今回は電線・ケーブル業界に焦点をあてます。
電力、通信、自動車など、多くのものが電線がないと動かない重要部品です。
しかし、その開発内容は外部からはなかなか見えにくいのが実情ではないでしょうか(単に「銅線を被覆するだけ」といったイメージを持っている人が多いのでは)?
これを特許情報からみていきます。
特許情報は企業の開発情報だと言えます。
実際にどのような開発がおこなわれたのか特許情報に記載されています。
今回は、電線・ケーブルメーカー大手4社の特許情報からどのような開発がおこなれてきたのか、また、開発にどのような専門性が求められるのか読み解きました。
結論(概要)は以下の通りです。
・電気系分野(電気電子工学、電気工学、電子工学など)
・機械系分野(機械工学、精密工学、人間工学など)
・材料、化学系分野(材料科学、材料工学、高分子化学、材料化学、化学工学など)
・情報系分野(情報工学、制御工学、通信工学など)
1 業界サーチの概要
特許情報は企業の開発情報だと言えます。
業界サーチは、業界における主要企業の特許情報から、その業界の企業がどのような開発をおこなってきたのか、客観的な情報を導き出そうとするものです。
特許分類(後述)からは、その特許に関わる開発の主な技術分野がわかります。
すなわち、その企業の開発職においてどのような専門性が求められるのか特許情報から推測できます。
2 電線・ケーブル業界
2.1 電線・ケーブル業界とは
ここでは、電力や通信用ケーブルや自動車用ワイヤーハーネスなどの電線・ケーブル製品を製造・販売する業界を意図します。
2.2 サーチ対象
以下の電線・ケーブルメーカー4社を対象にしました。
(2)古河電気工業(古河電工)
(3)フジクラ
(4)矢崎総業
以下、括弧内の略称で記載します。
2.3 使用プラットフォーム
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
3 サーチ結果
3.1 結果概要
開発イメージは下表のとおりです。
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モノの開発 |
サービスの開発 |
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個人向け |
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法人向け |
・配線基板の電気的接続構造 |
・光接続構造体の製造方法 |
モノの開発としては、例えば、各種のケーブルが挙げられます。
サービスの開発としては、例えば、ケーブルの製造方法などが挙げられます。
3.2 出願件数の推移
下図は電線・ケーブルメーカー4社の特許出願件数の推移です。

企業によって特許出願件数に差はあるものの、各社とも毎年多くの特許出願をおこなっていることがわかります。
このような特許出願につながる開発が日々おこなわれていることが推測されます。
3.3 開発の活発度
特許出願件数≒開発の活発度、だと考えるなら、
住友電工>矢崎総業>古河電工≒フジクラ
だと言えます。
3.4 主な開発分野
各社ごとに特許出願件数が多かった技術分野を以下に示します。
各社の出願上位3つの技術分野を抽出して並べています(特許出願されていても、その企業の出願件数上位に入っていない技術分野は除外されています)。
各記号は発明の技術分類をあらわします。

分類参照:FIセクション/広域ファセット選択(特許情報プラットフォーム)
動力供給線などがこれに該当します。
矢崎総業がこの分野から多く出願しています。
特定の光学装置などがこれに該当します。
住友電工、古河電工、フジクラがこの分野から多く出願しています。
電力ケーブルなどがこれに該当します。
古河電工、フジクラがこの分野から多く出願しています。
半導体製造装置などがこれに該当します。
住友電工がこの分野から多く出願しています。
印刷回路などがこれに該当します。
住友電工、古河電工、矢崎総業がこの分野から多く出願しています。
水中における電気ケーブルの据え付けなどがこれに該当します。
矢崎総業がこの分野から多く出願しています。
印刷回路製造装置などがこれに該当します。
フジクラがこの分野から多く出願しています。
3.5 電線・ケーブルメーカー4社の近年の開発トレンドと求められる専門の例
特許情報の出願年数が新しいほど、その企業の開発実態を反映していると言えます。
ここ10年のトレンドは以下のとおりです。
発明の主要な技術分野(筆頭FI)の出願年ごとの出願件数です。
出願件数が少ない技術分野は除外しています。
発明の説明は、必ずしも特許請求の範囲を完全に表現したものではありません。
関連する専門分野の例はあくまでイメージです。また、専門の概念レベルを必ずしも同一レベルで表示してはいません。
特許は難解ですが、GeminiやChatGPTなどのテキスト生成AIを活用すると簡単に解読できます。以下の記事を参考にしてください。
(1)住友電工|開発トレンドと専門性

上図期間中、H01Rが最も多いです。次いでH01B、G02B、H01L、H01M、H02G、H04Lが多いです。
具体例として電子機器の配線基板の電気的接続構造が挙げられます。
従来の接続構造は製造が複雑で厚みが増し、接続も不十分になりがちでした。
これに対し、中心導体と絶縁層を持つ複数の絶縁電線がプリント配線板上の被接続部に接続された構造であって、複数の中心導体が軸方向先端部で露出し、被接続部に半田で電気的に接続され、露出した中心導体は軸方向に垂直な方向(側面視で中心導体の下面に達しない範囲)に配置された接着剤で互いに接着され、位置決めされることにより、従来の複雑な構造や厚みの増加を回避しつつ多数の細い電線の一括接続が可能な電気的接続構造が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7509013/15/ja
関連する専門分野の例:材料科学(半田付け時の熱や外部環境変化に対する接着剤の耐熱性、接着強度、透明性の維持評価、中心導体と絶縁層の界面接着性を高めるプライマー材料の選定と経時劣化防止のための特性評価、高周波特性や信号伝送速度を考慮した絶縁層材料の誘電特性評価)、電気電子工学(高周波信号を正確に伝送するためのケーブルと配線板のインピーダンス整合設計、多芯ケーブルや高密度配線におけるクロストーク(信号間の干渉)を最小化するためのシールド設計やグラウンドパターンの最適化の検討、接続部の半田接合における接触抵抗の低減や熱による電気特性の変化の評価、長期的な信頼性を確保するための材料選定とプロセス条件の確立)
従来のコネクタ付き多心ケーブルはコネクタとの接続部の強度が不十分でケーブルが容易に引き抜けたり断線したりする問題がありました。
これに対して、多心ケーブルの一端にコネクタが接続され、このコネクタは筒状のブーツ(ケーブルとコネクタの接続部分を覆う外装部品)と、それに連結されたストレインリリーフ(ケーブルとコネクタの接続部にかかる応力を緩和し、断線や破損を防ぐ部品)を主要部品として構成され、ブーツは強度確保のため比較的高い弾性率の材料で形成され、ストレインリリーフは曲げ追従性のためブーツより低い弾性率の材料で構成され、ストレインリリーフ内部にはU字状の第1および第2固定部が設けられ、これらが多心ケーブルを2箇所ずつ挟み込むように支持し、ブーツの周壁部には凸部、ストレインリリーフの固定部には凹部が形成され、これらがスナップフィット結合(部品同士をはめ込むだけでツメや突起が嵌合して固定される機構)することで、ブーツとストレインリリーフが強固に一体化され、ケーブルの引き抜きに対する強い結合力と曲げ応力に対する応力緩和が両立され、ケーブルの断線やコネクタからの脱落を抑制できるコネクタ付き多芯ケーブルが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7396149/15/ja
関連する専門分野の例:材料工学(コネクタを構成するブーツとストレインリリーフの材料選定と特性評価を、要求される機械的特性(弾性率、引張強度、耐疲労性)と成形性、環境耐性(耐熱性、耐候性)のバランス最適化)、機械工学(第1および第2固定部のU字形状や多心ケーブルを支持する2箇所の接触点の位置、固定部の肉厚などの応力解析、コネクタの構造設計、ブーツとストレインリリーフのスナップフィット結合部における嵌合時の塑性変形や長期間の使用におけるクリープ変形による結合力低下の予測および凸部・凹部の形状、寸法公差、材料の組み合わせの最適化)
具体例として絶縁層に特徴を有する電線が挙げられます。
従来の電線は電力消費量の増大により導体温度が上昇しやすく、電力ロスや絶縁性能の低下が問題でした。
これに対して、導体を被覆する絶縁層に特徴を有し、この絶縁層はオレフィン系樹脂と、それと非相溶の樹脂からなる海島構造を形成する樹脂成分を含み、黒鉛からなる第1フィラー(微粒子状の添加物)と、金属酸化物または金属水酸化物からなる第2フィラーが特定の質量比で配合された海島構造により、熱伝導性の高い黒鉛フィラーが非相溶樹脂側に効率的に偏在し、絶縁層全体の熱伝導率が向上することで、導体から発生する熱が外部へ放出され、導体の温度上昇を抑制することで電力ロスを低減する電線が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7666738/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(オレフィン系樹脂とスチレン系共重合体の種類や分子量、スチレン含有量と溶融混練時の相分離挙動の評価、熱伝導性フィラーが非相溶樹脂相に効率的に偏在する最適な海島構造の形成条件の確立、絶縁層の引張強度や耐油性といった機械的特性と誘電率や体積固有抵抗などの電気的特性が樹脂成分の組成や海島構造にどのように影響されるかの解析、目的特性を満たす樹脂材料の配合設計)、機械工学(絶縁層の厚み、フィラーの配合比率および配置が熱伝達特性に与える影響の評価、黒鉛フィラーと金属酸化物/水酸化物フィラーの種類、粒径、形状および含有量が絶縁層全体の熱伝導率に与える影響の評価)
従来のポリエチレンを用いた絶縁層では、異物などによる局所的な高電界下で電気トリー(高電界下で絶縁材料内部に樹木状に発生する放電痕)が発生し、絶縁性が低下するという問題がありました。
