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【総合メーカー(10)】 開発職に求められる専門性とは?富士フイルムの特許で読み解く技術分野

 これまで、総合メーカーの開発の全体像と個別の開発において求められる専門性について企業ごとに紹介してきました。

 先の記事:

 【総合メーカー(1)】開発職に求められる専門性とは?パナソニックの特許で読み解く技術分野

 【総合メーカー(2)】開発職に求められる専門性とは?三菱電機の特許で読み解く技術分野

 【総合メーカー(3)】開発職に求められる専門性とは?日立製作所の特許で読み解く技術分野

 【総合メーカー(4)】開発職に求められる専門性とは?ソニーの特許で読み解く技術分野

 【総合メーカー(5)】開発職に求められる専門性とは?シャープの特許で読み解く技術分野

 【総合メーカー(6)】 開発職に求められる専門性とは?東芝の特許で読み解く技術分野

 【総合メーカー(7)】開発職に求められる専門性とは?NECの特許で読み解く技術分野

 【総合メーカー(8)】開発職に求められる専門性とは?キヤノンの特許で読み解く技術分野

 【総合メーカー(9)】開発職に求められる専門性とは?富士通の特許で読み解く技術分野

 

 複数の業界にまたがって事業を展開する総合メーカーについては、業界分類では断片的な情報しか見えてきません。

 そこで、総合メーカーの開発の全体像と個別の開発において求められる専門性がイメージできるよう1社に絞って見ていきます。

 今回は富士フイルムを見ていきます。

 

 結論(概要)は以下の通りです。

開発に求められる専門性
(1)医療関連:情報系、電気系、機械系の分野(情報科学、情報工学、電気工学、電気電子工学、電子工学、機械工学など)
(2)光学系関連:化学系、物理系、材料系の分野(材料化学、高分子化学、応用物理学、材料工学など)
(3)フォトリソグラフィ関連:化学系、材料系の分野(有機化学、分析化学、高分子化学、材料工学など)
(4)画像通信関連:電気系、情報系、物理系の分野(電子工学、電子情報工学、情報工学、ソフトウェア工学、物理工学など)
(5)半導体関連:化学系、電気系、機械系、材料系の分野(無機化学、材料化学、化学工学、電子工学、機械工学、材料工学など)
(6)情報記録、再生関連:化学系、材料系、電気系、情報系、物理系の分野(高分子化学、材料工学、電子工学、制御工学、応用物理学など)
(7)電気的デジタルデータ処理関連:情報系、電気系の分野(情報科学、情報工学、データサイエンス、情報科学、ソフトウェア工学、認知科学、電子情報工学など)
(8)積層体関連:化学系、材料系の分野(有機化学、物理化学、高分子化学、電気化学、材料工学など)
(9)撮影装置関連物理系、機械系、情報系、電気系の分野(応用物理学、機械工学、情報科学、電子工学など)
(10)材料分析関連:化学系、機械系、情報系、生物系、の分野(分析化学、物理化学、機械設計工学、制御工学、免疫学など)
 ただし、上記専門は企業の一部の特許情報に基づくものであり、全てをあらわすものではありません。また、求められる専門は特許の解釈によって変わってきますので、個々の特許情報をご確認ください。
 

 

1 企業サーチの概要

 特許情報は企業の開発情報だと言えます。

 企業サーチは、企業の特許情報から、その企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。

 特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。

 すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。

 

2 総合メーカー

2.1 総合メーカーとは

 ここでは、いわゆる大企業で複数の分野の製品やシステムを自社で開発・製造する企業を意図します。

 企業規模や分野の数など厳密なものではありません。

 

2.2 サーチ対象

 以下を対象にしました。

(1)富士フイルム株式会社

 

 

2.3 使用プラットフォーム

 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat

 

3 サーチ結果

3.1 結果概要

開発イメージは下表のとおりです。 

 

 

モノの開発

サービスの開発

個人向け

 

 

 

法人向け

CTやMRIなどの三次元医用画像の処理装置
内視鏡撮影画像から被写体の認識処理をおこなう画像処理装置
超音波内視鏡
内視鏡システム
光偏向装置に用いられる光学素子
インナーフォーカス方式の撮像レンズ
ヘッドマウントディスプレイなどに用いられる導光体
微細パターンの線幅を均一にできるレジスト組成物
カラーフィルタのシアン色画素形成に好適な感光性樹脂組成物
半導体製造プロセスに用いられる、長期間保存後も品質が安定し、ウェハ上に欠陥を生じさせにくい薬液
感光性転写フィルム
消費電力の低減を実現する撮像素子
撮像レンズの光学特性に合わせた位相差オートフォーカスを実現する撮像装置
撮影装置の映像表示方法
光源の変化に伴って動画像のフレーム間で異なる色補正をおこなう画像処理装置
半導体製造プロセスで用いられる基板上のルテニウムなどの遷移金属を除去するための薬液
半導体実装構造体
半導体エッチング液
高平滑性磁気記録媒体
磁気テープと記憶媒体を備えた磁気テープカートリッジ
アクセス管理システム
ユーザの嗜好をより正確に推定することができる情報処理装置
複合機などの情報機器におけるユーザインターフェースの表示に係る制御装置
複数のコレステリック液晶層を積層した加飾フィルム
抗菌層付き支持体
電子機器の筐体などに用いられる複合構造体
インプリント用の中間層を形成するための硬化性組成物
全画角が180度を超える対物レンズと組み合わせて用いる光学系
投影品質を維持しつつ投影範囲をシフトさせることを可能にする投影装置
撮像装置本体に装着されるレンズ装置
インスタントフィルムなどの感光性記録媒体に画像を露光する装置
有機溶媒を含む薬液の不純物を検出する測定装置
光の入射が制限された検査室に設けられるシャッター機構
銀増幅を利用した新型コロナウイルス抗原の検出キット
生体液中の高分子を濃縮するためのデバイス
など

建築物用部材および車両内装用部材などで使用される三次元成形体の製造方法
半導体デバイス製造プロセスにおける薬液の供給方法
複数の画像からユーザの潜在的な興味を推定して関連する商品やサービスを決定する画像処理方法
など

 個人向けか法人向けかについては、明細書だけでは読み取れない場合もあり、上記の区分けは曖昧なものが多々あります。

 

3.2 出願件数の推移

 下図は富士フイルムの特許出願件数の推移です。

 

 2022年、2023年と出願件数が減少しています。

 ただし、毎年一定数(数百件レベル)の出願がなされており、そのような出願につながる開発がおこなわれていることが推測されます。

 

3.3 主な開発分野

 特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。

 出願上位10の技術分野を抽出して並べています。

 各記号は発明の技術分類をあらわします。

 発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。

 関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。

 

 個別の情報を詳しく確認したい場合は、それぞれのリンク先に飛んでください。

 特許は難解ですが、GeminiChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。

参考記事 【AI活用】難解な特許が小学生レベルの内容に!1分で特許を読み解く方法

 

 

 

 分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)

 

3.4 富士フイルムの近年の開発トレンドと求められる専門の例

 特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。

 ここ10年のトレンドは以下のとおりです。

 発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。

 

(1)A61B|開発トレンドと専門性

 

 A61Bは診断、手術、個人識別に関する分類です。

 具体例としてCTやMRIなどの三次元医用画像の処理装置が挙げられます。
 従来の技術では、画像診断支援機能で検出された病変の位置や詳細情報を一目で把握することが難しく、診断の作業負荷が増加するという問題がありました。
 これに対し、複数の二次元画像で構成される三次元医用画像を取得し、その画像から関心領域を自動で検出し、次に二次元画像の空間軸や時間軸を示す軸情報(スライダーバーなど)を生成し、この軸情報に付加情報として関心領域の存在やサイズ、重篤度、優先度といった内容を記号で付与し、この記号は関心領域の程度に応じて、数や長さ、色などの形態が変化するよう設定(例えば、関心領域が大きいほど、それを表す単位記号の数を増やし、長さを相対的に短くすることで多くの情報をコンパクトに表示)することにより、二次元画像、軸情報、付加情報が一体となった画面を見ることができるようになり、関心領域がどこに、どれくらいの程度で存在するかを一目で直感的に把握できて医師の読影作業の負担を軽減する画像処理装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7650345/15/ja

  関連する専門分野の例:情報科学(関心領域の自動検出精度を高めるための画像認識アルゴリズムの設計、関心領域の大きさや重要度をアイコンの色、形、配置などで直感的に表現するユーザインタフェースの設計、画像処理装置が多様な種類の医用画像データ(CT、MRI、PETなど)をスムーズに扱えるようシステム全体のデータフローの設計)、電気工学(医用画像データを処理するプロセッサ(CPU、GPU、FPGAなど)とメモリ間のデータ転送速度を向上させるためのバスアーキテクチャやインタフェース回路の設計、画像処理装置からディスプレイへの表示画像信号が劣化することなく正確に伝送されるような信号処理やノイズ対策の検討)

 

 具体例として内視鏡撮影画像から被写体の認識処理をおこなう画像処理装置が挙げられます。
 従来、AIによる診断支援機能が不正確な画像で実行されると、誤った結果が表示され、医師が誤診する可能性がありました。
 これに対し、内視鏡から取得した画像データから特定の被写体(病変など)を認識する認識部と、処置具の写り込みや色素剤の散布といった被写体に対する操作を検知する判別部を備えた画像処理装置であり、判別部の検知結果に基づき設定部が認識部の機能を自動的に有効または無効に切り替え(例えば、処置具が画像に写り込んだ場合、認識精度が低下するため、認識部は無効に設定)て、報知部は認識部が現在有効か無効かの状態を画面表示や音声などで医師に伝えることにより、医師はAIによる認識処理が実行されているか否かを把握でき、不正確な認識結果に惑わされることなく、また、AIが機能していないことで病変の見落としがないかを誤認することなく、安全かつ効率的な診断や処置が可能になる画像処理装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7670797/15/ja

