これまで、食品業界、化学業界、建設業界といった感じで業界ごとに、開発において求められる専門性を紹介してきました。
業界ごとの分類によって、その業界においてどのような専門性が重視されるのかイメージすることができます。
しかしながら、複数の業界にまたがって事業を展開する総合メーカーについては、業界分類では断片的な情報しか見えてきません。
そこで、総合メーカーの開発の全体像と個別の開発において求められる専門性がイメージできるよう1社に絞って見ていきます。
今回は三菱電機を見ていきます。
結論(概要)は以下の通りです。
(1)半導体関連技術:材料系、電気系、物理系、機械系分野(材料工学、電気電子工学、応用物理学、生産工学など)
(2)空調関連技術:機械系、電気系、建築系、環境系の分野(機械工学、電気電子工学、建築学、環境工学など
(3)データ処理関連技術:数学系、情報系その他分野(数学、情報学、情報工学、ソフトウェア工学、通信工学など)
(4)発電機、発動機関連技術:電気系、物理系、機械系の分野(電気工学、応用物理学、機械工学など)
(5)インバータなどの変換装置関連技術:電気系、物理系、情報系、機械系の分野(電気工学、電気電子工学、応用物理学、情報工学、制御工学、機械工学など)
(6)エレベータ関連技術:機械系、物理系、情報系、電気系の分野(機械工学、応用物理学、情報工学、電気電子工学など)
(7)冷凍、冷却関連技術:機械系、電気系の分野(機械工学、電気電子工学など)
(8)制御装置関連技術:情報系、電気系の分野(情報工学、ソフトウェア工学、システム工学、電気電子工学など)
(9)測距技術関連技術:電気系、情報系の分野(電気電子工学、情報工学など)
(10)電信通信関連技術:情報系、電気系の分野(通信工学、制御工学、情報システム工学、情報通信工学、電気電子工学など)
1 企業サーチの概要
特許情報は企業の開発情報だと言えます。
企業サーチは、企業の特許情報から、その企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。
特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。
すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。
2 総合メーカー
2.1 総合メーカーとは
ここでは、いわゆる大企業で複数の分野の製品やシステムを自社で開発・製造する企業を意図します。
企業規模や分野の数など厳密なものではありません。
2.2 サーチ対象
以下の企業を対象にしました。
2.3 使用プラットフォーム
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
3 サーチ結果
3.1 結果概要
開発イメージは下表のとおりです。
|
モノの開発 |
サービスの開発 |
|
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個人向け |
・除湿器 |
|
|
法人向け |
・半導体装置 |
・半導体装置の製造方法 |
モノの開発としては、例えば、除湿器が挙げられます。
サービスの開発としては、例えば、半導体装置の製造方法などが挙げられます。
3.2 出願件数の推移
下図は三菱電機の特許出願件数の推移です。

3000~5000件/年で出願されています。
これらの出願に関わる数の開発がおこなわれていることが推測されます。
なお、出願件数や減少傾向にあることは先に取り上げたパナソニックと類似します。
3.3 主な開発分野
特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。
出願上位10の技術分野を抽出して並べています。
各記号は発明の技術分類をあらわします。
発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。
関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。
特許は難解ですが、GeminiやChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。


分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)
3.4 三菱電機の近年の開発トレンドと求められる専門の例
特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。
ここ10年のトレンドは以下のとおりです。
発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。
(1)H01M|開発トレンドと専門性

H01Lは特定の半導体装置などに関する分類です。
従来の半導体装置では電極パターンの側面が直線状であるため、熱サイクル時に電極パターンと絶縁基板間または封止部材と絶縁基板間で剥離が発生し、絶縁性能が劣化するおそれがありました。
これに対し、絶縁層上に形成された電極パターンが、絶縁層と接する面から突出した段差部と、半導体素子と接する面から連続する特定形状の曲線状側面を持つことを特徴とする半導体装置であり、具体的には、その曲線状側面が両端点を結ぶ直線距離よりも実際の長さが長くされることで段差部が絶縁層との接合面積を増大させて剥離を抑制し、曲線状側面が封止材との接触面積を増大させ、アンカー効果によって熱サイクルによる封止材の剥がれを防ぎ、結果として絶縁性能の劣化を抑制する半導体装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7459395/15/ja
関連する専門分野の例:材料工学(シミュレーションによる剥離発生箇所の予測、材料界面の接着強度試験、熱サイクル試験後の材料劣化分析、高耐熱性かつ低熱膨張率の封止材の選定)、電気電子工学(高電圧印加試験による絶縁破壊電圧の測定、微小電流測定による絶縁抵抗の評価、温度サイクル試験条件の最適化、加速寿命試験による信頼性評価、市場での故障モード解析)
従来のGaN on Diamond構造の半導体装置ではダイヤモンド基板裏面からのレーザー加工によるビアホール形成が表面電極にダメージを与え、導通不良を引き起こし、所望の高周波特性が得られないという課題がありました。また、ダイヤモンドのドライエッチングは時間がかかりコスト増の要因となっていました。
