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【飲料・乳業業界】開発職に求められる専門性とは?飲料メーカー8社の特許で読み解く技術分野

 先の記事で酒類業界の技術開発と関連する専門性について紹介しました。

先の記事【酒類業界】開発職に求められる専門性とは?大手4社の特許で読み解く技術分野

 

 これに近い業界として非アルコール飲料の製造・販売が挙げられます。

 商品としては私たち消費者にとって馴染みがありますが、やはり、この分野においてもどのような開発がおこなわれどのような専門性が求められるのかまでは外部から知ることができません。

 これを特許情報からみていきます。

 特許情報は企業の開発情報だと言えます。

 実際にどのような開発がおこなわれたのか特許情報に記載されています。

 今回は、飲料メーカー8社の特許情報からどのような開発がおこなれてきたのか、また、開発にどのような専門性が求められるのか読み解きました。

 

 結論(概要)は以下の通りです。

飲料・乳業業界の開発に求められる専門性
食品系分野(食品科学、食品工学、栄養学など)
化学、生物系分野(分析化学、物理化学、高分子化学、界面化学、材料化学、生物学、微生物学、化学工学、農学など)
機械、電気、情報、材料系分野(機械工学、電気電子工学、情報工学、材料工学など)
その他分野(医学、薬学など)
 ただし、上記専門は企業の一部の特許情報に基づくものであり、全てをあらわすものではありません。また、求められる専門は特許の解釈によって変わってきますので、個々の特許情報をご確認ください。

 

 

1 業界サーチの概要

 特許情報は企業の開発情報だと言えます。

 業界サーチは、業界における主要企業の特許情報から、その業界の企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。

 特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。

 すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。

 

2 飲料・乳業業界

2.1 飲料・乳業業界とは

 ここでは、清涼飲料や乳・乳製品、これらに関連する商品を製造し、販売する業界を意図します。

 

2.2 サーチ対象

 以下の飲料メーカー8社を対象にしました。

(1)コカ・コーラ
(2)サントリー食品インターナショナル(サントリー食品)
(3)アサヒ飲料
(4)伊藤園
(5)キリンビバレッジ
(6)雪印メグミルク
(7)森永乳業
(8)ヤクルト本社(ヤクルト)

 以下、括弧内の略称で記載します。
 コカ・コーラは日本コカ・コーラ株式会社とザ  コカ・コーラ  カンパニーの出願情報を用いています。

 

2.3 使用プラットフォーム

 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat

 

3 サーチ結果

3.1 結果概要

開発イメージは下表のとおりです。 

 

 

モノの開発

サービスの開発

個人向け

炭酸飲料
緑茶飲料
果実香味飲料
コーヒー飲料
豆乳飲料
発酵乳
など

 

法人向け

自動販売機
飲料ディスペンサ
など

化粧料の評価方法
碾茶の製造方法
など

 

 モノの開発としては、例えば、炭酸飲料が挙げられます。

 サービスの開発としては、例えば、化粧料の評価方法などが挙げられます。 

 

3.2 出願件数の推移

 下図は飲料・乳業8社の特許出願件数の推移です。

 

 出願数は各社とも年によって大きく変動しています。

 件数は多くても年100件以下であり、他の製造業(機械メーカー、電機メーカー、化学メーカー)に比べると少なく、開発成果について出願されない場合もある可能性があります。

 ただし、上図期間中、まったく出願していない企業はなく、出願につながるような開発は日頃からおこなわれていることが推測されます。 

 

3.3 開発の活発度

 特許出願件数≒開発の活発度、だと考えるなら、

 森永乳業>コカ・コーラ、アサヒ飲料、伊藤園、雪印メグミルク、ヤクルト>キリンビバレッジ、サントリー食品

であると言えます。

 コカ・コーラ、アサヒ飲料、伊藤園、雪印メグミルク、ヤクルトの出願件数は同程度です。キリンビバレッジとサントリー食品の出願件数も同程度です。

 

3.4 主な開発分野

 各社ごとに特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。

 各社の出願上位3つの技術分野を抽出して並べています(特許出願されていても、その企業の出願件数上位に入っていない技術分野は除外されています)。

 各記号は発明の技術分類をあらわします。

 

 分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)

 A23C乳製品などに関連する分類です。
 乳調整品などがこれに該当します。
 雪印メグミルク、森永乳業がこの分野から多く出願しています。

 

 A23Fコーヒー、茶などに関連する分類です。
 生葉の処理などがこれに該当します。
 サントリー、アサヒ飲料、伊藤園、キリンビバレッジがこの分野から多く出願しています。
 
 A23L所定の食品、食料品、非アルコール飲料、その調製または処理に関連する分類です。
 食品の栄養改善などがこれに該当します。
 全8社この分野から多く出願しています。

 

 A61K医療用製剤などに関連する分類です。
 有機活性成分を含有する医療用製剤などがこれに該当します。
 伊藤園、雪印メグミルク、森永乳業、ヤクルトがこの分野から多く出願しています。
 
 B65D物品または材料の貯蔵または輸送用の容器、包装要素、包装体に関連する分類です。
 紙パックなどがこれに該当します。
 コカ・コーラ、サントリー食品、アサヒ飲料、キリンビバレッジがこの分野から多く出願しています。

 

 B67D所定の液体の分与などに関連する分類です。
 飲料のディスペンサーなどがこれに該当します。
 コカ・コーラがこの分野から多く出願しています。
 
 C12N微生物または酵素などに関連する分類です。
 微生物の培養などがこれに該当します。
 ヤクルトがこの分野から多く出願しています。

 

3.5 飲料・乳業8社の近年の開発トレンドと求められる専門の例

 特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。

 ここ10年のトレンドは以下のとおりです。

 発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。

 出願件数が少ない技術分野は除外しています。

 発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。

 関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。

 

