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【防犯設備業界】開発職に求められる専門性とは?防犯設備メーカー4社の特許で読み解く技術分野

 前回警備業界について取りあげました。今回はこれに近い防犯設備業界に焦点をあてます。

 前回記事:【警備業界】開発職に求められる専門性とは?警備大手2社の特許で読み解く技術分野

 防犯設備というと火災報知器やガス漏れ検知器、侵入検知システムなどがイメージされるかもしれません。

 こうした製品の多くは目立たず社会インフラに溶け込んでいて、どのような先端技術が開発されているのか、また、どのような専門領域が開発をささえているのか、不明な点は多いでしょう。、

 これを特許情報からみていきます。

 特許情報は企業の開発情報だと言えます。

 実際にどのような開発がおこなわれたのか特許情報に記載されています。

 今回は、防犯設備メーカー大手4社の特許情報からどのような開発がおこなれてきたのか、また、開発にどのような専門性が求められるのか読み解きました。

 

 結論(概要)は以下の通りです。

防犯設備業界の開発に求められる専門性
電気系分野(電子工学、電気工学、電気電子工学など)
情報系分野(情報科学、認知科学、システム工学、情報工学、コンピュータサイエンス、通信工学、ソフトウェア工学など)
機械系分野(機械工学、制御工学、人間工学など)
材料系分野(材料工学など)
化学系分野(化学工学、応用化学など)
物理系分野(応用物理学、物理化学など)
建築系分野(建築工学、建築設備工学など)
その他分野(統計学、経営工学など)
 ただし、上記専門は企業の一部の特許情報に基づくものであり、全てをあらわすものではありません。また、求められる専門は特許の解釈によって変わってきますので、個々の特許情報をご確認ください。

 

 

1 業界サーチの概要

 特許情報は企業の開発情報だと言えます。

 業界サーチは、業界における主要企業の特許情報から、その業界の企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。

 特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。

 すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。

 

2 防犯設備業界

2.1 防犯設備業界とは

 ここでは、火災や侵入、ガス漏れなどの危険を検知し、警報・通報によって被害を防止するための機器やシステムを開発・提供する業界を意図します。

 

2.2 サーチ対象

 以下の防犯設備メーカー大手4社を対象にしました。

(1)能美防災
(2)ホーチキ
(3)ニッタン
(4)日本ドライケミカル

 

2.3 使用プラットフォーム

 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat

 

3 サーチ結果

3.1 結果概要

開発イメージは下表のとおりです。 

 

 

モノの開発

サービスの開発

個人向け

 

 

 

法人向け

複数台の可搬型装置を連携させて火災や転倒を画像付きで通知する火災監視装置
離れた場所から火災報知設備のイベント状況を確認できる表示装置
放水ノズルに密着して取り付けて放水距離と範囲を制御するデフレクタ
可動式ノズルと赤外線検知を用いた凹凸のある堆積物の火災を自動消火するシステム
簡易消火器具
橋梁などの構造物の劣化を検知するシステム
災害対策備蓄品の平常時の管理と災害時の配布を支援するシステム
防災機器用表示灯
単一の発光素子で2波長の光を同時に照射して煙と湯気を識別する光電式煙感知器
複数の検知器の試験結果情報を統合的に分析して各検知器の故障予兆判断条件を自動調整する監視システム
防災システム
トンネルや監視員通路に設置される消火栓装置
データセンターなどに設置される制御盤の火災を消火するシステム
倉庫などの大空間における火災を布製のカーテン(仕切手段)で形成した防火区画に限定して消火する防災装置
複数の噴霧ヘッドを持つ帯電噴霧設備
防火扉を壁面に係止する装置
トンネルのような長大な場所に設置される非常用設備
防災監視システム用受信機
炎感知器
防災用発信機
レンジフード用消火装置
負圧湿式予作動式スプリンクラー設備
消火器の有無を検出するユニット
トンネル内の防災システム
航空機格納庫などの大空間における火災の消火システム
大規模空間の火災に対応するための昇降式放水装置
小型車両に搭載され高所火災に対応可能な可搬式の低層建物用高所消火装置
高天井空間における燃焼炎の画像認識に基づき火災の発生を検知する火災検知システム
住宅用火災警報器と連携して火災発生時に居住者の携帯端末へ直接通知をおこなう遠隔火災報知システム
複合消火薬剤
など

 

 

3.2 出願件数の推移

 下図は防犯設備大手4社の特許出願件数の推移です。

 

 上位2社と下位2社で出願件数に差がありますが、近年は4社とも毎年一定以上の出願をおこなっています。

 そのような出願につながる開発がおこなわれていることが推測されます。

 

3.3 開発の活発度

 特許出願件数≒開発の活発度、だと考えるなら、

 能美防災≒ホーチキ>ニッタン>日本ドライケミカル

だと言えます。

 

3.4 主な開発分野

 各社ごとに特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。

 各社の出願上位3つの技術分野を抽出して並べています(特許出願されていても、その企業の出願件数上位に入っていない技術分野は除外されています)。

 各記号は発明の技術分類をあらわします。

 

 分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)

  

 A62Ⅽ消防に関連する分類です。
 火災の防止または封じ込めなどがこれに該当します。
 全4社がこの分野から多く出願しています。

 

 A62D消化のための化学的手段などに関連する分類です。
 消火剤などがこれに該当します。
 日本ドライケミカルがこの分野から多く出願しています。
 
 G01N材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析に関連する分類です。
 材料分析などがこれに該当します。
 能美防災、ニッタンがこの分野から多く出願しています。

 

 G08B警報装置などに関連する分類です。
 個人呼出し装置などがこれに該当します。
 全4社がこの分野から多く出願しています。
 
 H04B伝送に関連する分類です。
 無線伝送方式などがこれに該当します。
 ホーチキがこの分野から多く出願しています。

 

3.5 防犯設備メーカー4社の近年の開発トレンドと求められる専門の例

 特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。

 ここ10年のトレンドは以下のとおりです。

 発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。

 出願件数が少ない技術分野は除外しています。

 発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。

 関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。

 

 個別の情報を詳しく確認したい場合は、それぞれのリンク先に飛んでください。

 特許は難解ですが、GeminiChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。

参考記事 【AI活用】難解な特許が小学生レベルの内容に!1分で特許を読み解く方法

 

(1)能美防災|開発トレンドと専門性

 

 上図期間中、G08Bが最も多いです。次いでA62Ⅽ、G01M、G06Q、G09Fが多いです。

 G08Bは既述のとおり、警報装置などに関連する分類です。
 具体例として複数台の可搬型装置を連携させて火災や転倒を画像付きで通知する火災監視装置が挙げられます。
 従来の消火システムは固定設置のため、多目的会場など監視領域が変わる場所には不向きでした。
 これに対して、火災感知器、監視領域を撮影するカメラ及び無線通信機能を備えた火災監視装置であり、火災を感知すると通信部がペアリング済みの他の火災監視装置に撮影指示を送信することで自装置のカメラが撮影した画像に加え他の装置が撮影した監視領域の画像も受信し、これらの複数の画像を無線通信で所定の通信装置へ送信することで現場の状況を多角的に確認できるようになることにより、可搬型の特性を活かしつつ一台の装置では把握しきれない広範囲の状況を捉えることができる火災監視装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7679438/15/ja

  関連する専門分野の例:電子工学(Bluetoothなどの近距離無線通信を用いたペアリングアルゴリズムの設計、センサーやカメラ、通信モジュールを統合した際の電力消費の評価、バッテリの長寿命化を実現するための回路設計)、情報科学(複数の画像データをリアルタイムで合成して広角のパノラマ画像を生成する技術の検討、地図情報と連動させて火災発生位置を正確に表示するシステムや受信した複数の画像を端末上でわかりやすく表示するインターフェースの設計)