これに対して、電力ケーブルの絶縁層において、ポリエチレン中の特定の炭素官能基(メチン基、メチレン基、メチル基)の比率が13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルにより特定範囲に制御されることで、局所的な高電界下で発生する電気トリーの抑制と、それに伴う絶縁層の絶縁性および信頼性の向上を達成する樹脂組成物が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7380804/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(ポリエチレンの重合条件と分子構造(特に分岐構造、メチン基の導入と制御)の関係の解析、目的とするメチン基の比率(RX)およびメチル基に対するメチン基の比率(X/Z)を再現性よく実現する重合プロセスの確立)、材料工学(樹脂組成物の引張強度、伸び、耐熱性、耐候性などの物理的特性の評価、電力ケーブルの製造工程(押出成形など)における加工性や製品としての耐久性の確認、針状電極を用いた絶縁破壊試験や長期の電圧印加試験を通じた電気トリーの発生抑制効果と絶縁寿命の検証、実用化に向けた材料の最適化)
具体例としてマルチコアファイバと複数の光ファイバを接続する光接続構造体の製造方法が挙げられます。
従来の技術では、光ファイバをフェルール(光ファイバを保持し、位置決めするための筒状の部品)に固定する接着剤が経時的に収縮し、光ファイバの先端が後退(引き込み)することで、光ファイバと対向するファイバの間に隙間が生じ、反射減衰量や挿入損失といった光学特性が劣化するという問題がありました。
これに対して、複数の光ファイバをフェルールに固定した後、接着剤に追加の熱処理を施すことで接着剤の表面を意図的にフェルールの端面より奥に引き込ませ、これによって形成された空間に屈折率整合剤を封入することで、光ファイバがさらに引き込んだとしても、この屈折率整合剤が隙間を埋め、光の反射や損失を抑制し、光接続構造体の長期的な光学特性の安定性が向上する光接続構造体の製造方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7605030/15/ja
関連する専門分野の例:電気工学(光ファイバとフェルールの接続部における光信号の反射や損失が高速データ伝送における電気信号の品質にどのように影響するか分析、接着剤の引き込み量や屈折率整合剤の特性がシステム全体の電気的性能に与える影響の評価および最適な設計基準の確立)、材料科学(光ファイバ固定用の接着剤について熱硬化後の収縮率、ガラス転移温度、接着強度、光学特性(透明性、屈折率)および長期安定性の評価、追加熱処理による接着剤の意図的な収縮挙動を正確に制御するための熱処理条件の最適化、屈折率整合剤との相互作用や異なる環境下での材料劣化メカニズムの解明、製品寿命全体にわたる信頼性を保証できる材料選定と品質管理基準の確立)
既存技術のマルチコアファイバ(MCF)接続では、コアが多いため広い面積を面接触させる必要があり、光ファイバ端面への高い押圧力が必要でファイバの破損や特性劣化のリスクがありました。
これに対して、複数の光ファイバそれぞれの端面の最大曲率(R)と、フェルールから突き出た光ファイバの突き出し量のバラツキ(Δh)が所定の数式 (ΔH/3.5)2+(R/0.2)2<1の関係を満たす光コネクタ同士を16N以上の押圧力で接続することにより、ファイバ端面の平坦性を高めつつ突き出し量のバラツキを抑え、光ファイバの破損リスクを低減しながら全てのコア間で良好な物理接触(PC接続)を低く抑えた押圧力を実現する光コネクタの接続方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7435692/15/ja
関連する専門分野の例:材料科学(光ファイバの曲率研磨プロセスにおける研磨条件(研磨剤の種類、粒径、研磨圧力、時間)がファイバ端面の表面粗さ、残留応力および長期的な強度に与える影響の評価、フェルール材料の硬度、剛性、耐摩耗性の測定、PC接続時の繰り返し荷重に対する耐久性の検証)、機械工学(光ファイバとフェルールの接続部に応力がどのように分布するかの解析およびファイバ端面の弾性変形量と接触面積の予測、所定の押圧力で全てのコアが確実にPC接続されかつファイバに過度な応力がかからない最適な突き出し量と曲率の関係の導出および設計の妥当性検証)
具体例として半導体装置が挙げられます。
従来の半導体装置では、温度変化による材料の線膨張率の違いから主電極(特にアルミニウムを含むもの)に応力集中が生じ、内部破壊や剥離といった故障が発生していました。
これに対して、半導体チップ上に設けられたアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む主電極と、その主電極に接合材を介して接続される緩衝板を備えた半導体装置であって、半導体基板の線膨張率(第1線膨張率)と緩衝板の線膨張率(第2線膨張率)が主電極の線膨張率(第3線膨張率)よりも小さく、かつ第2線膨張率が第1線膨張率よりも小さいという線膨張率の関係により、温度変化時に主電極に生じる熱応力を緩衝板が抑制し、主電極の内部破壊を防ぐ半導体装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7666644/15/ja
関連する専門分野の例:材料科学(半導体装置を構成する各部材(半導体基板、主電極、緩衝板、接合材)の熱的特性、機械的特性、電気的特性の解析、線膨張率、熱伝導率、電気抵抗率、降伏応力などの材料パラメータの最適化、熱応力による破壊を抑制し長寿命化を実現する材料選定と設計)、電子工学(半導体装置の電気的特性および熱的特性の設計、シミュレーション、評価、パワー半導体としての性能(オン抵抗、スイッチング損失など)を維持しつつ長期信頼性を確保するためのデバイス構造と製造プロセスの確立)
具体例としてリチウムイオン電池などに用いられるリード部材が挙げられます。
従来のリード部材では、複数のリード部材を重ねて溶接する際に表面処理層に残存する水分が原因で十分な溶接性が得られないという問題がありました。
これに対して、金属基材の表面にクロム、酸素、フッ素を含む表面処理層が形成されており、その表面処理層の樹脂部から露出した部分の水分含有量が5.0 μg/cm²以下(気化温度220℃のカールフィッシャー電量滴定により測定)であることで、表面処理層中の水分が低減され、溶接時の品質低下や位置ずれを防ぎ、信頼性の高い電池製造に貢献するリード部材が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7632494/15/ja
関連する専門分野の例:材料化学(表面処理層に含まれるクロム、酸素、フッ素の結合状態や配位環境の解析およびその組成が水分吸着に与える影響の評価、乾燥条件や表面処理液の組成が表面処理層の水酸基量や結晶構造に及ぼす影響の評価、溶接性に最適な層形成条件の探索)、電気化学(さまざまなリード部材が充放電サイクル特性、自己放電特性およびインピーダンス特性の評価、リード部材と電解液の界面における電気化学的安定性の評価、表面処理層が電解液分解反応に与える影響の解析)
具体例として 電力ケーブルの布設方法が挙げられます。
従来の電力ケーブル布設では、長く重量のあるケーブルの搬送中に搬送機ごとの速度差などによりケーブルが大きく蛇行し、既設構造物などへの接触・損傷が問題でした。
これに対して、複数の搬送機で電力ケーブルを送り出す工程中に、ケーブルの蛇行を機械的に検知するステップを含み、この検知は、ケーブルの正常な変位範囲を超えた場合に、その通路に配置された2本のポール部のうち少なくとも一方がケーブルに押されて傾倒することでおこなわれ、ポール部の傾倒はスイッチ部を作動させ、その信号が送信部から制御部へ送られ、信号を受信した制御部は、布設作業中の全ての搬送機の駆動を即座に停止させることにより、さらなる蛇行の進行を防ぎ、作業員が安全に蛇行を是正することが可能な電力ケーブルの布設方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7426005/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(ポール部の傾倒を検知するスイッチからの信号の信頼性(ノイズ対策、誤作動防止)評価、無線または有線による信号伝送の遅延や安定性に関する検証、複数の搬送機のモーター駆動制御回路との連携設計、緊急停止機能の安全性評価、自動是正機能における搬送機群の速度制御アルゴリズムの設計)、機械工学(ポール部、台座部、ヒンジ部などの強度・剛性解析、ケーブルの質量や引張力、摩擦力などによるポール部への負荷評価、ケーブルの蛇行によるポール部の傾倒挙動のシミュレーション、装置全体の軽量化と耐衝撃性・耐環境性の材料選定)
具体例として産業用機器等のネットワーク接続におけるセキュリティ装置が挙げられます。
従来のセキュリティシステムでは、対象機器の正当性判断に限定され、ネットワーク全体のセキュリティを向上させる機能が不十分でした。
これに対して、複数の通信ポートと、これらを介して接続された多数の機器間の通信を制御するスイッチ部を備え、認証部で外部から送られてくる接続命令に含まれる認証情報を検証し、認証が成功した場合にのみ、当該接続命令に含まれる状態情報に基づき、スイッチ部を介した特定機器群の通信可能範囲を動的に設定することにより、通常時は全ての通信を遮断し、必要な時に必要な機器間のみの通信経路を限定的に確保することでマルウェア感染時の被害拡大防止や不正アクセスからの耐タンパ性向上といった、ネットワーク全体のセキュリティ機能を向上させたセキュリティ装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7428297/15/ja