 個別の情報を詳しく確認したい場合は、それぞれのリンク先に飛んでください。

 特許は難解ですが、GeminiChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。

参考記事 【AI活用】難解な特許が小学生レベルの内容に!1分で特許を読み解く方法

 

(1)コカ・コーラ|開発トレンドと専門性

 

 上図期間中、A23Lが最も多いです。次いでG07F、B65D、B67Dが多いです。

 A23Lは既述のとおり、所定の食品、食料品、非アルコール飲料、その調製または処理に関連する分類です。
 具体例として容器詰めゼリー入り炭酸飲料の製造方法が挙げられます。
 従来技術ではゼリー生成のために中性域でのpH調整が必要であり、また均一なサイズのゲル片を得ることが困難でした。
 これに対し、カチオン反応性ゲル化剤(ペクチン、カラギーナン、アルギン酸など)を含むA液(難溶性カルシウム塩を実質的に含まず、25℃で測定した粘度が5.0~150mPa・s)とカチオンを含むB液(5.0~50mPa・s)を別々に殺菌処理し、容器内でA液とB液を混合し、炭酸ガスを抱き込みながらゲル化反応を進行させることで、液体部とゼリー部が分離した二層構造の炭酸飲料が得られる容器詰めゼリー入り炭酸飲料の製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7577095/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(ゲル化剤の種類、濃度、カチオンの種類、濃度、pH、粘度などがゼリーの物性に及ぼす影響を分析、原材料の選定と配合の決定)、化学工学(A液とB液の混合などの製造プロセスの設計)

 

 G07Fは所定の化合物に関連する分類です。
 具体例として商品のサイズに応じて自動で仕切りを調整できる自動販売機が挙げられます。
 従来技術では商品サイズが変わるたびに手動で仕切り板を付け替える必要がありました。
 これに対して、複数の棚構成部材が商品の重みで傾斜し、その傾斜した棚構成部材が商品収容レーンを形成し、傾斜していない棚構成部材が仕切りとなることで自動的に商品サイズに合わせたレーンと仕切りが実現され、手動での仕切り板調整が不要となり多様なサイズの商品を収納できる自動販売機が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7252848/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(商品の重量、形状、材質などを考慮した棚構成部材の可動機構や商品搬出装置の設計)、情報工学(自動販売機を制御するためのソフトウェア設計、自動販売機とサーバー間の通信、遠隔監視、データ収集などのためのネットワーク構築)

 

 B65Dは既述のとおり、物品または材料の貯蔵または輸送用の容器、包装要素、包装体に関連する分類です。
 具体例として口部をキャップで閉栓する容器が挙げられます。
 従来のキャップは閉栓のみに用いられ使用後は廃棄されていました。
 これに対して、キャップ天部の上面にスタンプ用凸部が設けられ、キャップの成形収縮による窪みと閉栓時のドーミング現象によってスタンプ用凸部が最適な位置に配置されることで、インクを付着させてスタンプとして安定的に利用可能な容器が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7299961/15/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(樹脂材料の成形収縮、変形挙動、インク付着性の評価、最適な材料、成形条件、表面加工技術の選定)、機械工学(スタンプの転写精度、耐久性、使いやすさの評価、凸部形状の設計)

 

 B67Dは既述のとおり、所定の液体の分与などに関連する分類です。
 具体例として複数のシロップを組み合わせて多様な飲料を提供する飲料供給装置が挙げられます。
 従来の装置ではシロップの種類が限定され味のバリエーションが少ないという問題がありました。
 これに対して、メインシロップとトッピングシロップを組み合わせ、その割合に応じて希釈比率を調整、特に、トッピングシロップを非希釈で間欠的に添加することで、味のバランスがとれた多様な味の飲料提供を可能にする飲料供給装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6903789/15/ja

  関連する専門分野の例:情報工学(飲料の組み合わせ、希釈比率、供給制御に関するデータ処理、システム構築、飲料の組み合わせに応じた希釈比率を算出するアルゴリズム設計)、化学工学(シロップの粘度、糖度、風味などを考慮した混合比率、温度、圧力の検討)

 

(2)サントリー食品|開発トレンドと専門性
 
 A23Fが最も多いです。次いでA23L、B67Dが多いです。
 A23Fは既述のとおり、コーヒー、茶などに関連する分類です。
 具体例として緑茶飲料が挙げられます。
 従来の低カテキン茶飲料は旨味やコクが不足し加熱臭が強く味のバランスが悪いという問題がありました。
 これに対して、バリンの特定量配合によりコクと旨味を増強し、メチオニンの低減によりバリンの効果を高め、リン酸の添加により香りを高め、リナロールやフェニルアセトアルデヒドの調整により加熱処理後の香りが改善された緑茶飲料が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6178827/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(さまざまな茶葉の成分分析、最適な原料の選定、バリン、メチオニン、リン酸などの添加量が飲料の味、香りに与える影響の調査)、農学(茶樹の品種、栽培方法が茶葉の成分に与える影響の調査、茶葉の摘採時期、加工方法が飲料の味、香りに与える影響の調査)

 

 A23Lは既述のとおり、所定の食品、食料品、非アルコール飲料、その調製または処理に関連する分類です。
 具体例として飲料が挙げられます。
 従来の低カロリー飲料では天然甘味料としてステビア抽出物が用いられてきましたが、ステビア抽出物に含まれる甘味成分であるレバウディオサイドA(RebA)を配合すると泡立ちが激しくなるという問題がありました。
 これに対して、RebAの含有量を減らし、レバウディオサイドM(RebM)などの含有量を特定の割合で増やすことで、泡立ちを抑制しつつ十分な甘味が付与された飲料が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6109353/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(RebA、RebMなどの配合割合が飲料の泡立ち、甘味に与える影響の評価、さまざまな飲料への適用可能性の評価)、化学工学(ステビア抽出物からRebMなどの効率的な分離、精製の検討、RebMなどを均一に配合する製造プロセスの設計)

 