これに対し、窒化物半導体層にあらかじめ第1ビアホールを形成し、ソース電極などを接続した後、ダイヤモンド基板に別途レーザー加工で第2ビアホールを形成し、これら二つの基板をそれぞれのビアホールの位置を合わせて接合し、最後に接地電極を形成することで、ビアホール形成工程を窒化物半導体層とダイヤモンド基板で分離し、ダイヤモンド基板へのレーザー加工が窒化物半導体層上の電極に直接的なダメージを与えるのを防ぎ、電極の導通不良を抑制し、ソースインダクタンスの増加を防ぎ、結果として高周波特性の劣化を抑制することが可能となる半導体装置の製造方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7592225/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(高周波測定によるSパラメータの評価、インピーダンス整合回路の設計、デバイスシミュレーションを用いた電界分布や電流密度の解析)、応用物理学(さまざまなレーザー光源によるビアホール形状の制御、レーザー照射時のダイヤモンドの吸収特性や熱伝導の解析、加工時に発生するプラズマやデブリの分析、表面電極への熱影響を最小化する加工条件の探索)
従来の半導体装置では複数の半導体チップを並べて実装する際に正確なチップ配置位置の特定が難しく、製造工程における作業性の低下や不良発生のリスクがありました。
これに対し、凹部と段差を有する第1の回路パターンと、その凹部内に幅が段階的に広がる第2の回路パターン上に複数の半導体チップが実装された半導体装置であって、半導体チップが第2の回路パターンの各幅広部分を挟むように対で配置されてワイヤ接続される構造において、第1の回路パターンに設けられた段差が半導体チップ実装時の位置決めの目安となることで、チップ配置の精度が向上し、製造工程における作業性が改善され、製造不良のリスクを低減し、生産性の向上に寄与する半導体装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7647668/15/ja
関連する専門分野の例:生産工学(微細な回路パターン形成プロセスの検討、エッチング条件の最適化による高精度な凹部形状の実現、段差形状がチップ実装精度に与える影響の評価、自動チップマウンターによる段差を利用した高精度なチップ実装方法の検討)、電気電子工学(回路シミュレーションによる電流分布やインダクタンスの解析、チップ配置やワイヤボンディング方法が寄生インダクタンスに与える影響の評価、高周波特性測定による実装構造の評価、熱解析シミュレーションによる発熱分布の評価と放熱対策の検討)
(2)F24F|開発トレンドと専門性

F24Fは空気調節、空気加湿、換気などに関する分類です。
従来の加湿器ではドレンポンプの動作回数に基づいて電磁弁のリークを判断していましたが、リーク水量や速度が不明確なため微量のリークでも異常と判定してしまう問題がありました。
これに対し、給水電磁弁のリークを検知するため加湿停止時に電磁弁を閉じ、ドレンポンプ停止後の水位変化を監視し、一定時間内に水位が基準値を超えた場合に電磁弁の不具合を疑い、フラッシング運転を実施した後、再度水位上昇を監視し、基準値を超えた場合に電磁弁の動作不良と判定して異常を通知するという、水量と時間に基づいた二段階判定により、微小なリークと明確な故障とを区別し、従来の動作回数による判定よりも正確なリーク検知を実現する加湿デバイスが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7650857/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(給水電磁弁の微小なリークを検知するための水位センサの選定と配置、ドレンパンの形状設計による水位変化の最適化)、電気電子工学(水位センサからの信号処理、給水電磁弁とドレンポンプの制御アルゴリズムの設計、異常判定ロジックの構築)
従来の空調システムでは空調された空間から非空調空間への送風を行う際に排気装置によって空調空気が屋外へ排出され、空調負荷の増加や温熱環境改善効果の低下を招くという問題がありました。
これに対し、空調される第1空間と非空調の第2空間、両空間に繋がる第3空間を有する建物において、第1空間の空気を第3空間へ送る送風装置と第2空間から屋外へ排気する第1排気装置を備え、制御装置が送風装置の運転時、第3空間の圧力が第1空間より高くなるよう両装置が連携制御されることで、外気が第3空間へ侵入するのを防ぎつつ第1空間の空調空気を第3空間へ効率的に送り込み、建物全体の温熱環境を改善する空調システムが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7621321/15/ja
関連する専門分野の例:建築学(建建物各空間の気圧差シミュレーションによる送風量と排気量の最適化、温熱負荷計算による空調効率の評価)、機械工学(送風機と排気ファンの効率的な選定と配置、ダクト内の流体抵抗解析、圧力損失の低減設計)
従来の無給水加湿機能付き空気調和機では加湿水の細菌繁殖を防ぐために加熱殺菌が必要でしたが、電気ヒーター等による加熱は消費電力の増大を招くという問題がありました。
これに対し、外気から生成した水を加湿に利用する際に圧縮機と室内熱交換器間の高温高圧冷媒の一部をバイパスさせ、集水槽の水を加熱する付属熱交換器を搭載することで暖房運転時の排熱を利用して加湿水の細菌繁殖を抑制するとともに、加湿エレメントに供給する空気を加熱する空気予熱器と加湿された空気を室内に送る前に加熱する空気加熱器により加湿能力の向上と結露防止を図り、消費電力の増加を抑制しつつ加湿と室内環境の維持を図る空気調和機が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7490143/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(冷媒サイクルの解析と効率向上の検討、圧縮機や熱交換器などの要素部品の設計と最適化、空気の流れや温度分布のシミュレーション)、環境工学(加湿水における微生物の制御方法の設計、室内空気質の評価と改善策の検討、環境負荷の低減に向けた材料選定やプロセス設計)
(3)G06F|開発トレンドと専門性

G06Fは電気的デジタルデータ処理に関する分類です。
従来のデータ改ざん判定システムはデータが特定の統計分布に従うことを前提としていましたが、検査成績書のデータは必ずしもそのような分布に従わないため、不正検出の精度に課題がありました。