関連する専門分野の例:情報工学(接続命令の認証処理を高速かつセキュアに実行するための暗号学的アルゴリズムの選定と実装、多数の機器からの同時接続要求や動的な通信範囲変更に効率的に対応するためのスイッチ部制御アルゴリズムの設計、ネットワークの状態情報や認証ログをリアルタイムで分析し、異常なアクセスパターンや潜在的な脅威を検知するためのデータ解析アルゴリズムや機械学習モデルの構築)、電気電子工学(複数の通信ポートとスイッチ部を含む高信頼性、高スループットなネットワークインターフェース回路の設計、認証部や制御部といった処理回路の低消費電力化と高集積化を考慮したLSIまたはFPGAの選定と基板レイアウト設計、外部からの電磁ノイズや物理的攻撃に対する耐性を持つ回路設計)
(2)古河電工|開発トレンドと専門性

H01Rが最も多いです。次いでH02G、G02B、H01B、H01L、H01Sが多いです。
具体例としてアルミニウムと銅を接合した端子が挙げられます。
従来のアルミニウムと銅を摩擦圧接で接合した端子は電線配策時の曲げや引っ張りによって接合部に亀裂が生じやすいという問題がありました。
これに対して、線接続部がアルミニウム系材料、他の導体部材が連結される接続部が銅系材料からなる端子において、接合界面におけるアルミニウム系材料の結晶粒径が特定範囲で微細かつ均一に制御、具体的には、接合面を始端とするアルミニウム系材料の平均結晶粒径が3 µm以下となる微結晶領域の終端位置を、接合面の中心を起点として長手方向に接合面の円相当直径の3%から15%の範囲内とし、さらにこの微結晶領域の中心部と外周部での結晶粒径の比が0.75から1.25の範囲とされることで、局所的な変形を抑制し、端子全体の緩やかな変形を可能にする端子が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7434398/15/ja
関連する専門分野の例:材料科学(摩擦圧接条件と接合後の熱処理がアルミニウムおよび銅の結晶粒径、結晶方位および金属間化合物の形成に与える影響の評価、微細組織パラメータと端子の破壊メカニズムとの相関関係から最適な材料設計指針を導出)、機械工学(端子の形状、接合部の幾何学的特徴(例: 接合線の長さ、平均接合角度、接合面の曲率)および材料の機械的特性(降伏強度、引張強度、伸び、ヤング率など)が外部からの曲げや引っ張り荷重に対する応力集中、ひずみ分布および亀裂発生・進展に与える影響の評価、耐久性の高い端子構造の設計)
従来のアルミニウム電線とアルミニウム圧着端子の接続では、圧着に必要な力が大きく、また通電時の発熱による接続部の電気抵抗上昇や発火事故のリスクがありました。
これに対して、アルミニウム圧着端子の管状挿入部の特定領域におけるアルミニウム系材料の結晶粒径の制御、具体的には、圧着凹部と対向する部分に、平均結晶粒径が10 µm以上35 µm以下の微細な内側領域が設けられて導線との接触信頼性を高め、その外側には平均結晶粒径が80 µm以上120 µm以下の粗大な外側領域が隣接することで、圧着に必要な力が低減され、内側領域の厚さと全領域の合計厚さの比が10%から70%であることで、低荷重での高信頼性接続を可能にするアルミニウム圧着端子付きアルミニウム電線が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7558798/15/ja
関連する専門分野の例:材料工学(鍛造条件(鍛造温度、ひずみ速度、加工度)や熱処理条件(温度、時間、冷却速度)が挿入部の内側領域と外側領域の結晶粒径分布、ビッカース硬さおよび残留応力に与える影響の評価、目的の特性を有する材料組織を再現性良く実現するためのプロセスパラメータの最適化)、機械工学(圧着工具のダイス形状、圧着深さおよび端子の管状挿入部の肉厚や内径が圧着時の応力集中、材料の変形挙動および圧着後の接触圧力分布に与える影響の解析、製品の信頼性と製造効率を最大化するための設計パラメータの選定)
具体例としてケーブル敷設用トラフ(ケーブルを収容し保護するための溝型構造物)が挙げられます。
従来のケーブル敷設用トラフは傾斜地でのケーブルの不安定さやケーブル固定具の部品点数の多さ、作業性の悪さといった問題がありました。
これに対して、略U字型の本体の両端に雄部と雌部が設けられ、これらが嵌合するものであり、雄部の底部に幅方向に長い貫通孔が一対形成され、雌部底部には貫通孔が設けられず、連結時に雄部底部裏面と雌部底部表面の間に隙間が形成されることにより、紐状部材がこの貫通孔と隙間を通してループ状に固定されることで、工具不要で簡易にケーブルがトラフに固定でき、また、貫通孔周辺の突起が紐状部材の挿通をガイドし、作業性を向上させ、傾斜地でもケーブルのずれや湾曲を抑制し、長期間安定した運用を可能にするケーブル敷設用トラフが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7269451/15/ja
関連する専門分野の例:材料工学(トラフ本体や固定金具に使用する材料の選定、材料特性が製品の機能、耐久性、製造コストに与える影響の評価、屋外環境での使用を考慮した耐候性、耐食性、機械的強度(特に衝撃や疲労に対する強度)の最適化)、機械工学(トラフの雄部と雌部の嵌合機構の連結時の強度や安定性を確保するための寸法や形状の最適化、ケーブルを固定する紐状部材の挿通を容易にするための貫通孔のサイズや位置、ガイドとなる突起の形状や突出量の設計、固定金具についてトラフ蓋の確実な固定と取り外しの容易性を両立させるためのバックル機構や係止爪の形状、配置および必要なバネ力の設計)
従来の収容容器では、電気機器を蓋の裏面に取り付けると保守点検時の作業効率が低下し、底部に置くとケーブル配線スペースが圧迫されるという問題がありました。
これに対して、ケーブルと電気機器を収容する空間を持ち、上部の開口部が蓋で閉じられる収容容器であり、電気機器を収容する機器収納箱が、収容空間の側壁上部に複数設けられた係止部に係止されていることにより、電気機器は蓋に取り付けられずに済み、蓋の開閉が容易になり保守点検作業の効率が向上し、電気機器が側壁上部に配置されるためケーブルの配線作業が阻害されず収容空間内のケーブルスペースを十分に確保できる収容容器が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7488174/15/ja
関連する専門分野の例:電気工学(収容容器内のセンサ、通信装置、電源ユニットなどの電気機器の仕様決定、機器収納箱内の放熱設計や防水・防塵対策の検討、機器接続用ケーブルの長さ、太さ、配線ルートの最適化、ケーブル支持部材によるケーブルの固定方法が電気的特性に与える影響の評価)、機械工学(収容容器のU字溝形状や蓋体の材料(樹脂など)について想定される土圧や交通荷重に対する強度計算および必要な板厚や補強構造の決定、機器収納箱を係止するスペーサやブラケットの形状、材質および接合部の設計)
具体例として光ファイバの接続のための光コネクタ用フェルール(光ファイバを正確に位置決めし、接続するための筒状部品)が挙げられます。
従来のフェルールは電気回路基板製造時のハンダリフロー工程(230~260℃の高温)において熱収縮し、寸法精度が損なわれたり、光ファイバがフェルール内に引き込まれたりする問題がありました。
これに対して、熱可塑性樹脂(特にPPS樹脂)に無機粒子(特に球形シリカ)を充填材として添加した樹脂組成物でフェルールを構成し、260℃×1分の加熱における収縮率が0.13%以下であることにより、ハンダリフロー工程においても寸法安定性を維持し、光ファイバの物理的接触(PC接続)を可能にし、成形後のフェルールに高温度での熱処理を施すことで、さらなる収縮抑制効果と寸法精度の向上が図られるフェルールが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-017752/11/ja
関連する専門分野の例:材料工学(熱可塑性樹脂と無機粒子の最適な配合比率や粒径分布の検討、充填材の種類や表面処理が樹脂の成形性や硬化後の特性に与える影響の解析、接着剤との界面での熱膨張差に起因する光ファイバの引き込みを抑制するための材料設計)、精密工学(射出成形金型の設計における樹脂組成物の収縮率を事前に考慮した寸法設計、接着剤の注入窓や凹部の形状が成形時の樹脂の流れやボイド発生に与える影響のシミュレーションと最適な形状設計)
従来の光ファイバリボンは製造時や保管時にボビンに巻き取られる際、表面の摩擦が適切でないと巻き崩れが生じ、光損失や作業効率の低下を引き起こす問題がありました。
これに対して、リボン層のヤング率が290MPaから1400MPaの範囲で、複数の光ファイバリボン間の静摩擦係数が0.71以上1.12以下であることで、巻き崩れを抑制し、製造工程における安定した巻き取りとその後の伝送損失の低減を可能にする光ファイバリボンが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7394155/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(リボン層樹脂の重合度、架橋密度および分子量分布がヤング率に与える影響の解析、シリコーン化合物などの添加剤が高分子マトリックス中でどのように分散・配向するかの評価)、機械工学(光ファイバリボンのボビンへの巻き取り工程における静摩擦係数を考慮した最適な張力、速度および巻き取りパターンの制御アルゴリズム設計、光ファイバリボンの製造ラインにおける温度、湿度、および微細な振動などの環境要因がリボンの物理的特性や巻き取り挙動に与える影響の解析)
具体例として2対の信号線と2本の電源線を内蔵する複合ケーブルが挙げられます。
従来の複合ケーブルでは、信号線と電源線の太さの違いからシース層(外皮)の厚みが不均一になり、端末加工時に剥がしにくい、剥がし残りが生じるといった問題がありました。
これに対して、ケーブル中心部に円形状の連続体が配置され、信号線、電源線、連続体の外径比が特定の関係式( かつ )を満たすことにより、ケーブル内部の線材が均一に配置され、シース層の厚みが均一化されて端末加工性が向上した複合ケーブルが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7558852/15/ja
