与える影響の評価)、材料工学(セメントアスファルトモルタル層の微細構造や力学特性の評価と劣化メカニズムの解析、樹脂組成物を塗布した複合材料の界面での接着メカニズムの解析)
(5)大日本塗料|開発トレンドと専門性

Ⅽ09Dが最も多いです。次いでB41M、B05D、B32B、G01Nが多いです。
具体例として金属基材に塗膜を形成するための塗料組成物が挙げられます。
従来の金属塗装では、高い耐久性や美観が求められる一方で、金属基材との付着性や厚膜化が十分ではないという問題がありました。
これに対して、特定の水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)に加えて、顔料(C)として鱗片状顔料(C1)とそれ以外の体質顔料(C2)の特定割合での配合と、特定の粘性制御剤の組み合わせで、塗料のせん断速度に応じた粘度比が10~150の範囲に調整されることにより、塗装時のタレやムラを防ぎつつ厚膜を均一に形成することが可能となり、金属基材への優れた付着性と塗膜の耐久性を両立させる塗料組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7432645/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(水酸基含有ポリエステル樹脂やアクリル樹脂の分子量、水酸基価、ガラス転移温度(Tg)が架橋反応性や塗膜の柔軟性、硬度に与える影響の解析、架橋剤の種類や配合比率が硬化速度、架橋密度および最終的な塗膜の耐溶剤性や耐擦傷性に及ぼす影響の評価)、物理化学(顔料(鱗片状顔料(C1)と体質顔料(C2))の表面特性(表面エネルギー、表面電荷)や粒子形状、粒子径分布が塗料中での分散安定性、沈降性および塗膜形成時の配向性に与える影響の解析、粘性制御剤が塗料の粘度やチクソトロピー性に与える影響の解明)
従来の素地調整剤では、錆を除去する物理的処理に伴う粉塵や騒音の問題、または既存の塗布型調整剤では低温での乾燥性不足やエアゾール化時の保存安定性の問題がありました。
これに対して、特定の重量平均分子量(5000~20000)とエポキシ当量(500~900g/eq)を持つエポキシ樹脂(a)を主剤とし、23℃におけるフォードカップNo.4の粘度(塗料が特定のカップの穴から流れ出る時間)が10~27秒に調整され、主剤または硬化剤の少なくとも一方に腐食性イオン固定化剤(c)と脂肪族炭化水素を含む溶剤(d)が配合され、錆層中の腐食性イオンを不活性化し、長期的な防食性を付与し、硬化剤に併用されるケチミンとフェナルカミンが低温下での硬化性を向上させて作業環境の制約を低減することにより、錆を完全に除去することなく、簡便に防食処理ができる2液型素地調整剤が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7355908/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(エポキシ樹脂の重量平均分子量やエポキシ当量を精密に制御するための重合条件(温度、時間、触媒の種類と量など)の最適化、樹脂の分子構造が最終的な塗膜の性能(耐溶剤性、低温硬化性、錆層への浸透性)にどのように影響するかの解明、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)や核磁気共鳴(NMR)などの分析手法を用いた構造解析および分子設計へのフィードバック)、材料工学(素地調整剤が錆層にどれだけ浸透しているかや腐食性イオン固定化剤がどのようにイオンを捕捉・固定化しているかの観察・分析、塗膜の硬度、密着性、耐候性、耐薬品性などの機械的・化学的特性の評価、屋外暴露試験や促進劣化試験を通じて長期的な防食性能の検証)
従来の技術では、建材の意匠層を保護するための表面保護層において、水性塗料を用いるとインクの再溶解や層間剥離が生じ、溶剤系塗料を使わざるを得ないという問題がありました。また、活性エネルギー線硬化型インクを用いた意匠層は紫外線に弱く、最表層に光触媒層が存在するとラジカルによって塗膜が劣化しやすいため、長期的な耐候性を確保することが課題でした。
これに対して、水分散性樹脂を主成分とし、塗料組成物中に分散または溶解している紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤(A成分)と、水分散性樹脂の骨格に共重合された紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤(B成分)の両方を含有し、これらはそれぞれ紫外線吸収剤とラジカル捕捉剤の少なくとも一方を担うことで、紫外線やラジカルによる劣化を防ぎ、さらに、水分散性樹脂自体に架橋形成成分の導入、または塗料組成物に別途配合により、強固な塗膜構造を形成し、保護成分の流出を抑制し、また、SP値9.4以下の単量体や環状脂肪族系単量体が水分散性樹脂の構成要素であることで耐