これに対し、複数の検査値から相対度数分布を作成し、その分布が持つ山の数、歪度、尖度といった少なくとも1つの分布形状特性に対応したパラメータ値を算出し、これらのパラメータ値とあらかじめ定められた基準(例えば有意水準)に基づいて正規な分布から逸脱しているか否かを判定することで、特定の統計分布に頼らず不正の有無を診断する品質不正検出装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7520270/15/ja
関連する専門分野の例:数学(検査値の分布特性の分析手法の検討、相対度数分布の作成方法の最適化、分布形状特性を定量的に評価するパラメータの設計、不正な改ざんパターンが分布形状に与える影響の統計的モデリング)、情報学(大量の検査成績書データの収集・整理・分析、不正データのパターン抽出と可視化、統計モデルや機械学習モデルを用いた不正検出アルゴリズムの設計)
従来のサービス連携では個々のサービス間の連携ロジックが複雑化し、新たなサービスの追加や変更に手間がかかるという問題がありました。また、データとサービスの関連付けが静的であり、動的な連携が困難でした。
これに対し、データと関係性を定義するデータモデルに基づき、アプリケーションデータのイベントを検出し、対応サービスを自動起動するサービス連携装置であって、データモデル管理部でイベントを捉え、サービス起動部がデータに対応づけられたサービスを特定し、データを付与して起動することで、データ変化がデータモデルに従いサービス起動をトリガーすることで個別の連携ロジック記述が不要となり、データモデル変更のみで連携サービスの変更・追加が可能となり、システム全体の連携構造が明確化され保守性も向上するサービス連携装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7634798/15/ja
関連する専門分野の例:ソフトウェア工学(データモデルの表現形式(例えば、グラフ構造)の選定と実装、データイベントの効率的な検出アルゴリズムの設計)、情報工学(複数のサービスが連携して動作するための基盤技術の検討、データモデル管理部におけるデータの整合性維持、サービス起動時の非同期処理や並行処理の設計)
従来のマイクロサービスの遅延判定はサービス間の応答時間に着目していたため、遅延の原因となっている特定のクエリを特定できず、問題箇所の特定に時間を要するという課題がありました。
これに対し、複数のクエリが予め関連付けられたデータモデルにおいて、各クエリを用いる1つ以上のマイクロサービスの応答時間をクエリごとに取得する取得部を備え、判定部が今回の応答時間と過去の応答時間に基づいてクエリごとに遅延が発生しているか否かを判定し、推定部がデータモデルと判定された遅延クエリに基づいて、遅延クエリを用いるマイクロサービス、またはデータモデルで関連付けられた上位階層のクエリの少なくともいずれかに遅延が発生していると推定することで、ユーザがマイクロサービスにおける遅延の原因となっているクエリを特定でき問題解決を迅速におこなうことできる遅延推定装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7603896/15/ja
関連する専門分野の例:ソフトウェア工学(マイクロサービスアーキテクチャの設計、データモデルの設計と最適化、応答時間計測システムの設計、遅延判定アルゴリズムの設計、推定ロジックの設計、システム全体の監視・運用機能の設計)、通信工学(マイクロサービス間のデータ伝送方式の選定と最適化、ネットワークプロトコルの設計、通信エラー検出・訂正方式の探索)
(4)H02K|開発トレンドと専門性

H02Kは発電機、発動機に関する分類です。
従来の回転電機では高効率化と高トルク化の両立が難しく、特に永久磁石型同期電動機においては磁石からの磁束変動による渦電流損失が課題となっていました。また、ロータコアの強度確保と磁気特性の最適化もトレードオフの関係にありました。
これに対し、高トルク化のためロータ磁石が径方向に2層以上の多層構造で配置され、渦電流損失の低減のためロータコア外周面にd軸に対して対称な一対の低透磁率部が特定の電気角範囲に2組以上分散して設けられ、全ての前記低透磁率部の周方向の少なくとも一部の領域は前記磁石(永久磁石)スロット間のブリッジ領域にも配置された、これらの構成により多層磁石が高トルクを生み出し、特定の低透磁率部配置が磁束の流れを最適化して渦電流の発生を抑制し、ブリッジ領域への低透磁率部配置はロータコアの強度維持にも寄与することで結果として高効率かつ高トルクな回転電機を実現する回転電機が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7555483/15/ja
関連する専門分野の例:電気工学(多層磁石構造における磁束密度の分布解析と高効率化設計、低透磁率部の形状による磁気抵抗の変化とトルク特性への影響評価)、電子工学(回転電機の制御に用いるマイコンの選定と制御プログラムの設計、ロータの位置や速度を正確に検出するためのセンサ回路の設計、インバータ回路の小型化・高効率化のためのパワー半導体デバイスの選定)
従来の電動機では回転子の回転に伴い固定子から漏れ出す磁束が近傍に配置されたセンサ配線などの電線にノイズを誘起するという問題がありました。特に、モータの駆動電流が変化する際に漏れ磁束も変動し、ノイズが大きくなることがありました。
これに対し、固定子の最端部に導電性を持つ一対の導電部が信号線を挟むように配置され、固定子の金属板と導電部対で閉ループが形成され、漏れ磁束の変動時に、その変動を打ち消す渦電流を発生させることで、信号線への漏れ磁束の影響を低減し、ノイズの発生を抑制する電動機が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7531757/15/ja
関連する専門分野の例:応用物理学(電動機内の磁場シミュレーションと最適化、漏れ磁束の物理的な挙動の解析と抑制メカニズムの解明、電磁ノイズの発生原理の解明と低減対策の検討)、電気工学(位置センサからのアナログ信号のデジタル処理回路の設計、信号線に混入するノイズのフィルタリング技術の探索)
従来のモータでは磁気センサが回転子の磁石だけでなく、巻線に通電した際に発生する磁束も検知してしまうため、回転角度や偏心量の検出誤差が大きくなるという問題がありました。