  関連する専門分野の例:情報科学(内視鏡画像の多様な撮影条件(画角、照明、ノイズなど)に対応できる画像認識アルゴリズムの設計、画像に表示するAIの有効・無効状態や操作内容の報知方法について医師の注意を散漫にさせずに直感的に理解できるようなユーザーインターフェースの設計)、電気工学(内視鏡のイメージセンサから取得される大量の画像データをリアルタイムでAIが処理できるようにプロセッサ(CPU、GPU、FPGAなど)とメモリ間のデータ転送速度を向上させるバスアーキテクチャやインタフェース回路の設計、内視鏡からプロセッサ装置、モニタまでの画像信号が劣化することなく正確に伝送されるような信号処理やノイズ対策の検討)

 

 具体例として超音波内視鏡が挙げられます。
 従来の超音波内視鏡は同軸ケーブルを使用していたため、内視鏡本体の細径化が困難でした。また、非同軸ケーブルを用いると断線しやすく、基板への配線自由度も低いという問題がありました。
 これに対し、超音波振動子アレイを備えた挿入部、挿入部内を通る第1ケーブル、操作部寄りの第2ケーブル、超音波プロセッサ装置に接続するコネクタ基板および第1・第2ケーブルを接続する中継基板で構成さた超音波内視鏡であり、挿入部の先端側に位置する第1ケーブルに複数の信号線とグランド線を束ねた非同軸ケーブル束が複数本用いられいることでケーブルの細径化が可能になり、また、超音波振動子と第1ケーブルを接続する基板および第1ケーブルと第2ケーブルを接続する中継基板において非同軸ケーブル束ごとに信号線の接続部がまとめて配置されることで断線を抑止し、中継基板は先端側の基板とコネクタ基板とで異なる信号線の並び順を適切に接続する役割を担うことで、配線設計の自由度を向上させ、全体として超音波内視鏡の細径化と信頼性を両立する超音波内視鏡が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7546744/15/ja

  関連する専門分野の例:機械工学(ケーブルが最も負荷を受ける挿入部の屈曲箇所や中継基板の接続部においてケーブルにかかる引張力、圧縮力、曲げ応力の解析、ケーブルの外皮の材質選定や中継基板を補強する固定部材の形状の最適化、非同軸ケーブル束の撚り方や挿入部内での配置パターンの検討)、電気電子工学(非同軸ケーブルの信号線間のクロストークの評価、中継基板上の配線パターンや信号線とグランド線の最適な配置設計、シールド層の材質や構造、中継基板の固定部材の接地方法の検討、超音波振動子からの微弱なエコー信号がケーブルを伝送する過程で減衰したりノイズの影響を受けたりしないような高周波特性の最適化)

 

 具体例として内視鏡システムが挙げられます。
 従来のシステムでは、光源や内視鏡の個体差によって酸素飽和度の算出に用いる信号比に違いが生じ、正確な診断が困難でした。
 これに対し、光源装置が特定の照明光を発する機能を備えた内視鏡システムであり、画像制御用プロセッサがこの特定照明光で得られた画像の信号値と、あらかじめ設定された基準信号値とを比較することで個体差に起因する演算値のズレを補正するための第2補正パラメータを算出し、このパラメータを用いて演算値を補正することで、光源装置と内視鏡の組み合わせに左右されることなく安定した酸素飽和度を算出することが可能になる内視鏡システムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7692961/15/ja

  関連する専門分野の例:電子工学(複数の半導体光源の駆動回路の設計、イメージセンサーから得られる微弱なアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータの選定、信号処理を効率的におこなうためのデジタル回路の設計)、情報工学(特定分光画像の信号値と基準値から第2補正パラメータを算出するロジックの設計、補正パラメータを用いて演算値を補正する具体的な演算式の構築、リアルタイムでの高精度な酸素飽和度算出と表示を可能にするソフトウェアの設計)

 

(2)G02B|開発トレンドと専門性
 

 G02B光学装置などに関する分類です。

 具体例として光偏向装置に用いられる光学素子が挙げられます。
 従来の光学素子は入射光の入射角によって回折効率が低下する領域が生じるという問題がありました。
 これに対し、液晶化合物に由来する光学軸が面内で連続的に回転する面内配向パターンを有する複数の光学異方性層を厚さ方向に備えた光学素子であり、これらの層のうち、少なくとも1層は走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した断面像において光学軸の向きに由来する明暗線が界面の法線に対して傾斜した傾斜光学異方性層であり、この傾斜光学異方性層と法線に沿って明暗線が延びる非傾斜光学異方性層とを配向膜を介さずに積層することで回折効率を向上させ、また、複数の傾斜光学異方性層を積層し、それぞれの明暗線の傾き方向や傾き角度を互いに異ならせることも可能であり、入射角による回折効率の差を抑制して面内における平均的な回折効率を向上させ、光偏向装置の出射光の光量ばらつきを抑制することができる光学素子が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7653501/15/ja

  関連する専門分野の例:材料化学(重合性液晶化合物、カイラル剤、重合開始剤、およびレベリング剤などの各成分の化学構造や配合比の調整、カイラル剤の種類や濃度の制御による光学異方性層の厚さ方向における捩れ角やコレステリック配向の螺旋ピッチの設計、各層の界面での配向の乱れを最小限に抑えるための組成物設計)、応用物理学(液晶化合物の配向パターンが光の回折・屈折に与える影響についての理論モデルの構築、複数の光学異方性層の積層構造が回折効率の平均化にどのように寄与するかの解析、光偏向素子と光学素子を組み合わせた光偏向装置全体の光路設計、出射光のスキャン角度拡大効果や光量分布のシミュレーション、最適な素子配置や構造の探索)

 

 具体例としてインナーフォーカス方式の撮像レンズが挙げられます。
 従来の撮像レンズは小型化、高画質、高速な合焦性能を同時に満たすことが困難でした。
 これに対し、物体側から順に正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群および第3レンズ群で構成された撮像レンズであり、合焦時には軽量な負の屈折力を持つ第2レンズ群のみが光軸方向に移動するインナーフォーカス方式を採用し、第1レンズ群に絞りを配置してレンズ径を小型化し、第2レンズ群を1枚の負単レンズで構成することで合焦動作の高速化を実現し、第3レンズ群は正レンズと負レンズで構成され、特定の条件式を満たすことでレンズ系全体の焦点距離や第3レンズ群の光学特性を最適化して諸収差を補正することにより、小型で高い光学性能を確保する撮像レンズが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7664993/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(焦点距離やFナンバー、画角といった諸元を変化させた際の球面収差、色収差、非点収差、歪曲収差などの光学性能の評価、第2レンズ群の移動によるフォーカシング時の収差変動の解析および変動を最小限に抑えるためのレンズ構成やアッベ数、曲率半径などのパラメータを最適化する理論的な検討と設計)、材料化学(第3レンズ群の正レンズと負レンズのアッベ数(色収差の大きさを表す指標)の差を広げるための高分散ガラスや低分散ガラスを設計・合成、第1レンズ群の負レンズや正レンズに用いられる屈折率の高いレンズ材料について諸収差の補正に有利な特性を持つ材料の探索)

 

 具体例として建築物用部材および車両内装用部材などで使用される三次元成形体の製造方法が挙げられます。
 従来の製造方法では、フィルム成形時に液晶層に傷や歪みが生じ、画像光の再現性が低下するという問題がありました。。
 これに対し、基材と液晶層を含む機能性層からなる三次元成形用液晶フィルムを予備成形し、その後に樹脂基部と接着剤を介して貼り合わせる三次元成形体の製造方法であり、機能性層の最表面における擦りヘイズ変化(物体の表面の傷や曇りによる光の散乱の度合いの変化)が0.8%以下となるよう、フィルムに高い耐擦性を付与する(具体的には、液晶組成物に非液晶性の多官能重合性化合物(ウレタンポリオールと(メタ)アクリル酸のエステル化合物)を添加するか、スメクチック相を示す重合性液晶化合物を使用するか、液晶層上に上記の化合物を含む表面保護層を設ける)ことで、成形時の応力による傷や歪みを抑制して画像光の再現性を実現する三次元成形体の製造方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7712335/15/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(ウレタンポリオールと(メタ)アクリル酸のエステル化合物の合成条件の最適化、重合性液晶化合物との混合比率や分子量、架橋密度が、液晶層の耐擦性、破断強度、および成形加工性(伸展性や加熱時の挙動)に与える影響の評価、液晶層がスメクチック相を安定的に保持するための適切な重合性液晶化合物の分子設計)、応用物理学(液晶層の配向状態(ホモジニアス、コレステリック、スメクチックなど)とそれが光の偏光、位相差、反射および吸収特性に与える影響のモデル化、成形過程で生じる応力が液晶分子の配向に与える影響のシミュレーション、画像光の再現性を評価するための光学測定技術の探索)

 

 具体例としてヘッドマウントディスプレイなどに用いられる導光体が挙げられます。
 既存技術の問題は導光体内部で映像光が部分反射面に複数回入射する際、不要な反射光(迷光)が発生し、映像のコントラストが低下することでした。
 これに対し、映像光を全反射させながら伝播させる基体と誘電体多層膜で構成された複数のハーフミラーを備えた導光体であり、ハーフミラーは基体内で傾斜配置されており、映像光はハーフミラーの第1面と第2面にそれぞれ1回以上入射し、また、誘電体多層膜の基体と接する最外層の屈折率を基体の屈折率をnとした場合に0.90n~1.15nとすることで映像光が第2面から再入射する際の反射率を抑制することにより、迷光の発生が低減し、高いコントラストの映像を表示することが可能となる導光体が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7499921/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(誘電体多層膜の反射や透過の特性を入射角や波長の違いに応じてどう制御できるかをモデル化、ハーフミラーの第1面で映像光を適切に出力しつつ第2面での不要な反射を最小限に抑えるための最適な設計条件導出)、材料工学(透明で高屈折率な基体材料や多層膜を形成するための誘電体材料の物性の分析、誘電体多層膜を高品質に成膜する技術(スパッタリング、プラズマCVDなど)の探索、接着剤を使わずに基体と薄膜を強固に接合する方法の確立)