 B67Dは既述のとおり、所定の液体の分与などに関連する分類です。
 具体例として飲料水ディスペンサが挙げられます。
 従来のディスペンサでは冷水タンクの殺菌は可能でしたが、周辺部品の殺菌には分解洗浄が必要でした。また、樹脂製部品の使用による臭い移りの問題もありました。
 これに対して、冷水タンクの蓋部、中空ニードル、取付部材、供給パイプなどが金属製にされることで温水殺菌時に高温になって分解洗浄が不要になり、樹脂製部品が減らされることで臭い移りを抑制し、飲料水の風味が維持される飲料水ディスペンサが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2015-040078/11/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(温水殺菌時の温度分布、熱伝導の分析、金属部品の形状、配置の設計)、材料工学(飲料水の成分、温度、使用環境などを考慮した金属材料の選定、飲料水への金属イオンの溶出、樹脂からの臭い移りなどの評価)

 

(3)アサヒ飲料|開発トレンドと専門性

 

 A23Lが最も多いです。次いでA23F、B65Dが多いです。 

 A23Lは既述のとおり、所定の食品、食料品、非アルコール飲料、その調製または処理に関連する分類です。
 具体例として酢酸を含む炭酸飲料が挙げられます。
 従来の酢酸含有飲料は酢酸の刺激が強く感じられ飲みにくいという問題がありました。
 これに対して、6-ショウガオールが1~1500ppbの範囲で配合されることで、酢酸の刺激を抑制しつつ飲料本来のおいしさを損なわない炭酸飲料が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7246455/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(酢酸と6-ショウガオールの配合比率が飲料刺激、おいしさ)与える影響の評価、炭酸ガスの溶解度、pH、糖酸比などの飲料特性が酢酸の刺激に与える影響の評価)、分析化学(飲料中の酢酸、6-ショウガオールを正確に定量する分析方法の確立、6-ショウガオールのマスキング効果(酢酸の刺激抑制効果)の解明)

 

 別の例として果実香味飲料が挙げられます。しょ
 従来の果実香味飲料は糖類の甘味によって果実感を出していましたが、低糖・無糖飲料では果実感を得にくいという問題がありました。
 これに対して、フィチン酸が特定の割合(0.005g/100ml以上、0.1g/100ml以下)で配合されることで果実感を向上させた果実香味飲料が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7209123/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(フィチン酸の配合量が果実香味飲料の果実感に与える影響の評価、さまざまな果実フレーバーを用いた場合の果実感向上効果の検証)、分析化学(飲料中のフィチン酸含有量を正確に測定する分析方法の確立、フィチン酸による果実感向上メカニズムの解明)

 

 A23Fは既述のとおり、コーヒー、茶などに関連する分類です。
 具体例としてコーヒー飲料が挙げられます。
 従来のコーヒー飲料は苦味や香りを強化する試みはあったものの、これらの香気成分の組み合わせと配合バランスに着目したものはなく、苦味と爽やかさの両立という新たな香味を提供できていませんでした。
 これに対して、グアイアコール、4-エチルグアイアコール、リナロール、3-メチル-1-ブタノール、エチルアセテートという5つの香気成分が特定の割合で配合されることで、苦みの強さと爽やかさという相反する特性を両立させたコーヒー飲料が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7525308/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(香気成分の配合比率がコーヒー飲料の苦味と爽やかさに与える影響の評価、さまざまなコーヒー豆、焙煎度合いでの効果検証、最適な香気成分の組み合わせと配合比率の決定)、分析化学(飲料中の香気成分を正確に定量する分析方法の確立、香気成分の相互作用の解明)

 

 B65Dは既述のとおり、物品または材料の貯蔵または輸送用の容器、包装要素、包装体に関連する分類です。
 具体例としてプラスチックボトルが挙げられます。
 従来のプラスチックボトルでは肩部のデザイン性と強度を両立することが困難でした。
 これに対して、肩部を特定の角度で傾斜させた2つの傾斜部と全周にわたる肩溝の構成、具体的には、肩部の断面形状が2つの異なる傾斜部で構成され、一方の傾斜角度が小さくなることで美粧性を向上させるとともに全周に肩溝が設けられることで強度を補強し、肩溝を波形にすることで、更なる強度向上とデザイン性を両立させたプラスチックボトルが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7364766/15/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(肩部の傾斜角度、肩溝の形状がプラスチックボトルの強度に与える影響の評価、さまざまなプラスチック材料を用いた場合の強度、成形性、コストの評価)、機械工学(ボトルの軽量化、薄肉化などの構造設計、ボトルの落下強度、耐圧強度などの機械的特性の評価)

 

(4)伊藤園|開発トレンドと専門性

 

 A23Lが最も多いです。次いでA23Fが多いです。

 A23Lは既述のとおり、所定の食品、食料品、非アルコール飲料、その調製または処理に関連する分類です。
 具体例として熱中症対策としてナトリウムを高含有する無糖・無甘味・無果汁の炭酸飲料が挙げられます。
 従来の熱中症対策飲料は糖分が多く含まれるものやナトリウム由来の塩味が強く飲みにくいという問題がありました。
 これに対して、ナトリウムとカリウムの合計含有量とカルシウムとマグネシウムの合計含有量の比率が特定の範囲に調整されることで、常温でも美味しく飲める炭酸飲料が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7569831/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの配合比率が飲料の呈味に与える影響の評価、炭酸ガス圧、pH、温度などの条件が呈味に与える影響の評価)、分析化学(飲料中のミネラル成分を正確に定量する分析方法の確立、ミネラル成分の相互作用の解明)

 