これに対し、固定子の隣接するティース間のスロットに複数の磁気センサが特定の配置で設けられ、少なくとも一部の磁気センサの両側のティースに巻回された巻線が、同一の相でかつ通電方向が互いに逆になるように構成されることで、巻線に通電した際に磁気センサ位置で発生する磁束が互いに打ち消し合い、磁気センサは回転子の磁石からの磁束を高感度に検出し、制御部が特定の配置関係を持つ3組の対となる磁気センサの信号の和または差を演算することで、回転角度と偏心量の少なくとも一方を高精度に演算し、特に巻線電流による影響や高調波成分を除去し、検出精度が向上したモータシステムが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7361995/15/ja
関連する専門分野の例:電気工学(モータの磁気回路モデルの構築と解析、巻線電流と発生磁束の関係の分析、磁気センサ出力信号の特性評価、回転角度・偏心量検出の原理と誤差要因の検討、モータ制御システム全体の設計におけるセンサ情報の活用方法の検討)、機械工学(モータの作成と部品配置の検討、磁気センサの取り付け構造の設計、回転子の偏心やアンバランスによる振動解析、センサ信号への振動ノイズの影響評価と対策)
(5)H02M|開発トレンドと専門性

H02Mは交流-直流変換装置などに関する分類です。
従来の鉄道車両用電力変換装置ではスイッチング素子の高速化に伴い漏れ電流や零相電流が増加し、周辺機器へのノイズ問題を引き起こしていました。漏れ電流低減のために交流電力線とコモンモード電流還流線を同一コアに通す技術がありましたが、零相電流が増加する課題がありました。
これに対し、三相インバータ側に配置された第1の磁性体コアと推進モータ側に配置された第2の磁性体コアの両方に三相交流電力線とコモンモード電流還流線が貫通し、これらのコア間に三相交流電力線のみが貫通する第3の磁性体コアが配置された鉄道車両用電力変換装置において、少なくとも1つの交流電力線が第2のコアから引き出される際に他の交流電力線と平行にならないような配線構造によってローカルな磁束の発生を抑制し、非磁性金属板などの追加の抑制手段と合わせて、零相電流の増加を抑えつつ、漏れ電流を効果的に低減し、装置の信頼性向上とノイズ低減に貢献する鉄道車両用電力変換装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7607846/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(インバータの回路方式の検討と設計、スイッチング素子の選定と駆動回路の設計、ノイズ対策部品の選定と配置設計)、応用物理学(電磁場シミュレーションによる磁束分布の可視化と解析、磁性体コアの透磁率や飽和特性の測定と評価、非磁性金属板における渦電流の発生と磁場抑制効果の解析、周波数特性や材料物性がノイズ低減効果に与える影響の評価)
従来の電子機器では保守作業前に電子制御式のスイッチで高電圧コンデンサを放電する方式がありましたが、スイッチの故障により放電できない可能性がありました。また、複数のカバーを持つ筐体において、不用意にメインカバーが開かれることによる感電のリスクがありました。
これに対し、保守作業の安全確保のため電子機器の筐体カバー開閉に連動する二重の安全機構を備え、第1に、メインカバー(第1カバー)が開くと機械的な移動制限部材が放電スイッチをオンにし、高電圧の電子部品を確実に放電し、カバーが閉じると放電スイッチはオフになり、第2に、他のカバー(第2カバー)が施錠されていない場合、その鍵保持部の開閉制限機構がメインカバーの閉鎖を物理的に阻止することで、すべての危険な箇所がカバーで覆われ、かつ施錠されるまでメインカバーは開放状態を維持され、保守作業者の感電リスクを低減する電子機器が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7542783/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(筐体とカバーの機械的な結合方法の設計、インターロック機構の機械的な閉鎖、阻止方式の考案、放電スイッチの機械的な接点構造の設計)、情報工学(各種センサーの選定とインターフェース設計、マイクロコントローラを用いたインターロック制御プログラムの設計、安全シーケンスを実装するためのソフトウェア設計)
従来の駆動回路ではリカバリサージ電圧が生じる素子が特定の自励式素子である場合にのみ有効な抑制方法が提案されていましたが、それ以外の素子や回路構成では十分な抑制効果が得られないという問題がありました。
これに対し、入力電圧源と出力電圧源の間に接続されたスイッチングレグ内に直列接続された第1および第2のスイッチング素子を駆動する回路を備える電力変換装置であって、第2のスイッチング素子のターンオフ時に発生するリカバリサージ電圧をダイオードで検出し、その過渡的な電圧変動に応じた電流を受動素子を通して、第1のスイッチング素子の制御電極にフィードバックすることにより、リカバリサージ電圧が発生するタイミングに合わせて第1のスイッチング素子のターンオフ動作が調整され、過渡的な高電圧であるリカバリサージ電圧が効果的に抑制されることで信頼性向上に貢献する電力変換装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7592219/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(各スイッチング素子の動作特性とリカバリ現象の解析、ダイオードや受動素子の選定と特性評価、サージ抑制回路の効果検証)、制御工学(リカバリサージ電圧のモデリングとシステム同定、適応フィルタリングやオブザーバを用いたサージ電圧検出、デジタル信号処理による高速な制御アルゴリズムの実装)
(6)B66B|開発トレンドと専門性

B66Bはエレベータなどに関する分類です。
従来のロープシステムではクラウン付き滑車によるロープの蛇行抑制効果があるものの、ロープ内の張力分布が不均一になりやすく、早期の寿命低下を招く可能性がありました。特に、ロープ幅方向で異なる位置にある支持部材に不均等な張力が加わることで、局部的な負荷集中や摩耗が生じやすかいという問題がありました。
これに対し、クラウンが形成された滑車と断面が矩形状のロープを備え、ロープは長手方向に並ぶ複数の支持部材と被覆材を有し、幅方向に第1部分と第2部分を含み、第1部分は幅方向の中央側に位置し、第2部分よりも小さい第1長手ばね定数を持つことで滑車に巻き掛けられた際に周長の差によって生じるロープ各部の伸び差を吸収して張力分布を均一化し、ロープの局部的な負荷集中を緩和することで早期の寿命低下を抑制するロープシステムが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7448100/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(ロープシステム全体の設計、駆動綱車やそらせ車の形状(クラウン形状を含む)がロープの応力分布や寿命に与える影響の解析)、応用物理学(ロープを構成する繊維や被覆材の微細構造の解析、ロープの強度や弾性率などの力学的特性に影響を与える要因の特定)