 

(3)G03F|開発トレンドと専門性

 

 G03Fフォトリソグラフィ(光を用いて微細なパターンを転写する技術)に関する分類です。

 具体例として微細パターンの線幅を均一にできるレジスト組成物(リソグラフィーの工程で微細な回路パターンを形成するために使用される感光性材料)が挙げられます。
 従来のレジスト組成物は長期保存後に使用した場合、形成されるパターンの線幅のばらつきが悪化するという問題がありました。
 これに対し、酸分解性樹脂と特定構造を有する化合物を光酸発生剤として含有する組成物であり、フッ素原子及びフルオロアルキル基からなる群から選択される含フッ素基と、特定の芳香族炭化水素環基を所定の数、位置、および/または種類で有するオニウム塩であり、芳香族炭化水素環基の数が合計2つ以上異なる構造であってフルオロアルキル基を合計2つ以上有する構成により、光酸発生剤の安定性が高まり、組成物を長期間保存しても分解が抑制されるため露光時の分解効率が良好に保たれ、形成されるパターンの線幅のばらつきが抑制されて、高いコントラストの微細なパターンを安定して形成することが可能となる組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7622177/15/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(目的化合物の合成ルートの立案、各反応ステップで目的の化合物が生成されているか、反応条件の最適化や精製方法の検討、得られた化合物の分子構造が設計通りであることの確認、合成した化合物の純度を高めるための手法の確立)、材料工学(酸分解性樹脂と特定化合物の相溶性の評価、組成物の均一性の確認、基板上に塗布したレジスト膜の電子線や極端紫外線などの活性光線に対する感度、解像度、長期間保存後の形成パターンの線幅のばらつき性能の測定、組成物の配合比や露光後の加熱処理などのプロセス条件の調整および最も良好な微細パターンが得られる方法の確立)

 

 具体例としてカラーフィルタのシアン色画素形成に好適な感光性樹脂組成物が挙げられます。
 従来技術では、シアン色画素形成において、分光特性と耐光性と混色抑制を高い水準で両立させるのが困難でした。
 これに対し、着色剤、樹脂、重合性化合物、光重合開始剤、紫外線吸収剤および溶剤を含む感光性樹脂組成物であり、着色剤として特定のフタロシアニン顔料(C.I. ピグメントブルー15:3および15:4の少なくとも一種)を0.5質量%未満の他の着色剤と組み合わせ、さらに、特定の光重合開始剤と共役ジエン化合物等からなる特定の紫外線吸収剤を組み合わせ、光重合開始剤に対して1〜200質量部、重合性化合物に対して5〜100質量部、全固形分中に0.5〜10質量%という特定の含有量範囲で配合することで、硬化膜の分光特性、耐光性および混色抑制を両立させた感光性樹脂組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7587654/15/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(目標とする吸収波長や分解効率を持つオキシム化合物やトリアジン化合物の設計、核磁気共鳴分光法(NMR)や質量分析法(MS)を用いて化合物の構造が意図した通りであることの確認、反応収率や純度の最適化)、材料工学(フタロシアニン顔料の二次粒子径を制御するための分散剤の選定と配合量の最適化、組成物の粘度や表面張力が塗布膜に与える影響の評価、紫外吸収剤の配合量が硬化膜の分光特性や耐光性に与える影響の解析、要求性能を満たす最適な組成物の決定)

 

 具体例として半導体製造プロセスに用いられる、長期間保存後も品質が安定し、ウェハ上に欠陥を生じさせにくい薬液が挙げられます。
 従来の薬液では、精製しても微量の不純物が残存し、特に容器に長期保存すると、容器の材料から溶出する金属成分と薬液中の酸成分が相互作用し、ウェハ上にコーン状欠陥などの不良を引き起こすことが問題でした。
 これに対し、半導体製造に用いられる有機溶剤を主成分とし、特定範囲に制御された有機酸を含む酸成分と金属成分とを必須の構成要素とする薬液、具体的には、薬液の全質量に対し、酸成分の含有量を1 pptから15 ppm、金属成分の含有量を0.001から100 pptの範囲とすることにより、薬液の長期保存中に発生する酸成分と金属成分の相互作用による錯体や複合構造体の形成が抑制され、微量の酸成分が存在することで容器の材料の分解反応を抑え、分解物や金属成分の溶出を防ぎ、長期保存後でもウェハへの欠陥発生を抑制できる薬液が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7453435/15/ja

  関連する専門分野の例:分析化学(ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)やSP-ICP-MS(シングルナノ粒子ICP-MS)による薬液中の金属成分の総含有量、金属ナノ粒子の含有量、粒子径分布を精度よく測定する手法の確立、酸成分についてはガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)などを用いて極微量な有機酸の定量、品質保証のための測定プロトコルの確立)、有機化学(原料の有機溶剤に含まれる不純物や合成反応の副生成物として生じる有機酸を効果的に除去するための蒸留、ろ過、イオン交換樹脂処理などの精製工程の条件の検討、有機酸の副生成が極力少なくなるような反応条件(温度、触媒、反応時間など)の探索・最適化)

 

 具体例として感光性転写フィルムが挙げられます。
 従来の感光性転写フィルムはタッチパネル保護膜などに求められる水蒸気透過度の低減、タック性の低減および現像時の引っ掻き耐性の向上において、改善の余地がありました。
 これに対し、仮支持体と感光性層から構成された感光性転写フィルムであり、感光性層は特定の構成単位を含む重合体A、ラジカル重合性化合物、光重合開始剤および熱架橋性化合物を含有し、特に、重合体Aは化学式A1で表される芳香族モノマー由来の構成単位を24質量%以上、ガラス転移温度が120℃以上である脂環式構造を有するモノマー由来の構成単位を15質量%以上、さらにラジカル重合性基を有する構成単位を15~50質量%含有することにより、芳香環と脂環式構造が硬化膜を疎水化し、水蒸気透過度を低減し、また、高Tg(ガラス転移温度)モノマーの導入により感光性層の流動性が低下し、タック性(物質の表面のべたつきや粘着性)が小さくなり、さらに、重合体Aが有するラジカル重合性基と感光性層に含まれる脂環式構造を有する2官能のラジカル重合性化合物およびブロックイソシアネート基と(メタ)アクリロキシ基を有する熱架橋性化合物が光および熱によって架橋構造を形成することで、緻密で硬度が高い硬化膜が得られて現像耐性が発現する感光性転写フィルムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7463465/15/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(特定の構成単位(式A1、脂環式、ラジカル重合性基など)の含有比率や重合度の制御および重合体Aの分子設計、ラジカル重合性化合物や熱架橋性化合物などのモノマーの合成およびそれらの反応性、安定性、相溶性の評価)、高分子化学(重合体Aの構成単位比率、特に高Tg脂環式モノマーの含有量と感光性層のタック性との関係およびラジカル重合性基の含有量と光硬化後の架橋密度、現像耐性、水蒸気透過度との相関の解析、熱架橋性化合物が加熱処理時に重合体Aとどのように架橋構造を形成するかを分子レベルでモデル化、水蒸気透過度の低減効果や硬化膜の物性向上メカニズムの解明)

 

(4)H04N|開発トレンドと専門性

 

 H04N画像通信に関する分類です。

 具体例として消費電力の低減を実現する撮像素子が挙げられます。
 従来の撮像素子は単一の出力ラインで後段の処理部に画像データを出力するため、データ量増大に伴う後段処理部の負荷と消費電力の増大が問題でした。
 これに対し、像画像データに対してA/D変換を行う処理部、変換後のデータを記憶する単一の記憶部、画像データを外部に出力する単一の出力部を具備する撮像素子であり、出力部は第1出力ラインと第2出力ラインという2つのラインを有し、それぞれ異なる外部の信号処理部に接続され、第1出力ラインと第2出力ラインとで画像データの出力フレームレートと1フレームあたりの出力データ量の少なくとも一方が異なる(具体的には、第1出力ラインは高速な表示用画像データ(高フレームレートかつ低データ量)を出力し、第2出力ラインは低速な記録用画像データ(低フレームレートかつ高データ量)を出力)ことにより、表示と記録の用途に応じた適切なデータ伝送が可能となり、特に高速処理が要求される表示用の画像データ処理の消費電力を低減できる撮像素子が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7646799/15/ja

  関連する専門分野の例:電子工学(高速な第1出力ラインと低速な第2出力ラインの物理的な設計(配線幅、ドライバ回路の設計など)、それぞれのラインに適用される出力フレームレートとデータ量の仕様に基づき各出力ラインにおける消費電力を最小化するための電源電圧やクロック周波数の最適化、メモリから画像データを読み出して各出力ラインに振り分ける出力回路の設計)、情報工学(高速な表示用(ライブビュー)画像データについて画質劣化を抑えつつデータ量を削減するための間引き処理や圧縮アルゴリズムの設計、インターレース方式の間引き画像データの生成と合成処理あるいは表示に特化した色空間変換やノイズリダクション処理の検討、記録用画像データについては最終的な高画質を確保するためのデモザイク処理などの高度な画像処理アルゴリズムの設計)

 

 具体例として撮像レンズの光学特性に合わせた位相差オートフォーカス(AF)を実現する撮像装置が挙げられます。
 従来の位相差AFはレンズの光学特性変化に対応しきれず、適切な合焦制御が困難でした。
 これに対し、複数の画素が配列された画素領域と、画素信号の読み出しを制御する制御部を備えた撮像装置であり、画素領域には光電変換素子と、その一部を遮光する遮光層を含む位相差画素が第1方向に沿って配列されており、画素領域の第1側領域には光電変換素子の第1側が遮光された複数の第1位相差画素群と第2側が遮光された複数の第2位相差画素群が配置され、第1位相差画素群は遮光面積が異なる第1A画素と第1B画素を含み、制御部は装着された撮像レンズから光学特性の情報を取得し、その特性に応じて第1A画素と第1B画素の画素信号の少なくとも一方に重みを付けた加算読み出し処理をおこなうことにより、レンズの光学特性に合わせた位相差信号を生成でき、撮像レンズから光学特性情報が取得できない場合でも制御部は重みを既定の値として加算読み出し処理をおこなうため安定した合焦制御を可能にする撮像装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7618006/15/ja