 

 別の例として離れた場所から火災報知設備のイベント状況を確認できる表示装置が挙げられます。
 従来の火災報知設備の表示装置は設置場所でしか確認できず、緊急時に離れた場所からの早期対応が困難でした。
 これに対して、火災受信機から受けた端末機器の状態情報に基づきイベント発生部分を強調した監視地図を画面に表示し、このイベント発生画面の画像データをネットワークを介して外部装置へ自動的に送信する機能を備えていることにより、外部装置を介してスマートフォンなどの外部端末からリアルタイムのイベント発生状況をいつでも確認できるようになる表示装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-146284/11/ja

  関連する専門分野の例:情報科学(火災報知設備、表示装置、外部装置およびユーザー端末間のデータフローの設計、各機器がリアルタイムに情報を送受信できる通信プロトコルの設計、画像データ、動画、リストデータなど異なる形式のデータを効率的に送信・保存するためのデータ圧縮アルゴリズムやストレージ管理方法の検討)、認知科学(複数のフロアを瞬時に切り替えられるナビゲーションの設計、異常を直感的に伝えるためのアイコンやカラーリングの選定、タッチパネル操作での誤入力を防ぐためのボタン配置などの考案)

 

 さらに別の例として光透過部の汚損を抑制する火災検知器が挙げられます。
 従来の火災検知器は光透過部の汚損抑制のために別途風洞を設置する必要があり、設備が大掛かりでした。
 これに対して、火災を検知する光透過部を有する火災検知部と、外部の空気を光透過部へ導く風洞部を一体に備える火災検知器であり、風洞部と、試験光を照射する試験用発光部は空気の流れ方向と交差する方向に沿って配置されていて、風洞部は空気の流れを特定の領域に集中させて流速を上げる構造になっており、この流速の上がった空気がまず火災検知部の一部の領域に衝突して汚れを落とした後、より清浄な空気が光透過部を吹き抜けることで、光透過部への汚損物質の付着が抑制され、また、試験用発光部が風洞部の空気の流れから外れた位置に配置されるため試験用の光透過部も汚損しにくいこれらの構成により、火災検知部の汚損を抑制する火災検知器が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7653383/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(風洞の内部形状や火災検知部と風洞の相対的な配置が気流の流れに与える影響のシミュレーション、光透過部に向けた空気の流れを最大化しつつ機器内部への塵や埃の侵入を最小限に抑える構造の考案および試作品の耐久性や性能の検証)、電子工学(汚損による光信号の減衰を補正する回路設計、複数の受光素子からの信号を組み合わせて誤検知を防ぐための信号処理アルゴリズムの設計、試験用発光部からの光を利用して光透過部の汚損度を自動的に診断してメンテナンスが必要なタイミングを通知するシステムの設計)

 

 A62Ⅽは既述のとおり、消防に関連する分類です。
 具体例として放水ノズルに密着して取り付けて放水距離と範囲を制御するデフレクタ(物体の流れの方向や範囲を意図的に変えるための装置)が挙げられます。
 従来のデフレクタは放水ノズルとの間に隙間が生じるため、正確な放水制御が困難でした。
 これに対して、放水ノズルの放水口に密着して消火水が注がれる注水口を備えたデフレクタであり、注水口は遠方放水口および中・近距離放水口とそれぞれつながっており、注水口からの水はすべてデフレクタ内部に導かれ、遠方放水口は注水口よりも開口面積が小さく、消火水を遠くに放水し、中・近距離放水口は遠方放水口より下部の壁面に設けられており、複数のスリットや後方放水口から消火水を中・近距離に放水するこれらの構成により、消火水の放水がデフレクタ内部で完全に制御され、遠距離から近距離まで意図した通りの正確な放水が可能になるデフレクタが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7461533/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(異なる形状や開口面積のデフレクタモデルでの水の流れの予測、放水距離や範囲を正確に制御するための各放水口の設計(スリットの形状、角度、数など)の最適化)、材料工学(ステンレス鋼や特殊なポリマー複合材料などの候補の選定、実環境に近い条件での耐久試験の実施、放水ノズルとの密着性を確保するゴムパッキンやシール材について耐圧性や劣化特性の評価および最適な材料を決定)

 

 別の例として可動式ノズルと赤外線検知を用いた凹凸のある堆積物の火災を自動消火するシステムが挙げられます。
 従来の消火システムは床面が平らな場所を想定しており、凹凸のある場所では炎への正確な放水や効率的な消火が困難でした。
 これに対して、木質ペレットのように上面に凹凸がある貯蔵施設での火災に対応する消火システムであり、複数の可動式ノズルユニットと、天井に設置された熱感知器、火災受信機、中央操作盤で構成され、熱感知器が火災を検知すると中央操作盤からの指示で複数のノズルユニットの赤外線検知部が回転して炎の位置を特定する炎検知動作が開始され、次に、炎に最も近いノズルユニットが選ばれ、炎の位置に向けて放水を開始し、放水が始まると放水していない他のノズルユニットが放水軌跡と炎の位置を検知し、その情報に基づいて放水中のノズルユニットの放水方向をフィードバック制御で修正することにより、堆積物の凹凸に影響されず、炎の発生源に正確に放水することが可能となり、少ない水量で効率的な消火を実現する自動消火システムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7660640/15/ja

  関連する専門分野の例:制御工学(炎の位置、放水軌跡、風速などの外部環境要因を考慮した制御アルゴリズムの設計、放水軌跡が炎の位置に正確に落下するようにノズルの回転角度やデフレクタの開度をリアルタイムで自動調整するフィードバック制御システムの設計)、情報科学(赤外線画像内の高温領域(炎)や低温領域(放水軌跡)を識別・追跡するための画像認識アルゴリズムの設計、放水軌跡と炎の相対的な位置ずれをリアルタイムで算出して制御システムに修正信号を送るロジックの設計、複数のノズルユニットからのデータを統合して炎の位置を正確に三角測量するアルゴリズムの設計)

 

 さらに別の例として簡易消火器具が挙げられます。
 従来、エアゾール式は高圧ガスを必要とし、容量が少なく、容器が大型化し、向きに制限がありました。
 これに対して、消火剤を充填した内袋とその内袋を収容する外容器を備え、外容器の底部の区画部に発泡剤と反応剤を封入袋に収容する簡易消火器具であり、使用時に外容器に衝撃が与えられると、区画部の突起が封入袋を破裂させ、発泡剤と反応剤が反応して発泡し、内袋が加圧され、内袋の消火剤が吐出口から噴射される仕組みであり、高圧ガスを充填する必要がないため消火剤の増量や容器の小型化、軽量化が可能な簡易消火器具が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-135798/11/ja

  関連する専門分野の例:化学工学(さまざまな発泡剤と反応剤の組み合わせについて反応速度、発生するガスの量および圧力上昇のプロファイル測定、必要な圧力を短時間で発生させて持続させるための最適な化学組成比と量の決定)、材料工学(外容器について軽量で耐衝撃性があり低コストなポリマー材料の検討および発泡時の応力集中の評価、封入袋について突起部の形状との組み合わせで特定の衝撃値で破裂するような薄膜の材料(例:特定の厚さのポリエチレンフィルム)の探索およびその破裂特性の評価)

 