既存技術ではエレベーターを遠隔から(通信デバイスを使って)呼び出した人が、本当にそのエレベーターを利用したのかどうかを正確に判断することが難しいという問題がありました。
これに対し、利用者の通信デバイスから取得される行動データ(位置情報、加速度、Beacon信号など)と、エレベーターの運行実績(出発・到着時刻、階床など)を連携させて利用結果判定部がこれらのデータを照合することで、利用者が発行した利用要求に応じて実際にエレベーターを利用したか否かを詳細に推定する制御装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7546817/15/ja
関連する専門分野の例:情報工学(利用者がエレベーターを実際に利用したか否かを高精度に判定するモデルの構築、呼び出し後の利用者の行動が乗車や降車といった利用行動に合致するかどうかを確率的に判定するアルゴリズムの設計)、心理学(エレベーターの呼び出しから利用完了までの利用者の行動の観察・分析、精度の高い利用判定ロジックや利用マナー向上のための評価指標の設計)
既存技術では近接操作が可能なタッチパネルにおいて視覚障がい者が操作ボタンを探す際に顔が近づいた場合や車椅子利用者が斜めから操作した場合に意図しない誤認識が発生する可能性がありました。
これに対し、非接触近接操作が可能なタッチパネルディスプレイを備えたエレベーターの乗場操作表示器であって、第一モード(一般利用者向け)で検出された近接操作の反応エリアの面積が閾値よりも大きい場合に障がい者(特に視覚障がい者や車椅子利用者)による操作である可能性が高いと判断し、第二モード(障がい者向け)へ自動的に移行させる制御装置を備えることで顔の接近や斜めからの操作による意図しない誤認識を回避し、物理的な障がい者対応ボタンを探す手間を省き、視覚的・身体的な制約のある利用者にとってよりスムーズで快適な操作を可能にするエレベーターの乗場操作表示器が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7563420/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(反応エリアの面積を正確に検出するためのセンサー制御の検討、信号処理回路および制御アルゴリズムの設計)、情報工学(利用者の操作ログやセンサーデータの分析、障がい者と一般利用者の近接操作の特徴量の違いを明確化する機械学習モデルの構築)
(7)F25B|開発トレンドと専門性

F25Bは冷凍、冷却装置に関する分類です。
従来の空気調和装置では外気温度によって冷媒が偏在し、冷却・除湿運転時に液バックや過熱運転が発生する可能性があり、圧縮機の故障や能力低下を招くという問題がありました。
これに対し、運転切り替え前に第1開閉弁と第2開閉弁を同時に開状態とし、第3開閉弁を閉状態にすることで、主回路と冷却回路の冷媒を一時的に連通させ系全体の冷媒量を均一化する運転切替え制御を実施します。具体的には、第1開閉弁が通常運転時に主回路への冷媒の流れを制御し、第2開閉弁が冷却回路への冷媒の流れを制御し、切替え時には両方が開くことでそれぞれの回路に偏っていた冷媒を移動させ、第3開閉弁がバイパス回路を閉じることで均一化運転中に不要な冷媒の流れを防ぐという運転切替え制御により、冷却運転時には凝縮器の過冷却度と凝縮温度または内液温に基づき冷媒分布を制御し、過冷却度が低い場合には特定の条件に応じて第1膨張弁で再熱器の過冷却度を制御して運転モード移行時の冷媒バランスを最適化し、安定した冷却・除湿運転をおこなうことができる空気調和機が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7630722/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(空気調和装置全体の機械設計、熱交換器の構造設計と性能評価、圧縮機の内部構造や作動原理の改良によるエネルギー損失低減の検討)、電気電子工学(制御回路の設計、各種センサーの特性評価と最適な配置設計、膨張弁や開閉弁を精密に駆動するための回路設計)
従来の冷媒分配器では配管の屈曲部において冷媒の流れが偏り、各伝熱管への冷媒分配量が不均一になることで熱交換効率が低下する問題がありました。
これに対し、第1配管部と第2配管部を備え、第2配管部は一対の並列管部と連結管部を有する冷媒分配器であって、第1配管部が特有の屈曲構造(第1延伸管部から左右方向と鉛直方向の両方に直交する前後方向の一方側に屈曲した第2延伸管部、さらにそこから屈曲して並列管部の一方に繋がる第3延伸管部)を有する構成により、屈曲部で生じる冷媒の偏りを抑制し、結果として第2配管部において冷媒を二つの流れに均等に分岐させ、二つの伝熱管へ均等に分配することを可能にする冷媒分配器 が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7387074/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(熱交換器全体の設計、冷媒分配器を含む配管系の最適化)、電気電子工学(冷媒流量制御システムの設計、運転状態のモニタリングシステムの構築、制御回路設計、運転効率最適化アルゴリズムの設計)
従来の冷凍サイクルシステムでは熱媒体流量の変動に対してポンプ制御だけでは追従が遅れ、熱媒体温度が不安定になる場合がありました。
これに対し、熱媒体熱交換器を流れる熱媒体の流量変動を流量取得装置で検知し、その変動値に基づいて制御装置が圧縮機の運転容量を変化させるシステム、具体的には、流量変動値と運転容量の変化分を対応付けた第1対応情報を記憶し、この情報に基づき、流量変動に応じて圧縮機の運転容量を調整することで、熱媒体流量の変動に迅速に対応して冷媒量を調整し、熱媒体熱交換器における熱交換を安定させ、熱媒体の温度安定性を高めた冷凍サイクルシステムが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7630716/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(冷凍サイクルシステムの設計、熱交換器の性能評価と最適化)、電気電子工学(制御回路の設計とプログラミング、流量センサー、温度センサー、圧力センサーなどの最適な配置設計、システムの状態に応じた最適な運転モードの自動選択アルゴリズムの設計)