 別の例として豆乳飲料が挙げられます。
 従来の豆乳は高カロリー、高脂質、高糖質であり、独特の粘り気や青臭さから飲みにくいという問題がありました。
 これに対して、粉末脱脂大豆が0.8~3.0質量%、全固形分が4.0~7.0%、pHが7.0~8.4の範囲に調整されて均質化処理されることで低カロリーで有用成分を保持した飲みやすい豆乳飲料が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7256215/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(粉末脱脂大豆の配合量、均質化条件が豆乳飲料の物性、風味、安定性に与える影響の評価、さまざまな大豆品種、加工方法を用いた場合の豆乳飲料の品質評価)、栄養学(豆乳飲料の栄養成分の分析、豆乳飲料の摂取が健康に与える影響の評価)

 

 A23Fは既述のとおり、コーヒー、茶などに関連する分類です。
 具体例として碾茶の製造方法が挙げられます。
 既存技術では蒸熱殺青や熱風殺青などがおこなわれてきましたが、硬葉臭や生菌数、色沢、保管後の品質維持において課題がありました。
 これに対して、過熱加湿気体接触処理、加圧処理、加熱乾燥処理などの工程を組み合わせ、茶葉の水分含有量とクロロフィル含有量を特定の範囲に調整することで硬葉臭の抑制、生菌抑制、色沢の向上、保管後の品質維持を可能にする碾茶の製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7485516/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(過熱加湿気体接触処理、加圧処理、加熱乾燥処理の各工程における茶葉の成分変化、物性変化の確認、茶葉の水分含有量、クロロフィル含有量、繊維含有量などが碾茶の品質に与える影響の評価)、食品工学(碾茶の製造工程における温度、湿度、時間などの加工条件の検討、碾茶の製造工程における最適な装置、設備を選定、設計)

 

(5)キリンビバレッジ|開発トレンドと専門性

 

 A23Lが最も多いです。次いでA23Fが多いです。 

 A23Lは既述のとおり、所定の食品、食料品、非アルコール飲料、その調製または処理に関連する分類です。
 具体例として加温販売用容器詰飲料が挙げられます。
 従来の技術ではセルロース系安定剤を使用すると飲料の液高によっては加温時の温度ムラが大きくなる問題がありました。
 これに対して、セルロース系安定剤と増粘多糖類(特にキサンタンガム)の併用による飲料の粘度調整により、具体的には、粘度が4.0mPa・s以上、不溶性固形分濃度が3.75g/100mL以下にされることで、沈殿や液層分離を防ぎつつ温度ムラを抑制する加温販売用容器詰飲料が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7403580/15/ja

  関連する専門分野の例:食品工学(最適な製造装置、設備の選定、設計、温度、湿度、時間などの加工条件の最適化)、応用化学(セルロース系安定剤と増粘多糖類の最適な組み合わせ、配合比率の検討、飲料中での成分の安定性評価、成分間の相互作用の解析)

 

 別の例としてヘスペリジンを高濃度で含む容器詰飲料が挙げられます。
 従来の技術では、ヘスペリジン特有の異臭味を抑えるためにさまざまな方法が提案されていましたが、高濃度ヘスペリジン飲料での異臭味発生原因は不明であり効果的な抑制方法が求められていました。
 これに対して、特定の酸化防止剤(ミリシトリン、トコフェロール、水溶性ルチン)を特定の濃度範囲で飲料に加えられることで、ヘスペリジン高濃度飲料でも時間の経過による品質劣化を防ぎ、美味しく飲むことができる容器詰飲料が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7361476/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(ヘスペリジンと酸化防止剤の相互作用、異臭味発生メカニズムの解明、最適な酸化防止剤の選定、配合比率の決定)、応用化学(酸化防止剤の化学的安定性、反応性の評価、飲料中の成分分析、異臭味成分の特定)

 

 A23Fは既述のとおり、コーヒー、茶などに関連する分類です。
 具体例として容器詰紅茶飲料が挙げられます。
 従来の容器詰紅茶飲料では加熱殺菌によりムレ臭やスパイシー臭、スモーキー臭といったオフフレーバーが発生し、長期保存や加温販売時に品質が低下する問題がありました。
 これに対して、特定の脂肪酸分解物((E)-2-ヘプテナール、(E,E)-2,4-ヘプタジエナール、オクタノール)が特定の濃度範囲で飲料に加えられることで、これらのオフフレーバーを抑制し、容器詰紅茶飲料の長期保存や加温販売を可能にする容器詰紅茶飲料が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7465081/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(紅茶飲料の成分変化、オフフレーバー発生メカニズムの解明、最適な脂肪酸分解物の選定、配合比率の決定)、分析化学(オフフレーバーの原因物質の特定、定量、特定の脂肪酸分解物の濃度測定、飲料中の成分分析)

 

(6)雪印メグミルク|開発トレンドと専門性

 

 A23Cが最も多いです。次いでA61K、A23L、B65Dが多いです。

 A23Cは既述のとおり、乳製品などに関連する分類です。
 具体例として発酵乳が挙げられます。
 従来の高タンパク質発酵乳は、濃厚な風味と引き換えに硬度や粘度が高く、ざらつきが強いという問題がありました。
 これに対して、カゼインタンパク質とホエイタンパク質の比率が特定の範囲に調整され、発酵終了時のpHが特定の範囲に制御されることで、高タンパク質でありながら濃厚な風味と滑らかな食感を両立した発酵乳が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7496701/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(発酵乳のタンパク質組成、発酵条件、物性(硬度、粘度、粒子径)の最適化)、応用微生物学(発酵に用いる乳酸菌の選定、培養条件の最適化)

 

 A61Kは既述のとおり、医療用製剤などに関連する分類です。
 具体例として軟骨細胞の増殖を促進し、軟骨の石灰化を抑制する軟骨機能改善剤が挙げられます。
 従来の変形性関節症の治療法は症状の緩和が中心であり、軟骨の修復や再生を促す根本的な治療法は確立されていませんでした。
 これに対して、牛乳や乳製品に含まれるラクトパーオキシダーゼ、シスタチン、HMG様タンパク質およびそれらの分解物が有効成分として用いられることで、軟骨細胞の増殖促進と石灰化抑制を両立し、変形性関節症の予防や治療に貢献する軟骨細胞の増殖促進剤が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7633874/15/ja