 G01Mは特定の構造物または装置の試験に関連する分類です。
 具体例として橋梁などの構造物の劣化を検知するシステムが挙げられます。
 従来の固有振動数による診断では、劣化箇所によっては固有振動の変化が現れにくく、大量のセンサーが必要となりコスト増を招く問題がありました。
 これに対して、橋梁などの構造物の四分位点と支承の間という劣化が起こりやすい箇所にセンサーを設置し、センサーから検出された物理量に基づき構造物の傾き情報を特徴量として算出し、これを時系列データとして記憶部に蓄積し、診断部が蓄積されたデータの中から過去の傾き情報と現在の傾き情報を比較し、有意差が認められた場合に構造物の劣化が発生したと判断することにより、固有振動数の変化が現れにくい支承付近の劣化も捉えることが可能となり、センサー数を抑えつつ劣化診断を実現する劣化診断システムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7605716/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(橋梁のモデルによる繰り返し荷重や経年劣化による部材の疲労・損傷の進行を予測するシミュレーションの実施、実際の構造物における応力集中やひずみの増加の推定および将来的な破壊リスクの評価、センサーや診断システムの信頼性を確保するための設置方法や校正手法の検討)、統計学(長期にわたる正常な状態の傾きデータと対応する気温、湿度などの環境データをどのように収集・整理するかの計画策定、過去のデータにより傾きと気温の間の関係性を数学的にモデル化、新たに取得した傾きデータが過去の正常なパターンからどの程度逸脱しているかの評価、異常度指標が統計的に有意であるか判断するための判断閾値の設定)

 

 G06Qは管理目的などに適合した情報通信技術などに関連する分類です。
 具体例として災害対策備蓄品の平常時の管理と災害時の配布を支援するシステムが挙げられます。
 従来の技術は備蓄品の管理や配布手順が不明確で担当者不在時や混乱時に対応できない問題がありました。
 これに対して、災害対策備蓄品の更新期限や数量、複数の配布手順を記録した備蓄品データベースを持つ支援システムであり、まず、平常時には期限管理手段がデータベースを参照して更新期限が近い備蓄品の更新リストを自動で作成し、担当者の端末に通知するこれにより、担当者は計画的に更新の準備を進めることができ、次に、災害時には担当者が端末で配布を要求するとシステムは予め定めた任命順位に基づき管理者候補の中から管理者を自動で選定し、決定された配布手順を同様に自動で任命された担当者の端末に表示・指示することにより、担当者や管理者が不在であっても備蓄品の配布が実行可能となる支援システムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6785818/15/ja

  関連する専門分野の例:情報科学(平常時の管理サーバと現場の支援装置間での備蓄品データベースのデータ同期において通信障害や電源喪失時にも整合性を保つための分散データベース技術の検討、災害時の通信トラフィックの急増に対応するための優先度の高いデータ(配布指示など)を確実に送受信するための制御アルゴリズムの設計、管理者や担当者の位置情報に基づいて最適な任務を割り当てるための最適化アルゴリズムの設計)、経営工学(平常時の備蓄品更新において予算編成時期と更新リストの通知時期を最適化するためのサプライチェーンマネジメントのモデル設計、災害時の配布プロセスについて管理者や担当者の選定、配布手順のガイダンスが従来の人的プロセスと比較してどの程度の時間短縮や配布漏れ防止につながるかの分析・評価)

 

 G09Fは電気的デジタルデータ処理に関連する分類です。
 具体例として防災機器用表示灯が挙げられます。
 従来、発光素子の回路をグループ化すると、一部故障時に故障グループのみ消灯するため、故障に気づきにくい問題がありました。
 これに対して、発光表示部の上下左右に分かれた4つの発光素子グループをそれぞれ独立した回路で制御、特に、発光素子を実装した2枚の発光素子基板を表示部の背面側に左右に分けて配置し、それぞれ内側に向けて傾斜させて光を照射させることにより、一方の基板の故障で一部のグループが消灯しても、もう一方の基板が点灯を維持するため表示灯としての機能が保たれ、同時に、特定の領域が部分的に消灯することで利用者は外観から故障を容易に識別でき、結果として視認性を維持しつつ故障の早期発見を可能にする表示灯が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7709398/15/ja

  関連する専門分野の例:電気工学(各発光素子グループを並列に接続してグループ内では直列・並列を組み合わせた最適な回路構成の設計、個々の発光素子の故障を検知するバイパス回路やグループ単位で電流や電圧を監視するセンシング回路の実装、故障部位を特定する信号を制御部に出力するロジックの構築)、電子工学(発光素子グループごとに点灯・消灯を制御するマイコンやICチップの選定とプログラミング、電源回路の設計、基板の故障が他のグループに波及しないよう各グループを独立させる絶縁回路や過電流から素子を保護する保護回路の組み込み)

 

(2)ホーチキ|開発トレンドと専門性
 
 G08Bが最も多いです。次いでA62Ⅽ、B05B、E05B、H04Bが多いです。
 G08Bは既述のとおり、警報装置などに関連する分類です。
 具体例として単一の発光素子で2波長の光を同時に照射して煙と湯気を識別する光電式煙感知器が挙げられます。
 従来の感知器は2つの発光素子を交互に発光させるため、煙の揺らぎで測定精度が低下し、また部品数の増加により信頼性が低くなるという問題がありました。
 これに対し、第1波長と第2波長の光を同時に発する単一の発光素子を備えた光電式煙感知器であり、発光素子から発せられた光が検煙空間の煙粒子に当たって散乱した際に特定の波長と散乱角に感度を持つ第1受光素子と第2受光素子がそれぞれの散乱光を同時に受光し、制御部はこれら2つの受光素子からの出力の比率を算出し、この比率を第1閾値と比較して煙の種類(黒煙、白煙)を識別し、また第2閾値と比較して湯気などの非火災要因を識別することにより、湯気を正確に判別して非火災報の誤報を防止し、同時に2波長の光を照射することで測定の同時性を確保し、煙の揺らぎに左右されず検知精度を向上させることができる光電式煙感知器が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7603773/15/ja

  関連する専門分野の例:電気電子工学(第1受光素子と第2受光素子の微弱な電流信号を増幅するトランスインピーダンスアンプ回路の設計、発光素子の駆動電流を制御して2つの波長が安定して同時に発光するような制御回路の構築、受光出力の比率を演算するアルゴリズムのマイコン実装)、応用物理学(さまざまな種類の煙粒子や湯気の粒子サイズ分布とそれぞれの波長における散乱強度との関係のモデル化、2つの受光素子の配置と波長の組み合わせが煙と湯気の識別性能に与える影響のシミュレーション、複数の煙の種類や湯気に対する受光出力の比率の実測と識別アルゴリズムに最適な閾値の決定)

 

 別の例として複数の検知器の試験結果情報を統合的に分析して各検知器の故障予兆判断条件を自動調整する監視システムが挙げられます。
 従来の検知器は環境要因による受光信号の変動を考慮せず故障予兆を判断するため、誤検知や故障の見逃しが発生する可能性がありました。
 これに対して、受信盤と複数の検知器からなる監視システムであり、各検知器は自己の試験光源を駆動した際に得られる受光信号に基づき単独で故障予兆を判断する機能を持ち、一方、受信盤は接続された複数の検知器から個別の試験結果情報を取得し、取得した複数の検知器の試験結果情報から特定の検知器の故障予兆判断条件を変更するかどうかを判断し、変更対象の検知器を決定するという、検知器が個別の環境影響を受ける一方で受信盤が広範囲のデータを総合的に分析することで環境要因に起因する受光信号レベルの変動を吸収し、検知器の経年劣化による故障予兆を把握する監視システムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7607096/15/ja