(8)G05B|開発トレンドと専門性

G05Bは制御装置などに関する分類です。
従来の異常検知では設備の多様な運転モードにおけるデータ量の偏りにより、データが少ないモードで発生した正常な状態を異常と誤検知する可能性がありました。また、異常検知結果が出力されても、その結果がデータ豊富なモードに基づいているのかデータが少ないモードに基づいているのかを判断できず、最終的な停止判断をおこなう人の負担が大きいという問題がありました。
これに対し、センサ信号の異常検知結果が得られた特定時刻範囲における制御信号の時系列データを検証データとし、過去の制御信号の時系列データから学習した制御信号モデルを用いて当該特定時刻範囲における制御信号の異常度合いを取得し、この異常度合いに基づいて制御信号の信頼性を算出し、センサ信号の異常検知結果に付加情報として出力することにより、利用者が異常検知結果が信頼性の高い制御状態(過去データが豊富)で検出されたのか、低い制御状態(過去データが少ない)で検出されたのかを容易に判断できて設備の停止判断におけるコスト低減につながる異常検知装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7562055/15/ja
関連する専門分野の例:情報工学(異常検知アルゴリズムの設計、機械学習モデルの構築、制御信号の時系列データからの特徴量抽出方法の検討、異常度合いから信頼性を算出する具体的な手法の検討)、電気電子工学(各種センサーから得られる信号の特性分析、設備全体の制御システムのモデル化、制御信号と設備の状態との関連性の分析、異常発生時の制御信号の挙動分析、ハードウェアとソフトウェアが連携した異常検知システムの設計)
従来のPLCのイベントログ分析では単一のイベントログしか再生表示できなかったため、異なる時点や状況下で発生した複数のイベントを比較検討する際にユーザは個別のログを照らし合わせる必要があり、分析作業の負担が大きいという問題がありました。
これに対し、コンピュータを、PLCのイベントログを取得するログ取得手段、ユーザが複数のイベントから2つ以上のイベントを指定するイベント指定手段、指定された複数のイベントを並行表示する画面を生成する画面生成手段として機能させ、イベント指定手段がユーザが指定した第1時刻の第1イベントと第2時刻の第2イベントを指定し、画面生成手段がこれらのイベントを同期的に再生するよう、それぞれのイベントを示す画像を別々の領域に生成するとともにイベント発生時刻を共通のシークバー上にマーカで表示することで、ユーザが異なる時間に発生した複数のイベントの関連性や時間的なずれを容易に把握でき、PLCの異常原因の特定や動作解析を効率的におこなうことができるプログラムが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7433558/15/ja
関連する専門分野の例:情報工学(ユーザインターフェース(UI)およびユーザエクスペリエンス(UX)の設計、イベントログデータを効率的に処理するためのアルゴリズム設計)、電気電子工学(PLCと連携するデータ収集システムの設計、イベント発生タイミングを高精度に同期させるためのハードウェア・ソフトウェア設計)
従来のPLCプログラミングではプロジェクトで使用するメモリ容量が要素の種類毎に予め割り当てられた容量を超過した場合、ユーザは表示された使用容量を参考に手作業で割り当て容量を変更する必要があり煩雑で時間がかかるという問題がありました。
これに対し、コンピュータを、PLCメモリのアドレス空間情報データベースから情報を取得しプロジェクト要素を割り付けることで要素種類毎の使用容量と割当容量を計算する計算手段、これらの容量に基づいて要素種類毎の割当容量を決定する決定手段、決定された割当容量に基づきデータベースのアドレス空間情報を変更する変更手段、使用容量と決定された割当容量を画面表示する表示手段として機能させ、メモリ使用量が割り当て容量を超過した場合などでも自動的に割り当て容量が調整され、ユーザが手動で設定変更をおこなう手間が省け、効率的なプログラミングを支援するプログラミングが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7412642/15/ja
関連する専門分野の例:ソフトウェア工学(PLCのメモリ管理モデルに基づいた自動割り当てアルゴリズムの設計、ユーザがメモリ使用状況を視覚的に把握できるようなUI/UXの設計)、システム工学(PLCを含む制御システム全体の最適化、要求分析に基づいたメモリ管理機能を含むプログラミング支援システムの設計)
(9)G01S|開発トレンドと専門性

G01Sは無線測距、電波測距などに関する分類です。
従来のレーダ装置ではマルチパス環境下(複数の反射経路で信号が届く環境下)で物体の高度推定精度が低下し、誤判定が生じるという問題がありました。
これに対し、受信信号から生成したレンジドップラーマップに基づき、物体の高度の標準偏差と、直接波とマルチパス波が干渉するレンジ間隔を算出し、算出した標準偏差とレンジ間隔に基づいて物体が移動体と衝突する可能性のある高さに存在するか否かを判定することで、マルチパス環境下でも単一の受信部で高精度な衝突判定を可能にする信号処理装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7504332/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(レンジドップラーマップの生成方法の検討、マルチパス波の影響を軽減する信号処理技術の探索、衝突判定アルゴリズムの設計、情報工学(レンジドップラーマップからの特徴量抽出方法の検討、高度の標準偏差やレンジ間隔に基づく機械学習モデルの構築、複数のセンサ情報を統合した判定ロジックの設計)
従来のレーダ装置では電波干渉を抑制するためにレーダ信号の送信を一時的に停止し、その間に電磁ノイズを観測する必要がありました。