  関連する専門分野の例:生化学(有効成分の軟骨細胞への作用機序の解明、有効成分の分解物の構造解析、活性評価)、薬理学(有効成分の軟骨細胞増殖促進作用、軟骨石灰化抑制作用の評価、有効成分の投与方法、投与量の検討)

 

 A23Lは既述のとおり、所定の食品、食料品、非アルコール飲料、その調製または処理に関連する分類です。
 具体例としてぶどう果汁含有のワイン風味清涼飲料水が挙げられます。
 従来のワイン風味飲料はアルコールを取り除く工程や発酵制御が複雑で味わいの厚みや渋みが不足していました。
 これに対して、ぶどう果汁に特定の割合でフィチン酸、クエン酸、酒石酸が添加され、さらに糖度が調整されることでワイン特有の厚みと渋みを再現し、簡易製造方法でワイン風味を楽しめる清涼飲料水が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7423243/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(フィチン酸、クエン酸、酒石酸の相互作用、呈味成分の分析)、応用部生物学(発酵メカニズムの解明、発酵制御の検討)

 

 B65Dは既述のとおり、物品または材料の貯蔵または輸送用の容器、包装要素、包装体に関連する分類です。
 具体例としてカートンが挙げられます。
 従来のカートンは引裂線の構造によって開封時の力が分散し、特に開封方向の長さが短い場合に開口部が狭くなるという問題がありました。
 これに対して、引裂線を構成する切目に延長線との交点から開封方向上流側に延びる第1線部が設けられることで開封時の力を効率的に伝え、開口部を広くすることを可能にし、開封方向の長さが短いカートンでも容易かつ確実に開封できるカートンが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7422509/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(カートン材料の力学特性(弾性、塑性、破壊など)の評価、引裂線に加わる応力、ひずみの解析)、機械工学(カートンの構造設計、引裂線の形状設計、開封機構の設計)

 

(7)森永乳業|開発トレンドと専門性

 

 A23Lが最も多いです。次いでA61K、A23C、A23G、C12Nが多いです。

 A23Lは既述のとおり、所定の食品、食料品、非アルコール飲料、その調製または処理に関連する分類です。
 具体例として栄養組成物が挙げられます。
 既存のプレバイオティクス(腸内の善玉菌を増やし腸内環境を整える食品成分)摂取ではガス産生による不快感が問題でした。
 これに対して、難消化性デキストリンとイヌリンが質量割合で難消化性デキストリン/イヌリンが100以下となるように配合され、プレバイオティクス成分の合計が50質量%以上とされることで、腸内細菌の増殖を促進しつつガス産生による不快感を抑制する液状またはゲル状の栄養組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7146028/15/ja

  関連する専門分野の例:応用微生物学(さまざまな腸内細菌に対する難消化性デキストリン、イヌリン、ラクチュロースの影響評価、最適なプレバイオティクス組成の設計)、食品科学(栄養組成物の粘度、浸透圧、pHなどの物性の調整)

 

 別の例としてキサンタンガムを含む粉末状のとろみ付与用組成物が挙げられます。
 嚥下困難者向けのとろみ付き液体について、従来の組成物では咽頭残留や嚥下時の負担が大きいという問題がありました。
 これに対して、特定の応力緩和試験で測定される弾性率E∞が0.25以上となるようにキサンタンガムの含有量などが調整されることで、嚥下困難者でも安全かつ容易に摂取できるとろみ付与用組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7429801/15/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(とろみ液の粘弾性特性や流動挙動の解析、嚥下時の安全性の評価)、食品工学(食品のレオロジー特性(流動性や変形特性)の評価、嚥下困難者にとっての安全性、摂取しやすさの検討)

 

 A61Kは既述のとおり、医療用製剤などに関連する分類です。
 具体例としてカルニチンとビタミンDを含む糖尿病患者の貧血予防・治療用組成物が挙げられます。
 糖尿病患者は貧血になりやすいものの既存の鉄剤には副作用の問題がありました。
 これに対して、カルニチンとビタミンDを特定の投与量で含み、必要に応じて亜鉛などの他の成分も配合されることで安全かつ効果的に貧血に対処する組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7627100/15/ja

  関連する専門分野の例:栄養学(カルニチン、ビタミンD、亜鉛などの栄養素の体内での作用機序の解明、貧血予防・治療における最適な摂取量や組み合わせの検討)、臨床薬学(カルニチン、ビタミンD、亜鉛などの薬物動態や薬効の評価、臨床試験を通じて貧血予防・治療における有効性と安全性の検証)

 

 A23Cは既述のとおり、乳製品などに関連する分類です。
 具体例として容器詰ナチュラルチーズが挙げられます。
 従来のナチュラルチーズはひとくちサイズに加工すると光や酸素の影響で風味が劣化しやすいという問題がありました。
 これに対して、体積0.5cm3以上のチーズ塊を2個以上含み、容器は400nm~900nmの波長範囲の光の透過率が40%以下、酸素透過度が390cm3/(m2・24h・atm)以下で、チーズ塊が保存液に浸漬され容器が可とう性フィルムで構成されていることで風味劣化を抑制する容器詰ナチュラルチーズが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7586400/15/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(遮光性やガスバリア性に優れたフィルムや容器の設計・評価、チーズ塊の形状や大きさに合わせた充填方法、密封方法、包装機械の選択)、食品科学(光や酸素による酸化反応、微生物による変質などの分析、劣化を抑制するための対策の検討)

 

 A23Gはココアやアイスクリームなどに関連する分類です。
 具体例として冷菓が挙げられます。
 従来の冷菓は冷凍保存中に表面に氷が生成されやすく食感や美観が損なわれるという問題がありました。
 これに対して、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分と水を含む組成物がコーティング層として使用され、このコーティング層は5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下であることで氷の生成を抑制する冷菓が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7589328/15/ja