関連する専門分野の例:材料工学(信号線および電源線の絶縁被覆層に用いる架橋ポリエチレン等の耐熱樹脂の組成の最適化、耐熱温度の向上と同時に製造工程での加工性や端末加工時の剥離性を両立させる材料設計、複合ケーブル全体を覆うシース層に用いる架橋性の耐熱樹脂の選定と配合比率の検討、複合ケーブルの中心に配置する連続体の材料の止水性、機械的強度および既存の線材との相溶性を考慮した材料選定と特性評価)、電子工学(複合ケーブルの電気特性のシミュレーション、信号線間のノイズ干渉や電源線からのノイズ影響を最小限に抑えるためのケーブル内部の線材配置の最適化、信号線と電源線の外径比(a, b)や連続体の外径(c)が信号品質に与える影響の評価)
従来の複合ケーブルは耐熱性、耐フォギング性(曇化防止)および端末加工性(皮むきやすさ)を同時に高水準で満たすことが難しいという問題がありました。
これに対して、複数の太径電線と細径電線からなるコアの外面に、特定のシラン架橋性樹脂組成物を成形し、その後水と接触させることでシース層を架橋させる点に特徴を有し、このシラン架橋性樹脂組成物は、ベース樹脂(エチレンゴムやスチレン系エラストマーを含む)、シランカップリング剤およびシラノール縮合触媒を含有しており、穏やかな条件下で架橋反応が進行することにより、電線とシース層の過度な密着が防止されて端末加工性が向上し、低分子量成分の発生が抑制されて耐フォギング性も高まり、耐熱性と耐屈曲性も兼ね備えた複合ケーブルの製造が可能な複合ケーブルの製造方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7348992/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(シラン架橋性樹脂組成物のベースとなるエチレンゴムやスチレン系エラストマーの種類、分子量および配合比率が架橋後のシースの機械的特性と電気的特性に与える影響の解析および最適なブレンド組成の検討、シランカップリング剤のグラフト化効率やシラノール縮合触媒の種類と添加量が架橋反応の速度、架橋密度および架橋後のシースの物性(特に端末加工性、耐フォギング性)に与える影響の評価および反応条件の最適化)、化学工学(シラン架橋性樹脂組成物の製造工程(混合、押出)における温度、圧力、滞留時間などのプロセスパラメーターがシランカップリング剤のグラフト化効率、未反応モノマーの量および樹脂の均一性に与える影響の評価および製造プロセスの最適化、押出温度、押出速度、ダイ形状および冷却条件がシースの厚み均一性、電線とシースの密着性およびケーブル全体の寸法精度に与える影響の検証および最適な成形条件の確立)
具体例として半導体製造で用いられる半導体加工用テープが挙げられます。
従来の半導体ウエハ薄型化プロセスであるDBG工法において、ウエハ表面保護のために加熱軟化させる樹脂フィルムに耐える耐熱性が必要とされ、また光硬化性粘着剤層を有しながらも光照射後にウエハからのテープの自然剥離を抑え、かつ糊残りなく剥離できることが課題でした。
これに対して、耐熱性のあるポリエステル樹脂製の基材と、特定のモル吸光係数を持つ光重合開始剤を含む光硬化性(メタ)アクリルポリマー粘着剤層の組み合わせと、150℃での加熱後、紫外線照射において粘着力が0.20N/25mm以上であることより、高温プロセス耐性を持ちつつ光照射後の一時保管時におけるウエハからのテープの自然剥離を防ぎ、かつ最終的な剥離時には糊残りを抑制できる半導体加工用テープが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7495383/15/ja
関連する専門分野の例:材料化学((メタ)アクリルポリマーのモノマー組成や分子量、架橋剤の種類と配合量の調整、光重合開始剤の選択基準(モル吸光係数)と配合量についての検討、異なる官能基を有するモノマーを用いたポリマー合成、架橋密度の制御、光重合開始剤の吸光特性と反応効率の評価、粘着剤層の耐熱性向上に関する高分子材料の選択)、電子工学(ウエハの薄化や小チップ化に伴う物理的ストレスの評価、異なるウエハ材料(シリコン、ガリウムヒ素など)や表面パターンに対するテープの適合性検証、生産ラインでの一時保管条件がテープ特性に与える影響の定量化およびそれらの評価結果に基づいて半導体デバイスの品質と生産歩留まりを最大化するためのプロセス条件の最適化)
具体例として波長可変光源装置が挙げられます。
従来の波長可変光源装置では、波長可変機構(主に電熱ヒーター)に供給する電流の増大に伴い電流値あたりの発熱量変化が大きくなるため、特に高電流領域での発熱量ひいては波長制御の精度が低下するという問題がありました。
これに対して、大まかな電流調整をおこなう第一可変電流供給部と、それよりも細かいステップで電流調整をおこなう第二可変電流供給部の二系統を備え、制御部がこれらをデジタルで指示し、波長可変機構に供給する電流を合成することで、高電流領域においてもきめ細やかな電流制御、すなわち電熱ヒーターの発熱量制御を実現する波長可変光源装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7547272/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(各電流供給部(第一・第二可変電流供給部)のデジタル-アナログ変換特性、FET等の半導体素子のスイッチング特性や効率および電流検出部の精度などの評価、波長可変機構(電熱ヒーターなど)への安定した電流供給を保証するための電源回路設計、温度安定化のための回路設計)、制御工学(電流供給部から波長可変機構への供給電流値と波長の関係のモデル化、デジタル制御部(コントローラ)が要求波長に応じて目標電流値を設定し第一および第二電流指示値を適切に配分する制御ロジックの設計、高電流域における電力変化の非線形性を補償するためのゲイン調整や目標波長への収束速度、安定性および外乱に対するロバスト性を考慮したフィードバック制御アルゴリズムの構築)
(3)フジクラ|開発トレンドと専門性

G02Bが最も多いです。次いでH01B、H01S、H01R、H05K、Ⅽ03B、H01P、H01Qが多いです。
具体例として現場組立型の光コネクタが挙げられます。
従来、光ファイバの融着接続部を保護する熱収縮スリーブを加熱する際、同時に加熱されるばね付勢部品が熱で変形し、コネクタの性能に影響を及ぼす問題がありました。
これに対して、光ファイバを仮固定する仮止め部材と、フェルールを付勢する付勢部材を備え、熱収縮スリーブの加熱時に付勢部材が仮止め部材から離れた位置関係となるように構成されていることにより付勢部材の力が仮止め部材に作用しないため、熱収縮による融着部の保護工程において、加熱による部材の変形が抑制され、安定した接続性能と信頼性が向上した光コネクタが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7685623/15/ja
関連する専門分野の例:材料工学(熱収縮スリーブの加熱プロセスにおける仮止め部材、付勢部材(ばね)、ストップリングなどの樹脂材料や金属材料の熱膨張係数、ガラス転移温度、ヤング率、クリープ特性などの熱的・機械的特性の評価、加熱時に強度が低下しやすい部材についての高強度・高耐熱性の材料の探索や既存材料への添加剤による特性改善の検討)、機械工学(フェルール、仮止め部材、ストップリング、プラグフレームといった主要部品間のクリアランスや嵌合公差の設計、付勢部材が仮止め部材から離れるメカニズムのシミュレーションおよび組立性と機能性を両立させるための最適な形状、寸法の決定)
従来の光演算装置では、多数の光回折素子の光軸調整時、薄い透明基板を直接ハンドリングするため破損しやすいという問題がありました。
これに対して、透明基板に光回折素子を形成し、これが透明基板よりも厚いトレイの凹部に配置されたユニットを複数備え、各ユニットは、光回折素子がトレイの開口と重なるように構成され、これらのユニットが積層されることで光回折素子同士が平面視で重なり合う積層構造により、透明基板ではなく頑丈なトレイをハンドリングして光軸調整されるため、透明基板の破損リスクを低減できる光演算装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7664155/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(光回折素子による光の回折、変調、偏向などの機能が電気信号によってどのように制御できるか検討、光演算装置の各ユニットが搭載する光回折素子を駆動するための電気回路設計や複数のユニット間で光信号を効率的に伝達させるための光インターフェース設計)、機械工学(光回折素子が組み込まれるトレイやユニットを正確に位置決め・積層するためのガイドピン、長孔などの部品にの設計、部品を効率的かつ高精度に製造するための加工技術の選定とプロセスの最適化)
従来の技術では、細い配管に多数のコネクタ付き光ファイバを通すために光コネクタをずらして配置していましたが、その製造には、長さの異なる光ファイバの先端にコネクタを取り付けるため、コネクタ取り付け作業の効率が悪いという問題がありました。
これに対して、光ケーブルのシースの端部から導出される複数のコネクタ付き光ファイバについて、光コネクタ側の先端側光ファイバの長さが等しく、シース側の基端側光ファイバの長さが異なる構成により、光コネクタの取り付け作業では長さが揃った先端側光ファイバに対しておこなえるため効率よく作業を進めることができる光ケーブル構造が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7637795/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(光ファイバ通信における光信号の変調方式や復調技術の設計・評価、光受信器のノイズ特性解析、光-電気変換および電気-光変換デバイスの特性評価と最適化、通信システムの伝送容量と到達距離を最大化するためのシステムアーキテクチャの検討)、機械工学(光ファイバの曲げ特性、引っ張り強度および接続部の耐久性に関する構造解析、光コネクタの精密な組み立てプロセスと公差設計、管状部材の射出成形や押し出し成形といった製造技術の最適化)
具体例として酸化物超電導線材が挙げられます。
従来の酸化物超電導線材は超電導ケーブルとして芯材に巻き付けられる際に捻回され、その引張歪により超電導層にクラックが生じ、臨界電流値が低下するという問題がありました。