  関連する専門分野の例:電子工学(半導体チップ上における遮光層、光電変換素子、マイクロレンズの微細な構造の形成、画素信号を読み出して重み付け加算処理をおこなうための集積回路の設計、撮像レンズからの光学特性情報の受信とそれに応じた画素読み出しシーケンスを制御するデジタル回路の論理設計)、物理工学(レンズの光学特性(主光線角度、射出瞳位置など)と撮像素子の各画素における光の入射角度、光強度、回折現象などの関係の解析およびシミュレーションモデルの構築、位相差画素の遮光面積や配置が異なるレンズからの光に対してどのような影響を与えるかの予測、精度の高い合焦制御を実現するための重み付け加算の係数を決定する物理的なアルゴリズムの設計)

 

 具体例として撮影装置の映像表示方法が挙げられます。
 既存技術では、撮影装置が固定されたままでも複数の被写体のズーム映像を得られますが、各被写体の位置や変化に対応した映像の切り替えが煩雑になるという問題がありました。
 これに対し、カメラが撮影した広範囲の基準映像から複数の被写体や視覚的変化のある特徴箇所などを自動的に検出し、複数の設定領域の候補を自動設定する表示方法であり、ユーザーがその中から記録したい領域を選択すると、その部分の映像が記録映像として記録され、さらに、撮影中でも別の設定領域に記録領域を切り替えることが可能であるため、ユーザーは複数の被写体を追うために複数のカメラを設置したり、ズーム操作を頻繁におこなったりする手間を省くことができる表示方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-019216/11/ja

  関連する専門分野の例:情報工学(映像中の物体や顔をリアルタイムで検出する学習モデルの構築および位置情報を基に設定領域を自動設定する処理の実装、被写体の動きを予測して設定領域を追従させるトラッキングアルゴリズムや映像の構図やシーンを解析して適切な設定領域の候補を提案するプログラムの設計)、ソフトウェア工学(映像処理部が生成した映像データを記録部や表示部にリアルタイムで受け渡すためのデータフローの設計、各コンポーネント間のインターフェースの定義、ユーザーの操作に応じて記録映像をスムーズに切り替えるための制御ロジックの実装、複数の処理が同時に実行される際の競合状態を防ぐためのマルチスレッド処理や同期化のメカニズムの設計)

 

 具体例として光源の変化に伴って動画像のフレーム間で異なる色補正をおこなう画像処理装置が挙げられます。
 従来の技術は主にフリッカ(照明の高速なちらつき)除去を目的とし、動画像のフレーム間で発生する色味の変化を効果的に補正することが困難でした。
 これに対し、光源環境が変動する環境下で撮像された動画像データを処理対象とし、基準となるフレームと補正の対象となる補正フレームを特定し、次に基準フレームの特定領域から色に関する第1基準色信号を取得し、これに対応する補正フレームの特定領域から第1補正色信号を取得し、第1補正色信号が第1基準色信号に合うように最小二乗法などを用いて第1補正係数を算出し、この補正係数を補正フレーム全体に適用することで、光源の変化に起因するフレーム間の色味のばらつきを効果的に補正し、動画像の色再現性を向上させる画像処理装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7422911/15/ja

  関連する専門分野の例:電子情報工学(動画像データを構成する複数のフレームの中からフリッカの位相を基に基準フレームと補正フレームを特定するアルゴリズムの設計、特定した基準フレームと補正フレームの色信号の比較および補正フレームの色を基準フレームに合わせるための補正係数を最小二乗法で算出するアルゴリズムの実装)、ソフトウェア工学(画像データの取得から補正係数の算出、補正処理、出力までの一連の流れを司る制御プログラムの設計、基準フレームと補正フレームのデータを一時的に記憶するメモリ管理や演算処理を効率的に並列化するためのタスクスケジューリングの仕組みの実装)

 

(5)H01L|開発トレンドと専門性

 

 H01L特定の半導体に関する分類です。

 具体例として半導体製造プロセスで用いられる基板上のルテニウムなどの遷移金属を除去するための薬液が挙げられます。
 従来の技術では、遷移金属に対する溶解能と被処理部の平滑性を両立させることが困難でした。
 これに対し、次亜塩素酸類と、特定の塩素系アニオン(塩素酸イオンまたは塩化物イオン)を特定の濃度範囲で含有する薬液であり、主成分である次亜塩素酸類が遷移金属に対する溶解能を発揮し、同時に、所定量の特定アニオンが除去処理時に発生する金属系成分と相互作用することで基板表面に残留することを防ぐことで、溶解能を維持しつつ被処理部の表面凹凸を低減し、平滑性を実現することが可能となる薬液が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7555452/15/ja

  関連する専門分野の例:無機化学(イオンクロマトグラフィーや原子吸光分析法により薬液中の各成分濃度と反応生成物の分析、遷移金属の酸化還元反応や錯体形成反応の理論的な考察、溶解能と平滑性を両立させるための次亜塩素酸類と特定アニオンの最適な濃度比およびpH条件の決定)、材料化学(走査型電子顕微鏡や原子間力顕微鏡による処理前後の表面の凹凸の観察・測定、X線光電子分光法などによる表面の元素組成や化学結合状態の変化の分析、特定アニオンが溶解した金属イオンの再付着をどのように抑制しているのかの物理化学的なメカニズムの解析)

 

 具体例として半導体実装構造体が挙げられます。
 複数の基板と半導体部品を積層すると、熱膨張係数の違いから基板が反り、半田にクラックが生じる問題がありました。
 これに対し、第1半導体部品が実装された第1基板と、第1基板が実装された第2基板を備える半導体実装構造体であり、第1基板は第2基板と対向する面に第2半導体部品が実装されており、第2基板は第2半導体部品が臨む位置に開口部を有し、さらに、第1半導体部品の長手方向の幅は第2半導体部品よりも大きく、第1基板の半田パターンは第2半導体部品の外形外側に形成されている構成により、第2半導体部品の熱を効率的に外部へ放熱して基板の反りを抑制し、半田クラックの発生を防止する半導体実装構造体が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7669236/15/ja

  関連する専門分野の例:電子工学(第1半導体部品と第2半導体部品間の電気信号の伝送特性の解析、半田パターンや配線レイアウトが信号インテグリティに与える影響の評価、高速動作時においても安定した信号伝送が可能な半導体実装構造の設計)、機械工学(熱応力解析シミュレーションの実施、半導体部品の発熱によって生じる基板内の温度分布や応力集中の予測、熱変形抑制部材の配置、開口部の形状および基板の材料選定や最適化)

 

 具体例として半導体エッチング液が挙げられます。
 従来の技術では、シリコン(Si)に対するシリコンゲルマニウム(SiGe)の選択的エッチングは可能でしたが、エッチング液の保存安定性に改善の余地がありました。
 これに対し、フッ化物イオン源、カルボン酸、過カルボン酸、過酸化水素および臭化物イオンを特定の組成で含有する半導体エッチング液であり、フッ化物イオン源はエッチング液にSiGeを溶解させる能力を付与し、カルボン酸と過酸化水素の反応によって生じる過カルボン酸と協奏的に作用することでSiに対するSiGeの高い選択エッチング比を実現し、エッチング液全質量に対する臭化物イオンの含有量を500質量ppm未満という微量に制御することにより、Siへのエッチングを抑制しながらSiGeの良好なエッチングを可能にし、同時にエッチング液中の過酸化水素や過カルボン酸の分解を抑制することで、長期にわたる保存安定性の向上が実現される半導体エッチング液が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7662848/15/ja

  関連する専門分野の例:化学工学(エッチング液の温度、撹拌速度および成分濃度がSiGeのエッチング速度とSiのダメージに与える影響の評価および最適な運転条件の導出、不活性ガス置換や特定の容器材料がエッチング液の保存安定性に及ぼす影響の実証、工業的な生産プロセスの設計)、材料工学(エッチング後のSiGe表面の原子レベルでの平滑性(表面粗さ)の測定および臭化物イオンの含有量との相関関係の分析、エッチング液中の各成分がSiとSiGeの結合をどのように選択的に切断するかの解析、エッチングメカニズムの解明)

 

 具体例として半導体デバイス製造プロセスにおける薬液の供給方法が挙げられます。
 既存技術では、ガス圧送により薬液を供給する際に配管からの不純物溶出が問題でした。
 これに対し、有機溶剤を含む薬液を水分量が0.00001~1質量ppmに制御されたアルゴンガスを用いて圧送することにより、配管部材からの不純物溶出が抑制され、薬液中の金属成分や有機不純物の含有量を低減でき、その結果、半導体デバイスの欠陥を抑制するパターン形成が可能になる薬液の供給方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7627276/15/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(配管材料の表面分析による圧送ガス中の微量水分が表面不動態層に与える影響の評価および薬液との反応性がどのように変化するかの解明、最適な配管材料(ステンレス鋼、フッ素樹脂など)の選定およびその表面処理(電解研磨など)が不純物溶出に与える効果の検証)、化学工学(ガス精製装置(ガスフィルタ、吸着剤など)の性能評価、圧力・流量制御システムの設計、システム全体の物質収支と熱収支の解、特定の水分量範囲を安定的に維持するための運転条件(温度、圧力、流量など)の決定)

 

(6)G11B|開発トレンドと専門性

 