  関連する専門分野の例:食品科学(さまざまな種類の冷菓に対して特定成分を含むコーティング層の効果を検証、最適な配合や製造方法の検討)、物理化学(特定成分の分子構造、水和性、相互作用の解析、氷の生成を効果的に抑制する材料設計)

 

 C12Nは既述のとおり、微生物または酵素などに関連する分類です。
 具体例として新規ビフィドバクテリウム属細菌が挙げられます。
 従来のビフィズス菌の中にはHMOs(ヒトミルクオリゴ糖)を効率的に利用できない菌株も存在していました。
 これに対して、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(NITE BP-03068)という、母乳に含まれるオリゴ糖、特に2'-フコシルラクトース(2'-FL)とラクト-N-テトラオース(LNT)を効率的に利用できる能力を有する細菌が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7474596/15/ja

  関連する専門分野の例:微生物学(HMOs資化に関わる遺伝子、酵素の特定、資化能の向上、さまざまな条件下での細菌の生育、代謝特性の評価)、栄養学(HMOsを含む組成物の有効性、安全性の評価、腸内環境改善、免疫機能向上などの健康効果を示すエビデンスの構築)

 

(8)ヤクルト|開発トレンドと専門性

 

 C12Nが最も多いです。次いでA61K、G01N、A23Lが多いです。

 C12Nは既述のとおり、微生物または酵素などに関連する分類です。
 具体例として乳酸菌凍結乾燥菌体の製造方法が挙げられます。
 従来の乳酸菌培養には食品利用に適さない培地が用いられており、また、凍結乾燥後の菌体生存率が低いという問題がありました。
 これに対して、大豆ペプチド、酵母エキス、発酵大麦エキス、乳化剤、糖類を含む食品由来の培地で乳酸菌を培養し、特定の成分を含む分散媒に分散後、pHをアルカリ性に調整して凍結乾燥することで生存率の高い乳酸菌凍結乾燥菌体の製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7444949/15/ja

  関連する専門分野の例:応用微生物学(さまざまな乳酸菌株に対する培地組成、培養条件の影響の評価、凍結乾燥時の乳酸菌の生存率を向上させるための保護剤、pH調整の効果の検討)、食品工学(乳酸菌凍結乾燥菌体の食品への応用可能性の評価、乳酸菌の機能性、安定性を維持するための食品素材、加工技術の検討)

 

 A61Kは既述のとおり、医療用製剤などに関連する分類です。
 具体例として化粧品への応用に関わる高内相W/O型乳化組成物が挙げられます。
 従来の高内相W/O型乳化組成物はさっぱりとした使用感と高い保湿効果を持つ一方で、乳化状態の維持が難しく経時安定性が低いという問題がありました。
 これに対して、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルが乳化剤として使用され、油ゲル化剤と組み合わされることで、乳化状態の安定化を図り使用感にも優れた高内相W/O型乳化組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7165090/15/ja

  関連する専門分野の例:物理化学(乳化剤の分子構造と乳化安定性の関係の解析、乳化剤の選定基準を確立、油ゲル化剤が乳化安定性に与える影響の評価)、材料化学(さまざまな化学物質の特性の評価、乳化剤や油ゲル化剤としての適性判断、乳化剤、油ゲル化剤の合成、材料設計)

 

 G01Nは材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析に関連する分類です。
 具体例としてクレンジング化粧料の洗浄力と使用感の評価方法が挙げられます。
 従来技術では実際の肌や人工皮膚を用いて評価していましたが、手作業によるバラつきが大きく正確な評価が困難でした。
 これに対して、指標物質を添加したろ材にクレンジング化粧料を接触させ、溶媒で洗い流した後、ろ材に残った指標物質の量や洗い流した液体の乳化粒子径を測定することで手技のバラつきを抑えて客観的に評価できる方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7496305/15/ja

  関連する専門分野の例:分析化学(さまざまな指標物質とクレンジング化粧料の組み合わせにより評価方法の妥当性の検証、ろ材の種類、溶媒、ろ過条件の最適化)、界面化学(クレンジング化粧料の成分、乳化状態、洗浄メカニズムの解析、評価方法の確立)

 

 A23Lは既述のとおり、所定の食品、食料品、非アルコール飲料、その調製または処理に関連する分類です。
 具体例としてスムージー様飲料の製造方法が挙げられます。
 従来のスムージー飲料は野菜や果物の搾汁液やピューレを多量に使用する必要がありコスト高や原料の安定確保が難しいという問題がありました。また、増粘剤を使用しても、スムージー特有のざらつき感を再現できず、不溶性固形分の沈殿・分離も十分に抑制できませんでした。
 これに対して、不溶性食物繊維とアグロバクテリウムスクシノグリカンの組み合わせ、具体的には、不溶性食物繊維を高温で剪断力を加えながら分散溶解し、そこにアグロバクテリウムスクシノグリカンを加えて混合した後、野菜または果実の搾汁液と混合することで、スムージー特有の食感を再現しつつ、安定性のあるスムージー様飲料の製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7387519/15/ja

  関連する専門分野の例:食品工学(不溶性食物繊維の分散溶解条件がスムージー様飲料の食感や安定性に与える影響の評価、スムージー様飲料の長期保存試験による経時的な品質変化の評価、安定性を向上させるための処方設計)、応用微生物学(アグロバクテリウムスクシノグリカンの分子構造や物性の解析、スムージー様飲料における機能性発現メカニズムの解明)

 

(9)まとめ

 いずれの企業も飲料(炭酸飲料、緑茶飲料、コーヒー飲料など)を中心に出願しており、これらの開発がおこなわれていることが推測されます。

 また、容器、自動販売機などの装置、医薬品などの出願もあり、開発されているのが飲料だけではないことがわかります。 

 

3.6 共同出願人との開発例

 共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。

 技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。

 各社の共同出願人(筆頭出願人)は以下のとおりです。

(1)コカ・コーラ

 