これに対し、受信した信号を局部発振信号とミキシングすることで、情報を効率的に処理するために分けられた二つの成分であるI軸ビート信号とQ軸ビート信号を作り出し、これらの信号をデジタルデータに変換した後、高速フーリエ変換(FFT)により物体までの距離と速度を測定し、I軸ビート信号とQ軸ビート信号それぞれに対してFFTを距離方向に適用する処理(レンジFFT)をおこない、その結果を使って、電磁ノイズという不要な信号を打ち消すための数値を計算することで、レーダー信号を送っていない時間を作らなくても、電磁ノイズの影響を少なくして正確に物体を捉えることができるレーダ装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7607845/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(局部発振信号からI軸・Q軸信号を生成する移相器やミキサーの特性評価と最適化、デジタル信号処理回路の設計、FFTアルゴリズムの最適化)、情報工学(I軸・Q軸デジタルデータからの複素信号生成、FFT演算、レンジ・ドップラ速度の推定アルゴリズムの設計)
従来の測距装置ではサンプリング周波数が低い場合にパルス信号のサンプリングタイミングのずれにより受信タイミングがばらつくという問題がありました。
これに対し、受信したパルス信号に対して時間方向に移動平均して平滑化し、その立上り部分を抽出し、抽出した立上り部分の波形をガウス関数でフィッティングし、得られた関数と閾値との交点における時間インデックスの解析解を算出することでパルス信号の受信タイミングを決定し、この決定したタイミングに基づいてパルス信号の到達時間を算出し、目標との距離を算出し、パルス信号の立上り部分の波形をフィッティングすることにより、実質的にアップサンプリングされた状態となり、サンプリングタイミングのずれによる影響を低減して受信タイミングのばらつきを抑制する測距装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7580680/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(UWBパルス信号の特性分析、移動平均処理や立上り抽出アルゴリズムの設計、ガウス関数によるフィッティングアルゴリズムの設計)、情報工学(移動平均処理や立上り抽出の効率的なアルゴリズム設計、ガウス関数フィッティングのライブラリ調査と適用)
(10)H04L|開発トレンドと専門性

H04Lはデジタル情報の伝送に関する分類です。
従来のリング状ネットワークでは伝送装置が故障するとネットワークが分断され、通信が途絶える可能性がありました。
これに対し、それぞれ独立してパケットの送受信とルーティングを担う第1および第2の伝送部により冗長性が高められ、電源オフ故障時にはバイパス制御部がこれらの伝送部のポート間を接続し、ネットワークの物理的な接続性を維持し、隣接する伝送装置でバイパス制御がおこなわれている場合、第1および第2の伝送部の少なくとも一方で受信したパケットが故障した隣接装置に接続された機器宛てであればパケット制御部がそのパケットを破棄する、というように二つの伝送部が独立して動作することで、一方の伝送部に障害が発生しても他方の伝送部が通信を継続できる可能性を高め、故障した隣接装置宛の不要なパケットをそれぞれの伝送部で検知・破棄することで、ネットワーク全体の無用なトラフィック増加を防ぎ、安定した通信を維持する伝送装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7630740/15/ja
関連する専門分野の例:通信工学(リング状ネットワークの故障パターン分析とバイパス経路の設計、隣接装置の死活監視方法の検討、故障時のパケットルーティング制御アルゴリズムの設計)、情報システム工学(リングネットワークの規模やトラフィック量に応じた最適なハードウェア選定、ネットワーク機器の冗長構成と自動切り替えメカニズムの設計、故障時のアラート通知やログ管理システムの構築)
従来の時刻同期システムでは優先度設定の不備や低い優先度の装置が後から接続されることによって、意図せず基準時刻配信装置(グランドマスタ)が切り替わり、ネットワーク全体の時刻が大幅に変動する問題がありました。
これに対し、ネットワーク内で自己が最も優先度が高いと認識した場合に、自装置に設定された優先度をさらに引き上げる優先度制御部を備えることにより、時刻同期プロトコルのみを解釈可能な装置であっても、ネットワーク内でより安定的にグランドマスタとしての地位を確立し、不意の基準時刻の変更を防ぐことができる時刻同期装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7654171/15/ja
関連する専門分野の例:制御工学(ネットワーク化された制御システムにおける時刻同期の安定性解析、優先度制御アルゴリズムの設計)、情報通信工学(ネットワークプロトコルの設計、分散システムにおける合意形成アルゴリズムの検討)
既存の家電機器ネットワークシステムでは他の機器の機能を利用する際にサーバを介して属性や制御プログラムを取得する必要があり、仮想機器のような複合的な機能に対する直接的な操作は考慮されていませんでした。利用者が複数の機器を連携させるためには個々の機器に対して操作をおこなう必要があり、煩雑でした。
これに対し、第1仮想機器への制御情報取得部と、その制御内容が第1仮想機器で許容されている場合に第1仮想機器の制御メソッドに基づき異なるプロパティの機器制御情報や第2仮想機器制御情報を生成する制御情報生成部を備えることで、利用者が第1仮想機器を操作する際、許可された範囲内であれば連携機器や第2仮想機器を意識せず所望の連携動作が可能(例えば、「加湿機能付き空気清浄機」への加湿レベル設定で、空気清浄機の運転と加湿器の設定が自動調整される)となる制御装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7438465/15/ja
関連する専門分野の例:情報工学(機器制御情報の生成アルゴリズムの開発、クラウドサーバとの効率的なデータ通信方式の設計、スマートフォンアプリのUI/UX設計)、電気電子工学(家電機器の制御信号の解析とインターフェース設計、各種センサーからのデータ取得回路と信号処理アルゴリズムの設計、無線通信モジュールの選定と制御)
3.5 共同出願人との開発例
共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。
技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。
共同出願人(筆頭出願人)は以下のとおりです。

三菱電機ホーム機器との共同出願が突出しています。
従来の除湿機では空気清浄機能と除湿機能を切り替える構成や同時におこなう場合の設定が煩雑であり、運転音の低減と空気清浄能力の維持を両立させることが困難でした。