 G11B情報記録、再生に関する分類です。

 具体例として高平滑性磁気記録媒体が挙げられます。
 従来、高平滑性の磁気記録媒体は電磁変換特性に優れる反面、低湿度下で高温から低温へ変化する環境に晒されると磁性層から滲み出た有機成分が固化し、磁気ヘッドに付着して電磁変換特性が低下するという問題がありました。。
 これに対し、非磁性支持体上に強磁性粉末と結合剤を含む磁性層を有し、この磁性層の表面粗さRaが1.0nmから1.6nmであり、エタノール洗浄前後のスペーシング(磁気ヘッドと磁性層の素地部分との間の距離)の差分を0nm超6.0nm以下に制御(このスペーシングの差分は低湿高温下で磁性層表面に滲み出す結合剤由来の有機成分の量を反映)することで、温度変化による有機成分の固化・高粘度化を抑制して磁気ヘッドへの付着を防ぎ、電磁変換特性の低下を抑制した磁気記録媒体が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7566118/15/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(低分子量の成分が磁性層表面に滲み出しにくい高分子量のポリマー合成や有機成分の物理化学的特性(例えば、ガラス転移温度)の分析、環境変化に耐えうる結合剤の設計、有機溶媒との親和性の評価)、材料工学(強磁性粉末、結合剤、添加剤などの材料選択、ナノメートルレベルでの粒子分散性や材料間の界面接着性の評価、カレンダー処理やアルコール拭き取り処理といった製造プロセスが磁性層の表面平滑性や有機成分の表面への移行に与える影響の解析、電磁変換特性と耐久性を両立させる最適な製造条件の確立)

 

 具体例として磁気テープと記憶媒体を備えた磁気テープカートリッジが挙げられます。
 従来、トラッキング制御を高めるためには磁気テープの幅方向に配置された複数のサーボパターンとヘッド側の複数のサーボ読取素子の位置を正確に合わせる必要がありました。
 これに対し、磁気テープと情報を記憶する記憶媒体とを備える磁気テープカートリッジであり、磁気テープに対してデータの読み書きをおこなうための複数の磁気素子に関する情報(具体的には、磁気テープの幅方向に対する複数の磁気素子の配置方向の特徴を示す傾斜特徴情報)を記憶するための領域が設けられており、この情報によりヘッドの傾斜の方向および角度を調整するために利用できる情報の提供が可能になる磁気テープカートリッジが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7581469/15/ja

  関連する専門分野の例:電子工学(非接触で情報の読み書きをおこなうためのICチップの回路構成(電源回路、信号処理回路など)やコイルの形状・インピーダンスの最適化、磁気ヘッドの複数の磁気素子の微細加工プロセスの確立および配置精度や物理的・電気的特性の評価、傾斜特徴情報の算出に利用できるデータの取得)、制御工学(記憶媒体から読み出された傾斜特徴情報による磁気テープの走行速度や張力、磁気ヘッドの傾斜角度といった複数の要素を考慮したフィードバック制御システムの構築、磁気テープの物理的変化(幅の収縮など)や走行中の揺れに対しても複数の磁気素子の傾斜を動的に調整して最適な位置関係を維持する制御方法の確立)

 

 具体例として磁気記録媒体が挙げられます。
 従来の磁気記録媒体は長期保管後に走行安定性が低下し、再生出力が落ちるという問題がありました。
 これに対し、非磁性支持体上に強磁性粉末を含む磁性層が設けられた磁気記録媒体であり、特定の条件下で押圧(70 atmの圧力で)した後の表面ゼータ電位の等電点が2.5以上3.8以下になるように構成されていることで、長期保管によって磁気記録媒体が押圧された状態でも、磁性層表面から発生した削れ屑(デブリ)と磁性層表面との間に反発力を生じさせることができ、デブリが磁性層表面に強く固着することを抑制し、長期保管後の磁気ヘッドとの接触状態を安定させることで走行安定性を向上させ、再生出力の低下を防ぐことができる磁気記録媒体が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7473731/15/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(結合剤に含まれる酸性基の種類(スルホン酸基、カルボキシ基など)やその含有量の調整による磁性層の表面ゼータ電位を目的の範囲に制御できる高分子材料の探索、長期保管による押圧下でも酸性基が表面に留まりデブリとの反発力を維持できるような高分子の構造や特性の評価、改善)、材料工学(強磁性粉末の粒子サイズや分散状態、突起形成剤の形状や硬度が磁性層の表面特性(等電点など)や機械的強度に与える影響の解析、カレンダー処理(押圧工程)などの製造条件の調整、磁気記録媒体全体の性能、特に長期保管後の走行安定性が最大化されるようなプロセスの確立)

 

 具体例として磁気記録媒体が挙げられます。
 従来の磁気記録媒体は長期間の保管中に受ける圧力によって磁性層表面の潤滑剤が内部に押し込まれ、磁気ヘッドとの摺動性が悪化し、その結果、走行安定性が低下し、再生出力が落ちてしまうという問題がありました。
 これに対し、非磁性支持体上に強磁性粉末を含む磁性層を備えた磁気記録媒体であり、磁性層の表面に存在する潤滑剤の存在量が特定の条件下(70 atmの圧力で押圧後、光電子取り出し角10度でのX線光電子分光分析)で測定される「C-H由来C濃度」という指標で規定され、磁性層のC-H由来C濃度が45原子%以上になるように、磁性層を構成する脂肪酸や脂肪酸アミドなどの潤滑剤の配合量が調整され、さらに製造工程において塗布層を冷却する工程により長期保管に相当する押圧後も磁性層のごく表層部に潤滑剤が十分に存在し続けることで、磁気ヘッドとの摩擦が低減され、長期保管後の円滑な摺動が維持されるため、走行安定性が向上し、再生出力の低下を効果的に防ぐことができる磁気記録媒体が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7432785/15/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(長鎖アルキル基を持つ脂肪酸や脂肪酸アミドが製造プロセス中の熱や溶媒の揮発過程で磁性層表面に効率的に偏析して長期保管時の押圧後も表面に留まるような結合剤の構造や官能基の設計、潤滑剤自体の分子構造の調整、磁性層内の他の成分との相互作用の最適化)、応用物理化学(X線光電子分光分析による押圧前後の表面組成変化の解析、潤滑剤の偏析メカニズムの解明、摩擦力顕微鏡などの手法で磁気層のナノスケールでの表面形態や摩擦係数の測定および潤滑剤の存在が走行安定性に与える影響の評価)

 

(7)G06F|開発トレンドと専門性

 

 G06F電気的デジタルデータ処理に関する分類です。

 具体例としてアクセス管理システムが挙げられます。
 既存技術には、身元情報の更新時にアクセス条件に関係ない情報まで不必要に通知されてしまう問題がありました。
 これに対し、データストア端末、身元情報を記憶する特定ID管理サーバおよび少なくとも1つのプロセッサから構成されるアクセス管理システムであり、身元情報が更新された際、プロセッサがその更新内容をブロックチェーン上に格納することでデータの改竄を防止し、プロセッサはデータストア端末および特定ID管理サーバのOSから独立した信頼できる実行環境において更新内容とアクセス条件とを比較し、この比較の結果、更新がアクセス条件に関係すると判定された場合にのみプロセッサはデータストア端末に対して更新がおこなわれたことを通知することで、身元情報やアクセス条件の不必要な拡散を防ぐことができるアクセス管理システムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7719313/15/ja

  関連する専門分野の例:情報科学(信頼できる実行環境(TEE)内でおこなわれる更新内容とアクセス条件の比較判定を高速化するためのアルゴリズムの設計、ブロックチェーン上でのデータ格納における通信量や処理速度を最適化するデータ構造の設計、システム全体のパフォーマンスの評価およびボトルネックを特定)、電子情報工学(TEEを実行するのに適したプロセッサのアーキテクチャの最適化、ブロックチェーンネットワークを構築するための通信機器や記憶装置の選定、システム全体の耐障害性を高めるためのハードウェア構成の設計)

 

 具体例としてユーザの嗜好をより正確に推定することができる情報処理装置が挙げられます。
 既存技術はSNSの投稿画像や行動情報などからユーザーの嗜好を推定していましたが、嗜好の度合い(熱狂的なファンかなど)を評価することが困難でした。
 これに対し、まずユーザーが保有する画像とその画像の撮影日や撮影場所といった付帯情報およびニュースサイトから配信されたニュース記事の内容を表すニュース情報を取得し、次に取得した画像と付帯情報、ニュース情報を関連付けてユーザーの嗜好を推定(例えば、特定のイベントのニュースが報じられた時期にそのイベントに関する画像をユーザーが撮影していた場合、ユーザーはそのイベントに対して強い関心を持っていると判断し、ニュース記事に「殺到」や「記念日」といった特定のキーワードが含まれていれば、嗜好の度合いが高いと推定、など)することにより、画像単体では判断が難しかったユーザーの嗜好をニュースという客観的な情報と組み合わせることで、より正確に推定できる情報処理装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7657903/15/ja

  関連する専門分野の例:情報工学(画像から被写体やシーンを認識する物体認識アルゴリズムおよび付帯情報(撮影日、位置情報など)を解析するアルゴリズムの設計、取得した画像情報とニュース情報を高速に関連付けるためのデータベース構造の設計および効率的な検索エンジンの構築、画像情報とニュース情報の両方を入力としてユーザーの嗜好度(コア度)を推定する機械学習モデルの構築)、データサイエンス(ニュースサイトからスクレイピング(自動収集)した記事データやユーザーの画像付帯情報など膨大なデータの収集プロセスの自動化、収集したデータに含まれるノイズや欠損値を処理して分析に適した形式にクレンジング、ユーザーの撮影行動と特定のニュースとの相関関係の統計的分析、嗜好推定モデルがどれだけ正確にユーザーの嗜好を捉えているかを評価するための指標の設計)

 

 具体例として複合機などの情報機器におけるユーザインターフェースの表示に係る制御装置が挙げられます。
 従来、項目リストをスクロールする際、項目リスト以外の操作ボタンを表示領域から消去する技術では操作ボタンが使えなくなるという問題がありました。
 これに対し、情報機器の項目選択画面においてスクロール可能な項目リストと、そのスクロール方向の端部側に配置された説明文字とアイコンからなる第1のボタンを備えた制御装置であり、項目リストがスクロールされると表示制御部は第1のボタンの表示領域をスクロール方向と直交する方向へ縮小させ、このとき、説明文字は非表示となり、アイコンのみとなった第1のボタンは項目リストに重畳して表示され、この縮小された状態でも第1のボタンは操作可能であるため、項目リストの表示領域を拡大しつつボタンの機能を維持できるようになる制御装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7689560/15/ja