これに対して、基板上に積層された超電導層の幅方向両端部に中央部よりも薄い薄層部が形成されていることを特徴とし、この薄層部は、基板幅Wに対して0.15W〜0.25Wの寸法を有し、引張歪に対する強度向上により、捻回による超電導層の劣化を抑制した酸化物超電導線材が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7516220/15/ja
関連する専門分野の例:応用物理学(超電導層の結晶構造、欠陥、粒界が臨界電流密度に与える影響の解析、薄層部における厚さ変化が超電導層の電子状態やフォノン特性に与える影響のシミュレーション、捻回による歪が超電導層のクーパー対の結合にどのように影響するかの解明)、材料科学(基板材料の表面平坦性や熱膨張係数が超電導層の成膜品質に与える影響の評価、超電導層のPLD法における成膜条件の最適化、薄層部を形成する際の遮蔽部材の形状や配置が超電導層の厚さ分布や微細構造に与える影響の分析、薄層部と中央部の界面における応力集中を緩和するための材料界面設計、保護層・安定化層の材料選択が線材全体の機械的強度に与える影響の評価)
具体例としてファイバレーザが挙げられます。
従来の高出力ファイバレーザは、高次モード不安定性(TMI)や誘導ラマン散乱により出力ビーム品質の低下があるという問題がありました。
これに対して、イッテルビウム(Yb)が添加されたゲインファイバと、976nm帯の前方励起光源群を備え、前方励起光が入射する端面から1mの区間における前方励起光の吸収量が253Wから1100Wの範囲かつ前方励起光の総パワーが1509W以上であることで、TMIの発生を抑制し、ビーム品質の低下を防ぐファイバレーザが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7531048/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(励起光源であるレーザーダイオード(LD)の駆動回路の設計と制御アルゴリズムの設計、高出力動作時の熱マネジメントシステムの設計、LDモジュールの電流・電圧特性評価および電源効率の最適化、レーザ出力の安定化や変調制御のための電子回路設計)、応用物理学(Ybイオンのエネルギー準位間の遷移確率、吸収・発光断面積、量子効率の解析、励起光吸収に伴うゲインファイバ内の温度上昇とその分布のモデル化、TMIの発生メカニズムである横モード間の結合、熱誘起屈折率変化、音響格子振動との相互作用の解明、TMIの抑制に効果的なゲインファイバ構造や励起方式を検討)
具体例として端子が挙げられます。
従来の端子は相手方端子の挿入時に大きな力が必要で作業性が悪く、異物の堆積により接触不良が生じる問題がありました。
これに対して、相手方端子が挿入されるベース部材の端子挿入孔内に筒状のばね部材が収容され、このばね部材は端子挿入孔の内周面に接触する環状の第1支持部と、そこから中心軸に向かって傾斜し、自由端を持つ複数のばね片を含み、さらに、ベース部材の端子挿入孔の内周面にはこのばね片に対向する位置に溝が形成されていることにより、ばね片の弾性変形がスムーズになり、挿入時の抵抗が低減される端子が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7504782/15/ja
関連する専門分野の例:材料科学(高導電性、高ばね性、耐摩耗性、耐腐食性を兼ね備えた銅合金やベリリウム銅合金などの候補材料の選定、ばね片の繰り返し挿抜による応力疲労の評価、長寿命化のための熱処理条件や表面処理(例:めっき)の最適化、異物環境下での接触抵抗変化の評価)、機械工学(ばね部材のばね片の形状、板厚、傾斜角度が相手方端子挿入時の挿入力および接触圧力に与える影響のシミュレーション、溝の形状や配置がばね片の変形挙動や異物排出能力に与える影響の解析および最適な溝設計、ばね部材とベース部材の勘合時の応力集中や変形の評価)
具体例として配線板が挙げられます。
従来の伸縮性フレキシブル回路基板は配線と端子が同一の軟質絶縁ベース材に形成されているため、端子挿抜時に端子部分が凹みやすく、接触不良が生じるという問題がありました。また、成形配線板では、硬質な絶縁ベース材により端子部分が曲げにくいという問題がありました。
これに対して、配線を支持する第1の基材と、端子を支持する第2の基材とが異なる材料で構成され、第1の基材はホットメルト層または粘着層で構成され、配線と重なる一方、端子とは重ならず、一方、第2の基材は端子と重なり、配線に対しては第1の基材と同じ側に配置され、さらに、第1の基材と配線との間および第2の基材と端子との間にプライマ層が介在することにより、端子部分には剛性の高い第2の基材が配置されるため端子の凹みや接触不良を抑制でき、また、配線部分には柔軟な第1の基材が配置されるため使用用途に応じた高い柔軟性を確保できる配線板が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7634555/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(伸縮性、接着性、耐熱性、耐久性、電気絶縁性などの要求特性を満たすポリウレタン、ポリエステル、アクリル、シリコーン系の高分子材料選定、導電性粒子との親和性や基材間の密着性を向上させるための表面処理剤や添加剤の検討および環境因子(温度、湿度、紫外線)に対する安定性の評価)、電気電子工学(配線および端子を構成する導電性粒子(金、銀、カーボン等)の選定と配合比率の最適化、各層(配線、端子、プライマ層、オーバーコート層、基材)の積層構造における電気的特性(誘電率、漏れ電流、絶縁破壊強度)の評価、高周波特性や信号伝送損失を最小化するための設計)
具体例として車載カメラが挙げられます。
従来の車載カメラは、内部の電子部品の放熱のためにケース間に放熱部材を挟み込む構造でした。これにより、シール箇所が増えて防水性が低下する問題がありました。また、放熱部材とケース間の熱伝達が不十分で十分な放熱性能が得られないという問題も抱えていました。
これに対して、レンズと電子回路部が収容されたケーシングが主ケースと副ケースで構成され、この主ケースと副ケース間はシール材を介して直接連結されていることにより、シール箇所が削減され、防水性が向上し、また、電子回路部が熱伝達可能に接触する伝熱部材が主ケース内部に配置され、この伝熱部材は主ケースの内面に密着する熱伝達部を有し、伝熱部材は作動流体を封入した薄板状のベーパーチャンバーと、それを埋め込んだ金属製の保持板で構成されており、ベーパーチャンバー内には作動流体を還流させるウイックが設けられた構造により、電子回路部で発生した熱はベーパーチャンバーの潜熱輸送効果で主ケースに伝達され、主ケース全体から外部へ効果的に放熱されるため電子回路部の温度上昇を抑制し、カメラの信頼性と耐久性を向上させる車載カメラが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6571447/15/ja
関連する専門分野の例:材料科学(ベーパーチャンバー内の作動流体やウイック材料およびケーシングを構成する金属や樹脂の熱伝導率、熱膨張係数、機械的強度、耐食性、耐候性などの評価、異種材料間の接合(金属とシール材、ベーパーチャンバーと保持板)における密着性や熱応力、熱サイクル特性の分析、長期的な信頼性を確保するための材料選定や表面処理方法の検討)、電子工学(撮像素子や画像処理プロセッサ、電源ICなどの各電子部品の発熱特性の測定および動作モードに応じた発熱量の算出、高温環境下での電子部品の電気的特性(信号ノイズ、応答速度、電流リークなど)の変化の評価、伝熱部材による冷却が電子回路の安定動作にどれだけ寄与するかの評価)
具体例として高周波信号の位相を制御するデジタル移相器が挙げられます。
従来のデジタル移相器は複数の移相回路を直線的に接続するため、全体のサイズが大きくなるという問題がありました。これを解決するため、回路を折り曲げるベンド型の接続部が検討されていましたが、この接続部に移相機能を追加すると、さらにサイズが大きくなってしまうという問題がありました。
これに対して、複数のデジタル移相回路群がベンド型の接続部で接続されることで小型化が図られており、この接続部は信号線路を接続する第1のコイルと、その両側に並列接続された一対の第1のコンデンサおよびコンデンサの接地を切り替える第2の電子スイッチを備える第1の接続回路を有し、さらに、多層構造の接地導体の一層が接続線路を形成するグランド層となり、このグランド層に設けられた切欠部に第1のコンデンサが配置され、その一端がグランド層に接続されるという構成により、接続部自体の大型化を抑制しつつ接続部にも移相機能を持たせ、移相量を調整できるため、全体の小型化と高精度な移相量制御を両立するデジタル移相器が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7369255/15/ja
関連する専門分野の例:電気工学(デジタル移相回路の各モード(低遅延/高遅延)におけるインダクタンスやキャパシタンス、スイッチのオン抵抗や寄生容量が移相量に与える影響の評価、ベンド型接続部におけるコイルやコンデンサ、電子スイッチの最適な定数の決定、接続部での移相量調整が全体に与える影響の分析、多層基板におけるグランド層の設計、高周波特性を最大限に引き出すためのレイアウト設計)、材料科学(電子スイッチを構成する半導体材料(Si, GaAs, GaNなど)のキャリア移動度や耐圧、ゲート絶縁膜の誘電率や膜厚がスイッチ性能に与える影響の評価、コイルやコンデンサを形成する導体材料(銅、アルミニウムなど)の導電率や熱膨張係数、絶縁層の誘電率や損失正接が高周波特性や温度特性に与える影響の分析)
具体例としてアレイアンテナが挙げられます。
高周波化が進む無線通信において、複数のアンテナ素子を用いるアレイアンテナは高利得を得るために不可欠ですが、従来の技術では不要な偏波が発生し、通信品質の低下を招くという問題がありました。