  関連する専門分野の例:システム工学(受信盤と複数の検知器間のデータ伝送プロトコルの確立、受信盤が多数の検知器から送られてくる試験結果情報をリアルタイムで処理して故障予兆の判断条件を動的に変更するためのアルゴリズムの設計、受信盤に処理を集中させるか検知器側に処理を分散させるかといったシステム全体の分散制御モデルの構築)、情報科学(検知器の受光信号データに対し季節や気温などの環境変動に起因する周期的なパターンの抽出、環境要因の変動からノイズを除去するフィルタリングアルゴリズムの設計、故障予兆の閾値を自動調整する機械学習モデルの構築)

 

 さらに別の例として防災システムが挙げられます。
 従来のシステムは火災検知器の劣化が非火災報の原因となる可能性があり、その都度、交通を遮断し現場確認が必要となるため時間と手間を要していました。
 これに対して、複数の火災検知器が隣接して設置され、検知エリアを重複監視する防災システムであり、システムの中心となる防災受信盤が火災検知器から受信した故障予兆情報に基づいて検知器が信頼性低下状態にあるかを判断するものであり、信頼性低下と判断された火災検知器から火災信号が送信された場合、防災受信盤は当該検知器の火災信号送信条件をより厳格なものに変更し、変更された厳格な条件を満たした場合、もしくは当該検知器の検知エリアを重複監視している隣接する火災検知器から火災信号を受信した場合にのみ、初めて火災と判断して警報処理をおこなうことにより、劣化や非火災要因による誤った火災信号が送信されても即座に火災と判断して警報を出すことを防ぎ、非火災報の発生を抑制することができる防災システムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7556112/15/ja

  関連する専門分野の例:システム工学(火災検知器の故障予兆発生頻度と非火災報が発生する確率との相関を統計的に分析するモデルの構築およびシミュレーションによるロジックの評価、防災受信盤が火災検知器の信頼性低下を判断した際に隣接検知器の感度を一時的に上げる制御アルゴリズムが実火災の検知速度に与える影響の評価および最適な閾値の決定)、電子工学(炎からの赤外線を受光するセンサ(受光素子)の経年劣化特性を評価するための実験および劣化の進行度を定量的に把握する手法の確立、受光信号に含まれるノイズ成分をフィルタリングして炎のゆらぎに起因する信号のみを精度良く抽出するデジタル信号処理回路の設計)

 

 A62Ⅽは既述のとおり、消防に関連する分類です。
 具体例としてトンネルや監視員通路に設置される消火栓装置が挙げられます。
 従来の埋め込み型消火栓装置は扉を開くと道路側に飛び出し、車両の通行を妨げる可能性があるほか、道路側と通路側のいずれから操作してもノズルが取り出しにくいという問題がありました。
 これに対して、消火栓装置の上部に前後いずれの縁を軸としても開閉可能な二重ヒンジ構造の上扉が設けられ、上扉の裏面にはノズルを保持するノズルホルダーが取り付けられていて、ノズルホルダーは上扉の裏面に対して所定の方向に回動可能な機構を備えており、上扉がどちらの軸で開いてもノズルが常に下向きに吊り下げられた状態を維持するように機能することにより、ノズルは常に同じ姿勢で操作者の目の前に現れるため道路側または監視員通路側のどちらからでも容易にノズルを取り出すことが可能となる消火栓装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7604607/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(上扉の二重ヒンジ構造におけるトルクバランスの最適化、ノズルホルダーの多軸回動機構(例えばボールジョイントや多段連結機構)についてノズルとホースの総重量、慣性力および外部からの引抜き力に対する安定性の解析および最適な材料と構造の決定)、人間工学(実際のトンネル環境を想定したシミュレーションやユーザーテストの実施、上扉の開閉ハンドルやノズルホルダーの位置、ノズルの吊り下げ角度、ノズル着脱時の必要な力の測定、ノズルが最も取り出しやすい設計の検討)

 

 別の例としてデータセンターなどに設置される制御盤(サーバーラックなど)の火災を消火するシステムが挙げられます。
 従来のシステムでは、部屋全体の空気を監視するため火災検知から消火まで時間差が生じ、また、正常な他の盤の冷却機能を停止させてしまうという問題がありました。
 これに対して、制御盤内の空気を循環させながら超高感度センサーで火災を早期検知し、火災発生時には盤の空調導入口と排出口を遮断することで盤内を密閉して外部からの冷却空気流入と空気の排出を止め、消火ガスが効果的に留まる空間を形成し、その後、消火ガスを盤下部から放出すると同時に超高感度煙検知器に備わる吸引ポンプと還流配管を介して消火ガスを含む空気を還流させることで、盤内全体に消火ガスを均一に拡散させて短時間で確実に火災を鎮圧することを可能とする制御盤消火システムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7505098/15/ja

  関連する専門分野の例:電気工学(高感度煙検知器からの火災検知信号を受信後、空調開閉装置と消火装置に適切なタイミングで指令を出すためのシーケンス制御プログラムの設計、各機器間の通信プロトコルの確立、誤動作を防ぐためのフェイルセーフ回路やバックアップ電源システムの設計)、機械工学(消火システム全体の熱力学的効率および流体動態の解析、機器冷却のための空気と消火のためのガスの物質収支の検討、消火ガスの拡散・還流を最適化するための流路設計)

 

 さらに別の例として倉庫などの大空間における火災を布製のカーテン(仕切手段)で形成した防火区画に限定して消火する防災装置が挙げられます。
 従来の防災設備は広大な空間では防火シャッターの設置が非現実的であり、スプリンクラーでは水損が拡大するという問題がありました。
 これに対して、火災発生場所の特定後、予め設定された論理的区画に基づいて火災発生場所を囲む対象区画と、その外側の外側区画の周囲に布製の仕切手段が展開されて物理的な防火区画が形成され、同時に、消火剤散布手段により区画内に向けて消火剤が散布され、冷却剤散布手段が展開した仕切手段の外側と内側(外側区画の外周側の仕切手段)に冷却剤が散布されることで、仕切手段の遮炎・遮熱性能を向上させる技術構成により、消火剤を火災箇所に集中させて周囲への延焼と水損を最小限に抑えながら初期消火を効果的におこうことができるようにする防災装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7472375/15/ja

  関連する専門分野の例:建築工学(火災発生時の煙や熱の拡散モデルの構築、仕切手段の展開高さや配置間隔が防火区画形成後の遮炎・遮熱性能に与える影響の分析、仕切手段に要求される耐熱性能や耐火性能の算出および火災時の建築物全体の安全性評価)、機械工学(火災検知信号に連動して迅速かつ確実に作動する自動展開装置(モーター、ラッチ機構など)の設計、冷却剤散布ノズルの流体力学解析および冷却水が仕切手段の表面に均一に散布されるように最適な圧力と流量の決定)

 

 B05Bは噴霧装置などに関連する分類です。
 具体例として複数の噴霧ヘッドを持つ帯電噴霧設備が挙げられます。
 従来の設備では、複数のヘッドの中から絶縁異常を起こしたヘッドを特定するために高電圧回路に直接触れる必要があり、感電の危険性や水濡れによる絶縁不良のリスクがありました。
 これに対して、複数のヘッドから噴霧される水系の噴霧液の液滴を高電圧で帯電させる帯電噴霧設備であり、高圧電源装置の高電圧側の配線に電流制限抵抗が、零電圧側の配線に電流検出抵抗がそれぞれ挿入され、ヘッドの絶縁異常により高電圧回路と水側電極が短絡するなどした場合、零電圧側に設置された電流検出抵抗の両端電圧が上昇し、この電圧は低電圧であるため安全な環境で測定が可能となり、複数のヘッドの零電圧側の配線にそれぞれ電流検出抵抗が設けられ、その両端電圧の切り替えにより測定・表示される構成により、高電圧に触れることなくどのヘッドが絶縁異常を起こしているかを特定することができる帯電噴霧装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7444621/15/ja