  関連する専門分野の例:情報科学(項目リストのスクロールイベント発生時に、表示領域の縮小や重畳表示をリアルタイムに実行するためのアルゴリズム設計、画面上に表示される項目やボタンの情報を効率的に管理して高速な検索や描画を可能にするためのデータ構造の設計)、ソフトウェア工学(項目リストのスクロールイベントを検知するモジュール、ボタンの表示状態を制御するモジュール、表示内容をリアルタイムで更新する描画モジュールなどの機能ごとのソフトウェアコンポーネントの設計、スクロール操作が滑らかに表示されるように描画処理の負荷を最小限に抑えるアルゴリズムの設計)

 

 具体例として複数の画像からユーザの潜在的な興味を推定して関連する商品やサービスを決定する画像処理方法が挙げられます。
 従来、1枚の画像だけでは、写っている被写体以外のユーザーの潜在的な興味を特定することが困難でした。このためSNSの投稿文章など画像以外の情報に頼る必要がありました。
 これに対し、第1のユーザが撮影した複数の画像を記録装置から読み取り、それらの画像に頻繁に出現する被写体を検出する画像処理装置であり、出現回数が閾値以上の被写体をユーザの興味のある複数の対象として決定し、これらの複数の対象に共通して利用される、検出された被写体そのものとは異なる種類の商品や被写体そのものを販売するサービスとは異なる種類のサービスについての情報を決定する技術構成により、複数の画像からユーザの潜在的な興味をより正確に捉える画像処理方法が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7603774/15/ja

  関連する専門分野の例:情報工学(膨大な画像データの読み取り、被写体検出、被写体の出現回数カウント、興味対象の決定および関連商品・サービスの決定という一連の処理を効率的に連携させるためのシステムアーキテクチャの設計、複数の画像から被写体を正確に検出して出現回数を高速に処理する画像処理アルゴリズムの設計、)、認知科学(ーザが画像を撮影する際の心理や意図の分析、どのような被写体が潜在的な興味対象を示すかを認知モデルとして形式化、推奨する商品やサービスがユーザにとって最も魅力的かつ理解しやすい形で表示されるためのユーザーインターフェースの検討)

 

(8)B32B|開発トレンドと専門性

 

 B32B積層体に関する分類です。

 具体例として複数のコレステリック液晶層を積層した加飾フィルムが挙げられます。
 従来、単層のフィルムや従来のホットスタンプ箔では見る角度によって色味が変化する独特の意匠性を十分に表現することが困難でした。
 これに対し、基材上にコレステリック液晶化合物を含む光学反射層を少なくとも2層以上積層した加飾フィルムであり、各光学反射層の拡散反射性を互いに異なるようにするか、各層の間に印刷層が設けられることで、各層が独立して発色するようにしているため、見る方向によって色味が変化する加飾効果を実現し、意匠性を向上させた加飾フィルムが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7583055/15/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(液晶化合物の分子構造の調整による螺旋ピッチや配向安定性の制御、インサート成型時の熱や圧力に対する耐久性を向上させるための重合反応性や架橋密度の調整)、物理化学(コレステリック液晶層の選択反射波長や拡散反射率を層の厚み、屈折率、配向状態に基づいて計算モデル構築、特定の光輝性や色味変化の予測、多層構造の設計指針の確立)

 

 具体例として抗菌層付き支持体が挙げられます。
 従来の抗菌フィルムには曲面に貼付すると支持体と抗菌層との間で剥離が発生しやすいという問題がありました。
 これに対し、柔軟性を持つウレタン樹脂の支持体により曲面への追従性を高め、その支持体の上に親水性ポリマーの主鎖構造をポリ(メタクリレート)とし、これに銀などの抗菌剤が配合された抗菌層(膜厚が30〜350μm、表面の水接触角が20〜60度に調整)が設けられた構成により、曲面への高い追従性と剥離しにくい耐久性を両立する抗菌層付き支持が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7216168/15/ja

  関連する専門分野の例:高分子化学(ウレタン樹脂のモノマー(ポリオール、ポリイソシアネートなど)の種類や配合比の調整および支持体の柔軟性や曲面追従性の最適化、親水性モノマーと他のモノマーの共重合比率や架橋度のコントロール、支持体と抗菌層の界面における分子間相互作用の解析および両層間の密着性を高めるための分子設計)、材料工学(支持体と抗菌層を積層した複合材料の力学的特性の評価、曲げ、引張り、剥離強度などの試験を通じた曲面への追従性や層間剥離耐性の検証、抗菌層の表面にナノスケールで抗菌剤(銀粒子など)を均一に分散させるためのプロセス技術の探索)

 

 具体例として電子機器の筐体などに用いられる複合構造体が挙げられます。
 金属や合金からなる従来の導電性部材は数百μm程度の厚みがあるため、穴あけや切断といった加工の際に変形しやすく、望む形状を得ることが困難でした。
 これに対し、複数の導電体からなる柱状体と、それらを電気的に絶縁して厚み方向に配置する陽極酸化膜の基体、基体の両面に設けられた金属層で構成された複合構造体であり、陽極酸化膜によって形成された多数の微細な孔に導電体である金属が充填され、柱状体を形成し、基体の両面に1〜50μmの薄い金属層が設けられたこれらの構成により、従来の金属箔よりも変形しにくく、穴あけや切断といった加工を容易におこなうことができる構造体が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7402981/15/ja

  関連する専門分野の例:材料工学(基体(陽極酸化膜)、柱状体、金属層からなる複合構造体の引張り強度、硬度、曲げ剛性などの機械的特性の評価、各構成要素の材質や寸法(柱状体の直径、密度、金属層の厚みなど)が加工性、変形しにくさにどのように影響するかの解析)、電気化学(陽極酸化膜の形成条件(電圧、電解液組成、温度など)の最適化、細孔内部に導電体を均一かつ高密度に充填するための電解めっき条件(電流密度、めっき液組成、添加剤の種類など)の検討、高アスペクト比の柱状体を安定して形成するプロセスの確立)

 

 具体例としてインプリント用の中間層を形成するための硬化性組成物が挙げられます。
 従来の組成物では、硬化性層と基材を密着させるための中間層にパターン欠陥が発生するという問題がありました。
 これに対し、複数の重合性官能基を持つ硬化性主剤と、重合禁止剤および特定の溶剤を必須成分として含む硬化性組成物であり、硬化性主剤100万質量部に対して重合禁止剤の含有量を200質量部以上1,000質量部未満とすることで、組成物として高い溶液安定性を保ちつつ形成された中間層上に作製される硬化性層のパターン欠陥を抑制する硬化性組成物が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7467591/15/ja

  関連する専門分野の例:有機化学(重合禁止剤の分子量や官能基(フェノール系、キノン系など)が硬化性主剤の重合反応と組成物の溶液安定性に与える影響の解析、目的とする中間層の機械的特性(例えば、硬さや柔軟性)や密着性を向上させるための重合性官能基の種類や数、分子量を調整した硬化性主剤の設計)、高分子化学(重合禁止剤の濃度や種類、加熱条件などが硬化性組成物中の硬化性主剤の重合反応(架橋反応)にどのような影響を与えるかの解析、硬化性組成物自体の粘度や表面張力といった物性値が塗布性や均一な膜厚の形成に与える影響の評価、形成された中間層の膜厚均一性、表面粗さ、基材や硬化性層との密着性の評価および組成の最適化)

 

(9)G03B|開発トレンドと専門性

 

 G03Bカメラ、映写機などのに関する分類です。

 具体例として全画角が180度を超える対物レンズと組み合わせて用いる光学系が挙げられます。
 従来の技術では、広画角レンズ用のフィルタ切替機構が大型になり、装置全体の小型化や広画角の維持が困難でした。
 これに対し、全画角が180度を超える対物レンズの像側に配置され、用途に応じて光学条件を切り替えるための回動部材を備えた光学系であり、回動部材には光透過特性の異なる複数の光透過領域(例えばフィルタ)が形成されており、回動することで光路中に選択的に配置され、回動部材の回動軸が対物レンズの光軸と非平行に配置されていることにより、光軸と回動軸が平行な従来の構成と比較して装置の幅を削減し、さらに回動部材は広画角の対物レンズに入射する光線が遮られるケラレを防ぐような形状(例:V字状、円錐台状)に設計されていることで全画角を有効に活用することができる光学系が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7623906/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(さまざまな回動部材の形状や配置条件下で周辺画角の光線のケラレや収差(特に非対称収差)の発生の評価、ケラレを防ぎつつ最適な光学性能を達成するための設計パラメータの導出)、機械工学(回動部材の最適な強度と軽量化を両立させて高精度な位置決めが可能な駆動系の設計、振動や衝撃に対する耐性の評価、実用的な耐久性を確保するための材料選定や構造設計)

 

 具体例として投影品質を維持しつつ投影範囲をシフトさせることを可能にする投影装置が挙げられます。
 従来の技術では、投影範囲を移動させる際に光路長が変化し、投影画像の結像位置がずれて画質の低下を招くという問題がありました。
 これに対し、光変調素子と投影光学系の間に複数の反射部材(例えばミラー)を配置した撮影装置であり、複数の反射部材を協調して変位させることで投影画像を目的の位置にシフトさせることができ、このシフト動作中に光変調素子から投影光学系に至るまでの光路の空気換算長を実質的に一定に維持する制御(例えば、1つのミラーを動かすことによる光路長の増加を別のミラーを動かすことによる光路長の減少で相殺するような制御)をおこなうことにより、投影画像の結像位置がシフト前後で変わることがなくボケなどの画質低下を防ぎながら投影範囲を移動させることが可能な撮影装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7623893/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(投影光学系全体における収差(特に非点収差、歪曲収差など)の変動の評価、反射部材の変位量と連動させてこれらの収差を最小化するための最適な駆動アルゴリズムやミラー配置の設計、空気換算長が厳密に一定でない場合の画質への影響の評価および許容される変動範囲の決定)、情報科学(ユーザーからのシフト指示に対して各反射部材の変位量をリアルタイムに計算して結像位置のずれを最小化するようなフィードバック制御システムの設計、複数の画面を同時に投影する際の光路分岐や時分割表示のタイミングを管理するための制御プログラムの実装)