これに対して、複数の放射素子がマトリックス状に配置され、それぞれの放射素子に第1偏波と第2偏波を励振するための2つの給電点が設けられており、放射素子の中心から第1給電点への基準線に対して、第2給電点の位置が+°と-°()の異なる角度に配置された放射素子の組み合わせ配列により、隣接する放射素子間で不要な偏波が互いに打ち消し合うように作用し、全体として不要偏波を効果的に抑制できるため、通信品質の向上が期待できるアレイアンテナが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7311698/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(各放射素子の形状や材質、寸法の調整による特定の周波数帯での共振特性や帯域幅の最適化、移相器や電力分配器といった高周波回路部品の選定・設計およびアレイアンテナシステムの構築、設計したアレイアンテナの利得、放射パターン、偏波純度などの性能評価)、情報通信工学(アレイアンテナからの信号処理に関するアルゴリズム設計、不要偏波の影響を最小化する方法の検討、アレイアンテナを搭載した無線通信システム全体のリンクバジェット計算や電波伝搬シミュレーション、通信システムの要求仕様に基づきアンテナの偏波特性がシステムのスループットや信頼性にどのように影響するかの分析)
(4)矢崎総業|開発トレンドと専門性

H01Rが最も多いです。次いでH02G、H01B、B60R、H01M、H02J、B60Kが多いです。
具体例として充電インレットが挙げられます。
電気自動車の充電インレットでは、大電流化に伴うコネクタ端子の発熱が問題となっており、従来の電線の大径化による対策では重量増やコスト増、インレットの大型化を招いていました。
これに対して、充電インレットのハウジング内に熱引き部品に特徴を有し、この熱引き部品がコネクタ端子の発熱しやすい部分(被吸熱部分)から熱を吸熱し、ハウジングの外壁と一体形成された筒状の熱引き部品収容室の内周面へ放熱し、この収容室は外部に開口しており、熱引き部品の着脱が容易な構造となっていることにより、電線の大径化に頼らずコネクタ端子の熱を外部へ逃がし、充電時の温度上昇を抑制することができ、結果として、インレットの小型化、軽量化、低コスト化を実現しつつ安定した大電流充電を可能にする充電インレットが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7680166/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(熱伝導シミュレーションによる充電時のコネクタ端子および熱引き部品の温度分布の予測、最適な形状や寸法、熱伝導率の高い材料の選定、熱応力解析に基づく部品の熱膨張による変形や破損を防ぐための設計、熱引き部品の着脱機構や固定方法の信頼性評価)、材料科学(熱伝導率の高い金属合金や複合材料の特性評価、熱引き部品の効率的な熱輸送を実現する材料の選定、ハウジングとして使用される樹脂材料の耐熱性、機械的強度、電気絶縁性などの評価、材料の経年劣化や耐腐食性の評価)
従来のコネクタ嵌合構造では、コネクタを嵌合する際の突き当て面が平坦なため、泥や水などの異物が付着・蓄積しやすく、これが嵌合不良の原因となる問題がありました。
これに対して、第1コネクタ(例えば、充電ケーブル側のコネクタ)が第2コネクタ(例えば、車両側の充電インレット)に接続される際の第2コネクタのハウジングに設けられた突き当て部に特徴を有し、この突き当て部は、コネクタの嵌合方向に沿って伸びる棒状部材と、それと直交する方向に伸びる棒状部材とが組み合わさって格子状に形成されていることにより、第1コネクタが当たる面は、この格子状の凸部の先端部のみとなり、平坦な場合に比べて異物が付着する面積を大幅に減らすことができ、結果として、異物の影響を受けにくくなりコネクタの嵌合不良の発生を抑制し、コネクタ接続の信頼性を向上させることが可能なコネクタ嵌合構造が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7680414/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(格子状の突き当て部の棒状部材の断面積や配置間隔のシミュレーション、異物付着抑制効果と必要な強度を両立させる設計、コネクタの嵌合・離脱時の力学的挙動解析、部品の変形や破損を防ぐための構造設計、金型製造を考慮した設計)、材料工学(ハウジングや突き当て部に使用するプラスチック材料の耐衝撃性、耐摩耗性、寸法安定性などの評価、自動車環境下での長期使用に耐えうる材料の選定、端子部分の導電性や耐食性の評価、最適な金属材料やめっき処理の探索)
従来の電気自動車用充電コネクタなどでは、電線と端子の接続箇所が大電流によって高温になりやすいものの防水などのために密閉されていることで熱がこもり、過度な温度上昇が問題でした。
これに対して、電線と端子の接続箇所を覆うようにハウジング内の密閉空間に筒状の蓄熱部材が配置されたコネクタであって、蓄熱部材が複数の部品(例:上下に分割された2つの部品)で組み合わされて構成されているため、電線の端子への接続後でも装着でき、発熱しやすい接続箇所からの熱を熱容量の大きな蓄熱部材が吸収し、コネクタの大型化を避けながら端子の急激な温度上昇を抑制し、充電時の安定性と安全性を高めたコネクタが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7670663/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(蓄熱部材とハウジングの最適な嵌合形状や寸法の設計、熱膨張による影響や組立時の応力集中の解析、射出成形などの製造方法を考慮した金型設計、試作部品を用いた耐久性、振動特性および嵌合試験を通じた設計の妥当性検証)、電気電子工学(端子と電線の接続部における接触抵抗の測定とジュール熱発生量の評価、蓄熱部材の配置や材質が電流密度分布やインピーダンスに与える影響のシミュレーション、熱電対などを用いた実測による端子温度と電流の関係の解析)
具体例としてリレーなどの電子部品を収容する電気接続箱が挙げられます。
近年の車両では、軽量化や大電流化のために電線が太く硬くなる傾向にあり、従来の電気接続箱では、箱内部での電線の取り回しが難しく、電線が内部部品に過度な負荷をかけてしまうという問題がありました。
これに対して、リレーなどの電子部品を収容する筒部を有するフレームの外部に、外部電源と外部負荷との間に介在させる回路分岐部品が配置され、この外部に配置された回路分岐部品を覆い隠すように、カバー部材に防水カバー壁体が設けられたことで、外部からの水掛かりを抑止し、硬い電線を箱内部に無理に引き回す必要がなくなり内部部品への過荷重を抑制できるとともに、電線が外部に配置されることで箱内部の熱こもりも防げ、結果として、電線による過荷重を抑えつつ外部配置された回路分岐部品への防水性を確保できる電気接続箱が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7658944/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(電線が外部に配置された際のフレームやカバー部材の剛性の解析および振動や衝撃に対する耐性の評価、防水カバー壁体や他の防水部のシール性についての最適な形状、材質および嵌合構造の検討、経年劣化による防水性能の低下を抑制する設計)、電気電子工学(回路分岐部品や内部導電部材における電流密度分布の解析と発熱箇所やその程度の特定、太径の電線やアルミニウム電線を使用する際の端子と電線の接続部における接触抵抗と発熱量の評価、適切な接続方法や材料の選定、回路分岐部品(ヒューズなど)の選定基準の策定や過電流保護機能の検証)
従来のワイヤハーネス製造では、電線の線径ごとに電線ホルダの分割体を使い分ける必要がありました。しかし、異なる線径用の分割体が混在することで作業時に誤った組み合わせで組み立ててしまうリスクがありました。
これに対して、組み付ける電線の外径(大径または小径)に応じて適切な電線ホルダの分割体を選択する工程を含み、大径電線用のホルダ分割体と小径電線用のホルダ分割体それぞれに、異なる形状の位置決めリブと位置決め孔を設けられることで、物理的に間違った組み合わせでは組付けできないように工夫されており、異なる種類の分割体同士を向かい合わせて組み合わせようとすると、これらの位置決めリブが互いに干渉し、組付けが阻止される構造によって作業者は誤組付けを容易に認識でき、不適切な組み立てを防ぐワイヤハーネスの製造方法が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7626739/15/ja
関連する専門分野の例:機械工学(電線ホルダの溝やリブ、孔の形状と寸法の設計、異なるサイズの電線が保持され、かつ誤って組み合わせられないような構造の考案、使用される樹脂材料の機械的特性(強度、耐摩耗性、成形性など)の評価および大量生産に適した射出成形条件の検討)、人間工学(作業者の視認性や手の動きを考慮した電線ホルダ分割体や組付け治具の形状、色、配置の最適化、組付け時の力の入れ具合や姿勢が無理なくおこなえるような治具の高さの調整、作業者のエラーデータの分析およびどのような状況で誤組付けが起きやすいかの特定)
具体例として高速通信ケーブル用発泡電線が挙げられます。
従来の高速通信ケーブル用発泡電線では、不活性ガスを用いた物理発泡工法が発泡制御の難しさから通信特性の不安定さを招き、化学発泡工法が用いられていました。しかし、化学発泡では発泡剤の分散性や生産速度、環境規制への対応に課題がありました。
これに対して、導体を被覆する層のうち少なくとも一層が特定の物性(溶融張力、溶融粘度)を持つポリプロピレン樹脂組成物による発泡押出成形によって形成した発泡被覆層であり、この発泡被覆層は、平均発泡径が断面方向で30μm以下、長手方向で60μm以下、発泡率が25%以上55%以下であり、発泡電線表面の算術平均高さが20μm以下であることにより、不活性ガスによる物理発泡工法でも安定した発泡径を実現し、通信安定性を確保しつつ車載環境で求められる耐摩耗性や耐加熱変形性を有する発泡電線が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7648578/15/ja