 出願件数トップの共同出願人は富士電機です。
 共同出願の例として自動販売機のように商品を収納し冷却する商品収納装置が挙げられます。
 従来の傾斜収納式の自動販売機では強制停止運転時に庫内の温度バラつきが大きくなり商品間の温度差が生じるという問題がありました。
 これに対し、庫内温度が基準温度以上になった場合に送風ファンが一時的に駆動して庫内空気を撹拌し、温度の均一化を図ることで消費電力を抑えつつ商品間の温度バラつきを低減する商品収納装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7200244/15/ja
  関連する専門分野の例:機械工学(商品コラムの形状、材質、搬送機構の設計、送風ファンの配置・風量制御、冷却媒体の選定)、電気電子工学(庫内温度センサー、商品センサー、操作パネルなどの電気回路設計、通信機能(無線LAN、モバイル通信など)の組み込み) 

 

(2)サントリー食品

 

 出願件数トップの共同出願人は大日本印刷です。
 共同出願の例として容器収納ケースが挙げられます。
 従来の収納ケースでは薄いフランジ部が輸送中に変形・破損しやすく容器同士の間隔が狭まることで容器本体も損傷する問題がありました。
 これに対し、フランジ部の長さに対応した間隔で容器本体を収納する凹部とフランジ部を支持する支持面が設けられ、凹部と支持面がフランジ部の厚さ以上に変位することでフランジ部の重なりによる損傷を防ぐ容器収納ケースが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6191909/15/ja
  関連する専門分野の例:機械工学(保持機構、搬送機構、積み重ね機構の設計)、材料工学(容器収納ケースに最適な材料の選定、ロー成形や射出成形などの成形条件の最適化)

 

(3)アサヒ飲料

 

 出願件数トップの共同出願人はカルピスです。
 共同出願の例として濃縮タイプの乳性酸性飲料が挙げられます。
 従来、乳成分を含む濃縮飲料は微生物汚染のリスクが高く、pHや糖度調整だけでは十分な抑制効果が得られませんでした。
 これに対し、ε-ポリリジンと安息香酸等が併用され、耐浸透圧性酵母に対しても増殖抑制効果を発揮する濃縮タイプの乳性酸性飲料 が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6293055/15/ja
  関連する専門分野の例:応用微生物学(腐敗の原因となる微生物の特定、抗菌効果を最大限に高める条件の探索)、食品科学(乳成分、糖類、酸味料などがε-ポリリジンや安息香酸等の抗菌活性に与える影響の評価、飲料のpH、糖度、水分活性などを変化させた場合の微生物増殖抑制効果の評価)

 

(4)伊藤園

 

 出願件数トップの共同出願人はチチヤスです。
 共同出願の例として発酵乳が挙げられます。
 従来のギリシャヨーグルトのような高タンパク質ヨーグルトは濃厚でねっとりとした食感が特徴でしたが、毎日摂取するには重すぎるという問題がありました。
 これに対し、特定のタンパク質含有量、カルシウム含有量、硬さに調整されることで、高タンパク質で、さっぱりとした口当たりの良い発酵乳が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7590135/15/ja
  関連する専門分野の例:食品工学(タンパク質分解酵素の種類や添加量を変え発酵乳の硬さや食感調整、発酵条件(温度、時間、pHなど)を制御して乳酸菌の活性を引き出し風味を向上)、栄養学(発酵乳のタンパク質含有量やカルシウム含有量が人体に与える影響を評価、食感や風味の嗜好性を考慮した製品設計)

 

(5)キリンビバレッジ

 

 出願件数トップの共同出願人はキリンホールディングスです。
 共同出願の例として自動販売機の商品補充計画を支援するシステムが挙げられます。
 従来、自動販売機の補充計画は過去の販売実績のみに基づいており新商品の導入や需要の変化に柔軟に対応できませんでした。
 これに対し、AIが推奨する未収容商品を含む商品群から最適な商品を特定し、予測された需要数量に基づいて補充量を計算、特に、推奨情報が反映される反映対象のコラム(収納スペース)では、推奨商品と既存商品の補充量を計算し、効率的な商品補充と売上向上を両立するシステムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7538677/15/ja
  関連する専門分野の例:情報工学(自動販売機の需要予測に最適なアルゴリズム設計、自動販売機、配送システム、在庫管理システムなど複数のシステムの連携)、経営工学(自動販売機の設置場所、顧客層、競合状況などの分析、最適な商品ラインナップの決定、最適な補充タイミングと補充量の決定)
 
 麒麟麦酒との共同出願では丸型プラスチックボトルが挙げられます。
 従来の丸型ボトルは縦圧縮に対する耐座屈性と保管中の減圧変形抑制の両立が困難でした。
 これに対し、胴部に特定の波線形状の環状リブが配置、具体的には、奇数個の波頂部を持つ環状リブが上下に配置され、隣接するリブの波頂部が互いに交差するように配置されることで、応力を分散し座屈と減圧変形を抑制する丸型プラスチックボトルが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-5997097/15/ja
  関連する専門分野の例:材料工学(ボトルの強度と変形抑制に最適な材料の選定、ボトルの成形方法における材料の挙動解析、最適な成形条件の確立)、機械工学(環状リブの最適な形状と配置の設計、ボトルの強度と耐久性の評価)

 

(6)雪印メグミルク

 

 件数が少ないので説明を省略します。

 

(7)森永乳業

 