水性を高め、異なるガラス転移温度(Tg)の単量体を組み合わせることで、塗膜に柔軟性と剛性を両立させ、活性エネルギー線硬化層を含む意匠層や光触媒層が最表層に存在する場合でもその意匠を長期保護する耐候性を実現する塗装体が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7330324/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(水分散性樹脂のモノマー組成の分散安定性、耐水性、柔軟性、剛性のバランスの評価、紫外線吸収剤やラジカル捕捉剤を樹脂骨格へ共重合させるための反応条件(温度、触媒、開始剤の種類と量)の検討および導入効率と樹脂物性への影響の評価、架橋形成成分の種類と量の最適化、架橋密度と塗膜の耐久性(例:耐擦傷性、耐薬品性)の関係の解析)、材料科学(塗膜の光沢保持率、色差、ひび割れの有無の評価、塗膜のマルテンス硬度や動的粘弾性測定による塗膜の機械的特性の評価および意匠層への追従性や外部応力に対する耐性の検証)
具体例として厚盛りのクリア層を持つ印刷物の製造方法が挙げられます。
従来の活性エネルギー線硬化型インクを用いた印刷物では、インク層の臭気やべたつきを解消し、付着性を改善するために加熱処理が施されますが、特に厚く盛り上げたクリア層に割れや剥がれが生じるという問題がありました。
これに対して、活性エネルギー線硬化型クリアインクの重合性化合物の平均官能基数を1.05~1.60の範囲に調整したインクを用いて、クリア層(クリア層内の最小厚さが10μm以上、最大厚さが400μm以下、かつ最小厚さと最大厚さの差が30μm以上であるクリア層)を形成し、活性エネルギー線を照射して硬化させた後、印刷物を加熱することで、意匠性の高い厚盛りの印刷物でも長期間にわたり品質を維持できる印刷物の製造方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7600052/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(さまざまな官能基数を持つモノマーやオリゴマーの重合挙動や架橋密度の評価、脂環構造を持つ多官能重合性化合物や窒素含有重合性化合物の導入が塗膜の内部応力緩和や付着性、耐熱黄変性に及ぼすメカニズムの解明、加熱処理による高分子鎖の再配列や架橋反応の進行度をDSC(示差走査熱量測定)やFT-IR(フーリエ変換赤外分光法)などの分析手法を用いて評価)、材料科学(基材の表面エネルギーとインクの表面張力の関係の分析、濡れ性および付着性を最大化するための表面処理(プライマー層の導入、表面改質など)の検討、硬化したクリア層についてクラックの発生メカニズムの解明、動的粘弾性測定(DMA)やナノインデンテーションなどの手法による加熱処理前後のクリア層の貯蔵弾性率、損失弾性率、硬度変化の測定、耐割れ性と硬度を両立させるためのクリア層の微細構造と材料構成の設計)
具体例として構造物の塗装方法が挙げられます。
従来の有機溶剤系塗料は、塗装作業性や乾燥性に優れる一方で、有機溶剤による強い臭気が問題となっていました。また、一般的な低臭気型塗料は乾燥が速すぎるために夏季の高温下でのローラー塗装時に艶ムラなどの塗装不良が発生し、作業性が著しく低下するという問題がありました。
これに対して、特定の蒸気圧を有する有機溶剤と、該有機溶剤に分散または溶解可能な樹脂を組み合わせた非水系常温乾燥型塗料組成物を使用する塗装方法であって、具体的には、有機溶剤(A)として20℃における蒸気圧が10~120 Paである有機溶剤(A1)を90質量%以上含有させ、さらに塗料組成物中の水分量を1.0質量%未満にすることで、低臭気を実現しつつ、多様な環境下での乾燥性と塗装作業性を向上させる構造物の塗装方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7026009/15/ja
関連する専門分野の例:有機化学(有機溶剤(A1)の分子構造と蒸気圧の関係の予測および最適な溶剤の選定、樹脂(B)の種類と有機溶剤(A1)との溶解度パラメータの測定および最適な組み合わせの特定、塗膜硬化反応における官能基の反応効率や副反応生成物をGC-MSやLC-MSにより評価)、材料科学(走査型電子顕微鏡(SEM)や原子間力顕微鏡(AFM)により乾燥過程における塗膜表面の微細構造や欠陥(クレーター、ピンホールなど)の形成メカニズムの解明、塗膜の機械的強度(引張強度、硬度、密着性など)の測定、蒸気圧が異なる溶剤を使用した際の物性変化を比較評価、紫外線吸収剤や光安定化剤などの添加剤が塗膜の長期的な安定性に与える影響の評価)
具体例として活性エネルギー線硬化型インクによる印刷物が挙げられます。
従来の活性エネルギー線硬化型インクは硬化時の体積収縮と速乾性による内部応力から金属やガラスなどの非吸収性基材への付着性が課題でした。また、印刷されていない下塗塗膜層は柔らかく傷つきやすいという問題がありました。