関連する専門分野の例:高分子化学(さまざまな分子量分布や共重合比を持つポリプロピレンおよび発泡性を安定させるための添加剤の配合の検討および溶融張力や溶融粘度に与える影響の分析、最終的な発泡被覆層の内部構造(セルサイズ、セル分布)と耐熱性や耐摩耗性などの物性との相関関係の解明)、電気電子工学(発泡被覆層の発泡率、平均発泡径、誘電率が電線の特性インピーダンスや信号伝送損失にどのように影響するかの解析と最適な発泡構造の導出)
具体例として車両システムが挙げられます。
従来の車両制御装置は異なる安全レベルのソフトウェアを混在させていたため、最も高い安全レベルに性能を合わせる必要があり、低い安全レベルの機能には過剰な性能となってしまうという問題がありました。
これに対して、車両に搭載される各機器の安全基準レベル(ASIL)ごとに専用の制御部(ECU)が設けられ、それぞれのECUが割り当てられた安全基準レベルの処理のみが実行されるよう構成されたことにより、各ECUのCPUクロック数が安全レベルに応じて最適化され、過剰な性能を回避することでシステム全体の効率化が図られる車両システムが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7471756/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(ASILレベルごとの安全性、信頼性およびリアルタイム処理能力を考慮したマイクロコントローラ(CPU)、メモリおよび通信インターフェースの選定と回路設計、電磁両立性や耐環境性を確保するためのECUのパッケージング設計、電源供給回路の設計)、情報科学(各ASILレベルの要求に応じたソフトウェアアーキテクチャの設計、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)の選定と最適化およびタスクスケジューリングの設計)
具体例として電気自動車やハイブリッド自動車などで使われる電池モジュールのバスバモジュールが挙げられます。
従来のバスバモジュールでは、多数の電線で電圧検出線を構成していたため電池の充放電による膨張・収縮や製造ばらつきに対応しにくいという問題がありました。また、電線が多いために剛性が高く、電池モジュールへの組み付け作業が難しいという問題も抱えていました。
これに対して、第1配線パターンと第2配線パターンを有するそれぞれ独立したフレキシブル基板からなる第1回路体と第2回路体を備え、これらが連結する長尺の回路体を形成するバスバモジュールであって、各単電池の電極と接続されるバスバが、フレキシブル基板の支線部を介して本線部に繋がり、この支線部が、フレキシブル基板の柔軟性とU字状などの湾曲形状により、電池の積層方向の伸縮が発生しても屈曲することで個々のバスバが単電池の動きに追従して変位して電池全体の伸縮や製造ばらつきを吸収し、組み付け性と追従性が向上したバスバモジュールが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7684270/15/ja
関連する専門分野の例:材料科学(フレキシブル基板の耐熱性、屈曲性、電気的特性(導電性、絶縁性)の評価、電池モジュールの寿命にわたる安定稼働を保証する材料の特定、支線部の長期的な屈曲疲労特性の評価、破断しない材料と配線構造の選定、バスバや配線パターンに使用される金属材料の電気抵抗、熱伝導率、機械的強度、腐食耐性の評価、最適な合金組成や表面処理の検討)、機械工学(電池モジュールの積層方向の熱膨張・収縮量や製造ばらつきの評価、フレキシブル基板の支線部やホルダの伸縮部がこれらの変位を適切に吸収できるような最適な形状や構造の設計、支線部のU字状などの湾曲形状がどの程度の変位量と繰り返しの動きに耐えうるかの検証、最適な湾曲半径や配線パターン配置の決定)
具体例として蓄電池制御装置が挙げられます。
従来の蓄電システムでは、直列接続された複数の蓄電池の劣化度合いに差があると、健全度(SOH)を示す電圧推移情報(SOH-OCV曲線)の取得時に一部の電池が先に全放電状態になり、バイパス回路が作動することで電圧情報が途切れてしまう問題がありました。
これに対して、直列に接続された複数の蓄電池を備える蓄電システムであり、所定の充電状態から所定の放電量だけ放電させつつ電圧と電流を記録する第1処理と、全放電状態まで放電させる第2処理、所定の充電量だけ充電する第3処理、所定の充電量だけ充電された後、再び所定の放電状態まで放電させつつ電圧と電流を記録する第4処理をおこなうもので、最後に、第1処理と第4処理で記録されたデータに基づいて全範囲にわたる連続的な電圧推移情報(電圧推移情報)を生成する第5処理を実行することにより、電池のバイパス状態への切り換えが発生しても、不連続な電圧推移情報が生成されることを抑制し、効率的に電池の健全度を把握できる蓄電池制御装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7627252/15/ja
関連する専門分野の例:電気電子工学(第1、第2、第3、第4処理における充放電の電流・電圧プロファイルを最適化とSOH推定に必要なデータの効率的な取得方法の検討、各蓄電池モジュールの電圧や電流をリアルタイムで監視しながらバイパス状態への切り換えを適切に制御するシステムの構築)、情報科学(第1処理と第4処理で得られる電圧・電流データを用いて各蓄電池の放電時の電圧推移情報(SOH-OCV曲線)を生成するための統計的モデルや機械学習モデルの設計、劣化度の異なる蓄電池が混在する状況でもバイパス状態の切り換えによって生じるデータの不連続性を補間・平滑化するためのアルゴリズム設計、リアルタイムでのSOH推定を可能にするためのデータ構造やアルゴリズムの設計)
具体例として車両用表示装置が挙げられます。
従来の車両用表示装置では、カーブ走行時に表示画像が路面とずれ運転者が視認しにくかったり、違和感を覚えたりするという問題がありました。
これに対して、車両がカーブを走行する際、取得部が取得した走行路のカーブ曲率に基づき車両に関する情報を表示する画像をカーブ方向に移動させて表示する装置であり、カーブ曲率が所定の第1閾値以上(急カーブ)の場合には、この画像移動処理に加え、制御部が表示器のバックライト輝度を下げて画像の透過率を上げるか、または表示器の表示領域を調整して画像を小さく表示するかのいずれか、または両方の変更処理をおこない、また、カーブ曲率が第1閾値未満(緩やかなカーブ)でも、カーブ走行時間が所定の第2閾値以上の場合には画像移動処理をおこない、逆に、カーブ曲率が第1閾値以上またはカーブ走行時間が第2閾値未満の場合には画像移動なしで透過率を上げるか画像を小さくする変更処理のみをおこなうことにより、走行路の状況やカーブの特性に応じて表示し、運転者の視認性を高める車両用表示装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7602521/15/ja
関連する専門分野の例:認知科学(運転者の視覚認知特性や注意配分、情報処理能力に基づきカーブ走行時の表示画像の移動量、透過率、サイズ変化が運転者の視認性、運転負荷、違和感に与える影響の評価および最適な表示パラメータの決定)、制御工学(車速、舵角、ヨーレート、GPS情報など複数の車両センサーデータの統合、走行路のカーブ曲率を正確かつリアルタイムに推定するフィルタリングアルゴリズムの設計、運転者の視線方向や頭部位置を考慮した表示位置の動的な補正アルゴリズムの設計、カーブの曲率が所定閾値を超えた場合に表示器のバックライト輝度を段階的に減少させる制御ロジックおよび表示器の表示解像度や表示領域を調整して画像サイズを縮小する制御ロジックの設計)
(5)まとめ
ケーブルやケーブルに関連する出願が大半です。
ただし、電気系、機械系の分野だけでなく、技術分野は多岐にわたります。
3.6 共同出願人との開発例
共同出願人からはビジネス的結びつきがわかります。
技術によっては、開発をアウトソーシングしている可能性もあります。
各社の共同出願人(筆頭出願人)は以下のとおりです。
(1)住友電工

共同出願の例として車載用バックアップ制御装置が挙げられます。
従来の技術では、バックアップ用蓄電部の電圧が所定値に達すると電力供給を停止しますが、これにより蓄電部の劣化が進行するケースがありました。
これに対し、主電源異常時に電力を供給する蓄電部の電圧が劣化を誘発する閾値電圧を下回った際の制御を最適化するバックアップ制御装置であり、電圧が閾値電圧を下回ってからの経過時間が所定の判定時間を超えた場合、または、電圧が閾値電圧を下回った状態と回復を繰り返した際の累積時間が判定時間を超えた場合に、対応処理(例えば放電停止)をおこなうことにより、蓄電部が一定程度劣化する前に適切な措置を講じることが可能となる車載用バックアップ制御装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7558234/15/ja
従来の蓄電モジュールでは、多数のセルを直列配置した際の全長やバスバーを保持するバスバーケースの長さが製造公差により変動し、最終的なエンドプレートとバスバーケースの接続が困難になるという問題がありました。
これに対し、直列に並べられた複数のセルと、それらを両側から挟むエンドプレートおよび隣接するセル端子間を接続するバスバーを保持するバスバーケースを備える蓄電モジュールにおいて、バスバーケースに伸縮可能な構造(第1伸縮部)が設けられ、この伸縮部によってセルの全長公差を吸収し、バスバーケースを両端のエンドプレートに容易かつ確実に係合させることが可能となる蓄電モジュールが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7614132/15/ja
(2)古河電工

共同出願の例として車両用スライドシートのハーネス配索構造が挙げられます。
既存技術では、スライドシートの動きに伴いハーネスに局所的な急な曲げが生じ、断線などの過大な負荷がかかる問題がありました。
これに対し、車体とスライドシート間に架け渡されるハーネスがシートのスライド方向に対して折り返すように配索され、このハーネスの基端側(または先端側)を保持する車体側(またはスライドシート側)保持部に、ハーネスの曲げ返し形状が規定の曲げ半径より小さくならないように規制する曲げ返し形状規制部が設けられ、さらに、この保持部を保護するカバー部にはハーネスを適切に案内する溝が形成されており、ハーネスが斜めに巻き付いたり、ねじれたりするのを防ぐことにより、シートがスライドしてもハーネスへの過度な負荷を防止できるハーネス配索構造が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7687931/15/ja