  関連する専門分野の例:電気電子工学(高圧電源装置から各ヘッドへ安定した高電圧を供給するための回路設計、電流検出抵抗の値の最適化、絶縁異常を正確に検出するための測定回路およびそのデータを表示するインターフェースの設計、各回路のノイズ耐性や安全性(特に感電保護)の評価)、化学工学(液滴がより効率的に帯電するように添加剤の組成の検討、帯電した液滴と空気中の粉塵や微粒子との相互作用のモデル化および噴霧流の粒度分布や電荷密度が粉塵除去性能に与える影響の評価)

 

 E05Bは錠などに関連する分類です。
 具体例として防火扉を壁面に係止する装置が挙げられます。
 従来の装置では、係止状態を検出するマイクロスイッチが扉のフック開口部に近く、埃や油が付着して動作不良や接触不良を起こす問題がありました。
 これに対して、防火扉のフックを係止するラッチ部材と、それを覆うカバープレートを備えた係止装置であり、ラッチ部材の動作に連動する連動部材と、この連動部材の位置を検出する検出部が埃の侵入経路となる開口部から隔離されたラッチ部材と反対側に配置され、ラッチ部材の動作を連動部材に伝えるための開口部が係止解除をおこなうソレノイドで覆われることで埃の侵入を二重に防止していることにより、検出部の動作不良を抑制し、防火扉の係止状態を把握することが可能となる防火扉の係止装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6553924/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(フックとラッチ部材の係止・解除メカニズム、ソレノイドによる駆動系の設計、ラッチ部材や連動部材がスムーズに動作するよう各部品の材料選定や加工精度の検討)、制御工学(火災感知器や手動起動スイッチからの信号を受けてソレノイドを正確に作動させるための電気回路とソフトウェアの設計、検出部から得られる係止状態の信号のモニタリングおよび異常を検知した際に警報を発するなどのフェールセーフ機能の実装)

 

 H04Bは既述のとおり、伝送に関連する分類です。
 具体例としてトンネルのような長大な場所に設置される非常用設備が挙げられます。
 従来のメタル伝送回線(銅線などの金属ケーブルで信号を伝送する通信回線)はノイズの影響や信号減衰が大きく、長距離化に対応困難という問題がありました。
 これに対して、防災受信盤と複数の設備機器とを光回線で接続する非常用設備えあり、防災受信盤から延びる2本の光回線に複数の光変換器を複数台単位で交互に振り分けて接続することより、光変換器間の実質的な伝送距離を短縮し、終端の光変換器同士を接続する第3の光回線によってシステム全体を物理的にリング接続する構成のため、いずれか一方の光回線に断線が発生した場合でも残りの健全な回線への通信の切り替えるにより、全光変換器との通信を維持して耐障害性を実現する非常用設備が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7511718/15/ja

  関連する専門分野の例:情報工学(光信号と電気信号の変換効率を最大化するパケット通信プロトコルの設計、断線発生時に迅速な経路切り替えを実現するためのアルゴリズムの設計)、システム工学(複数の設備機器(火災検知器、消火栓など)からの信号を統合して防災受信盤が一元的に管理するためのシステムアーキテクチャの策定、光回線の断線検知や復旧制御を含めたシステムのライフサイクル全体にわたる信頼性評価とリスク管理)

 

(3)ニッタン|開発トレンドと専門性

 

 G08Bが最も多いです。次いでA62Ⅽ、G01Sが多いです。

 G08Bは既述のとおり、警報装置などに関連する分類です。
 具体例として防災監視システム用受信機が挙げられます。
 従来の技術では、スイッチカバーの不正操作防止にネジ固定を用いていたため、緊急時に工具が必要になるという問題がありました。
 これに対して、内部に制御基板を内蔵する箱状本体と、操作部を有する前面パネルで構成た防災監視システム用受信機であり、前面パネルには点検用などのスイッチを覆う回動可能なカバーが設けられ、このカバーの開放を防ぐためにカバー回動阻止部材が前面パネルのガイド穴に挿入され、この部材は前面パネルが箱状本体に取り付けられた状態では前面パネル裏面に設けられた移動阻止手段によって移動が阻止されるため、第三者はカバーを開けられず、管理者などが前面パネルを開くと移動阻止手段が解除状態に変わり、カバー回動阻止部材を取り外せるようになり、安全性を確保しつつ正規の作業時にはスムーズな操作が可能となる防災間システム用受信機が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7626825/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(カバー回動阻止部材や移動阻止手段の応力解析と材料選定、少ない力でスムーズに動作する可動機構(ヒンジ、ガイド穴など)の設計とシミュレーション、最適な形状や寸法の決定)、人間工学(緊急時でも直感的に操作できるようにカバー開閉の仕組みやロック解除の動作をユーザーテストによって評価、暗い場所でも視認性を確保するためのデザイン(色、形状、表記)の検討、緊急時にパニック状態でも迅速かつ確実に操作できる操作手順の最適化)

 

 別の例として炎感知器が挙げられます。
 従来の技術では、保護カバーの汚損検出を一部位でしかおこなわないため、不均一に汚れた場合に炎の検知精度が低下するという問題がありました。
 これに対して、炎から発せられる特定の波長光を受光する複数の主検出受光素子を内蔵した筐体と、それらを保護する光透過性保護カバーを備えた炎感知器であり、保護カバーの汚れを検出するため、複数の試験用光源が保護カバーに向けて試験光を投光し、その透過光は環状の光ガイド部材の入射部を経由して、回路基板上の試験用受光素子によって受光され、回路基板が試験用受光素子の受光量に基づいて保護カバーの透過率を算出し、その透過率を用いて主検出受光素子の受光量を補正して炎の検知をおこなうことにより、保護カバーが不均一に汚れても正確な炎の検知が可能となる炎感知器が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7538308/15/ja

  関連する専門分野の例:物理学(光量と電気信号の変換効率を最大化するための素子構造の探索、保護カバーの汚損が光の透過と散乱に与える影響を物理モデルで記述、モデルに基づく補正アルゴリズムの妥当性の検証)、電子工学(試験用受光素子から得られる電気信号のノイズを低減するための信号フィルタ回路の設計、保護カバーの透過率の変動に基づいて主検出受光素子の出力をリアルタイムで補正するためのファームウェアアルゴリズムの設計、多様な汚損パターンや環境条件下での検知精度の評価)

 

 さらに別の例として防災用発信機が挙げられます。
 従来の技術では、防災用発信機に電話ジャック用の開閉扉を設けるため、外観に部品の境界が目立ち、建物内装との調和が取れないという問題がありました。
 これに対して、スイッチと電話ジャックを内蔵する発信機本体部と、押しボタンを持つ前面パネル部で構成された防災用発信機であり、前面パネル部はリンク機構によって発信機本体部の収納ケースに連結されていて、前面パネル部は収納ケースの開口を閉塞する第一の状態と、電話ジャックが使用可能なように開口を開放する第二の状態とに変換可能(具体的には前面パネルを設置面と平行に保ったまま電話ジャックが露出するまでスライドさせて移動させることが可能)であるため、電話ジャック用の独立した開閉扉が不要となり、発信機前面の部品境界をなくすことで美観を向上させる防災用発信機が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7716957/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(平行リンク機構を構成するアームやピン、ガイド部分の応力解析と強度シミュレーション、前面パネルをスムーズに開閉できて閉じた状態を確実にロックするための機構設計および動作安定性と長期的な耐久性の評価)、電気工学(押しボタンやスイッチのオン/オフ動作を確実に検知するためのセンシング回路の設計、発光表示部のLEDを駆動するための電源回路と制御アルゴリズムの設計、システムの電力効率と信頼性の最適化、電話ジャックからの通話信号や発報信号のノイズ対策と信号伝送の安定性を確保するための解析と設計)