これに対して、耐熱性の基材表面に、イミノ基タイプのアミノ樹脂と、自己架橋型アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂およびポリエステルポリオール樹脂よりなる群から選ばれる1種類以上の塗膜形成樹脂を組み合わせた下塗塗膜層を形成し、その上に活性エネルギー線硬化型インクから形成される印刷層を設けることで、付着性、耐汚染性および耐傷付き性を両立させた印刷物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6967624/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(異なる構造を持つイミノ基タイプのアミノ樹脂の架橋密度および塗膜物性への影響の評価、自己架橋型アクリル樹脂の自己架橋性官能基の種類や含有率の変化が塗膜の硬度や耐傷付き性にどのように影響を与えるかの評価、アクリルポリオール樹脂およびポリエステルポリオール樹脂の水酸基価がアミノ樹脂との架橋反応性および塗膜の柔軟性や付着性に与える影響の解析)、材料工学(下塗塗膜層の表面エネルギーや表面粗さが活性エネルギー線硬化型インクの濡れ性、浸透性および最終的な密着強度に与える影響の評価、下塗塗膜層と印刷層間の残留応力の測定と熱履歴や硬化条件が応力発生に及ぼす影響の解析、割れや剥がれの発生を抑制する材料組み合わせとプロセス条件の確立)
具体例として塗膜診断装置が挙げられます。
橋梁やプラントの塗膜の定期診断に用いられる従来の塗膜診断装置は定電流を流すために多くの抵抗やリレー回路を必要とし、装置構成が複雑で大型化するという問題がありました。
これに対して、塗膜が形成された素地に配置する第1電極と、塗膜表面に配置する第2電極を備え、第2電極に流れる電流を対数変換する電流ログアンプが出力をデジタル変換して測定データとし、この測定データに基づいて第1電極へ印加する電気信号を定電流になるよう制御することにより、従来の複雑なレンジ切り替え回路が不要となり、装置の構成を簡易化、小型化、軽量化した塗膜診断装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7202827/15/ja
関連する専門分野の例:電子工学(D/A変換回路、電流ログアンプ、およびA/D変換回路の特性評価を行い、ノイズ耐性、直線性、ダイナミックレンジなどを改善するための回路定数の最適化や部品選定、D/A変換回路、電流ログアンプおよびA/D変換回路の特性評価、ノイズ耐性、直線性、ダイナミックレンジなどを改善するための回路定数の最適化や部品選定、装置全体の消費電力を低減するための低消費電力回路設計やバッテリ駆動時間を最大化するための電源管理システムの設計)、計測工学(塗膜の健全性や腐食状態を定量的に評価するための測定パラメータとそれらの経時変化の評価方法の確立、異なる種類の塗膜や素地、劣化状態における電流-電圧特性の測定、診断用情報となる測定データと実際の塗膜状態との相関関係の解析や診断アルゴリズム設計)
(6)まとめ
各種機能(磁気性、光輝性、蓄熱性、防汚性など)を有する塗料に関する出願が多く確認されました。
これらは化学系、材料系の専門性が求められるものが多いです。
3.6 共同出願人との開発例
共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。
技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。
各社の共同出願人(筆頭出願人)は以下のとおりです。
(1)日本ペイント

共同出願の例として金属構造物の塗装前処理に用いる化成処理方法が挙げられます。
従来の金属構造物、特に高張力鋼板など多種多様な素材への塗装前処理はリン酸亜鉛処理では皮膜析出のばらつきや密着性・耐食性の確保が困難でした。また、先行技術のジルコニウム系処理剤も特定の高張力鋼板への適用が十分に検討されていませんでした。
これに対し、金属構造物を特定の組成の化成処理剤で処理し、化成皮膜を形成する方法であって、化成処理剤はジルコニウム、フッ素、アミノ基含有アルコキシシランに加え、特定の範囲で水酸基含有アルコキシシランを含有させ、さらにジルコニウムとフッ素のモル比および化成処理剤のpHが所定範囲にあることにより、各種金属構造物表面上に素地隠蔽性、塗膜密着性および耐食性を持つ均一な化成皮膜を形成できるようになり、素材の多様化やホットスタンプ後のアルミニウムめっき鋼板といった処理が難しい金属構造物に対しても塗装品質を確保できる化成処理方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-4473185/15/ja
(2)関西ペイント

共同出願の例としてリチウムイオン二次電池用非水系電解液が挙げられます。
既存技術であるSi系負極材料は高容量化に寄与するものの充放電時の体積変化が大きく、負極の劣化や電解液の消耗を引き起こし電池寿命が低下するという問題がありました。