従来の修理用ジョイントは剛体であったためケーブルの敷設時にジョイント両端のケーブルに曲げが集中し、断線や絶縁破壊といった極度曲げによる損傷のリスクがありました。これを防ぐため別途曲げ抑制部品の取り付けや吊り上げ作業が必要となり、作業時間やコストが増大するという問題がありました。
これに対し、電力ケーブル接続箱と光ケーブル接続箱を収納する保護ケースに可撓性と耐張力性を持たせ、その許容曲げ半径を電力ケーブルの許容曲げ半径以上として、保護ケースがケーブル布設時に鉄線に加わる張力を受け止める鉄線引留め装置に連結されていることにより、修理用ジョイント自体がケーブルの曲げを吸収し、外部の曲げ抑制部品や吊り上げ作業が不要になり、結果として、作業時間とスペースを削減し、部品点数と設備の削減によって修理コストを低減できる修理用ジョイントが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6097772/15/ja
近年のHDDの大容量化・高密度化に伴い、磁気ディスクの薄肉化が求められていますが、薄肉化は強度の低下を招き、基板の変形抵抗が低下するという問題がありました。従来の強度向上策では、高純度なアルミニウム地金が必要となり、コストが増大していました。
これに対し、アルミニウム合金にZnを22.0~55.0質量%含有させ、残部をAlおよび不可避的不純物とし、さらに導電率を34.0%IACS以上とするZn含有量と高導電率の組み合わせにより、従来の課題であった高純度地金の必要性を回避し、低コストで高強度のディスクブランクを実現する磁気ディスク用アルミニウム合金ディスクブランクが開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7664122/15/ja
(3)フジクラ

共同出願の例として電力ケーブルの気中終端接続部が挙げられます。
従来の電力ケーブルの気中終端接続部では、絶縁油の漏れ防止と外部からの水分の侵入防止のために、それぞれ独立した油止め金具とケーブル保護金具が必要でした。これにより、部品点数が増加し、設置作業の負担が大きくなるという問題がありました。
これに対し、縦置き型の碍管の下部に取り付けられる下部金具に電力ケーブルが挿入され碍管の内側へ延びる筒状部が設けられ、この筒状部の先端部から電力ケーブルの外周面にかけて油止め用チューブが設けられ、さらにその内側に遮水用チューブが設けられたことにより、1つの下部金具の筒状部で油止めと遮水の両方を実現でき、従来のケーブル保護金具が不要になり、結果として、部品点数が削減され、設置作業の負担が軽減される電力ケーブルの気中終端接続部が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6169118/15/ja
従来のPONシステムでは、障害が発生したONU(加入者端末)を特定し、その影響を取り除くことが困難でした。これは、複数のONUが局側装置(OLT)と光ファイバを共有しているため、障害発生源の特定が難しく、また特定できても他の加入者へのサービスを継続しながら障害を除去することが容易ではなかったためです。
これに対し、分波器、光スプリッタおよび擬似スイッチ部が組み込まれた光分岐装置であり、分波器で下り光信号を下り信号と制御信号に分岐し、制御信号で擬似スイッチ部を制御し、擬似スイッチ部には入力光の強度が閾値を超えると出力光の強度を一定に抑える光リミッタデバイスが用いられることで、特定のONUからの上り加入者信号の通過と遮断を制御することにより障害を起こしているONUからの妨害光の影響を抑制し、障害箇所の特定と他の加入者へのサービスを継続したままでの障害除去が可能な光分岐装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2013-225890/11/ja
従来の窒化アルミニウム単結晶の製造装置では、種子基板を接着剤で坩堝の蓋体に固定していたため、高温での結晶成長時に接着剤が剥がれたり、熱膨張率の違いによる種子基板の歪みが生じ、結果として結晶の品質が低下するという問題がありました。
これに対し、坩堝の蓋体と種子基板の間に種子基板保持部材が設けられ、種子基板を接着剤なしで機械的に保持する装置であり、この保持部材は種子基板の外周部の一部に接し、その中心に種子基板より小さな貫通開口を有することで、種子基板が脱落するのを防ぎつつ加熱時の熱膨張を自由に許容することにより、種子基板の剥離や脱落、熱歪みによる結晶欠陥の発生を抑制し、結晶性の窒化アルミニウム単結晶を安定して製造することができる装置が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2011-132079/11/ja
(4)矢崎総業

共同出願の例として車両が挙げられます。
従来の車両では、搭載される負荷が実際に消費する電流の値を高精度に取得することが困難でした。これは、電流の温度依存性や工業的なばらつきを考慮した安全設計を効率的におこなう上で課題となっていました。
これに対し、車両の電源と負荷間に設けられたリレーが導通状態になった後、所定の時間が経過した後にリレーを流れる電流値と印加される電圧値を取得する取得部と、これらの値を外部に送信する送信部を備えることにより、通電直後の電流・電圧の不安定な期間を避けて測定できるため、負荷が実際に消費する電流値を高精度かつ安定的に取得し、そのデータを外部システムに提供することが可能な車両が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7670639/15/ja
従来の電気接続箱は搭載する電子部品の数や大きさに応じて複数種類のベースを用意する必要があり、汎用性に乏しいという問題がありました。また、サブベースを連結して拡張しようとすると、既存のカバー係止部との干渉によりベース形状が複雑化する問題もありました。
これに対し、電子部品を実装する第1ベースに、電子部品を実装する第2ベースを着脱自在に組み付けることができる構造の電気接続箱であり、第1ベースには第2ベースを案内するガイドリブが設けられ、このガイドリブには第1ロアカバーを係止する係止突起が兼用し、さらに、第2ベースには連結された両ベースの下方開口を一括して覆う第2ロアカバーを係止する係止突起が設けられたことにより、ベース形状の複雑化を抑えつつ電子部品の増減に柔軟に対応できる汎用性と拡張性を有する電気接続箱が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7120974/15/ja
従来の電気接続箱などの樹脂構造体では、カバーが上方向に着脱する方式が主流でした。このため、車両の狭いスペースに搭載された場合、上部に他の部品があるとカバーの着脱時に干渉が生じ、メンテナンス性が低下するという問題がありました。
これに対し、樹脂体に設けられた第1開口部を覆う第1カバーが、開口面に沿った横方向のスライド移動によって着脱されるように構成され、第1カバーの複数の係合突部と樹脂体の複数の被係合部がこのスライド移動によって係合・解除され、同時に被係合部が係合突部を樹脂体側に押し付けることで、確実な固定と容易な着脱を両立し、上方にスペースがない場所でもスムーズにカバーを取り外すことが可能となり、車両搭載後のメンテナンス作業性が向上させた樹脂構造体が開発されています(以下URL)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7572272/15/ja
(15)上記(1)~(4)(共同出願人)のまとめ
どの企業も特定の企業との共同出願が非常に多いです。
ただし、事業譲渡や出願人名義が変更されているものも多く、個別の実態をよく確認する必要があります。
4 開発に求められる専門性
上記3で示した特許分類≒開発人材に求められる専門性、だと仮定します。
上記各特許情報には以下の人材が関わっていると言えます。
・電気系分野(電気電子工学、電気工学、電子工学など)
データ伝送や電気的品質に与える影響の評価、各種電気的特性の評価、最適化、所望の電気的処理をおこなうための回路設計などが求められます。
・機械系分野(機械工学、精密工学、人間工学など)
応力解析や変形挙動などの機械的評価、所望の効果を得るための構造設計などが求められます。
・材料、化学系分野(材料科学、材料工学、高分子化学、材料化学、化学工学など)
各種素材、化学物質の特性などの分析、評価、選定、最適化、重合などの反応プロセスの検討、最適化などが求められます。
・情報系分野(情報工学、制御工学、通信工学など)
所望の通信や情報処理をおこなうためのアルゴリズム設計、学習済みモデルの構築などが求められます。
・物理系分野(応用物理学など)
酸化物超電導体における超電導メカニズムの解明など対象物の物性評価などが求められます。
ただし、上記特許出願にあたっては、共同出願者やその他事業者に技術をアウトソースしている可能性もあります。
5 まとめ
ケーブルやケーブルに関連する出願が多く確認され、技術開発も当該分野に関わるものが多いことが推測されます。
これらを大学の専攻と関連づけるとしたら、主に電気、機械、材料、化学、情報、物理に関わる研究が該当する可能性があります。ただし、その境界はあいまいですし、専門性に関わる単なる名称にまどわされないでください。
本記事の紹介情報は、サンプリングした特許情報に基づくものであり、企業の開発情報の一部に過ぎません。興味を持った企業がある場合は、その企業に絞ってより詳細を調べることをおすすめします。
参考記事:1社に絞って企業研究:特許検索して開発職を見つける方法4
以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
・会社四季報 業界地図2024年、2025年版 東洋経済新報社
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