 

 A62Ⅽは既述のとおり、消防に関連する分類です。
 具体例としてレンジフード用消火装置が挙げられます。
 従来の技術では、消火装置の構造が複雑で専門知識のない者によるメンテナンスや交換作業が困難であり、レンジフードが大型化する問題がありました。
 これに対して、レンジフードのファンと整流板に消火剤が充填された消火剤容器が取り付けられたレンジフード用消火装置であり、消火剤容器は噴出口を有する口金と、その口金の根本に形成された上面視で円形でない形状の凸部を備え、一方、整流板には凸部に対応した形状の開孔が形成されており、消火剤容器の凸部が開孔に嵌合され、突出した口金部分がナットなどの係止手段で固定されることで容器が整流板にしっかりと取り付けられる構成により、管路や複雑な取り付け金具が不要で専門知識を持たない人でも簡単に容器の交換やメンテナンスが可能になり、結果として装置の構造を簡素化し、レンジフードの大型化を防ぐことができるレンジフード用消火装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7605702/15/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(口金を密閉する低溶融金属や接着剤の溶融温度の制御による誤作動の防止と作動の保証、コンロからの熱気流や輻射熱に晒される容器、口金、冷却フィンなどの部品が機能を損なうことなく耐えうるように熱伝導率や熱膨張率を考慮した金属材料や複合材料の選定)、化学工学(火災の種類(油火災、ガス火災など)に応じた消火剤の成分(ガス、粉末、泡など)の設計および消火効率の評価、噴出口の形状やノズルの流体力学的特性の解析、コンロ全体に消火剤が均一に散布されるように噴霧パターンの最適化)

 

 別の例として負圧湿式予作動式スプリンクラー設備が挙げられます。
 従来の技術では、配管が破損した際に真空ポンプの起動までにタイムラグが生じ、この間に配管内の負圧が維持できず、わずかな漏水が発生する問題がありました。
 これに対して、予作動式流水検知装置の二次側配管にスプリンクラーヘッドが接続され、二次側配管内を真空ポンプで負圧に保つ構成の負圧湿式予作動式スプリンクラー設備であり、二次側配管の立ち上げ分岐管と真空スイッチとの間の吸引管部分の上部にバッファタンクが接続されて負圧空気容積を増大させることで、配管が破損して空気が流入してもより多くの負圧空気を保持できるため真空ポンプが起動するまでの間も配管内の負圧を維持する時間を延ばすことができ、配管やスプリンクラーヘッドが大きく破損した場合でも漏水を効率よく防ぐことが可能になる負圧湿式予作動式スプリンクラー設備が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7607479/15/ja

  関連する専門分野の例:建築設備工学(建物内の各区画における火災時の熱気流や煙の拡散シミュレーション、スプリンクラーヘッドの最適な配置の決定、負圧が維持されるべき範囲とバッファタンクやバイパス管などの補助設備を設置すべき場所の計画、建物の安全性と設備の維持管理性を両立させる設計)、コンピュータサイエンス(真空スイッチからの信号やその他のセンサーデータ(圧力、水位など)をリアルタイムで監視する組み込みシステムのプログラミング、真空ポンプの起動シーケンス、緊急時のバルブ制御およびシステム異常の診断を行うための制御アルゴリズムの設計)

 

 G01Sは無線による方位測定などに関連する分類です。
 具体例として施設内における携帯情報端末の位置を視覚的に報知可能な位置情報システムに用いられる携帯情報端末が挙げられます。
 従来の技術は非常時に送信周期を短くすることでバッテリーを急速に消耗させ、活動中に端末が電池切れとなり、重要な位置情報が失われる可能性がありました。
 これに対して、移動判定手段、電池残量算出手段、および送信周期変更手段を備えた携帯情報端末であり、送信周期変更手段は電池残量が所定レベル以下になった場合に他の設定よりも優先して送信周期を最も長い第1周期に設定し、電池残量が十分な場合は移動していないときに第1周期よりも短い第2周期、移動しているときは第2周期よりも短い第3周期に設定する制御により、非常時においてもバッテリーの消耗を抑えつつ移動に応じて精度の高い位置情報を取得でき、救助活動などの重要な場面で端末の電池切れによる情報消失を回避し、位置情報を正確に把握し続けることが可能となる携帯情報端末が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7507937/15/ja

  関連する専門分野の例:通信工学(複数の無線通信方式の中からビーコン信号の受信と識別情報の送信に最適なものの選定、移動状況やバッテリー残量といったパラメータに応じて送信周期を切り替える際の通信プロトコルの最適化、電波干渉やデータ損失を防ぐための通信安定性評価)、ソフトウェア工学(センサーデータ(加速度、Wi-Fi信号強度など)から端末の移動状態を判定するアルゴリズムの設計、電池電圧の変化から残量を正確に推定するアルゴリズムの実装、送信周期を段階的に変更する状態遷移ロジックの設計、システムの全体的な電力管理と機能性を向上させるためのアプリケーションソフトウェアの構築)

 

(4)日本ドライケミカル|開発トレンドと専門性

 

 A62Ⅽが最も多いです。次いでG08B、A62Dが多いです。

 A62Ⅽは既述のとおり、消防に関連する分類です。
 具体例として航空機格納庫などの大空間における火災の消火システムが挙げられます。
 従来のシステムでは、モニターノズルの駆動に高価なサーボモーターとエンコーダーを用いるため設備コストが嵩み、設置スペースも大きくなるという問題がありました。
 これに対して、火災時に消火剤を放出するモニターノズルを駆動するためにブレーキ付きのギアモータを時間制御してノズルの位置を合わせるシステムであり、事前にリミットスイッチを用いてノズルの初期位置を基準位置として設定し、火災発生時はその基準位置から火災が起きた区画に対応する所定の時間だけモーターを駆動させ、この時間はノズルの移動角度と速度が一定であるという関係に基づいて算出されており、ノズルは正確に照準位置に移動し、照準位置に到達後、消火剤を放出することによって、高価なサーボモーターやエンコーダーが不要となり、コスト削減と機器の小型化が可能な消火システムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7030913/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(ギア、軸受、ブレーキなどの部品選定、応力解析、ノズルが正確に動くためのギアボックスの設計、材料力学に基づいた部品の強度計算、振動試験による製品の信頼性を検証)、電気電子工学(モータの駆動回路、時間制御をおこなうタイマー回路、リミットスイッチからの信号を処理する回路の設計、モーターの定常回転速度を一定に保つための電源回路の安定化やタイマー設定と実際のモータ駆動時間がずれなく一致するようフィードバック制御や高精度なタイマーICを組み込んだ回路の構築)

 