これに対して、バイパス風路の開閉手段、それを制御する制御手段および開閉指示手段を備えることで、運転音を静かにしたい場合はバイパス風路を開き、空気清浄もおこないたい場合は閉じるという簡単な設定が可能であることにより、除湿能力を維持しつつ利用者のニーズに応じて運転音と空気清浄能力を調整できる除湿機が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7666398/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(効率的な空気の流れを実現するための筐体内部の風路設計、送風手段の選定と配置、開閉機構の設計と駆動機構の選定)、電気電子工学(マイコンを用いたフラップの開閉制御アルゴリズムの設計、操作表示部のインターフェース設計、各駆動部品の制御回路設計)
従来のエレベーター装置では調速ロープのうちかごに接続されていない部分が揺れると、かごの位置によってはロープが引っ掛かる可能性がありましたが、これを防止する効果的な手段は確立されていませんでした。
これに対して、特定の開始条件が成立すると、制御装置が振れ止めの設置位置に応じて予め設定された第1退避位置にかごを移動させる退避運転をおこない、この第1退避位置はロープの振動の節または振幅が小さくなる位置、つまりロープが大きく揺れにくい高さに設定され、退避運転開始時のかごの位置が第1退避位置より上方の第1範囲、下方の第2範囲または第1退避位置を含む第3範囲のいずれにあるかを判定(第1、第2範囲であれば第1退避位置へ移動させ、第3範囲であれば移動させない)し、ロープが揺れにくい第1退避位置にかごを移動させることでロープが大きく振れてかごに接触したり引っ掛かったりするリスクを低減し、安全性を高めたエレベータが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7052933/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(調速ロープの振動モード解析シミュレーション、地震時におけるロープと振れ止めの接触挙動の分析、かごの移動距離と停止精度を考慮した退避制御ロジックの設計)、情報工学(地震波形データの解析と開始条件の閾値設定、かごの現在位置を正確に把握するためのエンコーダ信号処理、退避目標位置へのスムーズな移動制御アルゴリズムの設計)
4 開発に求められる専門性
上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。
上記各特許情報には以下の人材が関わっていると言えます。
優先順位が高いと思われるものに焦点を当てています。
(1)半導体関連(H01L)
・材料系、電気系、物理系、機械系分野(材料工学、電気電子工学、応用物理学、生産工学など)
材料系では半導体などを構成する素材の評価、選択などが、電気系では回路設計や設計品の評価、物理系では物理化学的現象の解析や最適条件の探索、機械系では回路の成形プロセスの設計などが求められます。
(2)空調関連(F24F)
・機械系、電気系、建築系、環境系の分野(機械工学、電気電子工学、建築学、環境工学など)
機械系では各部や全体の構造設計、電気系や運転制御設計、建築系では建物全体での熱移動の評価、環境系では空気質の評価や改善などが求められます。
(3)データ処理関連(G06F)
・数学系、情報系その他分野(数学、情報学、情報工学、ソフトウェア工学、通信工学など)
各種情報の分析、目的とする情報処理をおこなうアルゴリズム設計、システム設計 などが求められます。
(4)発電機、発動機関連(H02K)
・電気系、物理系、機械系の分野(電気工学、応用物理学、機械工学など)
電気系は電気回路や信号処理に関する設計、物理系は各種事象の物理的な解明、機械系は装置の構造設計などが求められます。
(5)インバータなどの変換装置関連(H02M)
・電気系、物理系、情報系、機械系の分野(電気工学、電気電子工学、応用物理学、情報工学、制御工学、機械工学など)
電気系は装置の回路設計、物理系は電磁場などの物理現象の解析、情報系は各種目的とする効果を得るためのプログラムの設計、機械系は装置や装置内の機構設計などが求められます。
(6)エレベータ関連(B66B)
・機械系、物理系、情報系、電気系の分野(機械工学、応用物理学、情報工学、電気電子工学など)
機械系は装置の設計、物理系は対象物の物性評価、情報系は所望の情報処理をおこなうためのモデル構築、アルゴリズム設計、電気系は電気的な制御などが求められます。
(7)冷凍、冷却関連(F25B)
・機械系、電気系の分野(機械工学、電気電子工学など)
機械系は装置や各部の構造設計、電気系は回路設計、アルゴリズム設計などが求められます。
(8)制御装置関連(G05B)
・情報系、電気系の分野(情報工学、ソフトウェア工学、システム工学、電気電子工学など)
情報系は制御アルゴリズムの設計や制御モデルの構築、電気系は制御回路、制御システムの設計などが求められます。
(9)測距技術関連(G01S)
・電気系、情報系の分野(電気電子工学、情報工学など)
電気系はセンサ信号の処理など、情報系は信号処理アルゴリズムの設計などが求められます。
(10)電信通信関連(H04L)
・情報系、電気系の分野(通信工学、制御工学、情報システム工学、情報通信工学、電気電子工学など)
情報系は所望の通信のためのアルゴリズム設計、通信システム設計、電気系は通信情報の取得回路や取得信号の処理アルゴリズムの設計などが求められます。
ただし、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。
5 まとめ
半導体からエレベータまで広範囲で特許出願されており、おこなわれている開発や求められる専門性も多岐にわたると考えられます。
大学の専攻と関連づけるとしたら、主に電気、機械、情報、化学における研究分野が該当する可能性があります。
本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。
興味を持った企業がある場合は、その企業に絞って調べることをおすすめします。
参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4
以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年版 東洋経済新報社
<留意事項>
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