 

 具体例として撮像装置本体に装着されるレンズ装置が挙げられます。
 既存のカメラ技術には手振れ補正や高解像度化のためにレンズを微小に動かす際、光の波長帯域(可視光、近赤外光など)によってレンズの光学特性が変化し、正確な制御が困難になる問題がありました。
 これに対し、イメージセンサーに光を結像させるための移動レンズと、この移動レンズを光軸と交差する平面に沿って移動させる駆動機構を備えたレンズ装置であり、プロセッサが、ぶれ量検出センサーの結果に基づき、ぶれが補正される方向へ移動レンズを動かす制御をおこない、移動レンズを透過する光の波長帯域が変化した場合でも、ぶれ量検出結果に比例したぶれ補正量が得られるように移動レンズの移動量を変更する制御をおこなうことにより、波長帯域が異なる場合でも安定した補正効果が得られるレンズ装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7719101/15/ja

  関連する専門分野の例:応用物理学(複数の光学部品の変位が結像性能に与える影響の理論的な解析、光路長の変化が投影画像のボケ抑制効果に与える影響の評価、可動ミラーの動作範囲と投影範囲シフト量の関係性を数理モデルとして構築、複雑な光路における回折や干渉の影響のシミュレーション)、情報科学(ぶれ量検出センサーから得られる情報をリアルタイムで処理して波長帯域ごとの補正量に変換するアルゴリズムの設計、駆動機構を制御するファームウェアの構築、複数の画像を合成して高解像度画像を生成する画像処理アルゴリズムの設計)

 

 具体例としてインスタントフィルムなどの感光性記録媒体に画像を露光する装置が挙げられます。
 既存の技術では、画像表示装置と感光性記録媒体の間に設けられた制限部材が光の拡散を防ぐ一方で、一部の光が回折することで記録画像のエッジ部分がぼやけ、解像感が低下するという問題がありました。
 これに対し、光の角度を制限する制限部材を備えた画像露光装置であり、プロセッサが入力画像の高周波成分の濃度差のうち、暗部のみを強調して生成した表示画像を画像表示装置に表示(具体的には、アンシャープマスク処理を用いて高周波成分を抽出し、その負成分(暗部)にのみ高い重み付けをおこなうことで、ぼやけやすい暗部の輪郭を強調して表示)することにより、光の拡散による明暗の強調効果の打ち消しを抑え、記録画像の解像感を向上させた画像露光装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7408822/15/ja

  関連する専門分野の例:電子工学(画像露光装置全体のシステム設計、入力画像の画質低下を補償するためプロセッサ上で実行される画像処理アルゴリズム(アンシャープマスク処理など)をリアルタイム処理が可能なように効率化、画像表示装置の個々の画素の光量や発色特性を補正する駆動制御回路の設計)、情報科学(光の拡散によって生じる画像のぼけを予測して補正するためのモデルの構築、暗部強調アルゴリズムの設計、入力画像の種類に応じた最適な処理パラメータを自動的に決定するプログラムの設計)

 

(10)G01N|開発トレンドと専門性

 

 G01N材料分析に関する分類です。

 具体例として有機溶媒を含む薬液の不純物を検出する測定装置が挙げられます。
 既存の技術では、薬液の不純物評価に表面検査装置が用いられていましたが、測定手順が煩雑で時間がかかり、汎用性に欠けるという問題がありました。
 これに対し、不純物を吸着する吸着層と、電極を表面に有する水晶振動子を組み込んだ水晶振動子センサを核とする測定装置であり、このセンサに有機溶媒を含む薬液を接触させ、薬液中の不純物が吸着層に吸着することで生じる水晶振動子の共振周波数の変化量を発振部と検出部で測定し、さらに、薬液と接触する部分(接液部)にフッ素系樹脂を使用することで装置からの不純物溶出を抑制し、測定精度の向上を図り、供給部が薬液をセンサに供給することで簡便で正確に薬液の純度を測定することが可能になる測定装置が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7645335/15/ja

  関連する専門分野の例:分析化学(液体クロマトグラフィー質量分析計などの分析機器による薬液中の不純物成分の評価、不純物成分と共振周波数の変化量との相関関係の評価、異なる不純物成分に対応する最適な吸着層の材料(例えば、金属不純物には特定の金属層、有機不純物には特定の高分子層など)の選定、センサの高感度化の検討)、物理化学(水晶振動子の共振周波数変化と吸着物質の質量変化の関係に基づき薬液の粘度や密度、不純物の吸着速度などが測定精度に与える影響の解析、フッ素系樹脂の接液部が薬液の特性(表面張力など)に及ぼす影響の評価、装置内での不純物溶出を最小限に抑えるための材料特性の検討)

 

 具体例として光の入射が制限された検査室に設けられるシャッター機構が挙げられます。
 従来の技術では、検査室の開閉と高い遮光性の両立が課題でした。
 これに対し、開口部の内側に配置される第1シャッターと、その背後に配置される第2シャッターが組み合わされたシャッター機構であり、第1シャッターは検査対象物に押されることで、内開き、外開き、閉状態を切り替え、第2シャッターは第1シャッターが閉じているときに重なって隙間を塞ぎ、遮光性を確保し、さらに第1シャッターが内開きする際には一緒に回転し、外開きする際にはその場に留まるという連動・非連動の機構を備えていることにより、検査対象物の出し入れを容易にしつつ開口部の遮光性を高めたシャッター機構が開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7595604/15/ja

  関連する専門分野の例:機械設計工学(第1シャッターと第2シャッターの形状、質量、回転軸の位置関係の検討、検査対象物との接触時に適切な回転モーメントが発生するような設計、両シャッターの自重を利用した自動閉鎖機構が確実に作動するための重心位置や各部材の強度・耐久性の評価)、制御工学(検査対象物が所定の位置まで差し入れられたことを検知するセンサーの選定と配置の検討、信号に基づいてシャッターが自動的に閉じるシーケンス制御のプログラム、手動操作を不要にして検査室の遮光状態を自動で維持できる信頼性の高いシステムの構築)

 

 具体例として銀増幅を利用した新型コロナウイルス抗原の検出キットが挙げられます。
 RT-PCR検査は高感度ですが迅速性に欠け、従来の抗原検査は感度が低いという問題がありました。
 これに対し、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質に特異的に結合する抗体として感度の高いIgG2bサブクラスの抗体を使用し、この抗体を金コロイドなどの標識物質で修飾し、イムノクロマトグラフ法で抗原を捕捉し、さらに検出部位に捕捉された標識物質の情報をキットに含まれる銀化合物と還元剤を用いて銀増幅することで微量の抗原でも視認可能なレベルまで信号を増幅させることにより、迅速で高感度な検出が可能な検出キットが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7496582/15/ja

  関連する専門分野の例:免疫学(複数のモノクローナル抗体の作製およびサブクラス(例:IgG1、IgG2b)やエピトープ特異性、抗原への結合親和性の分析、IgG2bサブクラスが特に高い感度を示すことの証明、キットに組み込むべき最適な抗体の特定)、分析化学(銀イオンを含む化合物(例:硝酸銀)と還元剤(例:硫酸鉄(II)アンモニウム)の種類や濃度、pH、反応時間などのパラメータの検討、金コロイドを核とした銀の析出を効率的に進めてノイズを最小限に抑えつつ安定した高感度な発色が得られるための増幅液の組成の確立)

 

 具体例として生体液中の高分子の濃縮デバイスが挙げられます。
 従来、限外濾過では濃縮に時間がかかり迅速な現場診断には不向きでした。。
 これに対し、高吸水性ポリマーを収容した第1の容器と、その下部に孔径が調整された多孔質膜の排出部を備える濃縮デバイスであり、検体液を第1の容器に注入すると高吸水性ポリマーが検体液中の溶液(水や低分子物質)を吸収し、高分子(抗原など)を容器内に留めることで濃縮液を生成し、その後、遠心力などの外力を加えることで多孔質膜を通して濃縮液を第2の容器に短時間で回収することにより、従来の限外濾過法に比べて迅速な濃縮が可能となる濃縮デバイスが開発されています(以下URL)。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7590441/15/ja

  関連する専門分野の例:化学工学(SAPの膨潤率や吸水速度、粒子径と検体液中の高分子の濃縮率との相関関係の解析、多孔質膜の孔径、表面エネルギーおよび遠心力の条件が濃縮液の排出時間と回収量に与える影響の検討、夾雑物(尿素など)の除去効率を最大化しつつ標的高分子の回収率を維持するための最適なデバイス構造の設計)、分析化学(濃縮液中の高分子の濃度を正確に測定するための分析プロトコルの確立、濃縮プロセスが抗原の構造や活性に与える影響の評価および最適な濃縮条件の決定、金コロイドなどの標識物質の安定性や銀増幅反応の効率を濃縮液の組成(pHや塩濃度)に合わせて最適化する検討)

 

3.5 共同出願人との開発例

 共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。

 技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。

 共同出願人(筆頭出願人)は以下のとおりです。

 

 詳細は省略します。

 

4 開発に求められる専門性

 上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。

 上記各特許情報には以下の人材が関わっていると言えます。

 

(1)医療関連(A61B)

情報系、電気系、機械系の分野(情報科学、情報工学、電気工学、電気電子工学、電子工学、機械工学など)