 別の例として大規模空間の火災に対応するための昇降式放水装置が挙げられます。
 従来の放水銃は高所に設置されるため、点検や修理が危険で多大な労力とコストを要しました。
 これに対して、入れ子式に伸縮する送水管の内部に水を供給する仕組みによって水の圧力を利用して送水管が垂直に伸びることを特徴とする放水装置であり、平常時は床面下の収納部に収まった状態を保ち、火災発生時には自動で地上に上昇し、送水管の上端には水の流出を制御するバルブと水を放水する放水銃が備わっており、バルブが開くと送水管を通過した水が放水銃から放出され、また、制御盤によってバルブの開閉や放水銃の向きが制御されるこれらの構成により、平時は装置を低所に収納して点検・メンテナンスを容易におこない、火災時には高所に配置して広範囲を効率的に放水できてコストも削減できる放水装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7141261/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(パイプの摺動部分の隙間の設計、水圧によるパイプの膨張や応力集中を考慮した強度解析シミュレーションおよび適切な材料の選定、バルブの開閉機構や放水銃の可動部分の耐久性の評価および長期間の使用に耐えうる摩耗対策や潤滑システムの設計)、制御工学(火災検知器やカメラの信号に基づいて放水銃の向きを自動で正確に制御するアルゴリズムの設計、水の供給開始タイミング、送水管が完全に伸長したことを検知するセンサーと連携したバルブの開閉制御、放水銃を目標に合わせるためのモーター駆動制御の設計、複数の放水装置を連携させて放水範囲を最適化するような協調制御システムの構築)

 

 さらに別の例として小型車両に搭載され高所火災に対応可能な可搬式の低層建物用高所消火装置が挙げられます。
 従来の消防車両は高所の火災に直接放水することが難しく、大型の高所放水車は狭い道路に進入できないという問題がありました。
 これに対して、標準積載量が3トン以下の小型車両にポンプと垂直方向に回動可能な可倒機構に取り付けられた送水管が搭載され、送水管は入れ子式に伸縮する複数のパイプで構成され、バルブが閉じた状態でポンプから水が供給されると、水圧を受けて伸長し、送水管の上端には水の流れを制御するバルブと水を放出する放水銃が備わっており、バルブは閉じた状態で送水管を伸長させ、開いた状態で放水を開始し、放水銃は操作盤により遠隔で角度を調整できるため、高所にある火点に放水可能であることにより、狭い道路でも高所火災に直接放水することができる低層建物用高所消火装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7109988/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(ポンプの吸水・送水性能を最大化するための流体解析シミュレーションの実施、水の圧力で伸びる送水管の伸縮機構や放水銃の首振り機構など各部品の強度、耐久性、信頼性の評価および最適な材料選定と構造設計、装置全体のエネルギー効率を向上させるための熱・エネルギー収支解析)、電気電子工学(マイクロコントローラやFPGAを用いた制御回路の設計、ポンプの稼働、送水管の伸長、放水銃の向きの調整といった一連の動作を自動化するためのプログラム作成、ビデオカメラや赤外線カメラの画像データの解析および火点を自動で検知して放水銃の向きを調整する画像処理アルゴリズムの設計、ジョイスティックなどの操作インターフェースの設計、モーターやバルブを駆動するためのパワーエレクトロニクス回路の設計)

 

 G08Bは既述のとおり、警報装置などに関連する分類です。
 具体例として高天井空間における燃焼炎の画像認識に基づき火災の発生を検知する火災検知システムが挙げられます。
 従来の火災感知器は高天井空間では熱や煙が届きにくく、火災検知までに時間がかかるという問題がありました。
 これに対して、高天井空間に設置した監視カメラの画像信号を前処理部で解析するシステムであり、まず、画像の色空間をRGBからHSVへ変換し、設定された閾値を用いて2値化することで燃焼炎部分を特定するマスク画像を生成し、次に、そのマスク画像から燃焼炎に外接する矩形領域を抽出し、ニューラルネットワークによる画像認識に適した推定用画像を生成し、この推定用画像に対するニューラルネットワークの解析結果に基づき推定部が燃焼炎の存在確率を推定し、その確率が所定の火災閾値を超えた場合に通知部が火災推定信号を出力することにより、従来の火災感知器よりも早く火災の兆候を検知でき、高天井空間における火災の早期発見と対処が可能になる火災検知システムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7580939/15/ja

  関連する専門分野の例:情報科学(火災検知に適した畳み込みニューラルネットワークなどのアーキテクチャの選定および最適化を、燃焼炎のゆらぎを捉えるための長・短期記憶ネットワークの組み込み、炎の色や形状の特徴を効率的に学習させるための教師データの作成、誤差逆伝播法を用いた学習処理のプログラム実装)、情報工学(監視カメラの画像処理アルゴリズムの改良、ノイズや誤認識を減らすためのフィルタリング技術や特徴量抽出方法の探索、画像認識をおこなうためのニューラルネットワークモデルを効率的にハードウェアに実装するためのシステム設計、システム全体のリアルタイム性能の評価、火災検知の応答時間を最適化するためのプロセッサやメモリの選定、ソフトウェアのチューニング)

 

 別の例として住宅用火災警報器と連携して火災発生時に居住者の携帯端末へ直接通知をおこなう遠隔火災報知システムが挙げられます。
 従来の火災警報システムは居住者が不在時に火災を遠隔で知らせるための設備が複雑になる問題がありました。
 これに対して、既存の火災センサ部とは別体の通信モジュールを火災警報器に追加するシステムであり、この通信モジュールは火災センサ部から火災信号を受信すると基地局を介して通信ネットワークへ直接データ通信をおこない固有の識別子を持つ火災報知情報をクラウドサーバに送信し、クラウドサーバは固有の識別子とユーザーが設定した建物、フロア、エリアといった設定リストに基づいて火災を検知した場所や閲覧レベルに応じた情報を居住者の携帯端末へ選択的に送信することにより、大規模なゲートウェイ等の付帯設備を必要とせず、簡潔な構成で居住者へ火災を通知できる遠隔火災報知システムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7486303/15/ja

  関連する専門分野の例:情報工学(火災警報器の通信モジュールがクラウドサーバと円滑に通信するためのプロトコルの設計、システム全体の応答時間を短縮するための通信遅延の解析と最適化、ユーザーが設定する建物やエリア情報に対応した通知の振り分けロジックをクラウドサーバ上で構築)、電気電子工学(火災センサ部からの接点信号を正確に受信するためのインターフェース回路の設計、バッテリー駆動での長時間運用を可能にしてモジュールの待機時および通信時の消費電力を最小限に抑えるための電源管理回路や部品の選定)

 

 A62Dは既述のとおり、消化のための化学的手段などに関連する分類です。
 具体例として複合消火薬剤が挙げられます。
 従来の消火薬剤は水系消火薬剤と機械泡消火薬剤のどちらも消火性能と延焼防止性能の片方しか持ち得ないという問題がありました。
 これに対して、水に浸潤剤としてリン酸アンモニウムを33重量%~47重量%の割合で添加された水系消火薬剤に、発泡成分が水系消火薬剤100に対して0.5重量%~6.0重量%の割合で添加され、消火時には発泡装置を通すことで一部が泡状になって放出されることにより、浸潤剤が燃焼物内部へ浸透して消火する能力と泡が燃焼物の表面に付着して延焼を防ぐ能力の両方を発揮する消火薬剤が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6605825/15/ja