これに対し、重量平均分子量1,000以上の高分子量有機化合物を含有する非水系電解液であり、高分子量有機化合物はアミノ基、スルホン酸基、カルボキシル基などの極性官能基を0.1mmol/g以上有し、かつ重合性不飽和モノマーが共重合された共重合体化合物であることにより、高分子量有機化合物がSi系負極活物質の表面に吸着し、充放電時の体積変化による負極の割れや電解液の劣化を抑制し、電池の容量維持率を向上させたリチウムイオン二次電池用非水系電解液が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7678675/15/ja
従来のクロメート処理は環境負荷が高く、代替技術としてロールコート法が用いられてきましたが、設備投資が大きいという問題がありました。一方、簡易なスプレー塗布法では、皮膜形成時の発泡やSi系負極材料のような体積変化の大きい材料では十分な耐食性が得られない問題がありました。
これに対し、チタン含有水性液(A)、ニッケル化合物(B)、ジルコン弗化アンモニウム、ジルコン弗化水素酸、ジルコン弗化ナトリウム、ジルコン弗化カリウムの中から選ばれる1種または2種以上の弗素含有化合物(C)、有機リン酸化合物(D)、バナジン酸化合物(E)、炭素数4~6のエーテル系有機溶剤(F)の特定組成比での組み合わせ(ただし、樹脂成分と炭酸ジルコニウム化合物を含まない)により、スプレー塗布時でも泡の発生を抑制し、耐食性が得られるスプレー塗布用表面処理組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6092591/15/ja
(3)エスケー化研

件数が少ないので詳細の説明は省略します。
(4)中国塗料

件数が少ないので詳細の説明は省略します。
(5)大日本塗料

共同出願の例として銀粒子の製造方法が挙げられます。
従来のプレート状銀ナノ粒子の製造方法では、複数段階の複雑な工程や特定の波長の光照射に高価な設備が必要でした。また、高分子量の分散剤を用いるため、得られた銀粒子の表面改質が困難という問題がありました。
これに対し、水溶液中で銀塩、銅塩、低分子系分散剤および還元剤を特定のモル比で混合し、その後20~40℃の比較的低温で静置還元反応させることで、主にプレート状の銀粒子を一段階で製造、特に、銅塩の添加量によってプレート状銀粒子のサイズを制御できるため、可視光から近赤外光までの広範な波長でプラズモン吸収を示す、光学フィルターや導電材料など多様な用途に応用可能な銀粒子の製造方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-5059317/15/ja
ただし、共同出願が確認されたのは2011年までです。
(6)上記(1)~(5)(共同出願人)のまとめ
自動車メーカーなどの塗料の使用者などとの共同出願が多く確認されます。
4 開発に求められる専門性
上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。
上記各特許情報には以下の人材が関わっていると言えます。
・化学、材料系分野(高分子化学、化学工学、物理化学、材料化学、界面化学、材料科学、有機化学など)
化学組成や分子構造が塗料の性能に与える影響の評価や問題の特定、縮重合反応などの条件の最適化、顔料の分散性の評価や最適化、所望の性能を得るための分子設計と合成などが求められます。
・物理系分野(応用物理学など)
光散乱、光吸収、降伏応力、粘土などの物理的特性に関する評価、条件の最適化などが求められます。
・機械系、電気系分野(機械工学、電子工学、計測工学など)
所望の効果を実現するための構造設計や回路設計、アルゴリズム設計などが求められます。
・情報系分野(情報科学など)
所望の情報処理をおこなうための情報収集、分析、学習モデルの構築などが求められます。
ただし、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。
5 まとめ
全体としては塗料に関する出願が多く、当該分野の開発が多くおこなわれていることが推測されます。
化学系、材料系に深く関連する出願が多く確認れました。
大学の専攻と関連づけるとしたら、主に化学、材料における研究分野が該当する可能性があります。その他には物理、機械、電気、情報に関する研究分野も該当する可能性があります。
本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。
参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4
以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年版 東洋経済新報社
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