 CTやMRIなどの三次元医用画像の処理装置、内視鏡撮影画像を用いて被写体の認識処理をおこなう画像処理装置、超音波内視鏡、内視鏡システムなどの出願が関係します。
 情報系では、医用画像データの解析アルゴリズムの設計、ヒューマンコンピュータインタラクションに基づいたユーザーインターフェースの設計、医療機器データとシステム間のデータフローの構築などが、電気系では、高速画像処理を実現するハードウェア構成の設計、医用画像信号の安定的な伝送と表示システムの回路設計などが、機械系では各部品の応力集中を最小化するための強度解析、細径化と高信頼性を実現する材料選定と配置検討、挿入部の柔軟性と耐久性を両立させる構造設計などが求められます。 

 

(2)光学系関連(G02B)

化学系、物理系、材料系の分野(材料化学、高分子化学、応用物理学、材料工学など)

 光偏向装置に用いられる光学素子、インナーフォーカス方式の撮像レンズ、建築物用部材および車両内装用部材などで使用される三次元成形体の製造方法、ヘッドマウントディスプレイなどに用いられる導光体などの出願が関係します。
 化学系では高性能な光学材料の分子設計と合成、機能性材料の複合化による特性の最適化、材料の配向性制御とプロセス設計などが、物理系では光学素子の光応答特性の理論解析、回折・散乱現象のモデル化とシミュレーション、光デバイスの構造と性能の関係性評価などが、材料系では高機能な光学材料の選定と評価、薄膜成膜プロセスの探索、材料界面の接合技術確立と信頼性評価などが求められます。 

 

(3)フォトリソグラフィ関連(G03F)

化学系、材料系の分野(有機化学、分析化学、高分子化学、材料工学など)

 微細パターンの線幅を均一にできるレジスト組成物、カラーフィルタのシアン色画素形成に好適な感光性樹脂組成物、半導体製造プロセスに用いられる、長期間保存後も品質が安定し、ウェハ上に欠陥を生じさせにくい薬液、感光性転写フィルムなどの出願が関係します。
 化学系では新規な有機化合物の合成と構造解析、目的とする機能を発現する分子設計、反応プロセスの最適化とスケールアップ検討などが、材料系では高機能性材料の物性評価と機能発現メカニズムの解析、複合材料の配合設計とプロセス条件の最適化、製品の長期安定性および信頼性の評価などが求められます。 

 

(4)画像通信関連(H04N)

電気系、情報系、物理系の分野(電子工学、電子情報工学、情報工学、ソフトウェア工学、物理工学など)

 消費電力の低減を実現する撮像素子、撮像レンズの光学特性に合わせた位相差オートフォーカスを実現する撮像装置、撮影装置の映像表示方法、光源の変化に伴って動画像のフレーム間で異なる色補正をおこなう画像処理装置などの出願が関係します。
 電気系では高性能かつ低消費電力な半導体チップのアーキテクチャ設計、複数ポート間の高速データ通信を実現するインターフェース回路の検討、多機能化に対応した回路ブロックの配置と配線の最適化などが、情報系では複数種類の画像データの生成アルゴリズムの設計、画像処理アルゴリズムのハードウェア実装に適した並列処理化と最適化、画質とデータ量のトレードオフを考慮した間引き処理や圧縮方式の検討などが、物理系では光学的挙動の数理モデル構築と検証、微細構造が光と物質に与える影響の解析、高精度なセンシングを実現するための物理原理の応用検討、多要素間の相互作用に基づいたシステム最適化アルゴリズムの考案などが求められます。 

 

(5)半導体関連(H01L)

化学系、電気系、機械系、材料系の分野(無機化学、材料化学、化学工学、電子工学、機械工学、材料工学など)

 半導体製造プロセスで用いられる基板上のルテニウムなどの遷移金属を除去するための薬液、半導体実装構造体、半導体エッチング液、半導体デバイス製造プロセスにおける薬液の供給方法などの出願が関係します。
 化学系では薬液など対象物の化学反応メカニズムの解明、反応条件の最適化検討、基板表面の物理化学的特性解析、材料表面への影響評価などが、電気系では半導体間の信号伝送経路の最適設計、配線パターンの電気的特性評価、高周波動作時のノイズ抑制技術検討などが、機械系では熱応力による構造変形解析、放熱構造の最適化設計、実装部品の機械的信頼性評価などが、材料系ではエッチングなどの材料処理におけるメカニズムの解析、選択的エッチングと表面品質など処理と材料の相関解析、材料への化学的ダメージ抑制検討などが求められます。 

 

(6)情報記録、再生関連(G11B)

化学系、材料系、電気系、情報系、物理系の分野(高分子化学、材料工学、電子工学、制御工学、応用物理学など)

 高平滑性磁気記録媒体、磁気テープと記憶媒体を備えた磁気テープカートリッジなどの出願が関係します。
 化学系では結合剤などの分子設計と合成、ポリマー鎖の末端および側鎖官能基の選定、添加剤との相互作用の検討などが、材料系ではナノ粒子分散技術の確立、複合材料の力学特性評価、表面・界面の物理化学的特性解析などが、電気系では磁気素子・回路の微細構造設計、非接触通信システムの特性評価、信号処理回路による情報抽出の検討などが、情報系ではヘッド駆動系の自動化制御アルゴリズムの設計、センサー情報に基づくフィードバックシステムの構築、ヘッド傾斜調整のための制御ロジックの最適化などが、物理系では磁性層表面の潤滑剤の偏析メカニズムの理論モデル構築、対象物の表面組成、摩擦特性および表面形態の評価、物性評価結果に基づく材料や製造プロセスの最適化などが求められます。 

 

(7)電気的デジタルデータ処理関連(G06F)

情報系、電気系の分野(情報科学、情報工学、データサイエンス、情報科学、ソフトウェア工学、認知科学、電子情報工学など)

 アクセス管理システム、ユーザの嗜好をより正確に推定することができる情報処理装置、複合機などの情報機器におけるユーザインターフェースの表示に係る制御装置、複数の画像からユーザの潜在的な興味を推定して関連する商品やサービスを決定する画像処理方法などの出願が関係します。
 情報系では情報処理アルゴリズムの設計、システム動作の数理モデル構築と検証、データ構造の最適化、データ収集システムの設計、データクレンジングおよび前処理プロセスの確立などが、電気系ではハードウェアとソフトウェアの協調設計、システムの物理的セキュリティの検討、システム構成要素の性能評価と最適化などが求められます。 

 

(8)積層体関連(B32B)

化学系、材料系の分野(有機化学、物理化学、高分子化学、電気化学、材料工学など)

 複数のコレステリック液晶層を積層した加飾フィルム、抗菌層付き支持体、電子機器の筐体などに用いられる複合構造体、インプリント用の中間層を形成するための硬化性組成物などの出願が関係します。
 化学系では特定の機能を持つ分子の合成・設計、材料の物性および安定性の最適化、発色・光学的特性の理論的解析、多層構造における光学的相互作用のモデル化、材料の構造と物性の相関関係の解明などが、材料系では多層構造における界面の接着性・剥離耐性の評価、複合材料としての力学的特性の解析、表面物性(接触角、硬度など)と性能の相関関係の解明、粒子分散状態の制御とプロセス技術の最適化などが求められます。 

 

(9)カメラ、映写関連(G03B)

物理系、機械系、情報系、電気系の分野(応用物理学、機械工学、情報科学、電子工学など)

 全画角が180度を超える対物レンズと組み合わせて用いる光学系、投影品質を維持しつつ投影範囲をシフトさせることを可能にする投影装置、撮像装置本体に装着されるレンズ装置、インスタントフィルムなどの感光性記録媒体に画像を露光する装置などの出願が関係します。
 物理系では光路上の遮光を回避するための光学配置の最適化、回動部材の非平行配置による光学性能への影響解析、各種フィルタが画質に与える影響の評価などが、機械系では回動部材の小型化と軽量化を両立させるための構造設計、駆動機構の応答性、精度および耐久性の検討、非平行な回転軸を持つ回動機構の動力伝達効率の解析などが、情報系では投影品質を維持するためのミラー変位制御アルゴリズムの設計、リアルタイムでの光路長補正を実現する制御システムの構築、複数の画像情報の高速処理とミラー制御を統合したシステムアーキテクチャの設計などが、電気系では画像表示装置の駆動回路設計、画像処理アルゴリズムを効率的かつリアルタイムに実行するためのハードウェア構成の検討、最適な露光設定をおこなうためのセンサーシステムの検討などが求められます。 

 

(10)材料分析関連(G01N)

化学系、機械系、情報系、生物系の分野(分析化学、物理化学、機械設計工学、制御工学、免疫学など)

 有機溶媒を含む薬液の不純物を検出する測定装置、光の入射が制限された検査室に設けられるシャッター機構、銀増幅を利用した新型コロナウイルス抗原の検出キット、生体液中の高分子を濃縮するためのデバイスなどの出願が関係します。
 化学系では不純物成分の定性的・定量的な評価、吸着層材料と不純物の相互作用の検討、水晶振動子センサの物理的・化学的応答メカニズムの解析、測定系の最適化に向けた表面・界面現象の検討などが、機械系では機構の運動学的・動力学的解析、部材の形状、材質、および寸法を最適化、繰り返し動作に耐えうる部材強度と摩耗を抑えるための機構を設計などが、情報系では検査対象物の位置や状態を検知するセンサーやシャッターの連動・非連動を切り替える制御ロジックの設計、シャッターが遅延なく正確に開閉するための制御アルゴリズムの設計などが、生物系では抗原の選択と評価、モノクローナル抗体の作製、抗体の特性評価と選定、偽陽性やノイズを低減するための抗体やバッファーの組成の最適化などが求められます。 

 

 ただし、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。

 

5 まとめ

  からまで広範囲で特許出願されており、おこなわれている開発や求められる専門性も多岐にわたると考えられます。

 大学の専攻と関連づけるとしたら、主に化学、材料、電気、機械、情報、物理における研究分野が該当する可能性があります。

 

 本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。

 興味を持った企業がある場合は、その企業に絞って調べることをおすすめします。

 参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4

 以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。

 

<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年版 東洋経済新報社

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