 出願件数トップの共同出願人は九州大学です。
 共同出願の例として食品や生体試料中の微生物の生菌を選択的に検出する方法が挙げられます。
 従来のPCR法では死菌のDNAも増幅されてしまい、生菌と死菌の識別が困難でした。
 これに対し、まず試料をDNA架橋剤で処理し光照射で死菌や損傷菌のDNAを架橋・破壊し、次に架橋剤を除去し培地で生菌を増殖させて再度DNA架橋剤と光照射で残存する死菌・損傷菌のDNAを破壊し、最後にPCR法で生菌のDNAのみを増幅・解析することで生菌を高感度かつ特異的に検出する方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-4378537/15/ja
  関連する専門分野の例:応用微生物学(食品や臨床検体中の多様な微生物種に対する本検出法の適用範囲の評価、最適な検出条件の確立)、分子生物学(高感度で特異的なプライマー設計の反応条件の最適化、損傷DNAの効率的な除去方法の検討)
 
 東芝との共同出願では収穫後の切り花の灰色かび病の発生を抑制する殺菌方法が挙げられます。
 従来の切り花殺菌では殺菌ムラや花弁への悪影響がありました。
 これに対し、次亜塩素酸水の気化物質を均一に供給することで効率的な殺菌と品質保持を両立する殺菌方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7497394/15/ja
  関連する専門分野の例:農学(さまざまな種類の切り花に対する本殺菌方法の適用可能性の評価、最適な処理条件の確立)、化学工学(切り花の周囲環境における次亜塩素酸水の濃度分布や反応速度の解析、最適な殺菌条件の設計)

 

(8)ヤクルト

 

 出願件数トップの共同出願人はエヌテックです。
 共同出願の例として可視光と近赤外光の両方を捉えるイメージセンサーを用いた撮像装置が挙げられます。
 従来の撮像装置では可視光画像と近赤外画像を別々のカメラで撮影する必要があり、装置が大型化したり画像の位置ずれが生じるという問題がありました。
 これに対し、分光透過率特性の異なる複数のバンドの分光光学フィルタ、可視光領域と近赤外領域に感度を持つイメージセンサー、特定の遮断領域を持つフィルタ、可視光と近赤外光を照射する光源、画像信号を分離・演算する変換部を備えた装置で、変換部でイメージセンサーからの画像信号をRGB信号に分離し、特定のマトリックス係数による演算で可視光領域と近赤外領域の分光感度を持つ画像信号を生成することで、一台のカメラで同じ画角で可視光画像と近赤外画像を同時に取得することが可能となり、画像の位置ずれを解消し、高精度な画像検査を実現する撮像装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7544358/15/ja
  関連する専門分野の例:電気電子工学(可視光と近赤外光を効率的に分離・検出するための最適なセンサー設計、信号処理回路の設計)、情報工学(撮像された画像信号から可視光画像と近赤外画像を分離・生成するための最適なマトリックス演算や画像処理アルゴリズムの設計)
 
 慶應義塾との共同出願では抗がん剤治療の効果を予測するためのバイオマーカー(HYPX)が挙げられます。
 従来、FOLFOX(オキサリプラチン、フルオロウラシル、レボホリナート)療法は進行・再発大腸がんに有効とされていますが、患者によって効果に差があり、治療前に効果を予測するマーカーが求められていました。
 これに対し、治療前の患者血液中のHYPX濃度の測定により、HYPX濃度が低い患者は治療効果が高い(レスポンダー)と予測され、HYPX濃度が高い患者は治療効果が低い(ノンレスポンダー)と予測されるマーカーが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7308497/15/ja
  関連する専門分野の例:医学・薬学(HYPXマーカーの臨床的有用性の評価)、生命科学(患者の血液サンプルからHYPX濃度を正確に測定するための検査方法の確立)
 
 四国化工機との共同出願では容器の開口部をキャップで密封するヒートシール装置が挙げられます。
 従来のヒートシール装置ではキャップを加熱する際の温度管理が不十分でシール不良や開封時の不具合が発生しやすいという問題がありました。
 これに対し、キャップを押圧するシールヘッドの弾性材の温度に応じて容器の移動速度が調整されることでキャップの加熱時間を最適化し、シール品質を向上させる技術、具体的には、シールヘッドの温度が低い場合は移動速度が遅くされて加熱時間を長くし、温度が高い場合は移動速度を速くされて加熱時間を短くすることで、常に適切なシール状態を維持するヒートシール装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7633232/15/ja
  関連する専門分野の例:機械工学(ヒートシール装置の構造、熱伝達、制御システムを考慮した設計、最適な動作条件の検討)、電気電子工学(マイクロコントローラやPLCを用いた制御システムの構築)

 

(9)上記(1)~(8)(共同出願人)のまとめ

 自動販売機やヒール装置、容器などの機械系、電気系の出願が多いです。

 外部リソースによる開発が示唆されます。

 

4 開発に求められる専門性

 上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。

 上記各特許情報には以下の人材が関わっていると言えます。

 

食品系分野(食品科学、食品工学、栄養学など)

 飲料そのものや当該飲料の製造方法に関する出願が関係します。
 飲料中の成分の特定や効果の検証、製造方法の検討などが求められます。

 

化学、生物系分野(分析化学、物理化学、高分子化学、界面化学、材料化学、生物学、微生物学、化学工学、農学など)

 飲料そのものや原料に基づく関連品に関する出願が関係します。
 化学成分の分析、特定、目的とする効果を高めるための条件の探索、制御などが求められます。

 

機械、電気、情報、材料系分野(機械工学、電気電子工学、情報工学、材料工学など)

 自動販売機などの装置、容器、システムに関する出願が関係します。
 目的とする効果を達成するための構造設計、回路設計、アルゴリズム設計、各種素材の探索などが求められます。

 

その他分野(医学、薬学など)

 病気の治療や症状の改善に関する出願は医学、薬学などが関係します。

 

 ただし、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。

 

5 まとめ

 食品、化学、生物、機械などに関わる出願が多く確認され、技術開発も当該分野に関わるものが多いことが推測されます。

 これらを大学の専攻と関連づけるとしたら、主に食品、化学、生物、農学、機械、電気、情報、材料に関わる研究が該当する可能性があります。ただし、その境界はかなりあいまいです。 

 

 本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。

 参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4

 以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。

 

<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年版 東洋経済新報社

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