  関連する専門分野の例:応用化学(リン酸アンモニウムの浸潤効果や発泡成分の種類(界面活性剤など)が消火時の熱分解や泡の安定性に与える影響の評価、防火対象物の種類(木材、プラスチックなど)に応じた最適な浸潤剤や発泡成分の組み合わせ、およびそれらの配合比率を熱重量測定や発泡試験などの化学分析を通じて決定)、材料工学(泡の液膜の厚さや表面張力の測定および泡が燃焼物の表面に長時間付着するメカニズムの解明、泡の崩壊挙動の解析および最適な泡径や泡の均一性を実現するための添加剤の探索、消火薬剤が放出される際の噴霧特性とそれによる消火効率の関連性を流体力学的な観点から評価)

 

(5)まとめ

 火災の監視、消化、これらの機能を備えたシステムなど、火災対策技術に係る出願が多いです。

 そのような出願に関連する開発がおこなわれていることが推測されます。

 

3.6 共同出願人との開発例

 共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。

 技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。

 各社の共同出願人(筆頭出願人)は以下のとおりです。

(1)能美防災

 

 詳細の説明は省略します。

 

(2)ホーチキ

 

 詳細の説明は省略します。

 

(3)ニッタン

 

 詳細の説明は省略します。

 

(4)日本ドライケミカル

 

 詳細の説明は省略します。

 

(5)上記(1)~(4)(共同出願人)のまとめ

 共同出願は多くないです。

 

4 開発に求められる専門性

 上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。

 上記各特許情報には以下の人材が関わっていると言えます。

 

電気系分野(電子工学、電気工学、電気電子工学など)

 複数台の可搬型装置を連携させて火災や転倒を画像付きで通知する火災監視装置、光透過部の汚損を抑制する火災検知器、防災機器用表示灯、光電式煙感知器、防災システム、データセンターなどに設置される制御盤の火災を消火するシステム、複数の噴霧ヘッドを持つ帯電噴霧設備、炎感知器、防災用発信機、航空機格納庫などの大空間における火災の消火システム、低層建物用高所消火装置、住宅用火災警報器と連携して火災発生時に居住者の携帯端末へ直接通知をおこなう遠隔火災報知システムなどに関する出願が関係します。
 通信プロトコルの設計と最適化、センサーや通信モジュールの低消費電力化技術の検討、電源回路の安定性設計と評価、小型化・軽量化のための回路構成の最適化、制御システムの構築と検証、外部環境との電気的インターフェースの設計、光センサーシステムの設計、信号処理アルゴリズムの検討などが求められます。

 

情報系分野(情報科学、認知科学、システム工学、情報工学、コンピュータサイエンス、通信工学、ソフトウェア工学など)

 複数台の可搬型装置を連携させて火災や転倒を画像付きで通知する火災監視装置、可動式ノズルと赤外線検知を用いた凹凸のある堆積物の火災を自動消火するシステム、災害対策備蓄品の平常時の管理と災害時の配布を支援するシステム、複数の検知器の試験結果情報を統合的に分析して各検知器の故障予兆判断条件を自動調整する監視システム、防災システム、トンネルのような長大な場所に設置される非常用設備、負圧湿式予作動式スプリンクラー設備、携帯情報端末、住宅用火災警報器と連携して火災発生時に居住者の携帯端末へ直接通知をおこなう遠隔火災報知システムなどに関する出願が関係します。
 画像データ処理アルゴリズムの構築、マルチデバイス連携による情報統合システムの設計、リアルタイム通知システムの設計と評価、ユーザーインターフェースの設計と評価、ネットワークアーキテクチャの設計、通信プロトコルの最適化、データ伝送の信頼性解析、システム全体の要件定義、制御システムの統合などが求められます。

 

機械系分野(機械工学、制御工学、人間工学など)

 光透過部の汚損を抑制する火災検知器、放水ノズルに密着して取り付けて放水距離と範囲を制御するデフレクタ、可動式ノズルと赤外線検知を用いた凹凸のある堆積物の火災を自動消火するシステム、橋梁などの構造物の劣化を検知するシステム、データセンターなどに設置される制御盤の火災を消火するシステム、倉庫などの大空間における火災を布製のカーテンで形成した防火区画に限定して消火する防災装置、防火扉を壁面に係止する装置、防災監視システム用受信機、防災用発信機、航空機格納庫などの大空間における火災の消火システム、大規模空間の火災に対応するための昇降式放水装置、低層建物用高所消火装置などに関する出願が関係します。
 流体制御のための要素設計、センサーやアクチュエーターを含むシステム全体の統合設計、設置環境に適した構造および材料の検討、制御システムの安定性と応答性の解析・最適化、開閉機構・懸架機構の構造設計、動作シミュレーションによる機能検証、利用者中心の操作性検討、緊急時における認知・判断・行動プロセス分析などが求められます。

 

材料系分野(材料工学など)

 放水ノズルに密着して取り付けて放水距離と範囲を制御するデフレクタ、簡易消火器具、レンジフード用消火装置、複合消火薬剤などに関する出願が関係します。
 使用環境(水圧・摩耗・腐食)に応じた材料の選定、摩耗、応力、劣化に対する耐久性の評価、部品成形に適した加工法の検討、衝撃応答や内部応力に対する材料特性の評価、異種材料間の界面における相互作用の検討などが求められます。

 

化学系分野(化学工学、応用化学など)

 簡易消火器具、複数の噴霧ヘッドを持つ帯電噴霧設備、レンジフード用消火装置、複合消火薬剤に関する出願が関係します。
 反応メカニズムの解析と速度論的モデルの構築、化学物質の物性測定と組成の最適化、反応熱や圧力変化を含むプロセスの安全性評価、製品の機能性(消火性能)と安定性の検討、帯電液滴と対象物質との相互作用解析、噴霧液の物性(粘度、表面張力など)の最適化などが求められます。

 

物理系分野(応用物理学、物理化学など)

 光電式煙感知器、炎感知器などに関する出願が関係します。
 粒子による光散乱特性の解析、煙と湯気の光学的な識別方法の検討、理論モデルと実験データの検証などが、信号と物質の相互作用解析、物質の光学的特性評価、検知精度を最大化する物理モデルの構築、  などが求められます。

 

建築系分野(建築工学、建築設備工学など)

 倉庫などの大空間における火災を布製のカーテンで形成した防火区画に限定して消火する防災装置、負圧湿式予作動式スプリンクラー設備などに関する出願が関係します。
 防火区画形成時の延焼、煙、熱の挙動解析、仕切手段による防火区画の設計、火災シナリオに基づいたシステム作動の検討、建物内環境と設備システムの統合的設計、設備機器の最適な配置と配管ルートの検討、火災時の流体挙動と熱・煙の拡散解析などが求められます。

 

その他分野(統計学、経営工学など)

 橋梁などの構造物の劣化を検知するシステム、災害対策備蓄品の平常時の管理と災害時の配布を支援するシステム、倉庫などの大空間における火災を布製のカーテンで形成した防火区画に限定して消火する防災装置などに関する出願が関係します。
 数学系ではデータ収集計画の設計、モデルの構築とパラメータの推定、正常・異常の判断基準の定義、統計的有意差の評価、モデルの検証と予測精度の評価、経営系ではプロセス改善モデルの設計、サプライチェーンの最適化検討、システムの導入効果の評価、建築系では防火区画形成時の延焼、煙、熱の挙動解析、仕切手段による防火区画の設計、火災シナリオに基づいたシステム作動の検討などが求められます。

 

 ただし、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。

 

5 まとめ

 火災対策に関係する装置や薬剤、システムに関する出願が大半です。

 ただし、当該出願に関連する技術分野は多様であり、大学の専攻と関連づけるとしたら、主に電気、情報、機械を中心に、材料、化学、物理、建築における研究分野が該当する可能性があります。

 

 本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。

 参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4

 以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。

 

<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年版 東洋経済新報社

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